あおぞら財団では、毎年、環境省職員の「環境問題史現地研修」の受け入れをしています。
今年も昨年同様、1週間前にオンラインで事前学習会を開催し西淀川公害について学んでいただいた後、5月29日〜30日に西淀川での現地研修を実施しました。
今年の参加者は引率者1名を含む計31名。研修は5〜6人のグループ単位で行い、研修で学んだ内容をもとにグループ内にディスカッションしてから、全員に発表するというかたちで進んでいきます。
【1日目 ワークショップおよび多様な関係者からのお話】
一日目(5/29)の午前11:30に、あおぞら財団が所在しているあおぞらビルの3階会議室に集合しました。オリエンテーションとして、プログラム概要説明と自己紹介などを行いました。
自己紹介では、あおぞら財団理事・高田研先生が「KP法(紙芝居プレゼンテーション法)」を紹介しました。紙にコンパクトなキーワードを書き、プレゼンテーションをするという方法です。研修最後の振り返りも「KP法」で発表してもらうため、早速、自己紹介から実践しました。

あおぞら財団事務局長・藤江が研修趣旨を紹介

「KP法」を紹介しながら、自己紹介している高田先生
その後、昔の西淀川の大気汚染に関する写真に基づいて、フォトランゲージがされました。フォトランゲージとは写真を言語化するワークで、各自が昔の大気汚染の実情を想像しながら、グループごとに写真にタイトルを付けます。

写真は何を映しているかとの議論が盛り上がった
フォトランゲージを通して、参加者の皆さんは西淀川公害に対する理解を少し深まったようです。
さらに理解を深めるために、当事者になりきるロールプレイ「あなたの街で公害が起きたら」を実施。
「公害が起きた町」を想定し、市役所職員、公害患者の親、医者、企業関係者など、それぞれの立場を演じました。
「患者さんに寄り添った対応が難しい」「多様な立場の声をもっと聞くべき」といった意見も出され、利害関係の異なる立場の合意形成がいかに難しいかを実感したようです。

多様な立場の方々の合意形成の難しさをお芝居を通して理解する
午後からは、西淀川公害を実際に経験した公害患者の須恵さんの話を聞きました。須恵さんは、辛い公害経験を次世代に伝承する「語り部」の1人として積極的に活動しています。西淀川公害患者と家族の会の事務局長・上田敏幸さんも同席して、当時の公害患者が置かれた厳しい状況を語ってくれました。
参加者からは、「当時、周囲の人は患者をどう見ていたのか」「苦しい生活の中で支えになったものは何か」「これから地方自治体にどんな期待をしているか」といった質問が寄せられ、活発な対話が行われました。

西淀川公害患者の会の須恵さん(左)と上田さん(右)
休憩時間には、あおぞら財団理事である龍谷大政策学部の清水万由子教授のゼミ生が制作した、須恵さんへのインタビュー動画が上映されました。動画の中では、須恵さんの民謡も披露されています。
次は、西淀川大気汚染訴訟弁護団の一員であり、あおぞら財団理事長・村松昭夫先生からの話でした。被告企業の選定、公害と病気の因果関係の立証、共同不法行為の証明など、訴訟における苦労をお話しいただきました。

弁護士視点から公害訴訟を語って村松先生
1日の最後に、グループに分かれて今日の学びを振り返りました。模造紙の真ん中にとテーマを書き、そこから放射状にキーワードやイメージを描きこんでいく「マインドマップ」方式を用いて、各自の「今日の学び・印象に残っていること」、「もう少し深めたいこと」を整理しました。その中で出てきた意見を「KP法」にまとめて発表していただきました。
1日目の振り返りでは、参加者からさまざまな気づきや学びの声があがりました。「行政は企業と住民の間に立つ存在であること」「基準や制度の難しさと、その重要性」「現場の声を直接聴くことの大切さ」などが印象に残った学びとして挙げられました。また、深めたいこととしては「公害を『知らない』から『知っている』に変えていくにはどうすればいいのか?」「もっと公害のことを深く知りたい」といった意欲的な意見が出されました。

ワークショップで今日の学びを振り返る

「KP法」で本日の振り返りを発表している様子
最後は、あおぞら財団役員・スタッフとお茶を囲んでの茶話会で、一日を締めくくりました。
→2日目に続きます
(記・あおぞら財団アルバイト 王子常)