大気汚染公害裁判の和解条項に盛り込まれた道路連絡会
- 1998 年の地方裁判所の判決では、道路公害に関して沿道住民の健康被害に対する道路管理者の責任を認めたが、国は控訴しました。
- 原告は賠償請求 権を放棄してでも迅速に環境再生をすすめるため、国に道路環境対策の実施を約束させ、和解を成立させました。
- 和解条項では沿道環境改善方策が示され、その進捗を確認し公害対策を協議するための「西淀川地区道路環境沿 道に関する連絡会」(西淀川道路連絡会)の設置も和解条項に盛り込まれました。
- 道路連絡会は、沿道環境改善施策の履行を原告・被告双方が確認し, 道路環境改善方策について協議するため、原告と被告(国土交通省近畿地方整備局、阪神高速道路株式会社)との間で開催されてきました。
- 1998 年以降、 基本的に毎年 1 回道路連絡会が開催されており、2003 年以降は公開で行 われています。(西淀川道路連絡会の実施状況はこちら)
原告を支援する専門家の検討会「道路提言」Part 1〜6
- 原告が道路連絡会で提起する道路環境対策を検討するために、交通計画 等の専門家に諮問する「西淀川道路対策検討会」が 1998 年 11 月に組織されました。
- 西淀川地域を中心とする阪神地域の道路環境対策を検討し、1998 年から 2006 年にわたり「道路提言」Part 1〜6 を発表しました。
- その内容は、ロードプライシング(路線で通行料金に格差をつけることによって車 の流れを誘導する交通施策)、大型車規制、公共交通体系の整備、道路整備計画の分権化と住民参加、環境 TDM(交通需要管理)社会実験、自転車の活用、地域福祉交通の充実、都市アメニティの回復、コンパクトなま ちづくり等。まさに「持続可能な交通」の考え方を先取りするものでした。
- 最初の提言から 10 年が経過した Part 6 では、交通および環境問題に 関する社会情勢が大きく変化したことを受け、個別の施策の提案ではなく、これからの交通まちづくりの基本的な理念や方向性として、「低速交通」と「地域発」の新たなテーマを提起しています。
大型車削減に消極的な国・高速道路会社
- 上記の「道路提言」をもとに、道路連絡会で、原告団は国・旧道路公団に その実施を迫ってきました。
- しかしながら、国・旧道路公団の対応は残念なが ら十分ではありません。
- 西淀川区を通る国道 43 号は 1 日交通量が約 7 万 台、大型車混入率が 30%以上と府内有数の公害道路であり、同じく30% 以上の大型車混入率のある淀川通りとともに、沿道環境はもとより区内の 大気環境の改善のためにも、大型車対策を強化することが求められています。
- にもかかわらず、国・旧道路公団は、一貫して大型車削減には消極的であり、思い切った大型車湾岸線への誘導策も実施していません。
- 交通量削減と大型車規制の実施が道路連絡会の最重要の課題です。
西淀川道路連絡会で達成できたこと:PM2.5の測定
- 西淀川の和解条項には、新しい施策の一つとして、微小粒子状物質(PM2.5)の測定について明記されています。
- 和解が成立した1995年当時、国際的にPM2.5による大気汚染への関心が高まってきていましたが、PM2.5は日本において環境基準が定まっておらず測定方法も定まっていませんでした。
- 和解条項にPM2.5の観測が盛り込まれたことにより、西淀川ではいち早く2005年度からPM2.5の常時観測が行われることになりました。
- NOx(窒素酸化物)やSPM(浮遊粒子状物質)は低減傾向にあり環境基準を下回ってきていますが、PM2.5は依然として環境基準の上限値を超えています。
- PM2.5の常時観測が行われたことにより、大気が健康の維持に十分といえるほどには清浄な空気となっていないことが把握できました。
実務レベルでのワーキング部会を実施
- 和解条項に具体的に定められた施策の多くはすでに実施されました。
- 原告側が提案する再生プランについて、連絡会でその実現に向けた実質的協議が行われたことはなく、原告の要求と被告の対応がかみあわないまま、原告側は「提案できることはし尽くした」状態となっています。
- これを打開するために、2015年度から2ヶ月に1回ほどのペースで、原告側と国・高速道路会社と共に実務レベルでのワーキング部会を実施しています。
道路管理者の西淀川道路連絡会に関するページ
作成者:aozorafoundation 最終更新日:
2016年6月1日2:56 PM