あおぞら財団 大野川緑陰道路と矢倉緑地公園をつなぐ自然観察ゾーンづくりの提案
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大野川緑陰道路と矢倉緑地公園をつなぐ自然観察ゾーンづくりの提案

2001年12月
西淀自然文化協会
(財)公害地域再生センター(あおぞら財団)

1.大野川緑陰道路と矢倉海岸

大阪湾最奥部に位置する西淀川区はその昔、縦横に水路が走るのどかな田園地帯だった。大消費地に隣接した同区は、戦前から紡績、化学などの工場が進出する典型的な住工混在のまちであった。大野川は原材料を運ぶ水路として活用された。

1960年に始まる高度経済成長は西淀川に深刻な大気汚染公害をもたらし、その最大の犠牲者は子どもとお年寄りであった。公害の根絶と被害者の救済を求める声が、市民運動として広がりを見せるなか、公害の防止と被害者救済の法制度が確立された。

このころの大野川は、ドブ川となり悪臭を放っていた。緑陰道路が、石油パイプラインや高速道路化計画を排除して歩行者・自転車専用道路として整備される背景には、公害をなくしたいとの市民の強い願いがあった。それは、後の矢倉海岸の整備を求める市民運動へと受け継がれた。

淀川と神崎川に挟まれた汽水域に位置する矢倉海岸は、室戸(1945年)、ジェーン(1950年)と相次ぐ台風による高潮で水没、その後は防潮堤をつくらず、埋め立てによるかさ上げのあと長期にわたって放置されたため、手つかずの自然環境が形成された。そこには、川、海、干潟、草本群落とがセットになった多様な生き物の存在を可能にした。西淀まちと自然の会による調査では、同海岸にはかつて大きな水たまりができ、コオイムシが棲み、コミミズクが観察されています。200年8月、大阪市が取得した16.6haのうち2.4haを大気汚染対策緑地として整備、緑による大気浄化、海辺の自然の保全、住民の憩いの場として整備完成した。残りの敷地も広域下水処理場としての整備が予定されている。

2.私たちがめさすもの

(1)「財産」を活かして

都市の真ん中にあって約1万本の高木、12万本の低木がつながる3.8kmの緑のベルト・大野川緑陰道路は、現状でも価値のある自然であり、環境学習などに欠かせないフィールドとして存在している。あおぞら財団でも発足以来、この緑道や矢倉海岸を舞台にさまざまな活動を蓄積してきた。大野川緑陰道路と矢倉海岸という「財産」を活かして後世に伝えるためにも、自然観察ゾーンの整備は欠かせない。また、海につながるゾーン整備は、都市の再生のシンボルとなりうるものである。

(2)子どもの主体者としての参加

事業への市民参加、とりわけ未来の主人公である子どもを主体者として参加させる。子どもたちの意見や願いを事業計画に反映させるとともに、調査や事業への参加を組織することは、地域づくりの新しい方向として重視されなければならない。

(3)自然と環境が見えてくる

廃棄物によって埋め立てられた矢倉海岸の履歴をふまえ、ビオトープによる環境に適応する植生および生きもの調査を実施する。またこの調査では、下水処理水の利用を通して将来の活用計画につなぐデータの蓄積をはかる。ビオトープづくりをはじめ、自然観察ゾーン整備事業を通して、市民・子どもたちは、自然守ることの大切さを学び、環境の保全に自ら働きかける市民としての成長をめざす。また、公園や下水道など市民生活と直結している行政への理解と関心を高め、地域づくりの主体者として活動する。

3.何からはじめるか

(1)知る・学ぶ

矢倉海岸と大野川緑陰道路での植生調査、野鳥観察、タンポポやセミのぬけがら調査などの蓄積の上にさらに調査データの積み上げをはかる。大人と子どもによる調査活動と並行してビオトープについて学習する。また先進経験についても学ぶ。

<2001年度~2002年度>
大人向け学習会…全4回
矢倉海岸の調査観察…全4回 春夏秋冬(自然、野鳥、水質)
ビオトープ先進経験見学
子どもむけ学習会…生きものしらべ
私たちのまちの歴史(ビオトープって何?)
矢倉の生きものしらべ(草地、干潟、野鳥など)
水質しらべ
マップづくりワークショップ
どんなビオトープ?…夢を絵に描いてみよう

(2)みんなでつくる

学習と活動を通してビオトープづくりへの機運を盛り上げるとともに、学校、町内会、子供会などの協力・理解をとりつける。ビオトープづくりへの区民の参加、親子、若者の参加をよびかける。

<2002年度~2005年度>
ビオトープにチャレンジしよう
ビオトープづくり
市民参加ワークショップ
実践交流会/シンポジウム

(3)調べる・発信する

整備中を含めビオトープとその周辺の自然、生きもの、水質などの観察を続ける。調査結果をもとにワークショップ形式による観察マップづくり、他地域との経験交流などを実施するとともに、「矢倉海岸整備計画への提案」を作成・発表する。

<2003年度~>
ビオトープと周辺での観察データの蓄積
矢倉海岸と大野川緑陰道路をつかった市民参加イベント(毎年春、秋)
「矢倉海岸整備計画への提案」づくり

●参考資料

Libella 1997年4月、5月、7月、2001年11月
西淀川から世界へ「大阪湾ベイエリア再生にむけた提言コンペ」記録集
社団法人大阪湾ベイエリア開発推進機構/なぎさ海道ワークショップ資料
あおぞら通信 2000年夏季号、2001年春季号、夏季号
西淀川地域の環境再生にむけたあおぞら財団の提案から(2000年3月)
まちといきもの No5、No63