大阪市西淀川区の古民家ゲストハウス&カフェ

コンセプト

「手渡したいのは青い空」の思いをつなげる場所をつくりたい

姫里ゲストハウスいこね&くじらカフェを運営しているあおぞら財団は、公害地域の再生に取り組んでいる環境NPOです。

あおぞら財団のある大阪市西淀川区は、大気汚染公害によって多くの人が健康被害を受け、地域が疲弊しました。西淀川公害裁判では公害患者が勝利し、その裁判の和解金の一部を使って、「手渡したいのは青い空」を願って1996年にたちあげたのがあおぞら財団です。

あおぞら財団では、今まで、まちづくり・資料館・環境学習・公害患者の保健・国際交流といった事業を行ってきました。患者さんの「手渡したいのは青い空」の思いを、もっと身近に、さらに多くの人に広げていくためにゲストハウス&カフェをオープンしようとしています。

ゲストハウス&カフェの名前は、「姫里ゲストハウスいこね」と「くじらカフェ」です。

「いこね」は、憩うことができる寝床ということと、いこうね!の意味を持たせています。

「くじらカフェ」は西淀川区の形がくじらの形に似ていること、あおぞら財団はくじらのキャラクターをマスコットに使っていることから名付けました。

地域のために使ってほしいと、弁護士さんから古民家を提供してもらいました

▲工事前の建物

このたび、姫里ゲストハウスいこね&くじらカフェとして活用する古民家は、西淀川公害裁判の弁護士でもある井上善雄さんが育った家です。井上さんは、ご自宅を別の地に移されましたが、想い出の残るこの場所を西淀川の地域のためにつかってほしいとの思いから、提供していただいています。

この場所を、西淀川に学び・遊びに来る人、西淀川に元々住んでいる人、新しく移り住んだ人など多様な人々が交流し、いろんなことを話し合い、新しい「何か」を生み出す場所にできたらと思っています。

昭和初期の洋館付き長屋住宅の良さを活かして

▲リフォーム後の姫里ゲストハウスいこね&くじらカフェ

この古民家は、昭和初期に建てられた洋館付き長屋住宅です。水害や阪神大震災をはじめとした多くの天災や公害といったさまざまな歴史を乗り越えてきました。

昭和初期に作られた住宅の多くは現在の住宅とは異なった良さがあります。建物の正面は西洋風の三角屋根になっています。中庭と縁側があり、四季の移ろいを楽しむことができます。また、和室には床の間や違い棚があり、昭和のおうちならではの余裕のある空間づくりがされています。使われている木材も時を経て深い味わいを醸し出しています。

工事では、洋館付長屋住宅を活かすために、正面壁はモルタルドイツ壁とハーフティンバー風を施し、腰壁は下見板張りとして、洋館付きらしい魅力ある意匠を施しています。

姫里ゲストハウスいこね&くじらカフェとして利用するため必要なリフォームは行いますが、この古民家のもつ元々の良さを生かしつつ、昭和モダンの良さを感じ取れる場所にする予定です。

▲古民家のもつ元々の良さを生かして

 

みんなにとっての居心地の良い場所に

▲縁側で語りあう二人

西淀川は、古代には難波八十島と呼ばれた海に近い町です。江戸時代には漁業と農業が盛んな地域に、そして明治時代以降には工業地域になり、時代の移り変わりに合わせて町の姿も変わってきました。近年では、工場の移転が相次ぎ、跡地にたくさんの新しいマンションが建ち、子育て層の人口が増えています。また、大阪マスジド(イスラム礼拝堂)があり、外国にルーツのある人々もたくさん住んでいます。西淀川は、人情味あふれる下町であると同時に、多様な人々が集う住宅地でもあります。

姫里ゲストハウスいこね&くじらカフェを、そんな多様性のある人々が「ちょっとお茶をしに」「ちょっと面白い人に会いに」行く場所にしたいと思っています。

外壁や内装の一部はボランティアのみなさんとDIYで作っています。

8月17日(木)・18日(金)・22日(火)・23日(水)に姫里ゲストハウスいこね&くじらカフェのDIYを2日間あわせてのべ40名で行いました! このDIYには、財団職員だけでなく、地域のボランティアのみなさま、インターン生、子どもから大人までみんなで取り組みました。

▲真夏にみんなでDIYをがんばりました

DIYをした目的は、工事費用の節約という面もありますが、みんなの手作りで、みんなの思いがつまった居心地のいい場所になってほしいということです。

▲モルタルでドイツ壁仕上げに

外壁はドイツ壁仕上げをしています。このドイツ壁というのは、古い洋館などにみられる塗り壁仕上げです。一度、モルタルを塗りつけた後、こて板から壁に向かってササラでモルタルを掃き付けます。

▲内装の壁塗りをする子どもたち

他には、内壁を塗装、障子の張り替えといった作業をみんなで行っています。

詳しくはこちら→あおぞら財団ブログ 【8月17日・18日・22日】いこね&くじらカフェのDIYを行いました!

自転車で街をめぐる

▲タンデム自転車でサイクリング!

あおぞら財団は、大気汚染の原因となる自動車の代わりの交通手段として自転車を推進するために、自転車まちづくりの活動をしています。

今、あおぞら財団が特に力を入れているのがタンデム自転車です。タンデム自転車は、2人でこぐため楽に走行でき、視覚に障害がある方でも一緒に自転車を楽しむことができます。ゲストハウスではこのタンデム自転車もレンタルします。

姫里ゲストハウスいこね&くじらカフェは、他にもサイクリストが気軽に立ち寄れる場になるような工夫を検討中です。

環境や公害について学ぶ場として

▲公害や環境について学ぶフィールドワーク

「公害」というとどんなイメージがありますか?

もうすでに終わった過去のこと。四大公害裁判しか知らない。大阪にも公害があったなんて知らなかった。

そんなふうに考えている方も多いと思います。

西淀川区は大気汚染をはじめとする公害を住民が中心になって改善を試みた街です。

西淀川で公害から学ぶことは、過去のことを学ぶだけではなく、二度と被害を出さないためにはどうしたらよいのか? 未来の自分たちの環境を守るために市民として何ができるのか?といったことを学ぶことにつながります。

あおぞら財団では、日本国内の学生をはじめ、環境省といった官公庁、中国のNGOなど多岐にわたった方々に研修を受けていただいています。姫里ゲストハウスいこねを活用することで、あおぞら財団の研修プログラムが広がり、学ぶ方々に宿泊してもらう場としても活用したいと思っています。

最後に

「青い空」は今でこそ当たり前のものになっていますが、公害がひどかった当時は、煤煙や自動車の排気ガス等によって毎日が曇り空になっていました。「青い空」が特別なものではなく、当たり前のものとして次の世代に手渡し続けたい、そういう思いが「手渡したいのは青い空」にこめられています。

公害で疲弊した地域を再生したいという強い思いだけで、地域はよくなっていきません。公害、環境と聞くと少し難しいと思ってしまうような方、西淀川をよくしていきたいと思っている方、西淀川で学びたいという方、性別も年齢も職業もルーツも様々な人々が、一緒に集い、一緒に時間を楽しく過ごすことができる居心地の良い場所が地域の中にある、そういった身近なことが実現できてこそ、本当に地域が再生していくのではないかと思います。

西淀川にみんなが集える姫里ゲストハウスいこね&くじらカフェを創りたいと思っています。