「微小粒子状物質に係る環境基準の設定について(答申案)」への意見(パブリックコメント)
2009年8月10日
中央環境審議会大気環境部会
「微小粒子状物質に係る環境基準の設定について(答申案)」への意見(パブリックコメント)
■環境基準の早期設定
専門委員会報告(案)3.1でも述べられているように、PM2.5はぜん息や気管支炎等の循環器・呼吸器疾患、肺がんを引き起こす要因であることが明らかになっています。子どものぜん息有症率は、大都市部で全国平均の2~3倍程度でその差は固定しており、有症率も一貫して増加傾向にあります。全国的な統計がない成人のぜん息患者も増加の傾向が指摘されており、早急に対策を講じることが必要です。PM2.5の環境基準は答申案通りの設定を早急に行うべきです。
答申(案)の環境基準「1年平均値15μg/m3以下、1日平均値35μg/m3以下」は、アメリカ合衆国で設定されている環境基準と同レベルですが、世界保健機構(WHO)は「1年平均値が10μg/m3 以下、1日平均値が25μg/m3以下」をガイドラインとして示しています。PM2.5の暴露による健康影響の調査・研究を継続的に行い科学的知見を蓄積し、将来的にはその成果を正当に反映した環境基準の強化も検討する必要があります。
■測定・監視体制の拡充
PM2.5の測定地点は全国44箇所に過ぎず(一般環境大気測定局・自動車排出ガス測定局33箇所、国設酸性雨測定所等11箇所)、測定時期も2000年以降と全く不充分です。早急に調査地点を全国全ての一般局・自排局に拡大し、測定・監視体制を強化すべきです。
■対策手法の検証と汚染地域での緊急対策
現在の不充分な測定体制からのデータでも、PM2.5の濃度は環境基準(案)を大きく超えており汚染は深刻な状態にあります。この対策として答申(案)は「固定発生源や移動発生源に対してこれまで実施してきた粒子状物質全体の削減対策を着実に進めることがまず重要」としています。自動車NOx・PM法による車種規制、局地汚染対策、流入車対策を組み合わせた総量削減を進めることは当然ですが、それぞれの対策による地域での削減効果は必ずしも明らかではありません。汚染地域の環境を早急に改善するため、現在実施されている対策の効果を検証し、より有効な対策を重点的に講じることが必要です。
また、答申(案)は、二次生成粒子や海外からの移流分、複雑な大気中の挙動を踏まえた対策検討が必要としています。しかし、西淀川地区4箇所で2004年度から測定されているPM2.5濃度は環境基準(案)の約1.5倍に達しています。西淀川地区には国道2号(日交通量3.8万台、以下いずれも平成17年度道路交通センサス)、国道43号(同8万台)、阪神高速3号神戸線(同7.3万台)、同5号湾岸線(同7.4万台)、同11号池田線(同10万台)、府道大阪池田線(同2.6万台)と交通量の多い幹線道路が集中しており、このような地域特性からして自動車排出ガスに起因するものが大部分であることは明らかです。このような自動車交通量の多い沿道地域では、ロード・プライシングや交通規制等による交通流の分散・削減対策や交通需要の軽減等の対策を緊急に実施するべきです。
■環境影響評価の項目への追加
現在の環境影響評価法では、道路事業に関わる大気質の調査項目に、自動車の走行による影響を受ける環境要素として二酸化窒素と浮遊粒子状物質(SPM)が参考項目として掲げられています。現在の測定データからでもPM2.5の発生が自動車に起因することは明らかであり、PM2.5を道路事業における環境影響評価の調査対象に加えるべきです。
参考:環境省・報道発表資料:中央環境審議会大気環境部会「微小粒子状物質に係る環境基準の設定について(答申案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について(平成21年7月10日)