中国の環境活動
china 令和3年度 2022年1月
田祖寧氏(天津市西青区零萌公益発展センター宣伝主任)の環境レポート
―ゼロ・エミッションの実現に向けて―
インタビュー担当:賈毅東
1. 田祖寧氏の紹介
今回の中国環境NGOの活動で私がインタビューしたのは「零萌公益」に所属している田祖寧氏である。田祖寧氏は2014年から湿地と鳥類の保護、大気汚染の防止、ごみの分類とゼロ・エミッションに関する公益活動を始め、今では「零萌公益」の宣伝主任を担当し、政府、企業、学術機構、公衆と社会組織など各領域とのゴミ管理問題におけるコミュニケーションと協力に力を入れ、公衆のごみ問題に対する認知を高め、ゼロ・エミッションの活動を促している。
2.インタビュー内容
(1) 田祖寧氏がゼロ・エミッションの活動を始めたきっかけ
中国の公衆は日本と違いごみを分類する習慣はなく、再生可能ごみと再生不可のごみが混ざって捨てられているため、ごみの再生効率は非常に悪く、近年になってごみの分類を政府が要求し、人々はようやくごみの分類をするようになった。しかし、ごみの分類だけだと環境への負担が減るだけであって、問題を完全に解決したわけではないと田祖寧氏はいう。そのため田祖寧氏はゼロ・エミッションの活動を通し、やさしい環境づくりに貢献し、人々のごみ問題に対する関心を高め、中国の環境問題の悪化を阻止し、美しい地球を後世に残したいという思いから今の活動を始めたのである。
(2) 零萌公益の活動内容
今回の発表テーマであるゼロ・エミッションについて田祖寧氏は次のように述べている。「ゼロ・エミッションについて簡単に説明すると、それはごみを出さないことであり、それが私たちの今の目標である。私たちはごみを出さないことを目標とし、ごみの発生源の予防、そしてごみが生じた場合の管理に力を入れている。私たちは使えるものはなるべく使うようにしてごみの発生を抑え、使えなくなった再生可能の物は回収し循環再生する、いわゆる3R原則:Reduce,Reuse,Recycleに従っている。そしてゼロ・エミッションを目標とし、できるだけゴミを減らしているもう一つの理由、それは2017年国連環境計画が汚染ゼロという目標を提出したからである。」
田祖寧氏と田祖寧氏が所属する団体「零萌公益」は都市コミュニティのごみの分類、業界の交流、公衆への呼びかけ、政策研究、プラスチック問題などの活動を展開している。都市コミュニティのごみ分類の活動については、コミュニティの技能訓練、ゼロ・エミッション訪問、壹起分コミュニティ計画を通じてコミュニティのごみ分類能力を向上させ、都市ごみ分類プロセスを推進しているという。以下はコミュニティの技能訓練、ゼロ・エミッション訪問、壹起分コミュニティ計画について話したいと思う。
・コミュニティの技能訓練
コミュニティの技能訓練の内容は主に創始型社会のコミュニティが行うごみ分類活動をサポートし、全国のごみ分類従事者、コミュニティサービス従事者、政府機関の人員などに向けて都市コミュニティのごみ分類技能訓練を行うことである。
田祖寧氏は「私たちがごみ分類活動のサポートで行っている活動は学校、地域コミュニティでごみの排出量、環境への影響をデータで分かりやすく人々に伝えることでごみ問題への認知度を高め、その上でごみの分類方法、ごみを減らす取り組みを紹介している。」と説明する。「深圳市を例として挙げると、深圳市では毎日平均28500トンのごみが排出され、一人当たり一日約一キロのごみを排出している。28500トンのごみの量は、10メートルのごみ収集車が30kmの距離がある深南道路を埋めるほどの量である。そのうち回収し再生可能ごみの回収使用率は33パーセントである。」とごみの排出量をデータ化することで深圳市のごみの排出量の多さ、そして回収使用率の低さをわかりやすく説明し、「その上で、再生可能ごみの種類、町で見かけるごみ箱の種類、ごみを減らす取り組みについて教えている。」と語った。
コミュニティの技能訓練の写真
・ゼロ・エミッション訪問
ゼロ・エミッション訪問では、ごみの分類プロセスのチェーンの先端と終端の各段階のスタッフを繋げ、政府や社会のコミュニティから公衆までの各団体と交流を深め、最新のごみ分類情報を随時更新、共有し、ごみ分類プロセスのチェーンの体制を日々改善している。
ゼロ・エミッション訪問について、田祖寧氏は「2019年9月、私が所属しているグループ「零废弃联盟¹⁾」は、学生のゼロ・エミッション訪問団に深圳市南山区を訪問させた。」深圳のごみの分類体系は乾燥ごみと濡れごみで分けるのではなく、生活ごみを大きく植物、野菜果物、有害ごみ、生ごみ、プラスチックと紙、台所の生ごみ以外のごみ、使えなくなった布織品、使えなくなった家具、年花年桔²⁾の9種類として分けている。訪問団に深圳のごみ処理体制を詳しく知ってもらうことを目的に、「零废弃联盟」グループは訪問団に先ほど挙げた9種類の深圳のごみ処理場をそれぞれ訪問させたのである。
「その訪問では、「零废弃联盟」グループの活動で深圳の各ごみ処理場を繋げ、学生達にゼロ・エミッション訪問させる機会を設け、学生達にごみ分類への理解を深めさせ、ごみ分類活動、ゼロ・エミッション活動を促している。」と田祖寧氏はいう。
ゼロ・エミッション訪問の写真
・壹起分コミュニティ計画
壹起分コミュニティ計画は都市コミュニティのごみ分類問題に焦点を当て、全国の公益活動を行っている団体を繋げ、公衆にごみ分類活動を促し、ゼロ・エミッションコミュニティを作っている。そしてより多くの公益団体、人々、コミュニティにゼロ・エミッション活動、ごみの分類と減量への参加を目標として活動している。
・「零废弃论坛」
「零废弃论坛」は2013年から始まった活動であり、政府、企業、専門学者、地域コミュニティ、メディアと公衆がごみ問題について話し合えるために設立された。「零废弃论坛」はすでに上海、南京、成都、福州、深圳、佛山、西安、北京で行われており、過去に参加した人数は2000人を超え、2021年で9度目の開催となっている。
2020年、8度目に佛山で開催された「零废弃论坛」では政策の分析解読、都市と農村での活動経験の共有、都市部のごみ管理の取り組み、研究報告の発表など、それぞれのテーマの発表がされていた。田祖寧氏は宣伝主任として自身が所属している団体「零废弃联盟」(China Zero Waste Alliance)と他のごみ問題について活動している活動者がごみ管理及びゼロ・エミッションについて作られた研究報告と出版物について紹介した。
(写真左)発表している田祖寧氏
(写真右)田祖寧氏が発表している内容
(3)「零废弃联盟」(China Zero Waste Alliance)
田祖寧氏が所属しているグループ「零废弃联盟」は加速する中国のごみ問題の解決、そして政府、企業、学者、公衆及び公益活動を行う団体のごみ問題についての交流と協力を促すために2011年12月10日に設立された。
「零废弃联盟」が設立した当初は、以下三つの目標を掲げていた;
1)ごみ管理作業においては展望性があり、具体的であり、社会共通認識を反映できる長期目標を立てる。
2)ごみ分類教育を小中学校の教育システムに取り入れる。
3)ごみ焼却などの処理施設の汚染制御装置と管理が国際先進レベルに達する。
「零废弃联盟」の理念、それは努力を続けることでごみの発生を最大限に抑え、再生可能ごみの再生利用率を最大化し、ごみが環境と健康に対する影響を最小限にすることである。
「2014年までに中国には1万2500軒の星クラスのホテルがあり、星クラスのホテルの客室総数は160万室以上に達している。ホテルの平均入居率は65パーセントであり、各客室に2セットの使い捨て洗面用品を提供する計算からすると、毎日200万セットの使い捨て洗面用品を消費しなければならない。ビジネスホテルの量も含めて考えると、使い捨て製品の消費量はさらなる大きな数値を出すことになる。」
「零废弃联盟」は上記のことから、2017年11月16日に使い捨て用品に対し以下のことを提唱した。
1)国家観光局、国家発展改革委員会などの部門は、ホテルの使い捨て用品の無料提供を明確に禁止する全国的な法規を公布しなければならない。
2)すでに奨励法規を公布している省に対し、ホテルの使い捨て用品の無料提供を明確に禁止する法規をさらに公布し、具体的な罰則条項を制定し、厳格に監督管理しなければならない。
3)ホテルはゼロ・エミッションの代替案の提供、ホテルの使い捨て用品の無料提供をやめ、顧客に私物持参を勧めるなど、様々な方法を積極的に試み、ホテルの使い捨て用品の消費を減らすべきである。
4)公衆は環境保護意識を高め、使い捨て用品の使用を減らすべきである。
使い捨て用品に対し、「零废弃联盟」は大きく反対している、ゼロ・エミッションを実現するためには使い捨て用品の使用をなくさなければならないからだ。しかし、使い捨て用品を完全になくすことはできない、そのため使い捨て用品の使用量の削減、使い捨て用品提供者への規制、顧客の環境保護意識を高めることで、使い捨て用品の使用量を最小限にすることができるのである。
田祖寧氏はこのことについて以下のように述べた:
「私たちは2018年からインターネットでの活動を重点的に始め、人々にゼロ・エミッション活動への参加を呼び掛けている。インターネットの力は絶大で、ホームページ、「Weibo³⁾」、「Bilibili⁴⁾」を通じて、総アクセス量は数千万も超え、ゼロ・エミッション活動に参加してくれる人はたくさん増えた。」、「近年店側は政府から使い捨て用品を自ら顧客に提供してはならないという規定もできた、そのため飲食店ではストローや使い捨ての箸の消費量も減っている。また、再生可能資源を使った食器の使用も増えており、プラスチック製のストローとコップはあまり使われなくなった感じがする。私たちの活動によってゼロ・エミッションという目標達成に少しずつ近づいている。」
(4)取り組みとその影響について
田祖寧氏は取り組みについて、「零废弃日」(ゼロ・エミッションデイ)について話されていた。公衆のゼロ・エミッションへの理解を深めるために「零废弃联盟」と「深圳壹基金公益基金会」は2018年に「零废弃日」という日を設立し、「零废弃日」は毎年8月の3回目の土曜日とされている。そして「零废弃日」を設立した目標は以下の通りとなっている。
・ゴミの発生源を減らす
経済の発展とともにごみの排出量は増え、環境汚染と資源エネルギーの消耗を加速している。そのため制度の制約で製品をデザインし直し、消費者の行動改善を通し、使い捨て用品等の生産量と使用量を削減することがゴミの発生源を減らす重要なポイントとなっている。
・ごみ分類プロセスの促進
従来の埋め立て・焼却を主とする混合ごみ処理の考え方に代わり、乾燥ごみと濡れごみの分別、有害ごみの単独処理、そして分類収集、運送、処理体制を建てることがごみ分類プロセスの促進につながる重要な一歩となっている。
・公衆へのごみ分類の理解と行動の改善
ごみの排出量の削減とごみの分類は、公衆の協力と参加がないと実現できない。そのためごみ削減と分類の宣伝と教育体制を建て、公衆のごみ削減と分類を意識させ、行動に移させることが、この目標の達成につながる。
ゼロ・エミッションデイの目標の実現に向けて、田祖寧氏は公衆へごみ分類、そしてゼロ・エミッションを宣伝する際に、家を出るときは水筒、箸、弁当箱、ハンカチ、エコバッグの5つの物を持ち出すように呼び掛けている。一人一人の行動がゼロ・エミッションにつながり、ごみの発生を減らし、環境を改善することができるからである。また、活動を通してここ数年の公衆、町の変化について田祖寧氏は「ゼロ・エミッションに取り組む人が周りに増え始め、町でも物を持参して使う人が多く見かけるようになった。近年では繰り返し使用できるおしゃれなデザインの日用製品が増え、需要そして購入している人も増えている。」と言っていた。
今年開催される北京オリンピックでも、田祖寧氏が属しているグループ「零废弃联盟」はゼロ・エミッションの宣伝と活動をしていた。ほかの団体と協力し、メディアにゼロ・エミッションを発信し、選手達にも環境にやさしい素材で作られた製品の紹介をしていたという。「中国国内に限らず、世界中の人に環境を守ってほしい。そしてより綺麗な地球を作りたい。」と田祖寧氏はいう。
3.感想 (インタビュー担当:賈毅東)
田祖寧氏の報告を通して、日本で生活している私は共感できる所が多かった。私たちは地球温暖化だけでなく、より身近な環境問題に注目するべきだと思った。私が飲食店でアルバイトしている時、お客様に「袋いらないです。」、「箸いらないです。」といわれることが多々ある。今やさしい環境を作るために日常生活でゼロ・エミッション活動をしている日本の方々を改めて見ると、宣伝の効果は絶大であることに実感した。中国の人口とSNSの影響力を考えると、今、人口大国の中国で活動されている田祖寧氏とそのグループが行っているゼロ・エミッション宣伝の効果は計り知れない。そして今後中国の環境問題の改善、解決に大きな影響を与えるだろう。「環境問題の解決は上の人の仕事である」という固定概念を破り、私たち一般人でも環境問題に取り組むことができる、取り組むべきであると、今回の田祖寧氏の報告を通して深く思った。田祖寧氏が活動に取り込む熱い姿勢に私は感心した。これからはゼロ・エミッションを意識し、環境保護に貢献していきたいと思う。
[注]
1)「零萌公益」と「零废弃联盟」(China Zero Waste Alliance)は同一グループ
2)中国の元旦に飾りとして使われる金柑の盆栽
3)中国のソーシャルメディアとして親しまれているサービス。中国最大のSNSとも言われており、8億人以上のユーザーを抱え、中国の情報収集においては欠かせないツールとなっている。
ウェイボー(Weibo)とは?見るだけなら安全?中国の巨大SNSを解説 最終更新2021/08/13
https://012cloud.jp/article/about-weibo(参照 2022/2/25)
4)Bilibiliは中華人民共和国の動画共有サイトおよびビデオ、生配信、ゲーム、写真、ブログ、漫画などのエンターテインメントコンテンツ企業であり、Bilibili動画を指すことが多い。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』最終更新 2022/2/24
https://ja.wikipedia.org/wiki/Bilibili (参照 2022/2/25)
劉文化氏(西安市未央区環境保護ボランティア協会)の環境レポート
―愛を気候変動教育の主旋律に―
インタビュー担当:刀禰千春
1.劉文化氏(西安市未央区環境保護ボランティア協会)の紹介
西安市未央区環境保護ボランティア協会栄誉会長の劉文化氏は、今回の交流会において「愛を気候変動教育行動の主旋律に」をテーマに活動報告をした。ここでは、劉氏の活動報告の中心であった、「ゴミを使って作品を作ろう」環境教育プロジェクトについて紹介する。
[劉文化:1986年西安美術学院を卒業後、西安市蓮湖区の少年宮(子どもたちの課外活動用の施設)にて美術教師を務める。現在は西安市未央区環境保護ボランティア協会に勤めており、2019年5月には「美しい中国、私は行動者“2019年”最も優れた整体環境保護ボランティア100名」に選出された。
*参考:百度百科、「刘文化」
(https://baike.baidu.com/item/刘文化/3613005)2022/03/03]
2.インタビュー内容
(1)「ゴミを使って作品を作ろう」環境教育プロジェクトについて
「ゴミを使って作品を作ろう」環境教育プロジェクトは、2019年に本格的な準備が始まり、2020年から2021年の5月1日まで実施され、これまでに160回以上の授業が行われてきた。劉氏はプロジェクトを企画したきっかけについて、「ゴミの分別は複雑で面倒で、ただ捨ててしまうことは簡単。だから、人々が自ら進んでゴミの分別をするように教育することが必要です。政府は政策に基づく行政の宣伝や法整備をすることで、人々にゴミの分別を教育している。しかし、NGOとしては、より人々がゴミの分別を身近に感じ、自ら進んで分別できるようになるための教育をすることが重要だと考え、それを促す環境教育の必要性を感じていました」と話す。
同プロジェクトは、15歳以下の児童とその保護者を対象に実施される授業形式の環境教育活動である。内容としては、まず学校に生徒、先生、父母・保護者たちが集まり、ゴミの問題について話し合う。「毎日の生活の中で発生するゴミは最終的にどこへ行くのか?ゴミはどのようなリスクを孕んでいるのか?ゴミはどのように分類されるのか?なぜそのように分類されるのか?ゴミと地球温暖化の関係は?など、話し合いの中で参加者が『生活方式と環境保護』の関係について考えるのを手助けし、一人ひとりが環境汚染の加害者であり、被害者でもある、そして環境汚染の解決者であるべきだということを理解してもらう」のだという。
さらに、メディア関係者も交え、家から持ち寄ったゴミついて話し合う。劉氏はこの話し合いについて、「これらのゴミはどうして出たものか?これらのゴミで何が作れるか?どのように処理すれば人にも環境にも優しいだろうか?どのような考え方で人の意識を変える影響を与えられるだろうか?などについて話し合う。そして、ゴミの分別の宣伝活動のために、生徒・保護者・先生たちをそれぞれゴミ分別ボランティアのチームに振り分け、自分がゴミの分別に参加するだけでなく、ボランティアの立場として隣人にゴミの分別を進められるようにする」と説明する。このように話し合うことで、子供たちの主体的な参加を促すのである。
[劉氏の手助けのもと、話し合いをする参加者たち。みんな真剣な表情をしている]
[それぞれ家から持ち寄ったゴミは、どんな作品に生まれ変わることができるだろうか?楽しそうに材料を見せる子どもたち]
[“陳西省白鳥芸術団 ゴミ分別学生ボランティアチーム”と書かれた旗を持つ子どもたち。プロジェクトの参加者としてだけではなく、ボランティアチームの一員として、自らゴミの分別を広めていく]
そして、家庭から持ち寄った「ゴミ」を材料として、子どもたちは思い思いの作品を作る。まず、持ち寄ったゴミの材質・特徴・形・色などを分析し、各々の好みや連想されること、子どもたち自身の創意、家庭に必要なものなどの観点に基づいて、家庭に合う作品を設計・制作する。劉氏は、「先生や保護者たちの手を借りながら、とても美しい作品が小さな子どもたちの手の中にできあがるのです。子どもたちは、ペットボトルで作ったおもちゃの人形や、酒瓶で作ったお姫様、さまざまなゴミを組み合わせて作った絵のインテリア、紙箱で作った車、食品パッケージで作ったギター、コーラの瓶で作ったお城などを作る。子どもたちとその保護者は家でもたくさんの作品を作ってくれます。それぞれの家庭に「エコ作品コーナー」を作れるほどに。さらに、廃棄物を使った衣装道具を身につけて劇に取り組んだ子どもたちもいました」と話す。子どもたちが家庭のゴミから創り出すその過程を、劉氏は「『ゴミを使った美しいもの』を作る活動である」と表現する。
[瓶や缶で作られたカラフルな人形たち。材料の形や特徴に合わせて考えられたデザインで、個性豊かな、世界に一つだけの作品になっている]
[さまざまなゴミを使って絵を作る子どもたち。使い終わったペンや壊れたハサミ、ボタンをはじめ、お菓子の箱やヒトデの死骸、ティーパックの個装パッケージまで無駄にせず、作品に生まれ変わらせることができる]
[子どもたちが主体となって、楽しそうに作品を作る様子。大人たちは子どもたちを時に見守り、時に手助けをし、親子で環境問題に取り組む]
[家でもゴミを使って工作をしている。楽しい学びは、授業の中だけで終わるのではなく、家に帰ってからも自分から行動することにつながる。子どもの経験が家庭に持ち込まれ、家族の意識も変えて行く]
[廃棄物を材料にして作った衣装や道具を使って劇をする子どもたち。王冠も杖も、馬の着ぐるみも全部家庭ゴミから生み出されたものだ]
作品を作り終えた後は、データをもとにさまざまなゴミが自然環境の中で分解される速度やゴミが環境に与えるリスクなどについて、子どもたちと保護者が一緒に考える。劉氏は、「参加者たちはデータを見ていく中で、ゴミが環境を壊したり、生き物の健康に害を与えたりするなどの問題がいかに重大であるか実感することとなります。そして、ゴミが生命と環境に与える影響を実感することで、エコな生活方式を選ぶようになるのです」と話す。
今回の交流会では、授業で扱った教材の例としてゴミとなる紙箱のデータ分析問題が紹介された。「中国経済ネット」が統計をとったデータによると、インターネットショッピングの発展に伴って配達物の量も激増したといい、2019年の全国の配送業務は630件を超え、暫定的な計算をすると全国で毎年消耗される紙類の廃棄物は900万トンにものぼるという。
そこで、問題1:一人当たりの配達件数と発生する紙類の廃棄物の重量を計算せよ。
ここでは国の総人口 をおよそ14億とする。
問題2:1トンの古紙が回収されるごとに、0.8トンの紙を作ることができ、直径20cmの木17本の伐採を防ぐことができます。もし、毎年配送業において発生する紙類の廃棄物を全て回収できるとすれば、何トンの紙を作ることができ、何本の気の伐採を防ぐことができるか?
解答は以下の通りである。
問題1:一人当たりの配達件数は、630億を14億で割って、45件。紙類の廃棄物は、900万トンを14億で割って、0.0064トン=6.4キログラム。
問題2:900万トンに0.8をかけて、720万トンの紙を作ることができ、900万トンに17をかけて、1億5300万本の木の伐採を防ぐことができる。
このように、「ゴミを使って作品を作ろう」環境教育プロジェクトの授業は感性と理性の双方からアプローチをかけ、子どもたちのゴミ問題に対する知識を深め、関心を高めようとしている。同プロジェクトの具体的な目的としては、第一にゴミについての知識を子どもたちに伝え、ゴミ問題に関心を持たせることだという。例えば、ゴミが人や自然環境、動物、海、空気などに対してどのようなリスクをもたらすのか。どのように処理され、土壌中ではどのくらいの時間をかけて分解されるのか。ゴミを再利用することの価値などについて子どもたちに伝える。そうすることで、地球の環境に対する関心を高め、ゴミ問題を「取るに足らない小さなこと」だと思わないよう教育することができる。劉氏は、「『工作』という遊びを通して、みんなが地球の子どもであり、みんなが自分の行動に責任を負っているということに気づいてほしい」と話す。
第二に、子どもたちが芸術の力や自分たちの感受性によって、ゴミの分別への関心を高め、主体的に行動できるように促すためだといい、活動の中で、子どもたちは主体的、自発的にゴミの分別に参加できるようになることが期待されている。一緒に創作活動ができるよう、父母・保護者やメディア、教師も参加するが、あくまでも主体となるのは子どもたちである。また、劉氏は「親子教育にこだわるのは、親が言うのではなく、子どもたちが主体的に動くところを双方に体感してもらうため」と説明した。
活動の中で印象的だった場面について劉氏は、「子どもたちが自分から、主体的に楽しそうに創作活動を行う様子が印象的だった。普通の授業であれば、先生が授業を計画し主導する形で行われるが、この活動では、子どもたちが何をやりたいのか、創りたいのかを考え子どもたちが主導する。われわれはただ手伝うだけ」と話す。さらに、「活動を終えると、子どもたちは自分の家でも主体的にゴミを分別したり、ゴミを使った工作をして誰かにプレゼントしたりするようになる。そして、誇らしげにそれらの行動を起こすようになるのです」と話す。
また、この活動は宣伝にも力を入れている。劉氏がプロジェクトに関するインタビューを受ける様子や、授業で子どもたちが話し合いをしたり、作品を作ったりする様子をメディアで流すことによって、環境教育活動及び環境保護活動を広めている。
[インタビューを受ける劉氏。背景には子どもたちの個性光る作品が飾られている]
[子どもたちの創作活動も紹介された。お揃いのオレンジ色のエプロンをつけて創作活動に励む]
(2)中国のゴミ問題
ここでは、中国のゴミ問題についていま一度簡単に整理しておきたい。上智大学大学院地球環境学研究科准教授の井上直己氏によると、今世紀に入り急速な経済発展を遂げた中国では、それに伴う廃棄物の量の増加が問題となっており、廃棄物の処理体制を整えるため、様々な施策が行われている。中国政府は「五カ年計画」に「循環経済を大きく発展させる」という項目を織り込み、ゴミの分別回収やリサイクル、適正な処理などのシステム構築に取り組んできた。
中国ではプラスチックゴミの排出も問題になっている。2017年7月には、海外から生活から出るプラスチックゴミなどの固体廃棄物の輸入を禁止する制定がなされた。本来はリサイクルする目的で輸入されるプラスチックの廃棄物が、一部は再利用のための資源になるものの、その他はただ燃やされている現状を鑑みてのことである。輸入によって資源を獲得するのではなく、国内でゴミの回収率を引き上げ、国内でのリサイクル体制を整えることが計画されている。
ゴミの分別に関しても、それまでも制度自体はあったものの、実際に有効になされているとは言い難い状況であった。そのため、同年3月に国家発展改革委員会と住宅都市建設部から「生活ゴミ分別制度実施計画」が公表され、北京市や上海市といった直轄市をはじめとした46重点都市において、2020年までに生活ゴミの分別を罰則付で義務化する「強制分別」を実施することとした。これを受けて上海市は2019年に生活ゴミ管理条例を施行し、「強制分別」を実施することとなった。同条例では、生活ゴミを「資源ゴミ」「湿ったゴミ」「乾いたゴミ」「有害ごみ」の4種類に分別し、決められた時間に、決められた場所に出すこととしている。このような、罰則を含む施策は強制力が強く、ゴミの分別を市民に協力させるには有用である。しかしリサイクル資源の回収率は上昇しているが、不満の声が出ているのも現実である。
西安市では「西安市生活ゴミ分別管理方法」が2019年に4月に決議され、9月から施行されている。こちらも4種類に分別し、「資源ゴミ」「有害ゴミ」「台所ゴミ」「その他のゴミ」に分けるとしており、条文の中には、テレビなどのメディアはゴミの分別を市民に呼びかけること、自治体は生活ゴミの分別指導をしっかりと行うことなど教育や宣伝についての記述もある。劉氏らNGOの活動はそれとは別で環境教育活動を行なっているが、西安市の政府もまたゴミの分別について、市民の理解と参加が必要だと考えており、より公的なイメージをもったアプローチでゴミの分別を押し進めようとしているようである。
*参考:IEEI国際環境経済研究所ホームページ、「中国で進むゴミ分別改革とプラスチック規制(第一部)」、井上直己、(https://ieei.or.jp/2020/03/special201705013/)、2022/03/06
IEEI国際環境経済研究所ホームページ、「中国で進むゴミ分別改革とプラスチック規制(第二部)」、井上直己、(https://ieei.or.jp/2020/03/special201705014/)、2022/03/06
中国政府ホームページ、「禁止洋垃圾入境推进固体废物进口管理制度改革实施方案」(2017) 、(http://www.gov.cn/zhengce/content/2017-07/27/content_5213738.htm)、2022/03/06
中国政府ホームページ、「国务院办公厅关于转发国家发展改革委住房城乡建设部生活垃圾分类制度实施方案的通知」 (2017)、(http://www.gov.cn/zhengce/content/2017-03/30/content_5182124.htm)、2022/03/06
北极星固废网、「上海垃圾分类的10个事实」、(https://huanbao.bjx.com.cn/news/20210820/1171312.shtml)、2022/03/06
环卫科技网、「西安市生活垃圾分类管理办法(2019年9月1日起施行)」、(http://www.cn-hw.net/news/201905/03/64112.html)、2022/03/06
(3) 劉文化氏の今後の活動について
劉氏が所属するNGO・西安市未央区環境保護ボランティア協会は2012年に設立され、これまでに30以上のプロジェクトを実施してきた。劉氏は西安市未央区環境保護ボランティア協会の活動について、「科学的な態度とアプローチによってゴミの分別を模索し実践すること。そして、科学・技術・工学・芸術・数学などの創造的な戦略とアプローチを通して、ゴミが自然に与えるリスクと人の健康と発展に与える悪影響を警告し、皆さんにゴミのリスクを知ってもらうと同時に、新たな処理方法や新たなモデルを見せることが、われわれが模索しながら実践している、重要な目標です」と話す。現在は、気候変動や水、土壌などの領域の保護問題に関心を寄せているという。また、今後は環境と災害についての領域にも活動を広げようとしている。
劉氏個人が今後の展望として話すのは、新たなNGO(社団)の設立である。これは、2022年2月15日の「西安市生態デー」に、西安市の1000校の学校が集まって始動した計画で、その目的は「ゴミと大気汚染との関係を調べて学ぶ」環境教育活動の展開である。内容の一つとして、ゴミと気候変化との関係や、ゴミと空気汚染との関係についてネット上で講演会を行い、各人が地球温暖化を止めるための行動を起こせるよう促すというものがある。その他にも、学校で子どもたちに「大気汚染モニタリング」をしてもらい、自分たちで解決策を考えさせるというものも計画されている。具体的な活動内容としては、今年各学校に導入される予定の調査キットを使い、子どもたちはそれを使って大気汚染を測定する。そして、ゴミの処理(リサイクルなど)や焼却などによって、大気にはどのような影響が及ぼされているのか、改善のためには何が必要なのかを子どもたちが主体的に動いて見つけるというもの。子どもたちが環境問題について考えるきっかけは提供するが、あくまでも主体的な学びを促すという劉氏の教育に対するこだわりが見える。
3. 感想(インタビュー担当:刀禰千春)
インタビューの最後に劉文化先生は、「日本の環境保護は素晴らしい」「私は何度も日本を訪れたことがあるが、日本のゴミの分別や処理はなんと入念で正しく行われていることだろう。日本の人々のゴミ分別意識のなんと高いことだろう。われわれは学ぶべきだと思った」と仰った。たしかに、ゴミの種類ごとに有料のゴミ袋が指定されていたり、ゴミのポイ捨てを防ぐため注意喚起のポスターが街のあちこちに貼ってあったりと、国や自治体の施策の面、および全体的・平均的に見れば日本のゴミ分別の意識は高いのかもしれない。しかし実際は、人それぞれゴミに対する意識が違うと思う。分別もせずゴミを捨てる人や、簡単に海にポイ捨てをする人もいる一方で、きっちり分別をする人や積極的にゴミ拾いのボランティアをする人もいる。日本の学校教育の場において、少なくとも私が受けてきた教育の中で、ゴミに関する学びは社会や家庭科の教科書に載っていた分別のマークの勉強と、面倒くさく思いながら社会奉仕活動として行ったゴミ拾いだけだったと記憶している。このような受動的で楽しくない学びは、私の中であまり印象に残らなかった。環境問題は、関心を持つ少数の人が努力することで解決できる問題ではない。地球に住むより多くの人が当事者意識を持ち、行動を起こすことが必要である。学校という全ての人に与えられる教育環境の中で、これからの地球の未来に直結する環境問題、ゴミ処理の問題について主体的に学ぶ機会を設けることの重要性は、私たちが劉文化先生とその活動から学ぶことができるのではないだろうか。(インタビュー担当:刀禰千春)
李国良氏 (黒龍江省宝清県852農場学校 小白樺環境保護部)の環境レポート
—自然を肌で感じさせ、意識を絵に描きこむ—
インタビュー担当:王子常
1.李国良氏(黒龍江省宝清県852農場学校小白樺環境保護部)の紹介
李国良氏は黒龍江省宝清県¹⁾852農場学校の美術教師として長く勤めた教師である。同時にもう一つの身分は、環境保護ボランティアである。2019年、学校の小白樺環境保護サークル(以下:白樺部)を設立した後、李国良氏はより一層熱意を込めて環境教育に専念するが、白樺部が設立される前にも、環境教育に没頭していた。
2004年、李国良氏は自然描き・文化芸術交流の誘いを受け、学生を連れて新潟市に1週間滞在した。李国良氏が指導した湿地がテーマの学生作品は大賞を獲得した。
2007年、李国良氏が指導した学生作品は環境教育活動「鶴の追跡」に選ばれ、アメリカで展示された。その作品は活動宣伝冊子の表紙として使われた。2009年取り組んだ環境保護活動「小環境保護士になろう」は、のべ1800校を超える学生が参加し、校内のみならず地域内でも話題になった。
2.インタビュー内容
(1) 小白樺環境保護サークル
2019年、李国良氏をはじめとする852農場学校の教員たちが白樺部を設立した。白樺部は、学生の自然環境への関心を喚起、社会と自然への責任感や価値観を培い、環境保護知識の蓄えることを趣旨として、環境教育、環境保全活動を積極的に行っている。学校のサークルであると同時に、白樺部は草の根団体(後述)として、ほかの環境NGO・NPOとの連携があり、より良い環境教育を実施するために進んで取り組んでいる。
・校内拠点—学校生態植物園
白樺部の前身といえる学校生態植物園は、2013年に設立された。現在約80種類の植物が育っている。樹木各種あわせて1000本を超える。キャンパスの放棄地であったこの地域は、生物・美術・労働など課程の実践エリアとして、教育機能付きの植物園に新生した。
学生が植えた名前付き(赤い布に)植物の様子
白樺部が正式的に設立される前に、植物園で環境保全活動や環境教育を行った。サークルが創立した今でも、校内の活動拠点として、植物植えや美術活動が行われている。
2021年4月30日、「根が母校に、成長に感激」植木活動を行った。白樺部メンバー、2021年度卒業生、教師及び親と一緒に、360本丁香樹(チョウジノキ)を植えた。同年10月に、植物園で「同じ緑を守ろう、同じ木を植えよう」という植木活動を行った。
教室前の環境保全看板と小樹林
木を植えている学生たちの様子
・気候観測所見学
農業を中心とする黒龍江省は、いつも気候変化に注目している。白樺部は、学生が気候に対する理解を深めるように、関連教育も行っている。2021年4月16日、白樺部の呼びかけに応じて、全校が地方気候観測所に見学を行った。この見学を通じて、学生の気候に関する知識を向上させると同時に、ふるさとの温度、降雨の変化を知らせ、なじみのあるところにおいて科学への好奇心を導いた。また、大気中汚染物質観測の今昔対比を見た学生は、今の青空を守らなければならないと語った。
仰いで風力観測器を見ながらメモをとっている学生たちの様子
・湿地写生
国土が広い中国において、湿地もたくさん分布している。そのうち、黒龍江省の湿地総面積は556万ヘクタール、湿地面積は中国の各省の中で第1位である。このような場所に黒龍江省は位置することもあり、白樺部は湿地という大切な自然資源を活用し、環境教育を行う。
2021年6月2日、世界環境デー²⁾も紹介した。また、教師と学生が一緒に「仲間と生命ネットを探す」という湿地ゲームを通して、生物多様性に湿地の重要性を知らせた。望遠鏡と筆を通して湿地鳥類の特徴や生活慣習を記録し、湿地と深いつながりをつくった。
教師と学生一同湿地ゲームをしている様子
・環境教育者の育成
2021年6月、環境教育専門家李力氏を聘し、地域内小中学校の教師・学生60人に3日間の専門教育を行った。講座とネットワークを通して、環境教育の担い手となる学校教師に環境教育の重要性を伝えたうえで、どうすればより良い環境教育ができるのかを具体例で参加者に紹介したのである。
李力氏が講座で発表する様子
・巣作り
2021年9月、校内植物園で鳥の巣をつくってあげる活動を行った。学生たちが廃棄された段ボールや箱をリユースし、自分の願いを込めて巣をデザインした。学生のつくり能力と発想力を鍛えたうえで、「3R」に関する知識も知ってもらい、さらに校内に生息する鳥が棲むところもつくられた。鳥のための巣作りは、「一石三鳥」とも呼ばれる活動になった。
自分が作った巣を木に掛けている学生たちの様子
(2)活躍している草の根NPO団体
共産党を中心とした中央集権的な政治体制が敷かれ、様々な活動に制約が課せられているという印象から、中国において民間の非営利組織のようなものは存在しないと思っている人も多いと思われるが、実は非営利組織に関する法律や政策も整備されており、実際に白樺部のように活発な活動を行っている団体も多い。
日本のNPO法人とは異なり、中国は「1行政区1分野1団体」³⁾制度があるので、各NPOの機能は単一的かつ専門的である。正式的に登録する団体は、日本の社団法人に近い性格を有している「社会団体」、日本の NPO 法人に比較的近い性格を有している「民弁非企業団体」及び日本の財団法人に近い性格を有している「基金会」3つの種類がある。この3種類の民間非営利組織は自分なりの機能を発揮し、社会問題や環境問題の解決に取り組んでいる。
しかし、前述した「1行政区1分野1団体」制度があるので、団体間柔軟に連携することが難しく、地域を超える組織の交流も難しい。その局面を打開するのは、「草の根団体」の活動である。草の根団体の多くは、民間が自発的に設立したものであり、社会団体、民弁非企業単位、基金会などの登録団体と比べ、より非政府性、非営利性の性格が強い。草の根団体は法律に基づき登録されておらず、合法性を持っていないが、個人的な人脈を生かすなどして活動に対して、政府の事実上の承認を得ている民間非営利団体である。登録団体のような優遇措置を受けることができないが、より自由に活動方針を作り活動することができる。本レポートで取り上げている白樺部は学校サークルである同時に、草の根団体である。
草の根団体が社会舞台に登場したのは、2008年の四川大震災と、同年の北京オリンピックのときである。
2008 年5月、四川省大地震が発生、多くの学校や家屋が倒壊し、多数の死者を出すなど四川省一帯に甚大な被害が発生した。四川省大地震で、地域内の防災や救援NPOも被害を受け、機能できなくなっていた。救援物資を被災地に運搬するため、震災発生後すぐに、20を超える草の根団体が連名で「NGOは救援活動に参加しよう」というスローガンを発表し、発生翌日から50を超える団体が現地に入り、救援・復興活動を行った。現在も復興活動を継続的に行っているところもある。
同年8月は中国において初めてのオリンピックとなる 北京オリンピックが盛大に開催された。開催当日に多くのボランティアが参加した以外に、政府がオリンピック開催に向けて様々な環境問題を解決する必要に迫られ、環境問題に取り組む草の根団体に協力を求めることも多かった。
四川震災と北京オリンピックでは草の根団体は大活躍だったが、登録団体だけでは解決できない問題があることがわかった。それをきっかけとして、草の根団体は爆発的に急増し⁴⁾、教育・環境・救済など色々な分野で活躍している。
四川震災で救援物資を運搬・配布している草の根団体メンバーの様子
(左)北京オリンピックで外国観光客を案内している草の根団体メンバーの様子
しかし、前述したように、草の根団体の多くは法律に基づく登録ではなく、企業として商工行政管理部門に登記するケースや既存組織の下部組織として活動する場合が多い。本レポートで取り上げる白樺部は、登録団体のNPO北京天下溪教育コンサルティングセンター(Beijing Brooks Education Center)の下部組織として活動している。このため、「1行政区1分野1団体」など制約を受けることはないが、登録が曖昧ゆえに、非合法団体として活動を規制されるというリスクもある。
しかしながら、2000年前半以降、政府が社会問題の解決策の1つとして、草の根団体からサービスを購入の事例も出てきた。このように草の根団体が政府の契約の相手方となることにより、団体の信頼性が高まるという効果が得られる。
(3)この10年間中国の変化
過去10年間、中国の環境に関する法律は更新されつつある。2013年9月に中国国務院⁵⁾は『大気汚染防止行動計画』(以下『計画』をする)を発表し、2017年までに全国の都市では粒子状物質(PM10)を2012年より10%以下に下げるなど大気汚染を抑制する目標とした。2021年1月に湿地保護法草案が初めて全国人民代表大会⁶⁾常務委員会での審議に付された。中国で湿地保護に関する法律が審議されるのは初めて。湿地生態系を全体的かつ体系的に捉え、湿地保護で万全の法律制度体系を構築する。
それらの法律の発表により、中国が環境問題に対して徹底的に取り組もうという決心がみられている一方、国家や法律より先行している先駆者たちを心強くさせることもある。
白樺部の創始者李国良氏は2013年の『計画』にかなり注目した。長らく環境教育を行った李国良氏は自分の活動(環境教育)が国に認められたことが嬉しい反面、『計画』で提示した大気汚染の解決に市民参加が必要であることと、宣伝活動が重要であることにより啓発を受け、今後の環境教育の方針も見直した。偶然、2013年に学校の植物園が建設できたので、これから学生を自分の肌で環境を感じさせ、自然への愛情を培わせたいと心に決めた。
環境教育活動を行う時の集合写真、左3列は白樺部
「この10年間中国人は頑張ったなあ」と李国良氏が呟いた。昔でも今でも、農村部の環境意識や環境に関する知識は都市部より遥かに乏しい。しかし、去年(2021年)春の白樺部ある写生会で、苗を植えている農家の姿を見た部員は、農家へ農薬や容器の廃棄についてヒアリング調査をした。「もし農家さんがその知識を持っていなかったら、これを機に教えてあげたい」と李国良氏は思ったが、意外に農家さんたちはこのことを知っていた。この件から、環境教育の効果が伺えるであろう。
また、一軒の農家さんだけではなく、黒龍江省で大気汚染に関する取り組みが、政府や企業も積極的に組み立てている。農地が広い黒龍江省は、昔かなり野焼きに苦しめていた。収穫の季節になると、大規模の野焼きが行われる。3日くらい空が暗いままこともかなり普通であった。しかし、2020年には黒龍江省の大気汚染数値⁷⁾は、「秀」と「良」の日数が92.9%に達した。その原因の一つは、野焼き禁止の法律・規制が作られたのである。一方、燃やしてはいけない藁等の農地廃棄物の処理方法に関しては、藁等粉砕して農地に還元するという資源循環法がとられた。1つ取り上げたい点は、黒龍江省及び中国東北地域では、大型農機はすべて藁等の粉砕機能が備えている。逆に備えていない機械は販売してはいけないことは、東北地方の大気状況が改善できる要因の1つと思われている。
中国東北部の遼寧省、左側は大気状況が「重度汚染」の様子、右側は大気状況が「秀」の様子。左右写真を撮った間隔はわずか10日であった。
(4)その作品は、無限大な潜在がある
前述した活動は、すべて学生を動かし、自然とリンクさせることを通して、学生の環境意識を高まらせる。例えば植木活動を通して、自然に対して樹木の重要性を知ってもらった。鳥の巣をつくりながら、鳥の生活慣習や生物多様性に対して鳥の重要性を考えてもらった。湿地の美しさを自分たちの目で見てもらい、大事な景色は自分が守るというということを考えてもらった。環境学習で学生の主体性を発揮させるによって、環境保護に関する新しい概念を受け取ることが容易になった。
学生の主体性をより発揮させるために、李国良氏と白樺部は1つの技がある。優秀学生作品を力強く宣伝することである。李国良氏自分が作った郷土教材に載せたり、証書を使って励むなど、一緒に活動を参加する団体にアピールする宣伝手法も使われていた。宣伝によって、環境教育を受けたのはもはや学生だけではなく、地域内の市民たちにも影響しうる。そして、栄光をもらいたい学生たちは、精一杯で環境知識を学んで、より優れる作品を作ることが出来ると李国良氏は語った。
李国良氏が作った郷土教材の表紙にのっている学生作品
優れた鳥の巣を作った学生を表彰する
(5)国際交流をしながら、広い視野で環境教育を行う
李国良氏は日本、アメリカと国際交流の経験がある。国境を越えて、自らの経験を共有することは、環境保全にかなりメリットがあると李国良氏が語った。違う出身の学生たちは、必ずしも同じ視点で環境学習を捉えるわけでもないので、違う視点で見れば新しいものが生み出せるであろう。そこで、李国良氏が1つのエピソードを紹介してくれた。
李国良氏がアメリカに行ったとき、交流会である鳥の珍しい生活慣習の写真を観た。いつも飛んでいる、立っている鳥をメインに描く李国良氏にとって、捕食した瞬間、寝ている様子をうまく撮れていた写真は、素晴らしいしか思わなかった。もしかすると、環境教育もそうだったかも知れない。いつも慣れている環境にいるので、大切にすべきことを見逃したのではないか?と自分に問うた。その故、李国良氏は国内で行う環境教育だけに注意を払うではなく、「また国際交流があれば、絶対に積極的に参加する。両国の子たちにお互いの環境や風習に学ばせ、異なる自然を賛美させる。」と李国良氏が語った。
3.感想(インタビュー担当:王子常)
今回、李国良氏へインタビューし、報告書を作成するという貴重な機会をいただき、大変嬉しく思う。李国良氏は20年以上教師を務めて、環境教育も20年ほど取り組んでいる。李国良氏の教育を受けて、社会に活躍している人は数えきれないと思う。その中で、環境問題に関心持っている人と、環境問題の解決するために日々努力している人も少なくないであろう。それを考えて、自分も教師になりたくなった。
李国良氏が行っている環境教育は、机上の空論ではなく、身の回りに実在する景色を学生に体感させることを通して、環境についての知識や考えを知ってもらう。周りの景色を体感する上で、環境被害を受けた地域の状況を伝え、「未然防止」という環境意識を培う実に素晴らしい教育だと思う。しかし、この教育は、名が知られるほど素晴らしい自然資源を有する地域しか行われず、自然資源があまり豊かでない地域や都市部では、なかなか実施できないだろうと思われるかも知れない。
しかし、李国良氏がおっしゃったように、我々の身近でもいい景色があるのではないか?ただ毎日見ていたので、見逃したではないか?その可能性が大いに高いと思う。故に、今中国に流行っている模倣文化を批判したい。自分が工夫しなく、地元と馴染むかどうかもさておき、とりあえず成功した地域・海外の事例を模倣しようというのは、長期的な視点から見ると、さすがにコスパが悪いと思う。
また、サークルである同時に、草の根団体として少しずつ社会にいい影響を与えることを目指す白樺部は、草のような広範、根のような強靭の特質は持っているだと思う。今まで草の根団体として、行政の影響が薄いので比較的に自由な活動を行うことができている。2000年代末から、地域先行で「業務主管単位制」の一部廃止をきっかけに、2013年11月の18回三中全会⁸⁾に、社会組織が直接登録できることが明白に言及された。それより草の根団体も正式的に登録しやすくなる。しかし、正式登録によって、行政の色が染められる可能性は低くない。どうすれば自らの初心と行政の求めのバランスがとられるのかというのは、草の根団体将来が直面する課題かもしれない。
日本と似ているようで、実際には違ったような民間非営利の道に歩んだ中国NPOに対しては、より活躍の活動を期待している。
最後に、環境教育に没頭し、次世代をより良い環境で過ごせるためにご尽力されている白樺部と李国良氏に深い敬意を表す。
[注]
1)宝清県852農場:行政区分は日本の市町村と等し。
2)1972年6月5日からストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念して定められたものである。国連では、日本の提案を受けて6月5日を「世界環境デー」と定めており、日本では「環境基本法」(1993年)が「環境の日」を定めている。中国では「環境保護法」(2014年)が「環境の日」を定めている。
3)中華人民共和国「社会団体登録管理条例」第13条:同一行政区内に業務範囲が同一である或いは類似する社団が既に存在し、設立する必要がないと認定、登記申請を許可しない。
4)草の根団体は正式登録をしていないので、正確な団体数が把握しにくいが、2017年で草の根団体は「おおよそ100万あまり団体がある」と報道したニュースや記事が複数ある。
5)中華人民共和国の政府。他国における内閣に相当する。
6)中華人民共和国の立法府。国家の最高権力機関及び立法機関として位置付けられる一院制議会である。
7)黒龍江省大気観測局により、大気の質は「秀」、「良」、「一般」、「軽度汚染」、「重度汚染」が分けられている。
8)三中全会とは、5年に1度、中国共産党の党大会で選出される最高指導機関の1つである中央委員会が3回目に開く全体会議のことで、向こう5年間の政策の方向づけを行う重要な会議。過去の三中全会では、いくつかの重大な決定が行われており、中でも1978 年の三中全会は、「改革開放政策」への転換を決めた歴史的な会議として知られている。
劉丹氏(青贛環境交流センター)の環境レポート
—空中ピケット、河川保護の力になる—
レポート編集:王子常
1. 劉丹氏(青贛環境交流センター)の紹介
中国の内陸部江西省(江西省略称は「贛」である)の出身である劉丹氏は、ふるさとの自然に深い熱意を持っている。大学時代に劉丹氏は学校の環境保護サークルに所属していた。そのとき環境知識を学びながら、志しが同じ友人たちと出会った。大学を卒業してから、その友人たちと一緒に、専門知識を生かしたうえで、ふるさとにある有名な水系鄱陽湖をはじめとする様々な水系環境を守るために、環境NPO青贛環境交流センターに参加した。
<青贛環境交流センターホームページ>
2.レポート内容
(1)青贛環境交流センター
20世紀90年代初期から、学生環境保護サークルは中国の各大学で芽生えた。2000に入ると、凄まじい勢いで成長してきた。十数年間の学生環境保護サークルの発展は、中国青年環境保護意識の向上をもたらした一方、もう一つ新たな組織形態概念が現れた。それが地域青年環境保護組織である。
地域青年環境保護組織の主要な役割は、地域内の各高等学校の在籍生に交流の土台やプラットフォームを作ることである。各サークルの資源・情報・経験を共有する上で、それらのサークルに専門的な環境教育、交流サービスを提供することにより、学生サークルの成長を期待する環境保全事業の支えになることを目指す。
そして、2007年、江西省最初の地域青年環境保護組織「緑色江贛」が誕生した。
2011年、江西青年環境交流センターと緑色江贛が合併し、「青贛環境交流センター」(以下「青贛」とする)になった。変化しつつある国の経済情勢や環境状況に対し、解決策が専門化、専職化、社会化しないと、環境問題が解決できないと青贛は気づき、専門性のある環境NPOの道を歩んできた。
交流活動に参加する緑色江贛の学生たち
(2)青贛環境交流センターの活動
水環境は我々が守る
2014年春、青贛理事会が今後の発展方向をめぐって、重要な会議を行った。そこから出てきた戦略方針は、「キャンパスから出て、社会に向かう」である。水環境を専門とする環境保護団体を目指した。同年9月、青贛は南昌市民政局で正式登録を行い、江西省における最初の合法性がある民間非営利環境保護団体になった。上記2件重要なことを通して、青贛は着実に環境保護の道を歩み始めた。
同年、青贛は「都市湖保護」という湖河川専門保護プロジェクトを立ち上げた。南昌市の水資源が豊かである一方、強力な監督保護が乏しいことを鑑み、民間監督作業を行い始めた。500人余りの青年が湖保護活動に参加した実績が、江西新聞、江西テレビに報道された。
河岸ごみ拾い活動に参加している青年たちの様子
・桃李不言 下自成蹊¹⁾
2015年-2016年、青贛は「成蹊計画」に選ばれ、水環境守る領域での専門性や行動力がさらにアップした。
「成蹊計画」は、アリババ公益財団法人と合一緑学院共同開催の水資源保護組織の育成プロジェクトである。母なる河川を保護できる団体は少ないので、「成蹊計画」は新たに生まれた水保護団体に資金・情報・ノーハウ等を提供し、内面的な団体ネットワークを作り、団体の専門性や行動力を向上させることを通して、ふるさとの河川を綺麗に戻すことを目的とする。
青贛は「成蹊計画」の参加を通して、情報公開、工業汚染調査、法律行動、市民参加等作業手法を上達させ、関わる戦略も立ててきた。河川保護を中心として、江西で汚染調査を始めた。違法排水の監督、汚染源情報の公開を促し、市民の公的参加の動員等行動を行っていた。
水質調査を行っている青贛メンバーの様子
・固本清源²⁾ 故郷保護
2017年、青贛はアリババ公益財団法人の「清源計画」に選ばれ、団体使命がさらに地域化になり、江西本土に深掘り、贛江水系と鄱陽湖水系の水質・生態保護を中心として、ふるさとの美景を守ることとなる。
同年、青贛号モーターボート、青贛1号ドローン、水質観測機、赤外線測温機、水質検査バッグ等専門的な器具を青贛団体は導入した。これをきっかけに、青贛は地域青年環境保護組織から、成熟した環境NPOに成長してきた。贛江流域に海陸空一体化の測定監督ネットワークを作って、汚染を見逃さなくなった。
同じ2017年、青贛は80後、90後³⁾江西本土青年を主体となる「専職団体」を創設。「地域の人は地域の環境を守る。地域の力を使おう」という理念に基づいて、青贛は九江市、上ヨウ市、南昌市で水質調査に市民参加を呼び掛けた。
青贛に届いた江西省の各地の市民が撮った水汚染の写真
(3)先端技術で水質を観測
経済や技術の発展と伴って、水質汚染の種類も多様化になってきた。もはや「異色」と「悪臭」で水の汚染を判断する時代ではなくなった。例えば水系にある全リン、全窒素の量は肉眼だけでは判断できない。従来型の快速測定の測定内容はおおよその範囲に過ぎないので、具体的な汚染物質の量を測定することは難しい。また、コストがすごく高いという壁を乗り越えにくい。その問題を解決するために、広範囲かつ精密かつ安価の河川汚染観測方法が模索された。
水系が汚染されたら、水中物質の割合が変化する。異なる物質では光の吸収率と反射率が違うという特性を活用し、光の反射率によって、水系の汚染状況を測定できるという技術が考案された。最初は農業用のスペクトル⁴⁾遠距離測定技術を河川観測に活用し、水中物質の分布状況及びその移動距離を観測できた。
スペクトル遠距離測定技術で水汚染を観測するイメージ図
現在のスペクトル遠距離測定技術では、水中のクロロフィル、有機物(酸素依頼)、全リン、全窒素、塩分、水温、油汚染等が観測できる。ハイパースペクトルに関する技術の研究の進みとともに、重金属、アンモニア性窒素に関する観測も始まった。
青贛はこの技術を用いて、2020年からドローン搭載スペクトルカメラが収集してきた水系データに基づいて、河川に「身体検査」のデータベースを作ってきた。このデータベースを通して、汚染水系における汚染程度の分布や汚染源を観測することができる。さらにGIS⁵⁾技術で、高度分析することもできる。
宇宙にある衛星のスペクトル遠距離測定より、ドローンのスペクトル遠距離測定は測定範囲が狭いというデメリットがある。しかし、ドローン測定は小型河川に相性が良いだけではなく、コストもあまりかからない。また、低空飛行なので、ドローン測定は高い精度を持っており、また雲等の気候変数に妨げない。
過去2年間、当技術を用いて、青贛は13の河川を観測し、汚染排出阻止量は予測18.25万トンに達し、観測してきた水系に政府が12.45億元の汚染防止資金を出した。
現在ドローン観測で測定できる水中汚染物質のイメージ図
(4) SNSによる発信、幅広い参加を求む
2018年から、青贛は情報公開や広域発信を求め、wechatとweibo⁶⁾でアカウントを開設し、それをきっかけに社会多方との連携ができた。
2020年12月、青贛と南昌市ケンタッキー共同で「プラスチックごみ減量」宣伝活動を行った。参加者に水環境とプラスチックに関する知識を教える上で、子どもにもごみ拾い活動を呼び掛けた。宣伝会で顕微鏡も設置し、子どもたちが顕微鏡を通して水中微生物を見ることができた。「きれいな水はそんなに大切だとは知らなかった。もう分解できないプラスチック製品を使わない!」と参加者の女の子が話した。
今後、青贛は地方政府の支持で、学校に、コミュニティに、企業に環境知識普及活動を行う予定。大勢な青少年に水系保護活動をアピールし、市民参加度を高めるにより、「愛水、保水、省水」の生態観の構築を求めている。
青贛とケンタッキー共同開催宣伝活動の写真
3.感想(レポート編集:王子常)
青贛は2007年から今まで発展してきた。キャンパス内の学生から河川の保護者まで、彼らは初心を忘れることなく、自分の故郷が、自分で守る。実に素晴らしいと思う。
十数年の活動を通して、青贛の力もますます強くなった。青贛はまだまだ成長できる。故郷への愛はエンジン、先端技術は舵、「知識で環境問題を解決する」と旗とし、この「青贛」という名の大船は、必ず汚染を全滅し、水を清めたままに戻らせると信じている。
最後に水汚染を解決のため、ふるさとの美景を守るため活躍している青贛と劉丹氏に深い敬意を表す。
フィールド調査にいっている青贛の若者たち
[注]
1)出典:司馬遷の『史記』。桃や李(すもも)は何も言わないが、美しい花や良い香りの果実を求めて人が集い、その樹木の下には自然と蹊(こみち・小道)ができるという李広将軍その人を讃えた故事である。
2)医学用語。根本を強めさせ、根源を清めさせることを意味する。
3)1980年代生まれ、1990年代生まれの人々であると意味する。
4)可視光線を分光器で分解したときに得られる、波長(周波数)の順に並んだ帯状の光の像のこと。
5)Geographic Information System、地理情報システム、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術である。
6)ツイッターと似たような機能を持っているSNSソフト