中国環境NPO研修3日目@大阪府立環境科学センター(1/23) 

中国環境NPO研修3日目の1月23日は、森ノ宮にある大阪府立環境農林水産総合研究所環境科学センターを見学しました。

まず、大阪府の大気測定の取り組みとその測定データについて説明を受けました。

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大阪府では、府内105ヶ所に測定局を設け、NO2やSO2、PM2.5をはじめ7種類の大気汚染物質と、風量・風向・日射量などを常時測定しています。

昨今話題にあがるPM2.5の測定は2年ほど前から本格的始まりましたが、2012年度、環境基準を達成したのは対象33局中2局だったそうです。また、光化学スモッグとPM2.5については、基準値を超えた場合府民への注意喚起を行っています。

その後、施設屋上にあがり環境省の国設大気測定局を見学しました。ガラス管を通して常時測定(粒子が小さいPM2.5は別の方法で測定)される大気中の各汚染物質量は、サーバーに収集され、1時間ごとのデータが公開されています。

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続いて、アスベストの測定・分析について説明を受けました。

研究所では、大気中のアスベストと建材中のアスベストの2つを分析しています。中国の方々からは、現在もアスベストは建材として使われているのかという質問が出ました。日本では、2006年から石綿及び石綿をその重量の0.1%を超えて含有する全ての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が原則禁止されています。

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最後に、水質中の重金属の質量分析の設備を見学しました。

ICP質量分析装置と呼ばれるもので、採取した水に電流を流しプラズマを発生させ、そこに含まれる各重金属の質量を測定します。測定結果は2時間ほどでわかるそうです。中国で水質汚濁の問題に関わっておられる方は、中国で同様の検査をしたら1週間以上かかると驚いておられました。

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この見学を通じて、中国の皆さんが最も関心を持たれたのが、公害・環境問題に対する行政の機能・取り組みに関することでした。

民間NPOの人間が行政機関を訪れ職員と容易に対話ができること、法制度に基づいて環境測定データが刊行物やウェブ上で公開されていることに大変驚かれていました。中国では、裁判資料として測定データなどが必要な場合、該当機関に有償で証明書を発行してもらう必要があり、そもそもそうした情報・データにアクセスすること自体が難しいそうです。

情報公開を積極的に行い、企業への抜き打ち検査や改善指導を行っている行政職員の皆さんに大変感心されていました。

日本の中にいると、行政が市民サービスを行ったり、情報公開を行うことは国民の当然の権利であり、日頃はあまりそのことについて深く考えることがないかもしれません。しかし、中国の方々が自国で直面されている現状を聞くにつれ、情報公開が国民・市民の生活を良くする根本にあることを改めて考えさせられました。

国民・市民の声がすくい上げ、皆が幸せに暮らしてゆける社会を作っていくことは、歴史や文化、宗教、政治体制の違いに関係なく万国共通の課題だと思います。

日本においても、こうした国民・市民の権利がただ漫然と存在しているのではありません。国や自治体に対して国民・市民の声を絶えず伝え、企業とも協力しながら問題を解決していくことが求められています。

中国をはじめ諸外国の人たちに日本の公害の経験を伝えることは、日本自らの経験を省み、それを継承・発展させることにつながっていると、今回の研修を通じて考えさせられました。

(藤井)

本事業は環境省委託平成25年度大気汚染経験等情報発信事業の一環です。

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中国環境NPO研修1日目@あおぞら財団(1/21)

2014年1月21日、中国の環境NPOの方々の研修を受け入れました。

初日の今日は、あおぞら財団で公害患者さんのお話と西淀川公害訴訟と公害反対運動のお話を聞きました。参加者は6名と通訳2名でした。

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和田美頭子さんは、香川県高松市にお生まれになり、その後大阪へ出て来られました。第二次世界大戦のときに一度故郷へ帰られましたが、1948年に結婚のため再び大阪へ出て来られました。

戦後間もない大阪・西淀川は、空も川の水もきれいだったそうです。それが、復興が進み、産業発展を始めた60年代からは、空は黒く、外を歩けば顔がススで汚れ、干していた洗濯物も真っ黒になり、「公害病」「公害患者」という言葉が広まったそうです。

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和田さんご自身は、75年頃からせきが出始め、公害病の検査を勧められましたが、「公害病」と呼ばれることへの抵抗から当初は拒否されていました。その後、77年2月に公害病3級に認定され、患者会へ入会、78年からの訴訟に加わられました。

訴訟に加わるとき、真っ先に金銭面での不安がよぎったそうです。しかし、役員さんたちの「裁判に負けた時は命を投げ出したらいい」という鬼気迫る熱意に心を打たれ、参加を決心されたそうです。

住民の力で環境を良くする運動が大事だという点を和田さんは繰り返し強調されました。

また、和田さんは最近、来日した方応君さんの活動を撮影した中国の水質汚濁に関するドキュメンタリーをご覧になったそうで、「どこの国の人にも、特に子どもたちに苦しみを味わってほしくない!」「なぜ中国政府は日本の公害の経験に学んで対策をとってくれなかったのか!」と涙ながらに感想をおっしゃっている姿が強く印象に残りました。

続いて、患者会の森脇君雄会長と上田敏幸事務局長から、西淀川公害訴訟と公害反対運動の展開についてお話していだきました。

上田さんからは、公害は健康・生活・社会的関係などあらゆるものを破壊するということ、裁判を闘う上で汚染源を特定し、国や企業の責任を証明することが一番苦労したというお話がありました。

この点について、森脇さんから西淀川公害訴訟での疫学調査に関する苦労をお話しいただきました。

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この公害の実態調査という点は、中国の方々が大変興味を持たれました。中国でも工場周辺の住民らの手で公害の実態調査が行われる事例があるそうですが、それがメディアで報道されず、地方行政機関が情報を隠したりすることが多いとのことです。

公害の防止、公害反対運動を行う上で、情報公開が持つ大切さを改めて感じました。森脇さん、上田さんからは、情報が公開されなかったり、隠されたりするのは日本でも同様に起こり得ることであり、市民の健康・命を大切にするルールづくりを行政に求めていくことがとても大切だとのお話がありました。

また、国や地方自治体とNPOとの関係、NPOにできることに関しても質問が出ました。ここでは、国や地方自治体と良好な関係が築けるまで粘り強く話し合いを続け、住民の声をすくい上げるルール作りを求めていくことが大切であること、NPOとしての自主的活動の中で課題を見つけ、それを国や地方自治体に提言していくことが大切であることとの意見が出ました。

国や地方自治体と「緊張感ある良好な関係」を保ちつつ、環境保全・公害防止のために共同で取り組んでいくことが大切であり、そのための日中間での草の根レベルでの経験交流が今まさに求められていると改めて考えさせられました。

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その後、緑陰道路や歌島橋交差点に出て、西淀川の環境再生への取り組み、現在の自動車排ガスの問題について説明をしました。参加者の皆さんは、大型トラックが行き交う様子を興味深く写真におさめておられました。

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また、エコミューズで資料の収集・整理・保存・公開に関する説明をしました。裁判資料をはじめ、公害や公害反対運動に関する資料を保全し、後世に伝えるという点も、日本から学ぶ点が多いという意見が寄せられました。

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深刻な公害とそれを克服するための取り組みを経験した日本には、今まさに公害問題が深刻化している中国をはじめとする国や地域にその経験を伝えるという役割があります。

ただし、日本も決して公害を完全に克服したわけではなく、まだまだ克服すべき課題は多くあります。最も大切なのは、公害や環境に関する現状認識をしっかりと持ち、環境悪化を食い止める取り組みや運動を続けていくことだろうと思います。

中国の方々との交流を通じてそのことを強く感じました。

(藤井)

本事業は環境省委託平成25年度大気汚染経験等情報発信事業の一環です。

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2/2 あおぞらイコバ大和田でみせを開催します

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おかげさまで定員になりました。

ありがとうございます!

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2/2日曜日に、西淀川区でイスラム文化を目と耳と口で体験できるイベントを開催します。

イスラム教、イスラム文化は普段なかなか馴染みがないのですが、2010年に大和田に大阪マスジド(モスク)が出来て以来、界隈はイスラム教の方々が集う場所になっています。

マスジドの方やレストランの方のお話を聞きながら、ハラールレストランのランチバイキングを楽しみながら異文化交流してみませんか。

食事のあとにはマスジド(モスク)の見学も予定しています。

お子様連れでの参加も歓迎いたします。
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日 時:2014年2月2日(日) 12:00~14:00

場 所:sitara halal restaurant(シタラハラールレストラン)

大阪市西淀川区大和田4-12-31

定 員:20名 要予約

参加費:1,500円(食事代込・当日徴収)

申 込:あおぞら財団までご連絡下さい

〒555-0013 大阪市西淀川区千舟1-1-1あおぞらビル4階

TEL:06-6475-8885  FAX:06-6478-5885

webmaster@aozora.or.jp

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香港の大学生研修 西淀川公害フィールドワーク(12/27)

本日は香港中文大学の学生、総勢20名が
西淀川公害フィールドワークにお越しになりました。

賑やかでとても活気のある若者たちです。

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まずは西淀川公害裁判についてのビデオ鑑賞。
英語と中国語の字幕つき。
資料を交えながら解説を。
うなずきながら熱心に聞き入る学生さんたち。

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そして、公害患者さん、平田さんと上田さんのお話。
実際持ち歩いてる吸入器や、気管支の模型も見てもらいました。

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その後、実際に西淀川のまちを歩いていろいろ体感してもらおう、
とのことでしたが
とても寒く今にも雪が降り出しそうな曇天・・・。

なので急遽予定を変更して
歌島橋交差点近辺と大野川緑陰道路で写真やクイズを交え、解説を。

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そしてあおぞら財団にもどり、西淀川・公害と環境資料館エコミューズを見学。
資料館が満員になりました。
日本語の資料ばかりなので、当時の西淀川の写真を見てもらいました。

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最後は
グループに分かれ、
「今日西淀川の公害について学んだことを香港に帰ってからどのように活かせるか」のディスカッションをしてまとめてもらいました。

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発表してもらった意見をご紹介します。

・なぜ香港では署名などの市民活動が実を結ばないのか考えたとき、中国政府の影響や、日々の生活が大変なのでそこまで手が回らない現状がある。

・大学生などが政府と積極的に交渉していくべきだ。

・香港では“環境保全”という授業が大学であるが、多くはない。小学生などもっと早い時期からの教育が必要ではないか。

・香港には工場が少ないので煤煙の問題はないが、隣の広州にはたくさん工場がある。

・自動車の排気ガス問題は深刻なので、個人の自動車を電気自動車に変えていけたらいい。キャンペーンやアピールをして、電気自動車のコスプレをしてパレードをしたい。

・香港でも自然がとても少なくなってきたので、自然を守る努力をする。

質疑応答もとても活発で
みなさん積極的に参加してくれたのが印象的でした。
日本語、英語、中国語が飛び交うフィールドワークでした。

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龍谷大学政策学部研修受け入れ(11/15、12/13)

2013年11月15日(金)と12月13日(金)と二回にわたって、龍谷大学の清水万由子ゼミの皆さんがエコミューズに来てくれました。

1回目は、患者会の40周年誌を見て、疑問に思った事に答えるというもの。

2回目は、そこから調べてみたい疑問を深めるために、資料室の資料を読むというもの。

「資料を読んでも、ストレートな答えはないかもしれない。それをつなぎ合わせて考えるのよ。」と指導する清水先生。

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真剣に資料を探しています。

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真剣に資料を読み込んでいます。

最後は、資料を読んでわかった事を共有しました。

「企業が悪いだけではない事も見えてきて、誰が悪者かわからなくなった」

なんてコメントも飛び出してきました。

事実は、混沌としていて、簡単にまとめた書籍のようなものではないことが理解してもらえたようでうれしかったです。

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大阪経済大学フィールドワーク(11/22)

2013年11月22日(金)

大阪経済大学の柏原誠先生の「経済学部基礎演習Ⅱ」の授業の一環として、1回生の学生さん5名が来られ、フィールドワークを行いました。テーマは、「西淀川の良いところと課題を見つける」。
西淀川のまちは学生さんたちの目にはどのように映るのでしょうか。

西淀川・公害と環境資料館に集合し、自己紹介をしてから今日の流れを確認。
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西淀川の公害と裁判の歴史を知るビデオ映像を観た後、公害患者さんのお話を聞きました。永野千代子さんと、事務局長の上田敏幸さんに来て頂きました。

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みなさん熱心にメモをとりながら、お話に聞き入っていました。実際に体験してこられた語り部さんのお話は、胸に迫ります。
「若い世代に語り継いでいくことが私の仕事」として活動されている語り部さんのお話しぶりに触れ、学生さんからも、西淀川の当時の様子や生活のこと、地域の産業についてなど、たくさん質問が出ていました。

その後、まちにフィールドワークへ。いいお天気の中、自転車に乗ってめぐりました。

まずは、デイサービスセンターあおぞら苑へ。
利用者さんにインタビューを行いました。生まれた場所や、西淀川にいつから住んでおられるか、西淀川の好きなところ・困ったところ/嫌いなところをそれぞれ聞き取り。
最初は、インタビューシートを見ながら緊張した面持ちで聞いていた学生さんたちも、だんだんお話に夢中になっていました。
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戦時中の体験や西淀川で仕事をしてこられたお話など、いきいきと語られる利用者さんたちと、ニコニコ耳を傾けている学生さんたちの表情が印象的でした。

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「もっと早く来たらよかったのに~!」と、利用者さんも名残惜しそうでしたが、お別れのご挨拶をして、次は公害医療の原点である千北診療所へ。

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それから、出来島小学校へ。大気汚染の原因となる物質の測定器が設置されている様子を見ました。

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小学校に面している国道43号線の様子も観察。「トラックが多い」「道路のすぐ傍に集合住宅がある」など、率直な感想がたくさん出てきました。
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空気の臭い、交通量の多さ、騒音…など、眼で耳で鼻で、体いっぱいに感じたようです。

西淀川高校前では、NO2(主な大気汚染の原因になっている物質)測定カプセルの説明も聞きました。
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その後、学生さんたちの「行きたい!」という声もあり、矢倉海岸へ行くことに。
夕日に向かって走る!絵になりますね~。
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水鳥がたくさんやってくる生物多様性豊かな海岸の様子に、故郷の干潟のことを思い出し、語り始める学生さんも。西淀川のまち歩きを通して、自分の育ったまちのことを思えるなんて、すてきですね。
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夕日をバックに、記念撮影。(お顔が見えないですが。。。)

美しい風景を味わった後、工場排水による汚染で埋め立てられ今は市民の憩いの場になっている大野川緑陰道路を通って、あおぞら財団へ戻りました。

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最後に、みんなで西淀川の良いところと課題を出し合い、感想をシェアしました。
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「川がきれいだった」「人が親切」「工業が発展している」
「トラックや車の交通量が多い」「呼吸がしにくい」
他にも、「走ってる車のナンバーは他府県のものが多かった」「公害の面だけでなく、自然豊かなところをアピールしていったらいいのでは」といった感想もありました。

みなさん1回生とは思えないほど、いろいろな気づきやアイデアも提示してくださり、とてもたのもしかったです。
大学に戻ってからは、今日のフィールドワークをふまえて、自分の住むまちのことをレポートにまとめるそうです。
これからのそれぞれのフィールドでの活躍が楽しみな学生さんたちでした。またぜひ西淀川に遊びにきてくださいね!

(吉田)

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「わくわく広げよう公害資料館の“わ”―公害資料館連携フォーラムin新潟」開催!(12/7~8)

12月7日(土)~8日(日)、新潟市万代市民会館で「わくわく広げよう公害資料館の“わ”―公害資料館連携フォーラムin新潟」が開催されました!

全国の公害資料館で「公害資料館ネットワーク」を組織し、あおぞら財団が事務局を務めました。
全国の公害資料館が一同に会して議論する初めての催しです。

7日午前には、全国13団体の公害資料所蔵機関の関係者が集まり、会議を行いました。
それぞれ自館の紹介をした後、事務局からメーリングリストやホームページを通じた情報交換・発信、事務局機能など、今後の連携事業の推進とネットワークの拡大・強化に向けた提案がなされました。

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その後、3~4人の小グループに分かれて今後の取り組みにあたっての課題や展望について話し合い、その結果を全体で共有しました。

そこでは、民間機関と行政機関の立場の違いや、研究者や一般市民などネットワーク外のニーズなども考慮しつつ、今後各資料館の交流や情報交換を積極的に進めていく必要があるとの意見が出されました。

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最後に、各資料館が知恵を出し合い公害という負の遺産を後世に伝え、何よりもこのネットワーク事業が患者さんたちの支援につながっていくように活動を継続していくという点で合意しました。

参加者からは、近接地域の方とも初めて顔を合わすことができ、全国各地の取り組みも知ることができてとてもよかった。自館の運営・活動に活かせることを学ぶことができた。などの感想が出されました。
全国の公害資料館関係者の「顔の見える関係」を作る大きな一歩となった有意義な会議となりました。

午後からは、基調講演として染川香澄さんが「学び続けるきっかけとなる展示―ハンズ・オンとマインズ・オン」と題してご報告されました。

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博物館施設の展示は、一方通行のものではなく、利用者とのコミュニケーションを図る手段であること。そのためには、ハンズ・オン(体験型・ふれあい型展示)を通じて、マインズ・オン(利用者の心を動かす展示)していく必要があることが述べられました。
ご自身が携われた各地の展示など具体的な事例が数多く示され、学び続けるきっかけとなる展示のあり方を提起されました。

染川さんのご講演は、公害という負の遺産と地域再生の取り組み、環境と人間の関わり合いなどを利用者に対していかに実感を伴って伝えていくかという、公害資料館展示の課題を考える上で大変参考になるものでした。染川さんからは、患者さんの痛みや辛さを実感するための取っ掛かりとなる体験型の展示の有効性が提案されました。

その後、7日・8日両日にわたり各分科会に分かれ、ゲストを招いた報告と意見交流が行われました。
各分科会は以下の通りです。

分科会1「参加型展示のあり方を考える」
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分科会2「公害発生地における地域再生について」「今日の日本における地域再生について」
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分科会3「公害資料の収集・保存・整理の現状と課題」「公害資料を活用した公害・環境教育にむけて」
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分科会4「CSRと公害教育」
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分科会5「公害資料館の運営マネジメント」
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※各分科会の詳細や議論の内容については、追って取りまとめたいと思います。

8日午後には、全体会が行われ、各分科会のまとめが報告されました。
事務局からは、7日の関係者会議での議論とまとめが報告され、今後も公害資料館の連携事業を進め、フォーラムも継続的に開催していきたい旨が述べられました。

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最後に、髙木勲寛さん(イタイイタイ病対策協議会会長)が「2日間互いに顔を合わせ議論し学んだことを、明日からそれぞれの活動に活かしていこう」とあいさつされ、フォーラムは閉会しました。

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両日を通じて、全国各地から94名という多くの参加があり、公害を学び伝えていくことへの関心の高さを改めて感じることができた催しとなりました。
当日は、多くの報道関係の方も取材に来られ、以下のように記事になっています。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0702A_V21C13A1CR8000/

会場には展示コーナーが設けられ、各団体の取り組みがパネルで紹介されました。

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また、7日夜には交流会が開かれ、懇親を深めました。

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最後になりましたが、公害資料館ネットワークのみなさま、共催・後援いただいた各団体のみなさま、ご講演・ご報告いただいたみなさま、そしてご参加いただいたみなさまに厚くお礼申し上げます。

(藤井)

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新潟県立環境と人間のふれあい館~新潟水俣病資料館~を見学しました!(12/6)

12月7日(土)~8日(日)、新潟市で「わくわく広げよう公害資料館の“わ”―公害資料館連携フォーラムin新潟」が開催されました。

全国の公害資料館が一同に会する初めての催しです!
公害資料館ネットワークを主催とし、あおぞら財団も事務局として参加しました。

それに先立ち、6日(金)に希望者で新潟県立環境と人間のふれあい館~新潟水俣病資料館~の見学を行いました。
参加者は12名でした。

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まず、塚田眞弘館長よりご挨拶をいただき、新潟水俣病のあらましを紹介したビデオと、初期の水俣病報道をめぐるドキュメンタリー映像を鑑賞しました。
館長からは、公害発生初期に「伝染病」「タタリ」などと報道されたことが、その後の公害病患者さんたちへの差別・偏見につながったとのお話がありました。

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続いて、語り部の近四喜男(ちか・よきお)さんのお話を聞きました。
近さんは、新潟水俣病の発生地・阿賀野川沿いの村で1930年、漁師の家にお生まれになりました。お父さんは劇症型の患者で提訴10日前にお亡くなりになりました。また長兄の喜代一さんは第一次訴訟の原告団長を務められましたが、係争中にお亡くなりになられました。

1996年、新潟水俣病第二次訴訟の和解に接して、「長い裁判で患者が疲弊したタイミングを図って政治解決を持ち出すような行政や企業のやり方に憤りを感じ、公害をなくす活動に携わろう!」と決意されたそうです。その後、被害者の会に入会され、資料館の語り部にもなられました。

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近さんが生まれ育った戦中~戦後の阿賀野川は、流域の人々に「生活の恵み」を与えてくれる存在でした。川では魚介類が豊富に採れ、炊事用の水をくみ、洗濯も川で行っていたそうです。また、子どもたちの遊び場でもあり、子どもたちはそこで自然の豊かさと厳しさを身に付けました。

阿賀野川流域で公害病が発生する中、地元漁師組合では生活補償を求めて連日会議が開かれ、村でも生活や仕事、結婚など公害がもたらす影響に不安が広がったそうです。
近さんご自身も、足のしびれなどの症状が出ていましたが、「水俣病になりたくない」という思いから当初は検査を受けられませんでした。しかし、お父さんやお兄さんの死を目の当たりにし、検査を受けることにしたのですが、ご家族9人の中で唯一認定されませんでした。しかし、現在でも頭痛や耳鳴り、手足のしびれや冷えに悩まれているそうです。

最後に、近さんから参加者に向けてメッセージが送られました。
・公害をなくし、自然を守り、自然とともに生きていかなければならない。そのためにも負の遺産から学んでほしい。
・地球環境保護という広い視野で考えてほしい
・周囲の環境に目を向け、公害について学び、学んだことを行動に移してほしい

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その後、塚田館長の案内で展示を見学しました。
新潟水俣病の原因や人体への影響、発生から公訴・解決に至る経過など、詳細なデータや写真が展示されていました。
小学生の受け入れなどに対応するため、子ども向けのパネルやアニメ映像を作成するなど、利用者にとってわかりやすい展示にも取り組まれています。

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ご自身の経験をもとにした近さんのお話からは、豊かな自然に恵まれたふるさとが公害によって激変していった様子や新潟水俣病が阿賀野川流域の人々の生活、健康に与えた影響がリアルに伝わってきました。
ふるさとに起こった出来事を後世に語り継ぎ、自然とともに生きることの大切さを繰り返し強調される近さんのお姿が深く印象に残りました。

(藤井)

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阪南大学 西淀川地域再生フィールドワーク(11/22)

2013年11月22日(金)

本日は阪南大学経済学部大野智彦先生ゼミの学生さん4名と

西淀川地域再生フィールドワークを行いました。

出来島駅からまず向かったのは43号線沿いにある茶色い建屋。

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これはなんでしょう?との問いにぐるぐる回ってみて考えるみなさん・・・。

出来島にある国交省の常時観測局です。

ここでPM2.5のデータを観測しています。

次は出来島小学校前へ。

小学校からにょきっと煙突が出ていて、ここで光触媒の測定が行われています。

43号線は特にトラックの通行量がとても多いのでマイクを使わないとなかなか聞き取れないくらいの騒音です。

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2011年には環境基準を上回る量のPM2.5が検出されている場所。

中国からはもとより、国内での発生源を考えなければいけませんね。

神埼川の方に向かい出来島大橋の上にのぼります。

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川の水面よりも低いところに住宅地が。

地盤沈下の様子が見てとれます。

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次はこちらへ。

お洒落なカフェのような外観ですが、ここはあおぞら苑というデイサービスセンター。

地域の方に利用されてますが、公害患者さんも2割ほどいらっしゃいます。

ここで、利用者さんから聞き取りをしました。

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昔の大阪や西淀川、今と昔のこどもをとりまく環境など

いろんなお話を伺えてとても勉強になる時間でした。

そのあとは大野川緑陰道路を歩きあおぞら財団へ。

途中、昔の大野川の写真を見て歴然とした違いに驚愕。

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紆余曲折を経て農業用水だった川が工場用の資材を運搬する川になり、埋め立てられ

今は西淀川区民の憩いの場になってます。

それが両脇にいまも工場が残ってるゆえんなのですね。

財団にて、今日のまとめをしたのち、

公害患者さんのお話を聞きました。

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司法修習生、公害環境問題の現場を歩く(10/29)

日 時=2013年10月29日(火)10:00~17:00 参加者=司法修習生12人、引率弁護士2人 の西淀川フィールドワークの受入を行いました。

午前中は村松昭夫弁護士の講義『公害環境問題への関わり方~西淀川訴訟を中心として』を受けてから、午後は西淀川公害の現場を歩くという豪華コースです。

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阪神出来島駅で集合しました。

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出来島小学校前で43号線の公害対策の説明を受けました。

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千北診療所です。

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あおぞら苑(ディサービス施設) 施設長の辰巳致さんに 設立の過程、現状の様子を説明いただきました。

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大野川緑陰道路で以前の大野川の説明を受けました。

その後、あおぞら財団に戻ってきて「西淀川公害」のビデオ視聴、あおぞら財団活動の紹介、公害患者の和田美頭子さんのお話、森脇君雄患者会会長のお話と進みました。

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和田美頭子さんからは、患者会の運動に係るきっかけや、裁判の原告になった経緯の話がありました。

森脇さんからは、裁判闘争の苦労や被告との和解に至る、ギリギリの決断に至った局面なども話されました。公害反対運動を進めていく上で、「街づくり」の提起が世論を大きく動かし、被告企業をも納得させる契機になったとのお話がありました。参加者の質問に答え、西淀川裁判で原告が勝利できた経過を振り返りました。

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最後に、参加者全員が感想を述べました。その一部を紹介します。

・患者さんの話を聞いて、人間として、ここまで立ち直ってきていることに感 動した。現状を知っていると知らないではまったく違うと思う。

・西淀川のことをあまり知らなかった。昔の空を知って衝撃を受けた。裁判が 終わってずいぶん経つけれど、まだ公害の問題は解決してないと思った。

・和田さんの話を聞いて被害を受けている人の頑張りが重要と感じた。弁護士としてそういう人たちの力になりたい。

・西淀川区を歩きPM2.5の話を聞いて、公害が身近なのだと感じた。病気にかかった時のつらさや、それでも心を強く持って地域再生のために頑張ったことを聞いてたいへん勉強になった。人々がよりよい環境で生きられるように法律をつかって頑張っていきたい。

・写真で見た昔の空に衝撃を受けた。今の空を取り戻すための苦労を思うと、私が想像できない努力が有ったんだろうなぁと思った。裁判資料で読んだが、苦しさの中で運動を支えた患者さんはすごいと思った。弁護士志望なので、困っている人のお役に立てればと思った。

・淀川に汚いイメージがあった。自分もぜんそくだったが、現在は奈良に住んでいる。環境を大事にしたいと思った。

・西淀川の公害については知らなかった。現場に行ったり、話を聞くことをしないと、当時の状況が分からないと思った。法曹になったときに、現場の声を聞くことを大切にしていきたい。

・町を実際に歩いて、事件の生の声を聞いて、イメージ出来たし、すごい事件を成し遂げたのだなと実感した。一人の力ではできなかったけど、団結したことで裁判は勝利できたのだと思った。困っているひととの縁、法律家以外との縁の大切さが分かった。

・父が大阪市役所の職員で、西淀川区の公害にも関わっていた。患者さんはぜんそく発作で呼吸困難になり、家事が出来なくなって、日常生活ができなくなったということを聞けたのは新しかった。弁護士として、困っている人の細部まで聞いて力になれたらと思う。

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