桜満開!淀川勤労者厚生協会の新人研修を実施(4/3)

淀川勤労者厚生協会の新人研修を今年もあおぞら財団がお手伝いしました。
淀川勤労者厚生協会の運営する西淀病院、野里診療所、あおぞら薬局などは、地域の人々に頼りにされている医療機関です。そこで働く新人のみなさんに、西淀川のまちを知り、公害について学んでもらおうと、今年は午前中半日でフィールドワークと公害被害者のお話を聞くプログラムを組みました。

野里診療所の講義室で簡単に西淀川公害とフィールドワークの説明をしたら、さっそく屋外へ。
まずは歌島橋交差点にて道路公害の説明です。

説明をする後ろを、今日もトラックがビュンビュン走っています。
説明をする後ろを、今日もトラックがビュンビュン走っています。

参加者へ質問です。「ここでは空気中に含まれる最近話題の物質を計っていますが、さてなんでしょう?」の問いかけに、参加者からは「PM2.5!」とズバリ正解が。西淀川公害裁判の和解を受けて、全国で初めて、PM2.5の測定を始めたのがこの地点です。
それでは次の質問。「日本でPM2.5の環境基準は1年平均値15μg/m3。では歌島橋ではどれぐらいでしょう?」。「6!」「10?」正解は・・・24時間値で48.0μg/m3!(2012年調べ)。これには「えぇ!」という驚きの声が。PM2.5と言えば、最近の報道をみているとすべて中国から飛んできているような印象を受けますが、歌島橋交差点で続けてきた測定結果ではここ数年で急激に増えたなどということはありません。見た目では空気はきれいになったように思えますが、今も汚染は続いています。
そこから国道2号線沿いに南東へ。国道を外れて古い街並みに入ると途端に静かになります。何気なく歩いていると気づきませんが、国道沿いでの車の騒音を体感しました。
野里小学校前の掲示板には「この地域は、海抜およそ-1.1m」の表示と災害所避難所であるとの看板が。ここでは淀川勤労者厚生協会の松本さんから、よどの里は4階建てなので、町内会から地域の避難所にしてほしいとの申し入れがあったとの補足がありました。
今回のフィールドワークは、医療従事者のみなさんが対象ということで、いざ、災害が起こったら海抜の低い西淀川で何が起きるか、そのとき医療従事者に求められることはなにか、仕事につく前に想像してもらおうと、随所で問いかけました。

野里の住吉神社で質問。「今の淀川はいつできたでしょうか?」
野里の住吉神社で質問。「今の淀川はいつできたでしょうか?」

「野里の渡し」の石碑から柏里商店街入口までが旧中津川の川幅。歩いてみると結構あるように感じましたが、その後向かった今の淀川はやっぱり大きい!
かつては汚れてしまっていた淀川も、今は水質が改善されて、このあたりでとれるシジミは料亭に出すような立派なものがとれるそうです。

思ったより水がきれい!シジミと聞いて、足で穴を掘って探す人も・・・。
思ったより水がきれい!シジミと聞いて、足で穴を掘って探す人も・・・。
こんなに立派なシジミが!!
こんなに立派なシジミが!!

最後に桜咲く春の緑陰道路を味わって、フィールドワークは終了です。
約30人でまちを歩いていると「なにしてるんやろ?」と不思議そうにこちらを見ている人がチラホラ。そんな方に「西淀川の医療機関でこれから働かれるみなさんに、まちを知ってもらうための研修をしてるんですよ」とお伝えすると「それは大事やねぇ!」と嬉しそうに答えてくださいます。さらに毎年恒例だけあって、「西淀病院の新人研修やろ?」と嬉しそうに声をかけてくれる方もおられました。
次は、公害の詳しいお話です。

大阪人権博物館が制作された「西淀川公害を闘う」の映像をみて当時の様子や公害裁判について学んだ後、「西淀川公害患者と家族の会」の和田美頭子さんからお話を伺いました。

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和田さんは香川県高松市出身。1948(昭和23)年に西淀川に移り住んだ当時は、淀川には葦が茂り美しく、工場も少なかったそうです。それが昭和40年代半ばに入って咳き込むようになってきます。公害センターでの検査の結果、3級の公害患者として認定されました。

和田さんは公害患者として認定されたこと、「西淀川に住んでいる」ということに抵抗を感じるようになったそうです。西淀川が「どんなに汚いところか」と思われるように感じたからです。

ある日、診療所で咳き込んでいる子どもをみて「この病気になったのが、うちの子や孫でなくてよかった。よその子でも見ていてこんなに辛いのだから。これからの子どもたちにこんな思いをさせたくない」と思い、裁判に参加することを決意されました。

(当時の西淀川の様子はこちら https://www.aozora.or.jp/ecomuse/la_pollution/ )

田舎から訪ねて来られた甥御さんは、当時の西淀川の空気を吸って吐いてしまうような状況で、「高松へ帰ろう」と和田さんに言われたそうです。けれど、和田さんは帰りませんでした。「西淀川は第二のふるさと。私がどこかへ移っても公害はそのまま。西淀川がきれいな、住み良い町になってほしい」と思いを語られました。

裁判のお話、発作のつらさなど、様々なエピソードを語ってくださった和田さんは、「最近は私はひどい発作はないけれど、話もできないぐらいひどい症状に苦しんでいる人が今もたくさんいる」「西淀病院や野里診療所は安心して診療を受けられるところ。みなさん、頼りにしています」と、参加されたみなさんにエールを送り、話を終えられました。

参加者からは「小学校でも公害は習ったけれど、西淀川区でこんなことがあったとは初めて知った」「将来の私たちのことを考えて裁判してくれたことに感謝します」といった感想が出ました。

これから医療機関で働かれるみなさんがこの日の学びを活かして活躍されることを期待しています!

(栗本)

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『おもろいわ西淀川、いいね!数トップ10』の展示はじまりました。

おもろいわ西淀川」とは?大阪市西淀川区を走りまわり、面白い場所、気になるものを見つけて、Facebookページにて更新しています。

2014年3月21日(金)~5月14日(水)
場所:大阪市立西淀川図書館

皆様から「いいね!」を頂いた中から人気の高かった記事トップ10を写真と共に展示しています。
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1位は2014年1月16日投稿の【明日香菓舗】さん。
創業50年を超す西淀川で愛され続けているお店です。
和菓子、洋菓子、パン、と手作り販売されており、どれも美味しい!!
レトロな袋もこだわりが伝わってきます。
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壁面にも8~10位を展示しています。
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10位は2013年11月28日投稿の橋の上から見える【夕景】
佃と大和田との間を流れる中島川です。思わず立ち止まって魅入ってしまいます。
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他にも「おもろいわ!」な西淀川たくさん紹介しております。
是非一度、ご覧になって下さいね。

(資料館スタッフ 佐々木)

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環境省職員研修2日目 西淀川のフィールドワークと提案づくり(2/27)

環境省職員研修、2日目は西淀川のフィールドワークです。(1日目の様子はコチラ
本日の参加者10人と西淀川をめぐります。
公害の被害といった面だけではなく、緑地や農村時代の歴史といった様々な面からの西淀川を見て回るコースです。自転車チームもつくり『矢倉海岸まで行き自然を体験!』という計画もあったのですが、この日は残念ながら雨の為、皆で歩きました。

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まずは、歌島橋交差点で、国交省の沿道対策等を紹介。

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次は大野川緑陰道路。埋め立て前の写真を見ながらできた経緯や現在の使われ方を学びます。

低地の西淀川。津波避難ビルの小学校を前に南海トラフの地震による津波の想定を紹介。
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淀川開削前に流れていた中津川を渡るための『柏の渡し』の跡。水郷としての歴史を伝える石碑です。
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西淀川区が誇る登録有形文化財、池永邸へ。
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亭主の池永悦治さんにご案内頂きました。
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江戸時代は、舟で商業地の船場と行き来していたと語る池永さん。水郷だった頃の風景がよみがえります。私設の資料館の中も見学させて頂きました。
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都市近郊農地という西淀川のかつての話に、皆、熱心に耳を傾けていました。

午後は、デイサービス施設あおぞら苑へ。
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利用者さんの生い立ちや、西淀川の昔の話を教えてもらいました。
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公害で苦しんだ町に住み続けた人達の、癒せる場所をつくりたいという辰巳致代表の熱い言葉を受け、あおぞら苑を後にします。

千北診療所
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西淀川公害の患者運動がどのようにできたかの解説です。
公害がひどかった当時、24時間、患者さんが発作をおこしやってきたことも紹介されました。

西淀川には、西日本最大級のマスジド(イスラム寺院)があります。その周辺には、イスラム教徒でも食べられる肉を扱う(お祈りをしてある等)ハラールレストランやミートショップ等ができており、意外で新しい!?西淀川の名所になりつつあります。
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寺院に併設した商店を見学。香辛料や、スパーシーそうなヌードルをお土産に買う参加者も。

そして、あおぞら財団に戻り、研修でわかったことを踏まえそれぞれが、どんなことができるのかを考えました。
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1つ目のグループのから出た感想と対策です。
■まちに対して
・空気も町もきれい。緑も多い。
・路上のゴミの少なさは、西淀川全体の人が地域貢献という形で行動している証あのでは。
・旧家が残っていることや、農業、漁業がかつてこの地にあったことに驚き。
・生物が住め、遊べたりする草むらがない。空地ができてもすぐ駐車場や建物になっている。
・住宅が密集しているのに、国道沿いは交通量が多い。車対策は先進的だが試行的なのではなか。
・行政と、被害者、今の世代、それぞれの温度差はあるのか。
□対策
・ロードプライシングをする。
・地域毎の対策を整理し共有する。

■人に対して
・未来に向け、今まで想定していない新たな公害による患者をつくらないためにはどうしたら良いのか。どんな公害被害が出るかの想定は難しい。科学的に可能なのか。
・患者さんが明るく元気で驚いた。
□対策
・患者と行政担当者がまじわる機会をつくるため、行政担当者が直接住む。
・西淀川の患者さんは、提案が採用され実現されたということで、やる気につながっていたのではないか。まちづくりの住民提案を採用するというサイクルをつくることが大切。
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などが紹介されました。
ちなみにこのグループでは、模造紙の縦軸…上を「建物」、下を「人」、横軸…左をマイナス面、右をプラス面、意見・感想を「青」のポストイット、それに対する対策を「赤」として課題と解決法を整理していました。さすがですね。

2つめの班の発表では、
・患者さんはみな元気、団結力がある、生きがいをもってやっている。陽気。
・住宅が多い。
・市民のまちづくりや環境への関心が高いように感じた。
・住宅地と工場地帯が近い場所にある。
・特に道路近くは、排気ガスのにおいを感じた。
等の感想が紹介されました。

・自治体ごとに規制が違うが、規制が厳しくなるとそのまちに企業等が入らなくなり税収に影響が出る。
・「いきものみっけ」の公害版をつくり汚れた場所を皆で共有することで解決を考える。
・先に対策した方が、被害も出ず、将来的には利益になる。
・貴重な御屋敷を持つ野里の池永さんには、ぜひ頑張って欲しい。
等の意見が紹介されました。

この受入の参加者それぞれが、狙いをもって望んでくれていたことが印象的でした。
アスベスト公害の被害の補償を担当しているが電話でしかやりとりがないので、被害者の気持ちにたって対応するためにも実際にまちを見て人にふれてみたかった―という若手職員、
数十年前、大気の調査で西淀川をまわったという、ベテランの方。

現場の今を知ることで、今後ぜひ業務をすすめる上での糧にしてもらえればと願っています。

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(小平)

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環境省職員研修1日目 西淀川公害フィールドワーク(2/26)

日 時=2014年2月26日(木)13:00~17:00 27日(金)9:30~17:00
参加者=環境省職員12名

環境省職員の西淀川フィールドワークの受入を行いました。一日目の26日はビデオ「西淀川公害裁判を闘う」「公害被害体験を語りつぐ」を見た後、患者さんのお話で、和田美頭子さん・森脇君雄さんの話を聞きました。休憩を挟んで村松昭夫弁護士の話がありました。

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和田美頭子さん

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公害病は他人ごとでした。しかし周りからドンドン患者さんが増えていきました。そして何人もの方が亡くなっていきました。私は歌が好きだったけれど、以前ほど咳は出なくなりましたが、歌うことができなくなりました。わずかな楽しみが奪われた思いです。子供の頃は淀川にヨシがいっぱいありました。節句の頃には、それで粽を作ってもらいましたが、今はヨシがなくなってしまいました。この前、中国から来た人の中でゼンソクの苦しみを訴えている方が居ましたが、私は子どもがゼンソクで苦しんでいるところをみたくないと、しみじみ思います。

薬が怖くて、本当は薬を飲みたくはありません。発作が続いてとても辛かったです。何でこの公害が防げなかったのかとつくづく思います。

環境省職員から
行政側の人間に言いたいことはありますか?

和田美頭子さん
交渉に行っても確たる答えがないのが残念です。いつも「聞き置く」だけですから。

環境省職員から
患者さんの中には60歳くらいの方も多いのですか?

上田敏幸事務局長
患者会のメンバーで、この地域の一番若い人は38歳で、最高齢は93歳です。

環境省職員から
嫌だったことや困ったことはありますか

和田美頭子さん
患者は差別的な目で見られるときがありました。「公害病の手当てで家を建てた」などと言う人がありました。妬みでそんなことを言われたことがありました。「あなたも先生の所へ行って調べてもらいなさい」と言い返すことにしていました。検査してもらうだけで大変でしたから。

環境省職員から
患者になったら、自分の住んでいる場所から出て行こうとは思いませんでしたか?

和田美頭子さん
先ず家族が居て、仕事があります。他の場所へは行けませんでした。

上田敏幸事務局長
出て行けない理由が3つあります。①仕事が出て行ってあるか。②今のような収入があるか。③患者に寄り添ってみてくれる医療機関があるか。それらが理由になって出て行く人が少なかったようです。西淀川では医師会の協力があり、患者と共に歩んでくれる先生が居ました。

和田美頭子さん
生活していくわけですから「汚れ」は見えています。でも「汚れた空気」で肺をいためるとは思い至りませんでした。

森脇君雄さん

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「西淀川」を感じ取っていただきたいと思います。現地を是非見てください。
西淀川裁判を考える場合、なぜ患者会が「割れなかった」かという問題があります。
「カネミ油症」裁判では、労働組合が絡んで(患者会の)身内から分裂しました。
「新潟水俣病」裁判では、1次と2次で分裂し、弁護団も割れました。
「水俣病」裁判でも割れました。我々もそれを見てきましたので、患者自身が中心になって運動を進めるべきと強く思いました。弁護士中心でもだめなのです。
西淀川では患者が金を出し合って「街づくり」を提案していきました。高齢者のディケア施設「あおぞら苑」も喜ばれています。
患者が最初に怒った先は「煙り」を出す企業でした。「蒲焼のにおい」と工場からの煙を言ってのけた企業もありました。その被告を謝らせるかどうかが大事なところでした。千葉の大気汚染裁判は企業が頭を下げ、それによって患者が納得した姿を見て学びました。「西淀川では被告に全員そろって頭を下げさせたい」という思いがありました。

環境省職員から
裁判官は「大気汚染問題」を分かっているのかと思いますが。

森脇君雄さん
企業相手なら簡単に勝てる。しかし、国を相手にする場合、税金を使うわけですから、原告に勝利判決を出すことはとても勇気の居ることです。

村松昭夫弁護士
4現状の知見をもとにしながら、原告に勝たせようと思う裁判官は、とても勉強しています。
国に負けさせるためには、だれもが納得できる判決を出してきていると言って良いと思います。

①大気汚染裁判を考えると、被害はピラミッドの形をしている。頂点は激症型であるが、広汎な最底辺部の改善がなければならない。
単にお金をもらってそれで終わりではないのです。
交通事故は、被害・加害の相関関係で成り立っている。公害は一方的な被害者のみであることに注目します。
②行政の役割に関し、道路の公害と発電所の煙は違う。発電所の煙はそのものに責任があ。道路は設置をし、それを管理する国の責任の問題になるが、「大きな公共性の前に、しかたがないのではないか」との論に対し「公共性があればこそ、一部の人間に被害を押し付けるべきではない」と主張してきたました。
③泉南アスベスト裁判では、戦前から石綿関連工場で働いていた人は50年働いてきたら100%発症すると言われている。「国は外国の例も知っており、規制する技術もあったにもかかわらず規制しなかった」その責任を追及しています。
④「人の命と産業の発達」の関係に国は向き合っているのです。国は「適時、適切に行為」しなければなりません。
⑤世界中探しても「あおぞら財団」のような、こんな財団はありません。公害を無くすためには、最後は「人」の問題になる。市民レベルの連帯こそ最終的な解決になるのではないかと考えています。

環境省職員から
なぜ、西淀川公害裁判はこのように長い裁判になったのですか?

村松昭夫弁護士
企業や自動車の排気ガスと疾病の因果関係の立証。さらにコンビナート型ではない工場群の協同不法行為責任の認定。排ガスが西淀川に到達している気象的な立証という困難な問題を抱えていたからです。

以上の話を聞いたあとは「西淀川・公害と環境資料館」を見学し、裁判資料を見学してもらいました。
環境省の職員の皆さんには、担当する仕事の意味を西淀川の事例を基に、考えていただく機会になったことと思います。

*2日目はフィールドワークです。その様子はコチラ

天野憲一郎

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資料館だより47号(2014年2月号)を発行しました。

資料館だより47号を発行しました。

エコミューズやあおぞら財団に配架しています。

 

No.47表No.47裏

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東京学芸大学の研修を受け入れました。2日目 (2/21)

東京学芸大学研修西淀川公害フィールドワークの2日目が2月21日(金)に行われました。

2日目は大野川緑陰道路を歩きました。学生たちは、以前どのような風景だったのか写真で見ると同じ所で撮られた写真だとは信じられない表情を浮かべ驚いていました。周りの音に耳をすましたところ、緑陰道路沿いには工場が多くあることが見えてきました。車の音や飛行機の音、ファンの音が聞こえてきました。

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大和田小学校の側を通る時に書かれていた海面から-1.8mの表示に学生はとても驚いた表情を浮かべて、その文字を見つめている姿が目立ちました。西淀川では、工業化の影響で地盤沈下が進んでおり、いざという時に逃げなければならない状況にあります。

千北診療所では公害病認定2級でもある酒井美代子さんにお話を伺いました。酒井さんは診察をする前に話をする時間を頂き、酒井さんに病気になった当時、どのような生活環境だったかなどの話を伺いました。酒井さんは昭和41年に認定されており、現在も吸入や点滴をしに毎日病院へと来ているそうです。夫婦でぜん息などの症状が出ており、他にも薬の副作用もあり、今も息苦しくて階段がしんどいなど具体的な話をして下さいました。学生さんは時折メモを取りながらも真剣な表情で酒井さんを見て話を聞いていました。「体調が悪かった人がいましたか?」という質問には自分よりも年上の方に多く、酒井さんは若い方だったという話をされていました。他にも「車や工場に対して現在どう思っているのか?」という質問に「住みよい町にして欲しい。でも、もう元には戻らないだろう。」という話をされ質問した学生さんも難しい表情を浮かべていました。ですが、最後に住んでて良かったと言う言葉に笑顔を浮かべていました。

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デイサービスあおぞら苑では、入所している方を話をしながら昼食を取りました。輪になっている所に入れて頂き、色々な方と話をしていきました。公害の患者さんでもある方や、戦争を体験した方、一人暮らしの方など色々な立場色々な思いを抱えた方との話に学生さんはわきあいあいとした様子で昼食を取っていました。学生さんと色々な話が出来たことで、とても表情が和らいでる方がとても目立ちました。学生の方も笑顔が溢れていました。

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昼食後、出来島小学校測定局でクイズ形式で国交省の対策について何をしたのかと言う話をすると、率先して考えている横で咳をしたり「くさいなぁ」と声を漏らす学生さんもいました。初めて私も43号線に立ちましたが、強烈な匂いが漂い近くに小学校があるというのは衝撃的でした。昔に比べ良くなったとしても慣れるべきにおいではないという感想を抱いてしまいました。

地盤沈下の状況をバスの中から眺め、あおぞら財団に戻って患者会の会長をしている森脇君雄さんから話をして頂きました。一日目から森脇さんの話が出ていたので、学生さんは食い入るように話を聞いていました。いかに患者会を割れずに一つにまとめあげて行くか、自分たち被害者団体が主体となり公害反対運動を自分たちで進めて行く大切さを語ってくださりました。患者会に入りやすいのは、他の地域とは全く異なり、それが西淀川の公害反対運動が1つにまとまり上手くいった部分でもあるのでしょう。

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その後、思ったことを共有することになると1日目の話になると学生さんからは複雑な思いを抱え、それが昇華出来ていない様子が伺えました。「自分はどうなのか」と書いた学生さんは山岸さんは働いている人としての話ではありましたが、個人としてどう思っているのか自分がどう思っているのかまで踏み込めないので「どう思うか」と話していました。「すみません、give upです。」と書かれた学生さんは自分の至らない点について限界を感じていたようです。相手の立場から現在の考え方価値観になるまでのプロセスが理解できず、また受け入れられない自分に対して苛立ちを感じているようでもありました。「国」と捉えた学生さんは日本の国のあり方であったり、国策を感じたという言葉が印象的でした。

今日の感想になると一転して「あたたかい」や「笑顔」「スッキリ」などのポジティブな印象が見受けられました。そこには今日話をした方々の印象であったり、色んな方が話してくれる内容や表情が大きく左右されていたようです。ですが、中には素直に「くさい」と書かれた学生さんもいたりととても直感で感じてる方が多かったです。

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東京から来た学生さんと2日目だけですが、フィールドワークのスタッフをしていて多少疲れている様子もありましたが、多くのものを見て興味関心がとても感じられました。その中で西淀川を歩き、大きな道路沿いや高速の下を通りながら音やにおいがとても気になるなと思いました。騒音や大気汚染、地盤沈下などの問題を抱えながらどのように向き合えばいいのかと思うと、やはり今回のように多くの人に知ってもらうのが一番なのだろうと思いました。その想いをこれからどう時分の中で形にしていくかというのは私の課題でもあるなと、初心に帰る思いをしました。

(松ヶ平)

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東京学芸大学の研修を受け入れました。1日目 (2/20)

2014年2月20~21日、東京学芸大学・原子栄一郎ゼミ(環境教育)の研修を受け入れました。

初日の20日は、西淀川公害訴訟の被告企業の1つであった神戸製鋼所の方からのお話を聞き、工場の見学を行いました。

午前は、神戸製鋼所で長らく公害訴訟に関わられた山岸公夫さんからお話を伺いました。

山岸さんは、1969年に神戸製鋼所に入社され、事務職を経た後、長らく法務・法規関係の仕事に携われました。1983年には公害訴訟の会社側責任者となり、87年には法規室長に就任されました。その後、監査の業務に移られ、神戸製鋼所退職後、現在は石光商事の監査役を務めておられます。なお、山岸さんは昨年よりあおぞら財団の監事も務めてくださっています。

お話は、ゼミの学生さんたちが事前に用意した質問に答える形で進められました。

訴訟になった当時の会社側の加害に対する認識として、山岸さんは、大気汚染があるということ、その被害者がいるということはわかっていた。しかし、裁判でも主張したように、工場から排出される煙と健康被害との因果関係が証明されない限り、会社側の責任を問うことはできないという認識だったとおっしゃられました。

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この点は、西淀川のような大気汚染訴訟の難しさに関わります。

原因企業と原因物質が比較的明確な「四大公害病」とは違い、大気汚染は広範囲からの煙によるもので、原因企業も特定されにくいという特徴を持っていました。各企業が独自に操業する中で排出される煙に対して、どのように責任を追及するかが、訴訟の大きなポイントとなりました。

また、山岸さんは、会社側には、正当な行為、つまり様々な生産活動の延長として結果的に煙が排出されているという意識もあったとおっしゃられました。

1950年代後半~70年代前半の日本の高度経済成長は、鉄鋼業部門に代表される重化学工業の著しい発展によってもたらされ、それによって国民の生活水準は急速に向上しました。

神戸製鋼所をはじめ、西淀川公害訴訟の被告企業も戦後の日本経済のけん引役となっていました。

山岸さんのお話は、日本の高度経済成長がもたらした「光」と「影」の部分を、会社側の立場から指摘してくださったものだと思います。

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この点と関わって大事だと思ったのは、山岸さんが「時間軸」の中で問題を考えることの大切さを強調されたことです。

公害防止に関する法整備や社会全体の意識が高まっている現代の感覚や価値観で、過去の行為を間違っていると糾弾するのは違和感を覚える。そのような法制度も社会認識も乏しかったという時代背景をふまえて、公害の問題を考えなければならないと山岸さんはおっしゃられました。

公害とそれに関わる訴訟は、被害者個人や家族、患者団体、原告団、弁護団、原因企業、国・行政など、様々な主体が関わる複雑な問題であり、また長期間にわたるまさしく「歴史」の問題です。

こうした複雑な過去の問題について考え、評価するには、それぞれの立場を理解し、また当時の社会状況に想像力を働かせ、その時代に生きた人たちの立場で問題考え、評価する必要があります。

環境の大切さや公害の防止について学んできた学生さんにとって、山岸さんの話は「会社側の論理」によるもので、自分たちの考え方とは異なるものだったのではないかと思います。

しかし、この問題を様々な立場から、そして長い「時間軸」の中で考える必要があるということを学ぶことで、より深い次元で環境・公害問題について考えるきっかけとなったのではないでしょうか。

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また、山岸さんは、様々な課題や困難を乗り越え、組織を維持し、長期間にわたる裁判で和解解決を勝ち取った西淀川の患者会、原告団のみなさんに敬意を表されていました。企業側との誠実で粘り強い信頼関係の構築、話し合いの継続の先に、和解解決があるのだと改めて感じました。

午後からは、灘浜サイエンススクエアに移動し、神戸製鋼所の企業活動と、2002年から運転が開始された神鋼神戸発電所についての説明を受けました。

灘浜サイエンススクエアは、地域との交流を目的とし、科学技術の面白さを学べる体験型展示や映像展示がある施設です。

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神鋼神戸発電所は、IPP(独立系発電事業者)として、全国のIPP発電の約2割にあたる140万kWを発電しています。これは、神戸市の夏の電力需要がピークの時期の約7割をカバーするものだそうです。

お話の後、発電所内を見学しました。

ボイラ・タービン建屋の中では、発電のしくみや、防音壁の設置など周辺への環境対策について説明を受けました。建屋屋上からは、神戸の街と近接した「都市型発電所」を実感することができました。

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発電所見学後は、再び神戸製鋼所の方から環境経営に関する説明を受け、その後、質疑応答に移りました。

学生さんからは、中国にも進出している神戸製鋼所が、現地でどのような企業活動を行い、環境問題で貢献しているのか。公害訴訟で被告企業となった事実を今どのように考え、会社内外でどのように教育・広報しているのかといった質問が出されました。

神戸出身の学生さんからは、「神鋼は神戸に根付いた企業で、市民にとっての誇りであると思っているが、広報資料や今日の話でも『公害』の文字が一切出てこないのはとても残念だ」という意見も出されました。

神戸製鋼所の方からは、自社を含め、日本の企業には環境に配慮した高い技術力があり、それらを中国をはじめ各国に伝えることで貢献していきたい。現在も、企業内教育として、環境に関する研修やウェブテストを実施しており、それらを継続的に受けることで社員にも「環境を守らねば」という意識が生まれているとお答えいただきました。

おそらく、社員の立場として答えにくい質問が多かったと思いますが、とても誠実に答えてくださいました。

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神戸製鋼所は、西淀川公害訴訟の被告企業の中では唯一あおぞら財団の会員になってくださっています。「過去の反省」の上に立ち、公害の経験と高い技術力をアジア・世界に伝えていっていただければと思います。

山岸さん、神戸製鋼所のみなさん、当日はありがとうございました!

(藤井)

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出来島小学校で西淀川公害の授業(2/5)

2月5日、大阪市立出来島小学校5年生を対象に、天野憲一郎さんによる西淀川公害の授業がありました。天野さんは、元は小学校の教員で、西淀川区の小学校でも長年にわたり教鞭をとっていました。現在は、あおぞら財団で環境教育の活動に関するボランティアや、公害資料の整理のお仕事でもご協力頂いています。

子ども向けの西淀川公害学習用のDVD『手渡したいのは青い空~未来からのメッセージ 』を用いて授業を行いました。

教科書には、四大公害は掲載されていますが、西淀川公害はでていません。西淀川公害と教科書に掲載された公害との関連が理解しやすいよう教科書を拡大し黒板に貼ったり、DVDを放映する前に、西淀川で撮影された事等にふれ子どもの興味をひくなど、様々な工夫をしながら授業をすすめていました。

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西淀川に大気汚染公害の被害が拡がっていた頃の写真や、スモッグのかかった現在の中国の写真を用いて、今なお続く大気汚染公害を皆で考えなくてはいけないことを子どもたちに示していました。

(小平記)

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大和田の大阪マスジドどんなところ?聞いて食べてしゃべって(あおぞらイコバ大和田でみせ)開催しました。(2/2)

2月2日日曜日

あおぞらイコバ 大和田でみせ

大和田の大阪マスジドどんなところ?聞いて食べてしゃべって

を開催しました。

1227あおぞらイコバ大和田

会場は大和田4丁目にあるシタラハラールレストラン

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店内ぎゅうぎゅうの参加者が集まってくださいました。

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店内はお香が焚かれ異国情緒漂うムード。

お花の香りのするお香です。

まずはハラールレストランのランチを頂きながらしばし歓談。

マトンダルカリー(羊と豆のカレー)、タンドリーチキン、サモサ、パコラ(野菜のてんぷら)、ビニヤニ(チャーハン)、ナン、パパド(せんべい)、サモサ、サラダ・・・

たくさんの種類とボリューム!

美味しく堪能させて頂きました。

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デザートも!

カスタード、というとてもやわらかいプリンのようなものにフルーツが入ってるもの。

香りもよく子供たちにも大人気でした。

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そして、

ユヌスさんとナリームさんを交え、ムスリムの生活について質疑応答。

龍谷大学生の松本さんが司会進行を勤め、さまざまな質問に答えて頂きました。

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そしていよいよモスク、大阪マスジドの見学へ。

ウドゥーの水場で両手、口、鼻の穴、顔、髪の毛、両腕、足を順に洗う様子を実際に見せて頂く。

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そして2階の礼拝の部屋へ。

ヌマーンさんからお祈りの時間や方角などのお話を伺いながら質疑応答。

最近はiPhoneのアプリがあるのでどこにいてもメッカの方向が分かるとのこと。

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現在の時間と、5回のお祈りの時間、

もうひとつは金曜日の大きいお祈りの時間を示す時計。

きっちりこの時間!というわけではなく、この時間帯の間に5回にお祈りしなさいね、という目安とのこと。

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4階では小学生のパキスタン人の男の子がアラビア語を勉強中。

こうやって日曜日には周辺からこどもたちが学びに来るのだそう。

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その後、

今年オープンしたばかりのプレミアムハラールミートデポへ。

ハラールミートを扱うお肉屋さんです。

満員の店内!

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ここでも、どのようにハラールミートが捌かれるのか、

なぜハラールミートの肉屋さんを開業されたのか、など店主さんにお話を伺いました。

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帰途、SITARAの方々にマンゴージュースのプレゼントも頂きました!

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みなさまに興味を持っていただけて、大和田、西淀川、マスジドなどに興味を持って頂ける一端になれば嬉しいです。

今回のイベントは冊子にまとめてみなさまにご報告いたします。

ご参加くださったみなさま、シタラハラールレストラン、大阪マスジド関連のみなさま、
進行を補助していただいた高田研先生、清水万由子先生、大滝あやさん 本当にありがとうございました。

(水田)

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永野千代子さんによる語りべの授業(2/6)

2月6日、大阪市立出来島小学校の5年生を対象に西淀川の公害患者さんの語りべ授業が行われました。

お話して下さったのは永野千代子さんです。

まず、最初にあおぞら財団の職員から公害について簡単な説明があり、その後公害患者、小宮路清盛さんの発作時のVTRを見ました。

児童たちは皆、真剣に画面を見つめていました。

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そして永野さんのお話が始まりました。

・西淀川で二酸化ちっ素の環境基準値が近年までオーバーしていたこと。

・PM2.5は国境を越えての汚染だけだはなく、車からも排出されるので国内でも対策を考えなくてはいけないこと。

・公害訴訟についてのお話。

・同じく公害で苦しんでいた息子さんのお話。

など、たくさんのことを聞かせてもらいました。

永野さんの息子さんは出来島小学校の児童でした。

永野さん自身も特別な思いでお話をして下さったと思います。

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特に私が印象に残った話は、公害がひどかった時の空の色についてです。

その当時、西淀川の子どもたちは空の絵を描く時、絵の具で灰色を塗ったそうです。

今ではそんなことは考えられないですし、想像もつきません。

西淀川の人たちの取り組みとして、廃油を再利用してハンドソープにしたり、車の燃料にしたりしていることを話すと、のぼりやポスターを見た事があるという児童が大勢いました。

そういう活動が地域に浸透しているんだと思いました。

児童さんからの質問の時間では「車と工場では汚れた空気をより出しているのはどっちか」というものや「ぜん息、慢性気管支炎の他にどのような病気になるのか」など鋭い質問もありました。

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先日、天野憲一郎さんの授業を受けていたからでしょうか?終始、子どもたちは話を真剣に聞いていて、質問した際もすぐに答えていました。

これを機に公害について興味をもってもらい、きれいな西淀川をつくっていってくれればと思います。

(ボランティア 山澤)

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