21世紀を環境再生の時代に~NGO国際会議と市民のつどい~
取り組みの概要
開催趣旨
20世紀は、未曾有の環境破壊が進行し、それが数え切れないほどの人間のいのちと健康を奪い、あらゆる生き物の脅威となってきました。21世紀は、今世紀の環境破壊に対する真摯な反省の上に立って、人びとの英知で環境は再生できるということを実践のなかで明らかにし、人類の確信にしていく必要があります。この「NGO国際会議」と「市民のつどい」では公害や環境破壊を経験しながらも、環境の再生に向けて努力している国内やアジア、ヨーロッパのNGO関係者が集まり、取り組みを交流し、学びあい、提案づくりをおこないます。さらに、アジア・太平洋地域の都市環境の改善をめざす「クリーンな環境のための北九州イニシアティブ会議」(11月に北九州で開催/ESCAP:国連アジア太平洋経済社会委員会)との連携につとめます。
日程:2001年11月20日(火)~11月27日(火)
20日 海外招聘者富山到着
21日 イタイイタイ病 神通川流域視察
22日 北九州へ移動/北九州市内見学/全体打合せ(アピール文検討等)
23日 NGO国際会議(はじまりの全体会議、分科会)
24日 NGO国際会議(まとめの全体会議)、市民のつどい
25日 水俣へ移動/水俣視察
26日 水俣視察
27日 海外招聘者帰国
報告者
①海外
ノ ユウンヒ(元ソウル大学環境大学院院長/韓国)
シャルマ,プラナイ(サンバブナ民衆診療所/インド)
ビー,ラシダ(ボパールガス被害女性文具労働者組合/インド)
イー ユジン(グリーンコリア/韓国)
王 燦発(公害被害者法律援助センター/中国)
李 秀容(台湾環境保護連盟/台湾)
ズ ギゼ(釜山大学生物学部/韓国)
エストラーダ,アメリー(環境法律援助センター/フィリピン)
スパーリング,カルステン(フォールム・ヴォバーン/ドイツ)
ヌーダルムチョ,アノチャ(反大気汚染環境保護財団/タイ)
フェラーリ,アレッサンドロ(イタリア・ノストラ/イタリア)
マットランド,ロジャー(ノース・ケンジントン・アメニティ・トラスト/イギリス)
②国内
宮本憲一(滋賀大学、日本環境会議)
佐々木恵子(IGES北九州事務所)
橋口三郎(水俣病被害者の会全国連絡会)
小板橋稔市良(新横田基地公害訴訟団)
畑 明郎(大阪市立大学大学院)
林 功(全国公害患者の会連合会)
吉山 寛(高尾山天狗裁判原告団)
大浜 清(千葉の干潟を守る会)
淺野弥三一(尼崎 ひと・まち・赤とんぼセンター)
吉本哲裕(水俣市総務企画部企画課)
宇井 純(沖縄環境ネットワーク)
南部和見(響灘を危険物ごみ捨て場にするなの会)
概要
①21世紀を環境再生の時代に~NGO国際会議と市民のつどい~
会場:北九州学術研究都市(北九州市若松区)
参加者数:23日=約180人、24日=約250人プログラム:
<NGO国際会議>主催:全国公害患者の会連合会
11月23日午前 はじまりの全体会議
11月23日午後 分科会
11月24日午前 まとめの全体会議
<市民のつどい>主催:環境再生にむけたNGO国際会議よびかけ団体
11月24日午後 第1部 各地域からの事例報告 第2部 パネルディスカッション、まとめ
内容:
<NGO国際会議>
1日目午前の「はじまりの全体会議」では宮本憲一・滋賀大学学長が、基調提案をおこない、西欧社会の開発政策がもたらした公害、環境再生のための課題などについて報告しました。続いてIGES北九州事務所の佐々木恵子主任が「北九州イニシアティブ会議」の報告をおこない、韓国からはノ ユウンヒ・元ソウル大学環境大学院院長が「韓国における環境回復の取り組み」と題して、韓国の公害・環境問題についての歴史や最近の取り組みを紹介しました。
午後は3つの分科会にわかれて、各地からの事例が報告され、活発な意見交換がおこなわれました。
2日目の午前「まとめの全体会議」では「環境再生にむけた北九州アピール」を採択しました。
<市民のつどい>
2日目午後の「市民のつどい」は2部構成でおこなわれました。第1部は「各地域からの事例報告」として、海外からはインド、フィリピン、韓国、イタリア、イギリスが、日本からは水俣、沖縄、北九州からそれぞれ報告がありました。
第2部では淡路剛久・立教大学法学部長をコーディネーターに「足元からサステイナブル・ソサイエティを!」と題してパネルディスカッションをおこないました。パネリストの藤井絢子・滋賀県環境生活共同組合理事長は、大量生産・大量消費型の社会から循環型社会への転換をいかにはかるべきかについて、地域での具体的な実践例を紹介しました。同じくパネリストのノ ユウンヒ氏(韓国)は、「自然を畏れ、人間も自然の一員と考える東洋思想の精神でのぞめば、破壊された環境も再生され、環境破壊もおこりにくくなるだろう」とし、環境再生運動におけるアジア思想の重要性を語りました。
淡路氏は「とりわけアジアでは公害に苦しむ被害者が存在している現状の中で、さらに「再生」を語らなければならない。そうでなければ次の時代は来ない」と述べ、そんな状況だからこそ、足元から持続可能な地域社会をつくっていく必要性を強調し、パネルディスカッションをしめくくりました。
②常設パネル展示「地域の環境再生に取り組む団体の紹介」
主催: 全国公害患者の会連合会 11月23日~24日 2日間(会議場内イベントホール) 参加団体: あまけん(尼崎南部再生研究室)/CASA(地球環境と大気汚染を考える全国市民会議)/響灘を危険物ごみ捨て場にするなの会(するなの会)/みずしま財団/あおぞら財団
③神通川流域視察(11月21日)
主催: 全国公害患者の会連合会 案 内: 畑明郎(大阪市立大学教授)、坂巻幸雄(技術士)、達脇明子(あおぞら財団) 参加者: イー ユジン/王 燦発/李 秀容/ズ ギゼ/エストラーダ,アメリー/スパーリング,カルステン/ヌーダルムチョ,アノチャ/フェラーリ,アレッサンドロ/マットランド,ロジャー 視察地: 神2ダム~神1ダム~新猪谷ダム/神岡鉱山視察鹿間工場~六郎工場~和佐保堆積場/北電牧発電所~茂住選鉱場跡/神3ダム~牛ヶ首用水視察/清流会館/土壌復元工事現場(富山市新保地区) 内 容: 富山県神通川流域におけるカドミウムによる公害、イタイイタイ病や土壌汚染について畑明郎氏と坂巻幸雄氏が解説をおこないました。さらに汚染の原因となった神岡鉱山、現在取り組まれている土壌汚染の復元現場などを視察しました。 参加者には三井金属鉱業が現在も操業を続けていることに対する驚きがあり、とくに現在の環境対策、鉱山跡地の利用方法や汚染農地の復元方法などについて質問が多く出ました。
④北九州市内見学(11月22日)
主 催: 全国公害患者の会連合会 案 内: 筧秀美(北九州市環境局)、達脇明子、傘木宏夫(あおぞら財団) 参加者: 「神通川流域視察」と同じ 視察地: 高塔山公園 内 容: 八幡製鉄所などによる北九州の公害と行政の対策、住民運動などについて市環境局およびあおぞら財団職員が解説をおこないました。視察地の高塔山公園からは北九州市内の工業集積地が一望できます。参加者からは現在の北九州の都市開発について関心がよせられました。
⑤水俣視察(11月25日~26日)
主 催: 全国公害患者の会連合会 案 内: 水俣被害者の会、早川光俊(CASA専務理事)、鎗山善理子(あおぞら財団) 参加者: シャルマ,プラナイ/ビー,ラシダ/イー ユジン/王 燦発/李 秀容/エストラーダ,アメリー/スパーリング,カルステン/ヌーダルムチョ,アノチャ/フェラーリ,アレッサンドロ 視察地: 水俣協立病院/水俣病資料館/チッソ水俣工場/水俣市クリーンセンター/水俣病関係施設見学(水俣湾埋立地、排水口等) 内 容: 水俣病の原因や被害の状況、住民運動の経過などを被害者本人や医師、運動家から説明がありました。水俣病によって地域が受けた甚大な被害やその回復に向けた取り組みを理解するため、水俣病資料館やチッソ水俣工場、水俣湾埋立地や工場の排水口などの見学をおこないました。また、現在の環境活動として、水俣市クリーンセンターの職員が「ゴミの23分別」の取り組みを紹介しました。参加者からは、汚染された海の埋立方法の安全性について不安の声があがりました。その他、チッソと住民の関係、企業体質の問題などについて質問がありました。
【よびかけ団体】
アジア太平洋九州都市環境フォーラム(代表:鈴木絲子)
沖縄環境ネットワーク(世話人代表:宇井純)
気候ネットワーク(代表:浅岡美恵)
財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)(理事長:森脇君雄)
滋賀県環境生活協同組合(理事長:藤井絢子)
全国公害被害者総行動実行委員会(代表委員:橋口三郎)
日本環境会議(代表理事:宮本憲一)
本事業において全国公害患者の会連合会は環境事業団地球環境基金の助成金を使用しています。