フードマイレージ買い物ゲーム授業実践報告 小学校編
*実施日 2008年2月21日
*実践小学校 大阪府池田市立神田小学校
*対象 6年生 2クラス (児童数計約80名)
*所要時間 1クラスにつき90分(45分×2)
*講師 あおぞら財団 林 美帆
「買い物から環境を考えよう!」
【授業の流れと子どもの様子】
☆夕食の買い物をしよう!
机に並べられた食材カードには見慣れた野菜、魚、果物など子ども達の好きなものがずらり。講師から「班ごとにひとつの家族になってもらいます!」と言われ、子ども達の中から「エー!!」という戸惑いと喜びの声。みんな、これから何が始まるか興味津々。
①8つの班(現代・春/夏/秋/冬、1970年・春/夏/秋/冬/)に分かれ、各班で食材カードを使って予算内(現代=1400円、1970年=550円)で夕食のメニューを考える。買い物の行き先(近所の店、郊外のスーパー)と交通手段(自転車、バス、自家用車)も選ぶ。
ゲームの説明をしっかり聞いて、買い物ゲーム開始。子ども達は、たくさんあるカードの中から食材を選び、話し合いながらメニューを決めていました。さすが6年生、メニューを決めるのに、それぞれ考えを出し合い相談が続きます。
②考えたメニューを色ペンで画用紙に描く。買った食材やその値段をワークシートに記入する。
子ども達の考えたメニューは実に多様で個性的。そして、考えたメニューを絵に描くのがとても楽しそう。絵が得意な子どもを中心にどの班もしっかり取り組んでいました。(この作業に結構時間がかかりました・・・)
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③各班で夕食のメニューやこだわった所を発表する。
6年生は恥ずかしがり屋さんが多かったのでしょうか。発表は、もう少し大きな声で元気よくして欲しかった。でもメニューの“こだわり”では、「食器にこだわりました!」・「低カロリー」・「栄養を考えて」・「スタミナ!」・「安く」など子ども達のユニークな発想に感心。
☆環境の話を聞こう!
④フードマイレージとは、ある食材がどれくらいの量、どのくらい遠くから運ばれてくるかを示している。従って、食材が産地から消費地までトラックで運ばれて来る過程で、排気ガスや二酸化炭素を排出することから、フードマイレージが大きければ、二酸化炭素もたくさん出ることを理解する。
楽しいゲームで少し緊張が解けた子ども達。でも、今日の学習はここからが大切。「環境の話しをします。」の声がけで、子ども達は頭を切り換え、グラフなどを表示したパワーポイント画面を見ながら、講師の手際よい説明に真剣に耳を傾けていました。
6年生には少し難しい言葉や概念が出てきましたが、ゲームを通して体験したことをベースにした説明だったので、おおかた理解できていました。
⑤各班で、夕食に使った食材カードに書かれている産地を、地図上で探して貼り、フードマイレージを二酸化炭素に換算して表した★印(★印一つはCO2 20g)の数を計算してワークシートに記入する。
「みんなが考えたメニューに使った食材を運んでくるのに出た二酸化炭素はどれくらいかな?★印を数えてみよう。」子ども達はカードの裏に書かれた★を数えて、喜んだり驚いたり。
⑥高速道路地図を重ねて、「交通」と「食材の流通」との関係を知る。
1970年代・現代の高速道路地図を重ねてみると、道路の発達と食材の輸送の関係が視覚的に分かるので、子どもたちも「なるほどー!」と納得顔。
⑦買い物に行く時に選ぶ交通手段によって、二酸化炭素の排出量が違うことに気づく。
人が車で移動するときにも二酸化炭素をたくさん出すということを学びました。ジャガイモ一個より人間一人を運ぶ方が★印がずっと多いのですから。でも“郊外のショッピングセンターに自転車や徒歩で行く”という班もあり、子ども達の体力に感心!
⑧西淀川の1970年代の様子を見て、大気汚染について学び、買い物するときは安心・安全を求めるだけでなく、環境のことも考えることが大切だということを理解する。
「みんなにはまだ選挙権はないけれど、買い物をするということは投票行為と同じである。」という講師の説明に、子ども達は、買い物をするということは、自分たちの環境と密接に関わっていて、自分たちが主体的に関わらなければならない大切な行動なんだということを感じたのではないでしょうか。
【子ども達にとってのフードマイレージ買い物ゲーム】
今回の授業を観察していて、子ども達が夕食作りというシミュレーショ
ンゲームに、生き生きと取り組んでいたのが印象的だった。この段階では、子ども達はフードマイレージのことや二酸化炭素のことなど何も考えることなく、食べたい食材を予算内で出来るだけ集めてメニューを考える。しかし、この楽しいゲームは、実は次の環境について学ぶ時間の重要な土台となっている。たいていの子どもは食べる事に興味があり、食べることや買い物は楽しいことなので、あとで突きつけられる深刻な問題との心理的なギャップは大きいと思われる。けれど、そのギャップを見事に埋めることが出来る柔軟性が、子どもにはあるのではないか。確かに、このゲームを通して得られる子どもの学びは、すぐに行動としてあらわれるたぐいのものではないかもしれないが、このギャップが大きいからこそ子どもの心に何らかの「引っかかり」を残し、その後の様々な学習や経験を通して、子ども自身が学びを形作っていくであろうと思った。
宮本由貴