あおぞら財団 平成13年度環境省政策評価(案)に対する意見
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平成13年度環境省政策評価(案)に対する意見

2002年8月

●自動車排ガス対策について(P5)

*「自動車NOx法」において、平成12年度までに環境基準を達成する目標であったはずであったが、実現できなかった反省を踏まえる必要がある。現行の「自動車NOx・PM法」が単に環境基準達成を先送りをしたということにしないためにも、1日も早く基準を達成する目標をたてるべきである。

*15年度においては、川崎・尼崎・名古屋南部での大気汚染裁判において、今日においてもなお健康被害が生じているという判決内容を踏まえ、緊急に取り組むべき課題としてこれを位置づけ、広域的かつ省庁間を越えた総合的な政策づくりを行うべきである。

●基礎調査・監視測定の整備等について(P6)

*有害大気汚染物質、微笑粒子状物質、ナノ粒子などの健康への影響は深刻であるとの報告がある一方で、知見の充実のみだけでなく、これらの測定体制を早急に検討していくという位置づけが弱い。

*西淀川公害裁判での和解条項において約束されたPM2.5の調査について、国土交通省は暫定マニュアルの段階では実施できないとの理由から未だ実施していない。15年度においては、環境省としてその測定方法を確立する方針を掲げ、本格的な調査が実施できる体制を整えられたい。

●大気生活環境対策について(p6)

*大気生活環境対策は、良好な都市環境、アメニティを形成していく上で重要な施策である。密集市街地や住工混在地域、幹線道路沿道などでは、騒音・振動のみならず、さまざまな環境指標において劣悪な生活環境におかれている。いまだ十分に、大気生活環境施策の体系は国民に知られておらず、対策の効果も現れていない。環境省全体としてもアメニティに関する施策の位置付けが弱い。

*15年度の政策の方向性としては、都市再生政策が打ち出され、都市再開発が活発化していることを踏まえて、開発や建設時における大気生活環境施策に係る配慮指針ないしガイドライン等を整備することを提案する。

●土壌環境の保全について(p10)

*土壌汚染対策法の成立をみたことは、市街地土壌汚染対策の前進として評価する。

*しかし、現状での土壌汚染地の把握は、土地の再開発や売却に伴う判明が主なものであり、系統的に汚染可能地を把握する体制になっていない。汚染の現状把握が十分にできていないことに対する総括が必要ではないか。

*15年度の政策の方向性としては、環境履歴に基づく汚染が予想される土地の把握をすすめていくこと。それを公共機関が保有する土地について徹底することを提案する。

●リスクコミュニケーションの推進について(p19)

*リスクコミュニケーションの推進を環境省として重視していることを評価する。評価(案)も指摘しているように、コミュニケーションの担い手づくりが肝要である。とりわけ、行政・事業者・市民の間に入ってファシリテートする人材の役割が重要であり、その分野での環境NGO・NPOの役割が期待される。

*15年度の政策の方向性としては、環境影響評価における「参加型アセス」の施策と連携しながら、環境NGO・NPOとの協働によるファシリテーターの育成をすすめていく方策を検討することを提案する。

●環境アセスメントについて(p33)

*住民参加による環境アセスメントを打ち出したことを高く評価する。リスクコミュニケーションと同様、行政・事業者・市民の間に入ってファシリテートする人材の役割が重要であり、その分野での環境NGO・NPOの役割が期待される。

*15年度の政策の方向性としては、リスクコミュニケーションの施策と連携しながら、環境NGO・NPOとの協働によるファシリテーターの育成をすすめていく方策を検討することを提案する。

●公害防止計画の推進について(p37)

*これまでの公害防止計画が、その意図するところとは別に、ごく部分的な成果しかあげておらず、住民参加も遅れていることに対する真摯な総括が必要。

*15年度の政策の方向性としては、公害防止計画制度の運用において住民参加を取り入れて、地域の実態に即した計画制度とすることを提案する。

●公害健康被害対策(補償・予防)について(p37)

*公健法(「公害健康被害の補償等に関する法律」)に基づき、認定患者への校正な補償給付等が実施されていることを評価する。

*同法に基づく公害保健福祉事業については、制度が創設(1974年9月)されてから指定地域解除の法改訂(1988年)まで14年、その後さらに14年を経て新規認定が終了したことにより、既存の認定患者の加齢が全国的に進んでいるにもかかわらず、平成13年度政策評価において、これらの問題認識が明確に示されていない。

*15年度の政策の方向性としては、現在の顕著な変化に対応した補償給付等の実施をすすめるとともに、患者の生活実態や関係自治体の声などを踏まえた、制度の効果的な運用を検討する必要がある。

*平成8年度より、大気汚染に係る環境保健サーベイランス事業が継続的におこなわれているが、調査開始から5年が経過して、この間の知見や蓄積データの分析など評価や総括がなされていない。

*15年度の政策の方向性としては、調査設計の改良も含めて、サーベイランス調査が健康影響調査として、より被害状況の実態に即した機能を果たす方策を検討する必要がある。

以上