「公害の経験から学び、未来を創る市民を育てる」
あおぞら財団

ロールプレイ「あなたのまちで公害が起きたら」

                   

〇概要

  • 日本は大気汚染をはじめ公害による環境汚染が深刻な時代がありましたが、公害患者をはじめとした市民、行政、企業の連携により克服してきたという経験があります。
  • このアクティビティでは、公害の問題解決についてロールプレイング(お芝居)を通して模擬的に体験し、気候変動など環境問題への課題解決の糸口を考えます。

〇ねらい

  • 公害の経験をロールプレイングにより模擬的に体験します。
  • 様々な立場から、被害者がいる環境問題に対する、解決策を探ります。

〇所要時間

  • 45分

〇進め方

0. 準備 ・4~5人のグループに分かれて行う。

・部屋の中の机やいすは、グループワークができるように配置します。

・各グループに役割シート等の資料を配布しておきます。

1. 参加のルールの確認(2分) 様々な意見を安心して自由に話せる安全な場づくりのために、参加のルールを設定し、参加者全員で確認します。

参加のルールの例

・思いついたことは、失敗をおそれず恥ずかしがらずに発言する

・必ず全員が発言する。

・他の人の意見を尊重し、耳を傾ける。

・一人で長時間話さない。

2. 状況設定の確認

(2分)

進行役は、これからお芝居の形式で、課題解決に向けた合意形成を目的とした話し合いに取り組んでもらうことを伝えます。ファシリテーターが状況設定を読み上げる。

<状況設定(共通)>203X年、あなたの住むまちで、原因不明の大気汚染物質らしきものによる健康被害(呼吸器の疾患)が発生しています。住民の間では「X工場(煙突・換気口あり)のせいではないか?」という噂が流れています。工場では、様々な製品の製造・研究を行っています。今日は市役所による環境調査の結果報告会です。調査では健康被害の原因が明らかにならなかったという説明が終わったところです。その後、集まった地域の人たちがそれぞれの立場から要望を発言する時間が設けられました。

3. 「合意形成」が目的であることを共有・確認(3分) 進行役は次のように伝え、この活動の目的は合意形成であることを確認します。

「今から、各グループで、問題をどう解決したらよいかを話し合ってもらいます。後から配る役割カードの内容をよく読んで、自分の意見を主張し、お互い納得がいくように話し合ってください。この活動は、違う立場の者同士で意見交換をしながら、解決策を探ることを目的としています。そのため、多数決は禁止です。早く結論を出すことよりも、納得のいく合意をめざしてください」。

4. 役づくり(3分) 各グループに「役割カード」セットを配布くじ引きの要領で、一人一枚「役割カード」をひく。その後、それぞれ「役割カード」を黙読して、役作りをする。
5. ロールプレイ(25分) 進行役は、次のようにロールプレイの手順を説明します。

「『役割1』の人は手を挙げてください。その人はから役割番号の順番に、「役割カード」の枠線の中の台詞を読み上げていってください。その後は、自分の役割になりきって、この状況でどう発言するか、自由に想像して考えて、話し合いをしてください。その際、『役割1』の人は司会進行をしてください」。

<役割設定>

1 市役所の環境担当係長

2 住民A(患者の親。ただちにX工場の操業を止めて原因を調べるよう要求)

3 X工場の経営者(病気の原因だと噂されている)

4 地元診療所の医者

5 住民B(X工場で働く。操業を止められては困る)

グループごとに、役割になりきってお芝居をしながら、違う立場の者同士で意見交換をしながら、解決策を探ります。

6. 各グループの話し合いの内容の共有(10分) 話し合いが終わった後、どのような話し合いが行われたか、いくつかのグループから発表してもらい、全体で共有します。
7.振り返り(5分) ロールプレイで演じた役割から離れ、各自がここまでで感じたことや考えたことをふりかえり、他の参加者と共有します。

 

〇感想

ロールプレイを実施した後の感想文から(一部抜粋)
・ロールプレイを通し、異なる立場の人々がお互いの主張を聴き理解し合意形成を図る大変さ、経験の継承の大変さを学びました。
・住民が役所へ期待することや、同じ地区に住む住民同士でも立場の違いによって、一つの合意形成に至ることの難しさを体感することができました。
・ロールプレイを通して「話を聴くこと」の大切さを学びました。複雑な状況でも、まずは話を受け止めて、すぐに出来る出来ないの答えを出すのではなく、一つずつ相手の立場に立って、解決策を見つけていくことが大切だと思いました。
・立場の違う人間がいる場合、率直な意見交換がしづらく合意形成が非常に難しいことを実感できました。

〇ロールプレイの事後学習

  • ロールプレイングで公害の問題解決について模擬的に体験したのち、日本が実際にどのように大気汚染公害を解決してきたかについて、大阪・西淀川の記録から学ぶことを勧めします。
  • 環境問題の解決には、公害被害者をはじめとして市民、行政、企業、大学・研究機関、報道機関などの多様な立場の人々の連携が必要であることを学び、気候変動問題の解決に何を生かすことができるのかを考えます。

事後学習のための参考資料、参考ページ

  • あおぞら財団付属西淀川公害と環境資料館エコミューズ「公害~みんなで力を合わせて~大阪・西淀川地域の記録と証言」http://aozora.or.jp/nishiyodogawakougai/

○実施事例

 

〇教材の問い合わせ

このロールプレイで用いる役割シート等の資料はあおぞら財団までお問い合わせください。

電子メール:webmaster[at]aozora.or.jp([at]を@に変えてください)