あおぞら財団 大阪府自動車排出窒素酸化物及び 粒子状物質総量削減計画への意見
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大阪府自動車排出窒素酸化物及び 粒子状物質総量削減計画への意見

(2002年12月)

あおぞら財団は、大阪・西淀川公害訴訟の和解金の一部を使って設立された団体です。名称にある「公害地域の再生」には、20世紀が環境破壊の世紀であった事実を踏まえ、なぜそれが起こったのか、それが起こらないようにするにはどうすればいいのかといった反省のもとに、新たな方向性を探ろうとの決意がこめられています。こうした視点からご意見を申し上げるものです。

第1に、本計画の考え方についてです。本計画は、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の総量を削減しようとするものですが、そもそもなぜこれらによる大気汚染がいまだ深刻な状況にあるのでしょうか。
大阪・西淀川大気汚染をはじめ、全国各地で起こされた大気汚染裁判の判決では、国が自動車交通需要を増加させる道路を設置したこと及びその後の環境対策を怠ったことにより大気汚染を発生させ、沿道住民に健康被害をもたらたしたことを指摘してきました。まず本計画では、新たな自動車交通需要を発生する開発や計画について、これまでの事業が広域的な環境負荷の観点からなんら制約を受けてこなかった結果が、今日の大気汚染を引き起こしているという反省にたつべきです。

第2に、総量削減の方法について、自動車需要それ自体を削減するための施策を打ち出すことを求めます。
「自動車NOx法」において、平成12年度までに環境基準を達成することを目標としいていたはずであったが実現できなかったことや、「自動車排出窒素酸化物総量削減計画」において、単体規制・車種規制による削減量や低公害車の導入による削減量が成果を挙げたにも関らず削減計画が達成できなかったことは、どんなに単体から出る排ガスを規制したところで、それには一定の限界があることを示してきたといえます。また、「自動車排出窒素酸化物総量削減計画」に基づく削減実績についてみると、大型車の規制についてはいずれの項目においても効果が最も低く、全体に占める貨物系自動車の排出量の割合が大きいことからも、この分野における思い切った対策が必要であることを示しています。
あおぞら財団では、これまで「西淀川道路環境再生プラン」を5回にわったって作成してきました。そのなかでは、幹線道路における大型車の夜間交通規制とその誘導策について提案しています。
お配りした資料「人と環境にやさしいトラック輸送のために」(P11)をご参照ください。あおぞら財団が2000年度に大阪湾岸の事業者を対象にした調査では、まず、阪神間をとおる幹線道路においては地域内事業者の夜間交通量に寄与する割合は極めて低いということ、次に現在、阪神高速道路で実施されている環境ロードプライシングについては、現行の料金設定においては今後も大きな成果が見込めないであろうという結果が出ています。こうした結果を踏まえ、「再生プラン」においては、国道2号線及び43号線の夜間の大型車通行の禁止とこれにあわせた湾岸線の夜間無料化を含めた料金設定のあり方について提唱しています。
本計画においては、国や各行政機関とも調整し、大型車を中心とする自動車交通需要それ自体を抑制する思い切った対策を打ち出すべきであると考えます。

第3に、本計画を推進していく体制の問題です。現行においても様々な施策が網羅的に実施されていますが、これを具体的に実施する体制が不明確です。特に、自動車交通に関する施策は広域的な対策が求められることから、各担当部局や市町村との横断的な取り組みを求めます。また、環境基本計画を踏まえ、地域レベルの計画策定および対策の実施や評価の段階においても、各主体の参加を求めます。
これを具体的に展開してくための方法のひとつとして、各種施策をパッケージ化させ、それを社会実験方式で実施していくという方法が考えられます。実験を準備する段階から地域のさまざまな主体の参加を促し、実施段階においては共同の体験的な学習を積み重ねることにより、地域に適した総合的な施策体系の構築が模索されていくものであると考えます。
あおぞら財団が地元・西淀川区にある中島工業団地協会の協力を得て行ったアンケート調査や経営者との懇談会でも明らかになったことですが、事業者自身の環境問題への関心が高いにも関わらず、経営それ自体が困難な状況下においては、なかなか取り組みの導入に結びつかない現実があります。すでに実施されている補助金制度にあわせ、先ほど述べたような地域レベルでの活動や事業者の自主的な取り組みを応援するような助成制度や税制の優遇など、環境に配慮した活動を誘導する施策の導入を求めます。

第4に、局地汚染対策についてです。局地汚染対策を積み上げていくことによって、各高濃度汚染地域における問題解決の方向性が示されていくものと考えます。特に、大気汚染の直接浄化手法については、その結果のみに効果を求めるのではなく、環境TDMと連動させる形で展開していくことが重要です。
一方において、自動車排ガス局の周辺のみにおいて実施することにより、汚染の実態を覆い隠すことにならないようにすべきです。将来的には、自排局周辺と同様に汚染されていると考えられる地域全体に対して、これを実施していくべきであると考えます。

第5に、交通環境教育の必要性についてです。本計画においては、「普及啓発活動」としてこれが位置づけられていますが、環境教育プログラムとしてこれを普及していくべきであると考えます。イベントや啓発事業も重要なことではありますが、一定の関心のある人への普及活動として効果をあげたとしても、無関心層へのアプローチが非常に弱いという点があります。
まず、交通環境教育の効果的な学習プログラムを開発していく必要があります。すでに大阪府では、体験的な環境学習活動に関する取り組みの蓄積がありますし、本日お配りした資料にもあるように、あおぞら財団でも交通の視点から地域環境に配慮した行動を促す学習プログラムづくりを行っています。こうした行政内の横断的なつながりや、市民や事業者との連携により、交通環境に配慮した行動を促す学習プログラムを開発していくことを求めます。
また、開発したプログラムについては、自治体職員の研修はもとより、運転免許更新時の講習、事業者むけ、ドライバーむけ、学校むけなど、様々な分野において学習の機会が設けられるように求めます。

最後に、新たな公害発生源をつくらないという方向性についてです。これまでの幹線道路や高速道路建設が広域的な交通需要を増大させ、全体として環境負荷を大きくしてきたという経験を踏まえ、総合計画や都市計画においても自動車交通の抑制が図られるようにはたらきかけるべきです。また、この間の大気汚染裁判の判決や環境省などの調査でも明らかになってきているように、PM2.5の汚染が深刻化しています。環境省・国土交通省とも協力して観測体制を整備すると同時に、ディーゼル車対策を強化していくことを求めます。

※参考として配布する資料
・人と環境にやさしいトラック輸送のために
・交通環境教育のすすめ~SCPブロックでみる地域環境の変化~