あおぞら財団 「環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育並びに協働取組の推進に関する基本的な方針」に対するパブリックコメント
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「環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育並びに協働取組の推進に関する基本的な方針」に対するパブリックコメント

意見:
1.基本方針(資料3)/ 省令(資料5)
2.該当箇所 (2頁14行~18行目)

3.意見内容
「私たちの生活が環境の恵みの上に成り立っていることを実感し、私たちの活動に起因する環境負荷が、環境に大きな影響を及ぼしていることを理解し、問題の本質や取組の方法を自ら考え、解決する能力を身に付け、何よりも「行動」に結びつけていくための、環境教育・環境学習」としているが、環境負荷が「私たちの活動に起因する環境負荷」だけしか問題にしていないように読める。環境負荷は、公害のように社会の仕組みの不備や社会矛盾から生まれてきている部分がある。公害を実例とした環境負荷も理解する必要がある。そのことを明記するべきである。
4.理由
環境問題を個人と結び付けて考えることは重要であるが、全てを個人と結び付けて語ることは不可能ではないだろうか。私たちの活動に起因する環境負荷だけでなく、法律の不備によって引き起こされている事象の解決を考える事、現状の不備をどのように乗り越えて解決していくかを考える事も環境教育と言えよう。たとえば、大気汚染の公害訴訟によって、PM2.5の環境基準の設定やNOxPM法が整備されたことなどがその例として挙げられる。現在はない制度をどのように作っていくのかを考える人材を育成することが求められている。

1.基本方針(資料3)/ 省令(資料5)
2.該当箇所 (3頁17行~18行目)

3.意見内容
「今私たちは、地球温暖化の防止、生物多様性の保全、健全な物質循環など多くの課題に直面しています。」とありますが、課題の一つに「公害地域の再生」を加えること。
4.理由
熊本の水俣市、新潟の阿賀野川流域、富山市、四日市市といった4大公害裁判が行われた地域は勿論、東京・大阪・愛知・兵庫・千葉・静岡・岡山・福岡の大気汚染公害指定地域では自動車公害が続き、その他の地域でも土壌汚染や地盤沈下などの環境のリスクを抱えたところが今なおある。公害地域では公害に対する理解が進まず、被害者に対する差別が起こり、住民同士や、企業と住民との間に隔絶が生じている。「公害地域の再生」は地域住民をはじめとする各主体の関係性の回復なくして為しえない。
この問題の解決のためには、問題に係るさまざまな主体をテーブルに着かせること求められ、それにはESDをはじめとする教育からの公害問題へのアプローチが不可欠である。
日本における環境教育の端が「公害」にあるという見解は、研究者の間でも多くの支持を集めている。環境教育等による環境保全の取組を促進する基本方針において、「公害地域の再生」は記載するべき事項である。

1.基本方針(資料3)/ 省令(資料5)
2.該当箇所 (4頁1行~10行目)

3.意見内容
「環境保全を推進していくために求められる人間像」として、「自分の置かれている現状を把握し、発言することができる人間」が必要ではないか。
4.理由
現在挙げられている7項目は、知識を得て、言葉にして、合意形成ができて、他者と共感ができ、理想社会を描いて実行できる人間を育てようとしていると理解した。これは、どこかに苦しんでいる人や物事があり、それらを学び、共感し、行動できる人になるという文脈であり、自分の置かれている状況について把握するという学びは入っているのだろうか。他者への共感と協働だけでは、他人事の枠を打ち破ることはできない。環境問題を私の事としてとらえるためには、自分を分析して現在の立ち位置を見極める事が必要なのではないだろうか。そして、その状況について借りものの言葉ではなく、自分の言葉で発言することが「持続可能な社会づくりのために求められる理想的な人間像」といえるのではないか。自分の意見を述べずして、合意形成をするのはおかしい。環境問題は、被害状況に置かれていたとしても、その事に本人が気がつくのが困難な場合が多い。現在の水俣病の認定問題にしても、公害の教育が十分になされなかったために、当事者が水質汚染や水俣病に気付かずに症状に苦しむという悪循環に陥っている。自分の置かれている現状を把握することは、問題が大きくなればなるほど困難である。そのような状況を打開することが、教育に求められているといえよう。

1.基本方針(資料3)/ 省令(資料5)
2.該当箇所 (4頁26行~27行目)

3.意見内容
「地球温暖化対策、循環型社会の形成、生物多様性の保全をはじめとする今日私たちが直
面する課題」とありますが、課題の一つに「公害地域の再生」を加えること。
4.理由
3頁17行~18行目の理由と同じ

1.基本方針(資料3)/ 省令(資料5)
2.該当箇所 (7頁9行~21行目)

3.意見内容
「未来を創る力」の一つに「自分の意見を表現する力」を加えること。
4.理由
4頁1行~10行目の理由と同じ

1.基本方針(資料3)/ 省令(資料5)
2.該当箇所 (7頁9行~21行目)

3.意見内容
「製品のライフサイクルの視点で温室効果ガスの排出量や生物多様性への影響等の環境負荷をとらえる視点」とで取りあげている視点の一つに、「汚染物質排出による健康被害」を加えること。
4.理由
企業活動の中での問題は温暖化問題や生物多様性だけではない。最大の課題は公害による健康被害である。現在は中国などに製造業が移転している事もあり、海外の汚染問題がクローズアップされることが多いが、日本国内でも神戸製鋼(平成18年5月の加古川製鉄所でのばい煙データ改竄事件)や三菱自動車(平成23年3月の水島工場での大気汚染防止法等の違反)など、毎年コンプライアンス問題が生じている。この事実に即して、公害について記載すべきである。

1.基本方針(資料3)/ 省令(資料5)
2.該当箇所 (11頁18行~19行目)

3.意見内容
「政府は、豊かな自然を保全、育成し、これと共生する社会を構築すること、循環型社会
を形成し、環境への負荷を低減すること」とあるが、「公害地域の再生」も加えること。
4.理由
3頁17行~18行目の理由と同じ

1.基本方針(資料3)/ 省令(資料5)
2.該当箇所 (12頁26行~27行目)

3.意見内容
「私たちと環境との関わりは、過去から未来へと続いていきます。環境保全活動、環境保
全の意欲の増進、環境教育等も、息長く取り組んでいくことが重要です」とあるが、「公害地域の再生」も加えること。
4.理由
3頁17行~18行目の理由と同じ

1.基本方針(資料3)/ 省令(資料5)
2.該当箇所 (18頁16行~19頁4行目)

3.意見内容
改正前には入っていたのにもかかわらず、今回削除した「その際、過去の公害の経験について学び、現在の環境問題の解決にどのようにいかすかを学ぶこと」部分を加えること。
4.理由
公害問題は、行政の努力、企業の努力は勿論であるが、それらを動かしたのは被害者の運動であり、地域住民の住民運動である。持続可能な社会を作る為に活動してきた人たちの生きざまは日本の公害経験での宝であり、基本方針で育成しようとする人間像に重なる。また、立場の違うステークホルダーが話し合いによって折り合いをつける様も、まさにこの基本方針が目指している人間像と言っても過言ではない。公害教育から立ち上がっている環境教育が、なぜ公害経験から学ばないのかが理解できない。

宛先:環境省総合環境政策局環境教育推進室 御中
氏名:公益財団法人公害地域再生センター 林美帆
住所:大阪市西淀川区千舟1-1-1 あおぞらビル4階
電話番号:06-6475-8885

参考:「環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育並びに協働取組の推進に関する基本的な方針」の閣議決定について(お知らせ)