第7次大阪地域公害防止計画(案)に対する意見・提言
2002年10月
第1章 序説
第1節 計画策定の趣旨(P1)
激甚な公害を経験した大阪府域において、本計画が果たしてきた役割は大きい。特に、地域の実情に応じた重点施策の実施は、本計画が示した明確なイニシアティブによって実現されてきた。まず初めに、こうした蓄積をきちんと示す必要がある。その上において、新しい計画においても明確な理念とともに、目標達成のための強い姿勢を示すべきである。
第4節 計画の主要課題
(1)自動車交通公害対策(P4)
二酸化窒素の環境基準が一般局においていずれも0.04ppm以上である現状を踏まえると、沿道における自動車交通公害のみに重点的な対策を講じても、総体として環境基準が達成されるものではない。大阪地域の独自性を発揮する意味においても、一般局を含めた大気汚染対策が必要であることを示すべできである。
第2章 公害防止計画
第1節 主要課題への対応
過去の施策の実施状況及び評価(P11~15)
「自動車NOx法」において、平成12年度までに環境基準を達成することを目標としいてたはずであったが実現できなかったことは、単体規制だけでは限界があることを示した。こうした反省を踏まえ、それに基づく要因分析を行う必要がある。
エ 今後講じる施策及び達成目標(P16~17)
自動車NOx・PM法に基づき実施するとされているが、本計画との達成目標年度が違うなかにあって互いの整合性がとれていない。既存の施策との関連性および本計画の独自性を示すべきである。
大阪府域における環境容量は全体としてすでに限界である現状を踏まえ、交通総量を全体として削減する施策を講じるべきである。
(b)交通流対策(P18~19)
「自動車交通の集中を緩和・解消する」ために建設された道路により、環境汚染が広域に分散してきた、または広域からの交通を集中させてきた教訓を踏まえ、生活道路の整備とは区別し、幹線道路の建設を環境対策として位置づけるべきではない。
立体交差事業においても、自動車交通流を円滑にしたことによって歩行者等の通行が妨げられることのないように考慮すべきである。
(1)-12 国道2号線沿道の自動車排出ガスに係る大気汚染対策(P46の37~38行目)
ボトルネック対策として交差点改良が実施さることにより、交通量がさらに増えたり、歩行者の通行が妨げられるようなことになってはならない。西淀川公害訴訟の和解条項において環境対策としてこれを実施すると確認された経過を踏まえ、交差点への交通量が集中しないための広域的な施策を講じるべきである。
(2)関連諸計画との関係(P53の27行目)
平成22年度末が達成目標年度とされているが、本計画の目標達成年度の整合性がつかない。本計画の位置づけをきちんと示した上で、他の諸計画との関連性を提示すべきである。
第10節 土地利用対策(P200~201)
不適正な土地利用の結果によって公害を生み出し、生活環境を脅かしてきた教訓を踏まえ、環境改善・再生の視点からの目標や枠組みを示す必要がある。同時に、具体策の検討および評価を市民参加のもとに行う仕組みを整備すべきである。
第11節 監視測定体制等の整備及び調査研究等の充実
(2)環境の監視
ア 大気汚染(P204の6行目)
測定局の配置の見直しが統廃合にならなようにすべきである。
騒音対策が実施される地域においては自動車交通量が多いことから、同時に大気汚染の測定局を設置すべきである(例えば、P48~53の地域)。また、新たに設置された幹線道路および幹線道路への迂回路等において交通量が増えた地域においても、測定局を設置すべである。
2 調査研究の充実(P210)
PM2.5の汚染が深刻化するなか、環境省・国土交通省とも協力し、その観測体制について整備する必要がある。
既存の観測結果についても国土交通省など他機関が実施するデータの収集につとめ、総合的な汚染影響の調査を実施すべきである。
第12節 環境影響評価等(P212)
情報公開法の趣旨を踏まえた各種情報を積極的に公開すると同時に、市民のプロセス参加を促す仕組みを整備すべきである。また、国土・地域計画などの各種政策や計画に環境面から適正にコミットする視点から、戦略的環境アセスメントの制度化を視野に入れた目標を掲げるべきである。
第13節 環境保健対策・公害紛争処理・環境犯罪対策
1 環境保健対策
(1)公害健康被害対策について(P215)
「公害健康被害の補償等に関する法律」(公健法)に基づき、認定患者への公正な障害補償費等の給付が迅速かつ公正に実施されていることを評価する。
同法に基づく公害保健福祉事業については、制度が創設(1974年9月)されてから指定地域解除の法改正(1988年)まで14年、その後さらに14年を経て新規認定が終了したことにより、既存の認定患者の加齢が全国的に進んでいるにもかかわらず(平成13年3月末現在、60歳以上の被認定者構成割合は39.6%)、公害保健対策において、これらの問題認識が明確に示されていない。
今後の公害健康被害対策の方向性としては、現在の顕著な変化に対応した補償給付等の実施をすすめるとともに、患者の生活実態や関係自治体の声などを踏まえた、制度の効果的な運用の検討が必要である。また、大阪市および府内6市においては、指定地域解除後にも新規認定患者の救済をおこなっているが、年齢制限等の緩和及び撤廃を図るなど、自治体救済制度の改善・充実が望まれる。
(2)健康影響調査等の実施について(P216)
平成8年度より、大気汚染に係る環境保健サーベイランス事業が継続的におこなわれているが、調査開始から5年が経過して、この間の知見や蓄積データの分析など評価や総括がなされていない。
今後の方向性としては、調査設計の改良も含めて、サーベイランス調査が健康影響調査として、より被害状況の実態に即した機能を果たす方策の検討が必要である。
第4章 各主体の自主的積極的取組に対する支援施策
1 環境教育・環境学習等の推進(P222 13行目からの部分)
「国、市町村、NPO等と連携しながら」とあるが、どのような方法で連携するのか中身を記載する必要がある。NPOや市民の立場からは、行政との連携はなかなか簡単にできるものではないので、それ自体が課題となる。
また、環境教育・環境学習の推進には、学校や企業との連携も欠かせないので、その点の加筆が必要である。
2 環境情報の提供(P222)
快適な自然・社会環境の形成、将来的な環境保全の持続のために、公害・環境問題の歴史的な経緯を踏まえ、過去の体験や資料の保存が必要である。そのために、行政機関や市民社会に残る公害・環境問題の資料や情報を保存し、広く情報公開など活用していく必要があり、そのための施設の充実が望まれる。
第5章 計画の実効的実施
第1節 計画の推進体制と各主体の連携(P223)
地域の公害問題は、各汚染者の排出量を削減するだけでなく、社会のあらゆる主体の協力によって解決されるものである。環境基本計画の趣旨を踏まえ、地域のNGO・NPOが参加できるシステムやルールを確立する他、本計画の推進をパートナーシップで行っていく体制を整備すべきである。
第2節 経費の概要(P228)
平成13年度の公害財特法改正にあたって、補助金の廃棄物処理偏重を修正し、地域の特徴にあわせた環境改善目標を解決するための財政支援を行う方針が出されたことを踏まえ、本計画を裏付ける予算措置の内訳について示されたい。
第2節 各種計画との連携(P229~231)
公害防止計画が定められている都市においては、都市計画の策定に当たって当該計画に適合したものでなければならないとされている(都市計画法13条)。公害防止計画と環境保全以外の諸計画との関連性も明記し、これに伴う推進体制を明記すべきである。同時に、諸計画に基づく個別事業において、環境への配慮が適正に行われているかを点検する体制を明記すべきある。