台湾環境NGOとの交流 松 光子(全国公害患者の会連合会常任幹事、尼崎公害患者・家族の会会長)
平成14年10月30日、東京判決行動及び東京裁判被告企業交渉後、成田空港より台湾に向けて出発しました。
東京判決行動の厳しい日程を無事に終わらせて本当に皆疲れ果てていました。
翌日10月31日、午前8時に宿舎を出発、高雄市教師会を訪問し現在環境保護運動、主に生態系調査等を中心に活動を続けていると報告されました。
小・中学校の教師を中心に組織した団体で、故郷を中心に自然の生態を勉強し、高雄市から台湾の環境を守る運動へと感心を強めなければいけないと思っていると話されました。
日本側より全国連合会太田事務局長から参加者の紹介と挨拶があり、私、松より日本での公害、公害被害者の闘い、そして各地公害裁判での勝利、荒廃した町の再生へと歩みだしている事を報告しましたが、その時、台湾でも既に東京大気裁判が大きく新聞報道されていました。
倉敷の道端医師による台湾における疫学調査や公害被害の問題、学者・法律家が環境問題に関わっているのか、また、被害が出た場合の解決策はどんなものなのか等日本の事例を引き出して質問されていました。
台湾側より、種々の質問に対し疫学研究はまだ出来ていない、被害も公表していない、統計データは、大気汚染は改善されていると発表されているが、実際は改善されていない。専門家の参加はまだ不十分、環境運動は、森林の保護は要求、改善はしているが大気汚染は政府に対し改善は求めていない等2時間にわたる交流も時間が足りないくらいでした。
この後、高雄港内を視察、港内を回るだけで2時間以上かかりました。それでも全部見て回ってはいません。高雄港に面して化学工場や鉄、木材等の処理工場、湾内には巨大な火力発電所があり高煙突からはものすごい煙が風にのって高雄市内に流れています。すごい晴天にも関わらずスモッグで遠くがかすんでいました。
午後からは高雄市から車で2時間余りの山里にあるダム反対が起こっている村を訪ねました。
美濃村という所で名産も美濃紙、非常に美しい村でした。この村では山の山間に熱帯樹林を育てており、世界でも珍しい樹木があり、また、5月には美濃黄蝶祭が催され何万という黄色い蝶々が群れ飛ぶさまは圧巻であると案内して下さった村の名士が説明されました。
このように水も美しく豊かで緑一杯の山間にダムを作ると環境・自然破壊どころか美濃地方一帯が水没してしまうし、活断層が地下を走っており、このダムは工業用水として70%の利用があると言われているが、7%しか利益はない。10年以上も反対運動を続けているし住民の80%以上が反対している。現大統領もダム反対を宣言しているがまだまだ作る可能性はあり現在ダムに代わる代替案を提言しているとダム反対聨盟の交流の場で話をされました。
翌11月1日美濃村のゴミ焼却場の視察しました。「焼却場よりの煙でダイオキシンやその他の有害物質もでている。農作物も売れないし健康被害も出ている。政府に対し何度も抗議し陳情もしているが解決されていない」といった問題点について、現地視察先で説明がありました。
植田教授も参加された午後からの「全国環保聨盟会議」第2次大会で、太田事務局長より参加している人々を紹介、植田先生より焼却炉についての問題点を提起され、「有害物とそうでないものを区別しなければいけないし、場所、規模、焼却炉の大きさ、なぜその場所なのか、事前調査や必要性の問題、リサイクル等考えられる事は多々ある」と指摘されていました。
美濃村で起こっているダム、焼却炉、緑・水を守る運動等、私達が抱えている問題と同じ悩みをそれぞれ交流しあえた事は非常によかったと思います。
またいつか、あの親切な美濃村の方々にお会いしたいし訪問したいと強く感じています。
この全国環保聨盟会議に集まってこられた年輩の方々は日本語を話されるし、懐かしい軍歌を次々と精力的に朝から歌われて私達を本当に楽しませて下さいましたし、親切に色々とお世話いただきました事に感謝しております。