あおぞら財団は、西淀川大気汚染の公害患者の「手渡したいのは青い空」の願いを実現するために設立された団体です。
大気汚染公害は過去のものとされ、取り組むべきは、公害問題・公害教育ではなく、環境問題・環境教育と思われているかもしれません。また、学校教育の中では、四大公害裁判については必ず触れていますが、公害認定患者が多い都市部の大気汚染については深く触れられておらず、大阪・西淀川の大気汚染はあまり知られていないかもしれません。かつて、日本では経済発展が優先される一方で、公害によって多くの人が健康被害を受けました。特に大阪の西淀川区では、多くの公害患者が発生し、地域の人々が自らの生活を守るために声を上げ、共に変革を求めて活動を始めました。
西淀川では、公害をもたらした大企業や国等の道路管理者との対立が深まる中、地域を再生するためのビジョンを作り、様々なセクターとのパートナーシップのもと解決に向けた取り組みをおこないました。こうした動きの中で、公害地域の再生を目指すあおぞら財団も設立されました。
多くの公害・環境問題はすべての人が加害者であり被害者でもあるといわれますが、実際にはその被害は社会的・生物的弱者に集中しています。それは公害と共通の社会構造によって引き起こされており、被害を生み出す構造はなんら変わっていません。甚大な被害をうけ、闘い、パートナーシップのもと解決にむかった西淀川の大気汚染公害の経験は、今後の社会課題の解決に多くの示唆を与えるものだといえます。
あおぞら財団の研修・教育は、大気汚染公害の経験をベースに、持続可能な未来を創るためには何が必要なのかを一緒に考える市民を育てることを目標とします。
SDGs(持続可能な開発目標)の達成のためには、多くの市民が具体的に行動できることが重要です。行動するために必要なことは、市民一人ひとりが社会課題を他人事ではなく自分事として捉え、社会を変える必要性を実感することです。
ただし、社会を変えるには、一人ひとりの取り組みだけでは限界があり、他者との連帯が欠かせません。多様な意見を持つ人々が連帯するには、共通のビジョンやコミュニケーション、信頼関係を築けることが必要です。
当財団の教育・研修を通して、社会課題に当事者意識を持ち、他者と連帯して行動する市民を育てます。
公害や気候変動等の環境問題の被害は、主に、生物的、社会的に弱い立場にある人たちに集中します。日本の成長は公害被害者をはじめとする弱者に被害を押し付けなされてきたと言っても過言ではありません。
今後、持続可能な社会を実現するためには、誰ひとり取り残さないという視点が必要です。そのためには生物的、社会的に弱い立場にある人達が置かれている状況や環境問題から受ける影響を想像する力、そして被害を受けた人々に寄り添う姿勢が必要とされます。
当財団の教育・研修を通して、社会的な弱者の状況を想像し、寄り添うことができる市民を育てます。
あおぞら財団の研修・教育では、下記の3つを大切にしています。
あおぞら財団の教育・研修では、歴史をふまえること、現地に行くこと、様々な立場の人から学ぶことを大事にします。公害の発生から被害、解決にむけて多くの立場の異なる人たちが取り組んできたことを学ぶとともに、公害だけ知識のみを学ぶのではなく、フィールドワークや聞き書き、語り部などの学びを通じて、地に足の着いた学びを提供します。
あおぞら財団の研修・教育では、市民は社会を変える力を持つという視点を大事にします。西淀川では公害患者をはじめとした市民が連帯し、行政や企業に働きかけ、大気汚染公害に対して多くの政策や対策を実現してきました。そうした観点から、市民力を高めるという点を大事にし、ワークショップやフィールドワーク、映像作成など学習者が主体となる参加型の学びの場を提供します。
あおぞら財団の研修・教育では、環境・社会問題を多様な視点から学ぶことを大事にします。
公害・環境問題の解決には立場が違うステイクホルダー間の合意形成が必要となりますが、合意の形成は非常に困難となります。西淀川の大気汚染公害においては、公害患者と患者会、住民、行政、学校、医師、ジャーナリスト、企業、弁護士、研究者といった様々な立場の人々がそれぞれ重要な役割を果たすことが解決につながりました。そうした視点をロールプレイや、インタビューなどから得て、多視点で物事を捉える学びを提供します。