「公害の経験から学び、未来を創る市民を育てる」
あおぞら財団

授業事例の紹介:西淀川公害を題材に「新しい人権」を学ぶ社会科の授業

                   

今回は、西淀川区佃中学校で、西淀川公害を題材にして行われた社会科の授業を紹介します。
担当されたのは近藤克樹先生。近藤先生は大阪市総合教育センター主催の研修で西淀川公害に触れ、「西淀川でこんなことがあったのか」と衝撃を受けたことが授業づくりのきっかけとなったそうです。

●学びのプロセス

授業は、3年生を対象に、11月21日に研究授業の一環として行われ、「新しい人権」の一つである環境権を学ぶ内容でした。
使用された資料には、あおぞら財団の公害学習資料エコミューズのパネルなどが活用されています。

 

番号 活動名 内容
公害クイズ クイズを通じて、四大公害病や西淀川公害に意識を向ける。
資料分析 資料をみながら、公害問題が全国各地で発生した理由を理解する。
地域の変遷を分析 「今昔マップ※」を使って、佃中学校周辺が農耕地から工場、住宅地へと変遷した様子を読み取り、グループで発表。
被害住民の視点に立つ 西淀川公害に関する写真や作文等を読み、被害を受けた住民の状況を理解する。
公害と人権について議論 公害によって失われる人権について話し合う。

 

※今昔マップ:埼玉大学の谷謙二教授が作った、昔と今の地図を見比べられるウェブサイト。全国59地域、明治から現代までの地形図(約4,800枚)を切り替えて表示できるます。https://ktgis.net/kjmapw/

●未来に向けた学びに

授業の前後に生徒たちが書いた「20年後の西淀川区の将来像」のミニレポートを見ると、授業後には「公平で差別のない町」「公害がなく、みんなが幸せに暮らせる町」、「SDGsを踏まえた持続可能な社会」といった意見が増えており、学びが具体的なビジョンに繋がっていることがわかりました。

近藤先生は、授業のねらいを「持続可能なまちづくりを進めるためには、住民の人権が十分に保障されることが重要であることに気づき、具体的方法を表現することができる」としています。西淀川公害が生まれた背景を学び、公害被害住民の視点に立つことが、生徒たちが「未来の主権者」としての資質を涵養するのに役立てることができたのではないかと思います。

 

佃中学校 近藤克樹先生のコメント

西淀川公害は、地域の問題に根ざしながら、新しい人権である環境権について学べる教材です。公害を学ぶことで、他の人権問題も同じ構造になっていると気づくことができます。
社会科の本質は「公民的な資質・能力」を育むこと。この授業で、生徒達に社会科の重要性や面白さが伝わったと手ごたえを感じました。

 

※機関誌りべらで連載をしている研修コーナの転載記事です(りべら167号より転載)。