中央環境審議会大気環境部会「自動車排出ガス総合対策小委員会」ヒアリングに対する意見
2005年10月27日
中央環境審議会大気環境部会
「自動車排出ガス総合対策小委員会」ヒアリング
自動車排出窒素酸化物等による大気の汚染の防止に関する対策について
あおぞら財団(財団法人公害地域再生センター) 藤江徹
1.あおぞら財団は公害地域の再生、環境再生に 被害者・住民の立場からとりくむNPOです
・財団法人公害地域再生センターは、大阪・西淀川大気汚染公害裁判の企業との和解金の一部を基金にして、公害患者たちが設立したNPOです。公害地域の再生をめざして活動しています。
・具体的には、都市の大気汚染問題の改善にむけた道路環境対策の提言づくりやCO2削減に効果のあるエコドライブの実践、公害の経験を国内のみならず海外にも広く伝えていくこと、次の世代を担う子どもたちへの公害・環境学習の実施、高齢化する公害患者たちの生きがいづくりなどに取り組んでいます。
・こうした活動に、公害被害者や市民と一緒に取り組んでいる立場から意見を述べます
2.自動車NOx・PM法中間目標年度報告についての認識
・大気汚染については、様々な規制・環境対策によって、NO2及びSPM等、全体的には改善の傾向が認められています。
・今後、課題とされるのは、未だ環境基準の上限値(NO2)が達成されていない局地汚染対策、全ての地域における下限値の達成、より細かい粒子状物質PM2.5への対策、これまで対象とされていなかった大気中の重金属や有害化学物質への対策が必要と考えます。
・とはいえ、都市部ではぜんそく患者が増え続けています。アスベスト問題を例にあげるまでもなく、自動車からの排出ガスが含む将来的に健康被害をもたらす恐れのある物質については、随時、環境監視とともに、対策を行っていく必要があると考えます。
3.今後の対策についての提案
(1)自動車交通総量の削減をすすめ、「人と環境にやさしい都市づくり」へ
・大気汚染だけではなく、自動車交通及び道路環境による市民の暮らしへの影響は、健康被害・騒音・景観破壊・振動など多岐に渡ります。対策としては、単体規制とともに、自動車交通総量そのものを削減していくことが、最優先課題です。
・ NO 2 ・ SPM 等の大気汚染物質にとどまらず、地球温暖化対策としての CO 2 削減を図る上でも、自動車に依存しないまちづくり、持続可能な都市づくりが求められており、基本的な発想を「クルマ優先の都市づくり」から「人と環境にやさしい都市づくり」へと都市・交通政策を転換していくことだと思います。
・ 例えば自動車の低公害化が進み、大気汚染が緩和されたとしても、そもそも自動車の利用を前提にする社会が環境にやさしいのか、暮らしやすいまちなのか、といった都市づくりの方向性を含めて検討しながら、総合的に大気汚染対策に取り組む必要があります。
・ 同時に、大型車や交通量が集中している地域などの局地汚染地域は緊急課題です。環境ロードプライシングの強化、自動車総量規制、沿道の都市構造の改編などの対策が必要です。
・ 地域によって交通問題は様々であり、今後は、大気汚染物質の改善も含めた総合的な交通に関する環境対策を、全国一律ではなく、地域特性に合わせて進めていくことができるような政策を進めていただきたい。
・ 例えば、地域毎の交通政策全般についてのあるべき基本理念・政策を明確にした「地域交通環境マスタープラン」を策定し、地域特性に応じた環境指標を設けた上での施策の実施を図るべきである。
・この計画策定にあたっては、目標とする環境指標の設置や様々なシュミレーション等を用い、地域住民の理解及び参加を得ながら進められることが必要です。
・ また、計画に基づいて地方が公共交通機関の整備など行うには、自主財源や国からの財源支援が確保されてこそ可能になるといえます。
(2)ハード面だけでなく、ソフト面も含めた総合的な対策を
・ 自動車交通問題の解決に向けては、道路構造の改善や低公害車の普及などハード面での対策に加え、自動車を使う人間のための技術や対策が不可欠です。
・ あおぞら財団では、中小運送事業者が参加するエコドライブの普及事業を進めてきました。
・ 現在、自動車NOx・PM法による規制や不景気によって、運送事業者、中でも8割以上を占める中小運送事業者は経営上非常に厳しい状況におかれていますが、彼らの協力なくしては、環境改善はありえません。こうした事業者が意欲的に環境対策に取り組めるような仕組みづくりが必要です。
・ エコドライブとは「環境にやさしい運転」のことで、具体的には、無用なアイドリングをやめる、無駄な空ぶかしをやめる、急発進・急加速をやめる、経済速度で走行する、などです。
・ エコドライブは、環境面、安全面、経済面での効果に加え、「環境を大切にしようという心の芽生え」を促します。ドライバーをはじめ事業所あげてエコドライブに取り組む社員のみなさん一人一人の意識と行動の変化に大きな意義があるとおもいます。
・ また、先行的な事業者の取り組みは、社会全体への訴えとなり、市民が「環境」へ目を向け、行動に移るためのきっかけになると思います。
(3)市民、行政、企業、NPOが協働で取り組む仕組みづくりを!
・あおぞら財団では、2年間のエコドライブ実験期間を得て、今年は39社316台のトラックを対象とした普及事業を行っています。この事業は、運輸業界、民間企業、大学、NPOなどが協力して実施するものです。
・ 環境ロードプライシング、公共交通の利用促進などは、行政主導型で進められていますが、市民や企業の自発的な取り組みがなければ効果を発揮しません。
・ 今後の環境対策には、自動車交通問題の現状、それに対する行政や企業の取り組みなどを、市民や企業に広く理解していただき、社会全体で自動車利用の意識や利用方法を根本的に変えていく必要があります。
・ そのためには、民間からの自発的な取り組みが地域の交通問題の解決に向けて道を開いていくと考えられます。行政だけでなく、地域で生活し働くさまざまな主体が参加することが必要であり、そうした参加を可能とする仕組みづくりが求められています。
以上