全国の道路連絡会
道路連絡会は、大気汚染裁判において原告・国・公団等との間で交わされた和解条項に基づいて設置されたものです。
西淀川、川崎、尼崎、名古屋南部、東京の各地域で行われています。
全国の道路連絡会の経緯
損害賠償と大気汚染物質の排出差 止めを求めた道路公害裁判
- 1978 年に西淀川、1982 年には 川崎、1988 年に尼崎、1989 年に名古屋南部において、公害患者が原告となって国や高速道路公団を被告として、損害賠償と大気汚染物質の排出差 止めを求めて提訴しました。
- 1996 年には、東京都内の公害患者および 未認定患者が原告となり、国・東京都・高速道路公団と自動車メーカーを被告として、大気汚染物質の差止めと損害賠償を求める大気汚染公害裁判を 提訴しました。
- 道路公害裁判を含む大気汚染訴訟について詳しくはこちら
道路公害裁判の和解と道路連絡会の設置
- 西淀川、川崎、尼崎、名古屋南部、東京都各地で提訴されてきた道路公害裁判では、基本的に沿道住民の健康被害と道路からの自動車排ガスとの因果関係と、道路管理者である国等の被害に対する責任を認めてきました。
- 西淀川、川崎では差止めが認められませんでしたが、原告が損害賠償請求権を放棄する代わりに被告による環境改善努力を求める和解条項が合意されています。差止めが認められた尼崎、名古屋でも原告が損害賠償請求権と差止請求権を放棄して同様の和解が成立しています。
- この和解条項に基づき、原告と被告が構成する道路連絡会が設置されました。
全国の道路連絡会
表 全国の道路連絡会の概要
西淀川 | 川崎 | 尼崎 | 名古屋南部 | 東京 | |
一次訴訟年 | 1978年 | 1982年 | 1988年 | 1989年 | 1996年 |
和解年 | 1998年 | 1999年 | 2000年 | 2001年 | 2007年 |
原告の人数 | 726人 | 440人 | 498人 | 292人 | 633人 |
連絡会の構成メンバー | 原告団・弁護団・あおぞら財団・国交省近畿地方整備局・阪神高速道路株式会社 | 原告団・弁護団・国交省関東地方整備局・首都高速道路株式会社 | 原告団・弁護団・学識経験者・国交省近畿地方整備局・阪神高速道路株式会社 | 原告団・弁護団・国交省中部地方整備局・環境省 | 原告団・弁護団・国交省関東地方整備局・首都高速道路株式会社・環境省・東京都 |
連絡会の開始年 | 1998年 | 1999年 | 2001年 | 2002年 | 2008年 |
連絡会の開催回数(頻度)*2014年度まで | 18回(1.1回/年) | 18回(1.2回/年) | 49回(3.8回/年) | 15回(1.3回/年) | 6回(1.0回/年) |
- 西淀川地区道路沿道環境に関する連絡会
- 川崎市南部地区道路沿道環境に関する連絡会
- 尼崎市南部地域道路沿道環境改善に関する連絡会
- 名古屋南部地域道路沿道環境改善に関する連絡会
- 東京地域の道路交通環境改善に関する連絡会
参考文献(全国の道路連絡会の状況を詳しく知るには)
全国公害弁護団連絡会議「総会議案書」:毎年行われる公害弁護団連絡会議の総会では、道路連絡会についても報告されています。 | |
篠原 義仁(著)「よみがえれ青い空―川崎公害裁判からまちづくりへ 」、花伝社、2007年:川崎大気汚染公害裁判の和解からその後の住民による“攻めのまちづくり”10年の記録。「第4章 環境再生とまちづくり」では、川崎道路連絡会についての述べられています。 | |
西村弘(著)「脱クルマ社会の交通政策―移動の自由から交通の自由へ」ミネルヴァ書房 、2007年:都市政策・道路政策などの観点から成功例、失敗例、現在の状況等を検討しつつ、「脱クルマ社会」に向けた交通政策のあるべき姿を模索。「5 道路公害と道路政策」では、尼崎道路連絡会について述べられています。 | |
大久保規子(編著)「緑の交通政策と市民参加 新たな交通価値の実現に向けて」、大阪大学出版界、2016年:人間一人ひとりにとっての交通価値を考慮し、環境、福祉の観点を適切に反映して形成・実施する、持続可能な「緑の交通政策」。「第4章 道路公害訴訟に係る道路連絡会の意義と課題」では、全国道路連絡会の状況について述べられています。 | |
尾崎寛直「大気汚染裁判終結後の道路公害対策―川崎,東京における取り組みから―」、環境と公害 第42巻第3号、岩波書店、2013年 |