1/18中国環境NGO研修受入 1日目(前半)
あおぞら財団では、中国の環境NGOメンバーを日本に招き、研修プログラムを実施しています。
今年度は1月18日(木)~19日(金)の2日間に、中国から12名の方が西淀川区をおとずれました。
今回の「日中公害・環境問題に関する研修プログラム」では、西淀川地域をフィールドとして、日本での大気汚染公害の経験を中国の環境NGOメンバーに理解してもらい、環境問題の解決に役立ててもらうことを目的としています。
訪問メンバー:
代表:李力 環友科学技術
団員: 1.李力(Li Li)氏 (北京市朝陽区環友科学技術研究センター)
2.阮清鸳(Ruan Qingyuan)氏(北京市朝阳区公众环境研究中心)
3.洪武(Hong Wu)氏(湖南省湘潭市绿叶环保志愿者协会)
4.张頔(Zhang Di)氏(北京市朝阳区环友科学技术研究中心)
5.李雪雁(Li Xueyan)氏(北京市朝阳区环友科学技术研究中心)
6.邓青(Deng Qing)氏(武汉行澈环保公益发展中心)
7.张雯娜(Zhang Wenna)氏(武汉行澈环保公益发展中心)
8.周峰(Zhou Feng)氏(云众世纪(北京)科技有限公司)
9.王丽(Wang Li)氏(广东省中山市小榄花城中学)
10.胡雅杰(Hu Yajie)氏(杭州向冉科技有限公司)
11.施朝(Shi Zhao)氏(北京市朝阳区环友科学技术研究中心)
12.周墨辰(ZHOU MOCHEN)氏(周峰氏親族(息子))
スケジュール:
1月18日(木)
①講義「西淀川公害の概要について」、資料館見学
②公害患者の語り部さんからのお話 (山下明さん)
③公害反対運動のリーダーからのお話
④サイクリングでフィールドワーク(歌島交差点周辺、淀川通り・・・43号線)
1月19日(金)
①大阪市環境局(ATC)見学
②ATCエコプラザ見学
③日中環境問題サロン
1日目の午前中は、西淀川公害とあおぞら財団の活動紹介、西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)の見学(解説:あおぞら財団職員鎗山)をおこない、その後、公害患者の方のお話がありました。
今回は公害患者さんの山下明さん、奥様の山下晴美さんが来てお話をしました。
山下さんは1961年に就職の為、九州から大阪に来られました。西淀川に来たときは空が灰色だったことに驚いたそうです。西淀から阿倍野に移り、また西淀に帰ってきた時は、常時風邪をひいたような状態で、医者にかかっていたそうです、医者に公害によるぜん息ではないかと公害認定を受けることを勧められ、認定を受けました。
山下さんは、ぜん息によるつらい発作や、仕事中に意識を失い一時心肺停止状態にまでなったこと、大変な状況をご家族で協力して乗り越えられてきたことをお話してくださいました。
薬が良くなって大きな発作が起こらなくなったこと、今でもお仕事を続けておられるということもおっしゃっていました。
山下さんのお話の後、皆さんから質問が相次ぎました。
Q:公害によるぜん息と認定されたとき、他の患者さんたちとどのようにつながりを持ったのか?
A:公害認定を受けた後、自分と同じように公害で苦しんでいる人達が患者会(西淀川公害患者と家族の会)として活動をしているということを紹介されたため、自分も患者会に入った。
山下さんから、中国の皆さんに聞きたいことは?ということで質問がありました。
Q:中国では会社が工場から出る煤煙等の問題を国民に対してどのように説明しているのか?それに対してどのように住民は受け止めているか?
A:中国でも環境NGOは増えており、NGOは民衆からこの工場が汚染をしているとの訴えを受けて、政府に報告して対応を要求したり、企業と交渉をする。近年ではインターネットやアプリで、煙害等の汚染の地域について知ることができる。
中国では今、環境問題が重視され、国策のトップにもなっている。政府から国民まで環境問題への意識が高まっているとのことでした。政府上層部でも法律面・政策面でも環境問題に力を入れる傾向にあるそうです。
山下さんは、これから世界でリーダーシップをとっていくのは中国だと思う、公害対策においてもリーダーシップを取れるよう頑張ってほしいと語りかけられました。
続いては、公害被害者総行動デーで40年間代表委員をつとめ、西淀川の公害患者会の原告団団長、西淀川公害患者と家族の会の初代理事長でもある森脇君雄さん、患者会の現事務局長・上田敏幸さんからのお話がありました。
中国の方からの疑問や知りたいことに対して、お二人がお話をされるという形ではじまりました。
Q:工場からの煙等の汚染物質と患者の被害との因果関係の証明のため、日本ではどのような取り組みを行ったか?
A:高度経済成長期、広範囲で多数の人が空気の汚染により被害を受けた。また60年代に住民が、空気・水の汚れに関して国と企業の責任を追及する裁判が起り、勝利した。(四大公害裁判)この勝利が公害による被害を救済しようという大きな契機になった。そして公害健康被害補償法が制定された。大気汚染に関してはより多くの人を救済するための措置がとられることになった。大気汚染被害の場合医療と生活保障にかかるお金は大気汚染物質を出す企業により賄われている。1988年以降は公害指定地域の解除により、認定患者は減少傾向にある。
Q:公害患者さんは公害健康被害補償制度によって、どのような補償を受けられるのか。
A:補償金の他に転地療養・療養相談が受けられる。公害健康福祉事業として、生活がスムーズに送れる様に呼吸訓練等日常の予防事業がある。また空気清浄機の貸し出し等の機器の貸し出し等も行われる。公害健康被害保障制度の対象となるのは、公害によって引き起こされた病気の薬による胃潰瘍、ステロイド剤による腎臓障害等も対象である。この制度の特徴は汚染物質を出した企業が補償の8割を負担している。自動車重量税から残り2割が負担される。環境の汚染者が負担をするという仕組みである。
Q:公害と被害の因果関係、補償制度における認定についてどう証明したか?
A:大気汚染の公害病の場合は認められている病名が気管支喘息・慢性気管支炎・喘息性気管支炎・肺気腫の4つである。それぞれの症状を判断する基準があり、それを患者の主治医が、基準に沿って症状を判断する。医学的データによる検査をする仕組みもある。公害の指定地域を決めて、そこに指定以上の年数居住している、勤めていて公害病と認められる病気の症状のある人が認定患者となる。
この後、神戸製鋼所の火力発電所増設と、環境影響評価(アセスメント)について、お話がありました。
上田:かつて西淀川公害裁判の被告企業であった神戸製鋼所が、火力発電所を増設しようとしている。大量の大気汚染物質と温室効果ガスが出るため、企業とやり取りをして止めてもらおうとしている。日本の場合、一定の規模以上の発電所や道路をつくるときは環境影響評価(アセスメント)をすることが義務づけられている。今日本のアセスメントは、市民も参加して合意形成ができる仕組みにはなっているが、もともと事業者が自分で評価をする仕組みになっていて第三者機関が評価する仕組みにはなっていないという弱点はある。それでも環境にどういう影響を与えるか、環境に影響を与えない措置をどういうふうにやるかということを示す義務が法律に記されている。火力発電所増設に関して、大気汚染物質の総排出量を最近まで明らかにしなかった等神戸製鋼の姿勢に対して残念な気持ちもある。
最後に皆さんで写真撮影をしました。
1日目(後半)の研修はこちら↓
https://aozora.or.jp/archives/30055
2日目の研修はこちら↓
https://aozora.or.jp/archives/30068