第7回西淀川道路連絡会が公開で実施されました(2003年10月21日)
西淀川道路連絡会とは?
大阪・西淀川公害裁判において原告・国・公団との間で交わされた和解条項に基づいて設置されている機関(1998年〜)。西淀川地域の道路における環境施策の円滑かつ効率的な実施に資することを目的とし、国土交通省近畿地方整備局、阪神高速道路公団、原告団との間で、対象道路の環境等に関すること、対象道路の道路構造対策に関すること、その他必要な事項に関すること、について意見交換するため、年1回開催されています。
同様の連絡会は、川崎、尼崎、名古屋南部の各地域でも行われています。
公開の意義
公共事業に対する市民参加のあり方は長らく課題となっていることです。そうした中、最近では、パブリック・インボルブメントとして、計画のなるべく早い段階から市民が参加できる制度が整えられつつあります。現在、関東地域で実施されている「PI外環沿線協議会」はその先駆的な取り組みといえるでしょう。
また、すでに実施した事業に関しては、近年では河川法の改正により「淀川水系流域委員会」が設置さ、そのあり方について注目をあびました。しかし、道路事業に関しては参加の仕組みそれ自体がないというのが現状です。
道路連絡会は、国・公団と原告団との間での意見交換の場であり、地域住民が参加をする場ではありません。しかし、行政と住民とのパートナーシップや市民参画、情報公開のあり方が議論される中、西淀川道路連絡会が公開で実施されることはその先鞭をつけるものであるといえます。
西淀川公害訴訟とは?
高度経済成長期における、企業からのばい煙と道路からの排ガスによる都市型複合大気汚染の法的責任を初めて問うた、全国でも最大規模の公害訴訟。阪神工業地帯の主要企業10社と国・阪神高速道路公団を相手取り、健康被害に対する損害賠償と環境基準を越える汚染物質の排出差し止めを求めて、1978(昭和53)年に提訴しました。
1995年7月の地裁判決(2〜4次)では、道路から排出される汚染物質と健康被害との因果関係があるとして、国・公団の責任を初めて認め、川崎・尼崎などの判決に影響を与えました。なお、企業との間では、1995年3月に和解が成立しています。
公開にいたる経過
昨年10月、尼崎公害訴訟の原告・弁護団らが2002年に成立した和解の内容が守られていないとして公害等調停委員会にあっせん申請を行いました。今年6月のあっせん合意では尼崎連絡会を公開で実施することとなり、9月31日には第1回目が開催されました。その結果を受け、この度、西淀川でも同様の方法でこれを行うこととなりました。
◆争点は?
(1) 「西淀川道路再生プラン Part1〜5」は実現不可能か
西淀川道路連絡会には、これまでにも西淀川公害裁判の和解金でできた(財)公害地域再生センター(あおぞら財団)や専門家らによって構成される「西淀川道路環境対策検討会」が作成した「西淀川道路再生プラン」が5回にわたって提出されてきました。しかし、このプランが内部的にどう検討されたのか、実現するためには何が問題かといったことには全く触れられてきませんでした。
次回の連絡会においては、西淀川道路連絡会の構成員である原告が提案した内容に対する国・公団の意見をきちんと聞きだす必要があります。
(2) 大型車対策をどうするか
出来島小学校にある自動車排ガスの測定局では、2002(平成14)年度の二酸化窒素の濃度(1日平均値の年間98%値)が全国で6番目に悪い値であると発表されました。原因は国道43号を走るトラック。この対策をどうするかが最大の課題です。
尼崎では、あっせん合意を受けて、大型車交通量削減のための総合的な調査を実施する予定です。すでに西淀川では、2000年にあおぞら財団と大阪大学大学院交通システム学研究室との共同で「大阪市臨海部における総合的貨物交通環境管理に関するアンケート調査」を行い、阪神間の貨物交通の実態と、ロードプライシングを中心とした需要調整政策および事業者側から取り組む環境対策に対する意識を調査しています。この蓄積を踏まえ、尼崎だけでなく、西淀川においても交通量削減のための調査を実施すべきです。
(3)環境ロードプラシングの試行方法はこれでいいのか
上記のアンケート調査では、ロードプライシングを中心とした需要調整政策に関して、次のようなことが明らかになっています。
まず、阪神間をとおる幹線道路においては地域内事業者の夜間交通量に寄与する割合は極めて低いということです。次に、現在、阪神高速道路で実施されている環境ロードプライシングについては、現行の料金設定においては今後も大きな成果が見込めないであろうということです。こうした結果を踏まえ、「西淀川再生プラン」においては、国道2号線及び43号線の夜間の大型車通行の禁止とこれにあわせた湾岸線の夜間無料化を含めた料金設定のあり方について提唱しています。
国土交通省は、国や各行政機関とも調整し、大型車を中心とする自動車交通需要それ自体を抑制する思い切った対策を打ち出すべきです。
(4)歌島橋交差点の改良工事は環境対策か
現在、西淀川区の歌島橋交差点周辺で行われている工事は、地下道をつくる代わりに横断歩道を廃止しようとするものです。和解条項において、交差点改良が環境対策として記載されましたが、横断歩道の廃止は、歩行者や自転車利用者にとって安全性や利便性の点で極めて問題があるだけでなく、交通量の集中が予想され、かえって環境の悪化を招きかねません。また、防犯面からも横断の手段が地下道のみになるのは危険です。
交差点における渋滞対策は、総合的な交通需要施策とともに実施しなければ環境対策にはなりません。横断歩道の廃止が本当に環境対策や安全対策になるのか、地域住民の意見も踏まえて改めて検討しなおすべきです。
(5)PM2.5の測定は実現するのか
PM2.5とは、粒径が2.5ミクロンの微細粒子状物質のこと。ディーゼル排ガスにのみ含まれるこの粒子は、健康被害との関連性がより強いことが指摘されています。
和解条項においては、この測定方法を検討し西淀川区における状況を把握するということでしたが、これまでは全く進展しませんでした。しかし、前回の事務折衝においてようやく具体化するという国側の回答を得ました。
原告が望んだ「先進的な対策」が一刻も早く実現されるよう、早急にそのスケジュールを明確化することが求められています。