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【連載】タンデム自転車体験記「初めての海外旅行 台湾サイクリングに参加して」その4 8月22日旅行1日目 日本から台北・新北投「シンペイトウ」後半 阿佐 和幸

※「大阪でタンデム自転車を楽しむ会」の記事の転載です。

【連載】タンデム自転車体験記
「初めての海外旅行 台湾サイクリングに参加して」
阿佐 和幸
その4 8月22日旅行1日目 日本から台北・新北投「シンペイトウ」後半

桃園「トウエン」国際空港に到着したのは台湾時間の14時過ぎであった。台湾は日本より1時間遅い時差である。本来なら時計を1時間遅らさないといけないのであるが、まあ1時間と言うことで皆さん時計を合わせ直している人はあまりいなかったようである。
飛行機を降りて、数分間長い通路を歩いた。空港内は適度に冷房が効いていて、心地よい。関西空港のようにモノレールはない。しかし、免税店や飲食店などが通路の左右ににぎやかに並んでいる。そして、日本ではあまり匂ったことのない甘いような少し辛そうな独特のにおいが、鼻をぴくぴくと動かしてくる。海外に行くとその国独特のにおいというものがあると聞いたことがあるが、これが台湾のにおいなのかなあと思い、Oさんに尋ねたところ、
「その通り。これが台湾の食べ物屋さんの独特のにおいです。これからずっとこれと付き合うことになるよ。」と教えてくれた。
わたしの勘は当たっていたのである。

両替をする場所に到着し、日本円を台湾ドルに両替する。台湾ドル1ドルは日本円換算でだいたい3.5円くらいである。一体いくら使うのか予想も付かなかったので、とりあえず、15,000円を両替した。しかし手数料を取られるので、15,000円すべてが戻ってくるわけではない。台湾の物価は日本のだいたい2/3ぐらいと聞いている。

入国手続きである。パスポートを手に持ち、20分くらい順番を待った。当然ながら、話し声で聞こえてくるのは日本語ではなく、ほとんどが中国語で、その他いろいろな言葉が入り乱れていた。まだ入国はしていないものの、ここはすでにれっきとした外国なのである。話し言葉を聞いてそれを実感した。

もし、ここでなにかが起こり、旅行の仲間とはぐれてしまい私一人になったらえらいことになるなあなどと考えていた。

いよいよ私の手続きの順番が来た。もし、何か分らない言葉で話されたらどうしようかと想ったが、何事もなくパスポートを返してくれてほっとした。これで正真正銘生まれて初めて海外の地を踏んだのである。少し感動した。 機内に預けた荷物を受け取り、いよいよこれから台湾旅行が始まるのである。

そして、空港の入り口近くに到着したところ、これから5日間いろいろとお世話になる、現地のボランティアの方がなんと8名くらい待っていてくれた。男性が6名くらい、女性が2名くらいであった。わたしの予想では、2名か3名くらいの方が出迎えてくれるのだろうと想っていたので、想像以上の歓迎と、我々の訪問に対してなにかすごく期待されているのかなあなど予想とは違った展開に少し驚いた。旅行の手配をしていただいたOさんと現地の方が流暢な英語でいろいろ話をしていたが、私にはさっぱり分らない。現地の方も挨拶に来てくださるが、やはり英語なのでなんと返して良いのかなかなか難しい。とりあえず、私の名前を「カズ」と言うこととして、名前の紹介と「サンキュー」と言うことくらいしか返すことはできなかった。やはり、少しは英語は話せた方が良いと言うことがこの時になって、やっと分ったような気がした。これからどうやって、コミュニケーションを取っていけば良いのか、またまた心配が増えた。

その内に、かなり大きな横断幕が用意され、それを持ちながらの写真撮影タイムとなった。現地の方8名が何枚も撮るので、かなり時間がかかった。台湾の方は写真撮影が大好きのようで、これから旅行が終わるまであちこちで大撮影会がずっと続くこととなるのである。

いよいよ空港から観光に出発である。この日はサイクリングはなく、観光タイムである。
外に出ると曇り空で、意外と涼しかった。昨日は台風で相当に雨風が強かったとのことであったが、雨も午前中で上がり、今日は台風の影響もほとんどなくなり、しかも久しぶりに涼しい日のことであった。我々は運も良かったようである。

3台の車に乗車して出発した。台湾は日本と違い右側通行であるので、車は左ハンドルで、歩道は車の右側となる。
ラジオがかかっていたが、当然ながら中国語である。
1時間くらい高速道路を走り、台北の町に入った。市内に入るとかなりの渋滞であった。やはりアジアと言うことで、車の量は相当に多いようである。
運転していただいた方は、少し日本語が分る方であった。日本のテレビドラマが放送されており、それを聞いて日本語を覚えたと言っていた。すごい学習能力である。日本人で洋画を見て英語ができるようになる人なんてほとんどいないのに。

そして最初の観光の目的地中正紀念堂「チュウセイキネンドウ」に到着した。駐車場は地上でなく地下になっていた。ここは戦後の台湾の総統であった「蒋介石」の死去後に、哀悼の意の目的で建てられた宮殿様式の建物である。この建物を警備する儀仗(ぎじょう)隊が毎時交代する場面が観光の風物となっていたが、時間が合わずに見ることはできなかった。周囲を少し見ただけで次に移動となった。

次は龍山寺「リュウサンジ」と言う台湾で一番有名な寺に行った。ここは台湾旅行のツアーにはほとんど組み込まれているという有数の観光地である。寺の近くには「蛇ストリート」と言われるこれまた有名なショッピング街があり、日本で言うと、ちょうど浅草のようなところである。龍山寺「リュウサンジ」が浅草寺で、「蛇ストリート」が浅草の仲見世通りと言ったところである。 車を降りて歩いて行くと路上で歌手らしき人が歌っていたが、もちろん日本語ではない。これを聞いて、やはり外国なのだなあとこれまた実感した。
わたしも龍山寺にお参りすることとした。日本のようにお賽銭をあげてお祈りするのではない。ろうそくと線香を買ってそれを供えてお参りするのである。ろうそくは直径3cmくらいとかなり太いものであった。線香は数本が束になっていて、長さが30cmくらいもある相当に長いものであった。それぞれ火が燃えているところで火を付け、ろうそくはろうそく台、線香はそれを立てるところに立ててからお祈りをした。立てるときはかなり危険なのでOOさんにやっていただいた。 お参りが終わると、雨が降ってきたので、急いで「蛇ストリート」の商店街に移動した。商店街は平日にもかかわらず大勢の人出で賑わっていた。やはり有数の観光地である。商店の店員の呼び込みや歩く人の言葉はこれまた中国語である。こういう声を聞いていて、これまた生まれて初めて日本と違う国に来てしまったのだなあ。もう後戻りはできない。とにかく帰国まで皆さんに迷惑をかけないように日程をこなしていかないとどうしようもないところに来ているのだ。などと考えながら歩いていた。

店は食べ物屋と果物屋さん。そして、足裏をマッサージする店が多い。あちこちで中華鍋をカシャカシャと動かす音がする。空港で感じたあの独特の香辛料のにおいは空港の数倍におっている。台湾のにおい一杯である。

足裏マッサージは、30分で日本円で1,300円くらいと言うところが多かったようである。 蛇ストリートと言う名前の通り、蛇を食べさせてくれるレストランが数軒あった。ウインドウには今これから料理される生きた蛇がたくさん動いていると教えてくれた。また、蛇と同じ入れ物にネズミが入っていて、たぶん「蛇の餌になるのだろう」とも教えてくれた。
現地のボランティアの方が、あげたまんじゅうを買ってくださってなかなか良い味であった。その後旅行終了まで、いろいろと差し入れをしてくださることとなるのである。
蛇の肉が入ったスープを買った人もいた。私は飲まなかったが、果たしてどんな味だったのだろうか?
すっかり日も暮れ、龍山寺「リュウサンジ」を後にして、夕食と歓迎会をしていただくレストランに向かった。そして、20分くらいでかなり大きなレストランに到着。ここでは約2時間半くらい食事と歓迎会と懇親会が行われた。さらに現地のスタッフが増え、総勢20名くらいとなっていた。

いよいよ食事である。私は日本の中華料理のレストランのコースのようなものを想像していたが、それとは少し違うものが出てきた。中国料理よりも日本の味に近いように感じた。周囲が海に囲まれていると言うこともあり、刺身が出てきた。なかなかあっさりしていておいしかった。また、想ったよりも海鮮料理が多く、エビやイカ・タコなどを独特の香辛料で味付けして煮込んだものなどが多く、おいしかった。その他野菜を炒めたものや豚肉をこれまた独特の香辛料で味付けして煮たり焼いたりしたものも、なかなかの味であった。全体的にあっさりしていて日本人にもすごくなじみやすい味だなあと想った。

またグアバジュースがすごく飲みやすかった。冷たいお茶は、独特の甘いもので好き嫌いが分かれるところである。

そして、お互いに自己紹介タイムとなった。英語のできるOさんが可能な限り我々の言葉を訳して伝えてはくれたが、どこまで伝わったかはなかなか難しいところである。

自己紹介では、なにを話してよいか、纏まらずに、すっかり上がってしまった。同じ参加者でも海外旅行の経験が数回ある方は、時々英語も交えて流ちょうに話していた。それを聞いていると、少し情けないなあとも想った。
現地の方々は、いろいろな経歴を持った方が来ておられ、台湾の盲学校に勤務している視覚障害者の方も来られていた。そして、皆さん我々の来訪をすごく歓迎しておられ、明日から共にサイクリングができることをこれまたすごく楽しみにしておられた。

台湾は日本以上に自転車の文化は進んでいるようで、日本ではほとんど公道が走れないタンデム自転車も普通に走ることができ、視覚障害者のスポーツとしてもサイクリングはそれなりに行われているようなことを、話されていた。
おいしい食事も終わり、いよいよ今夜の宿の新北投「シンペイトー」温泉へと向かった。

夜もかなり遅い21時30分頃に宿舎に到着。海外での初宿泊ということとなったが、すごく良い目をすることにはならなかった。
・部屋は想像よりも狭く、洗面所や風呂に行くには段差があった。
・エアコンの音はかなり大きく、そのわりにはあまり冷えなかった。
・また、風呂は温泉であったが、シャワーは無かった。
・タオルや歯ブラシはあったが、浴衣や寝間着は無かった。
もちろん、自由に水道水を飲むことはできないので、部屋にあるミネラル水でしのがなければならない。OOさんいわく、「このような部屋は海外ではまだ良い方だよ。これで普通くらいかな。」と言うことのようである。私も「ここは海外なのだ。日本のビジネスホテルとは状況が違って当たり前である。これが海外旅行なのだ。」と言い聞かせ我慢することとした。

そうこうしている内に、23日の0時を過ぎてしまった。
明日は天気も良くなるらしい。私にとっては未知の距離の暑い中のサイクリングが、いよいよ始まるのである。これからが本番である。なんと言っても、目的はバスや車での観光でなく、あくまでもサイクリングと観光を組み合わせた独自の旅なのである。とにかく早く寝て体力を付けなければと想いつつ、寝ることとした。

・・・次号に続く

寄稿者:阿佐和幸(大阪でタンデム自転車を楽しむ会会員/視覚障がい者)
「ウィズ東淀川のブログ」より転載(掲載日:2013年11月19日)

その1 旅行に行くことを決心するまで
その2 出発までの苦労と不安
その3 8月22日旅行1日目 日本から台北・新北投「シンペイトウ」前半

※あおぞら財団は「大阪でタンデム自転車を楽しむ会」の事務局です。
タンデム自転車のレンタルをおこなっています。詳しくは下記連絡先まで。
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