あおぞら財団 用語解説

用語解説

公害

事業活動その他、人の活動に伴って生じる相当範囲にわたる大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭(典型7公害)によって、人の健康または生活環境に被害が生じることをいう。(環境基本法第2条3項)薬品や食品による害、産業廃棄物などのゴミの問題を含める考え方もある。

公害指定地域

「公害健康被害の補償等に関する法律」における指定地域で、第1種地域と第2種地域がある。第1種地域とは、大気汚染が著しく、気管支ぜん息などの指定疾病(公害認定患者を参照)が発生している地域で、水質汚濁などが原因で水俣病、イタイイタイ病、慢性ひ素中毒症などの疾病が発生した地域(第2種地域)と区別している。これまで41地域が指定された。 なお、1988(昭和63)年3月1日をもって、第1種地域の指定はすべて解除された。

公害認定患者

「公害健康被害の補償等に関する法律」における認定患者。指定地域に一定期間以上居住または勤務し、指定疾病にかかったものとみなして認定された者をいい、公害健康被害補償制度による補償を受けることができる。 第1種地域(公害指定地域を参照)における指定疾病とは、慢性気管支炎、気管支ぜん息、ぜん息性気管支炎、肺気腫ならびにそれらの続発症をいう。 なお、第1種地域の指定解除以降、新たな認定申請は行うことができなくなった。

気管支ぜん息

気管支をとりまいている筋肉が突然収縮を起こして、気管支が細くなって空気の通りが悪くなる。この病気の人の気管支は、各種の刺激に対して普通の人の気管支よりも数10倍から数100倍敏感に反応するという「気道の過敏性」をもっており、刺激によって気管支のけいれんが起こり狭くなるため、発作的に呼吸困難が起こる。

慢性気管支炎

慢性的に咳・痰が出る。一日に出る痰の量は多いときには数100mlにおよぶ。気管支の表面(粘膜)がはれ、気管支を刺激することから咳をひき起こす。さらに、粘膜のはれと痰は気管支を狭くするため、呼吸困難をひき起こすことがある。

ぜん息性気管支炎

一般に“主として乳幼児に起こるぜん息様症状を呈する気管支炎”とされている。気管支に炎症が起こり、ぜい鳴があらわれる。

肺気腫

肺胞と肺胞の隔壁がさまざまな原因によって破壊されて、大きい袋状になる病気。肺胞が破壊されて数が減り、表面積が小さくなったため、当初は労作時に息切れを感じる形で呼吸困難が起こる。病気がすすむと身支度をするだけで息切れが生じたり、会話も困難となり、自宅でも酸素吸入をしなければならない状態になる。

続発症

公害患者の人は、上記四疾患の悪化や薬、検査などにより、肺炎、気胸、慢性肺性心、肺繊維症、気管支拡張症、流産、ヘルニアなどさまざまな病気を併発する。

公害無過失責任法

1972(昭和47)年6月22日に公布された「大気汚染防止及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律」で、公害健康被害補償法制定に向けての基本的な考え方を示した。公害発生の原因者は故意・過失にかかわらず責任を免がれることができないとされた。また、附則では、公害の被害者に対し、損害賠償を保障する制度について検討を加え、速やかに措置を講ずるものとするという規定が加えられた。

四大公害裁判

富山イタイイタイ病裁判、新潟水俣病裁判、熊本水俣病裁判、四日市大気汚染裁判の4つをいう。いずれも1960年代後半に提訴し、1970年代前半に原告勝訴の第1審判決を得た。 戦後、急激な経済成長を実現した一方、工場などから排出されるばい煙、汚水などが原因で健康被害が生じたことを全国的に知らしめ、経済発展のあり方に警鐘をならした。こうした世論を受けて1970年11月~12月の臨時国会では、公害関係6法の制定と8法が改正され「公害国会」と呼ばれた。

共同不法行為

複数の加害者が不法行為を共同してすること。共同不法行為者は、連帯して損害賠償の義務を負う。共同というのは、通謀や共同の認識のあることは必要ではなく、各自の行為の間に客観的な関連があればよいとされる。

関連共同性

共同不法行為の成立要件の一つ。共同不法行為が成立するためには、共同行為者の各自の行為が不法行為の要件を充足するだけでなく、各自の行為に関連共同性があることが必要とされる。そして、行為者の間の共謀あるいは共通の認識のある場合だけでなく、客観的に関連している場合にも関連共同性の要件を満たしているとされる。

因果関係

一般に、もし一定の先行事実(公害の発生)がなかったならば一定の後行事実(人の健康や生活環境に被害が生じること)が生じなかったであろうという関係をいう。不法行為による損害賠償の請求が認められるには、不法行為者(公害発生の加害者)の行為と結果(健康被害などの損害)との間の因果関係がなければならない。

疫学

地域・職域などの多数集団を対象とし、その原因や発生条件を統計的に明らかにすることによって、多発する健康障害の発生のしくみ、分布、介在要因を解明する学問。臨床・基礎医学、病理学、統計学などを含めた総合医学や社会医学と位置づけることもできる。