公害は環境省の原点。公害地域の“今”を知る環境省職員研修(10/27-28)
あおぞら財団では、環境省職員の「環境問題史現地研修」の受け入れをしています。コロナ禍に入ってからは中断していましたが、今年度は10月27日、28日の2日間にわたって再開して実施されました。この研修は、激甚な被害を経験した地域の“今”を知ることによって、公害のもたらす被害への理解を深め、環境省職員としての課題対応力を高めることを目的とします。参加者は環境省の若手職員12人と環境再生保全機構の3人の15人でした。
〇公害地域の“今”を「現地」で学ぶ
本研修では「現地」で学ぶことを大事にし、プログラムでは当事者のお話やフィールドワーク、資料館の見学、課題解決のグループワーク等の体験型の学びを多数盛り込みました。
公害患者の語り部からのお話では、51歳と公害患者の中では比較的若い濱田健一さんに、療養など公害患者の日常生活についてお話してもらいました。濱田さんは福祉施設で支援員をしながら、専門学校に通って介護福祉士の資格を取られた苦労人です。0歳からぜん息発作に苦しみ、今後も何十年も病気との付き合いが続くことをお話されました。
フィールドワークでは、バスで尼崎や西淀川の工業地帯をまわった後、国道43号で道路の大気汚染対策の説明を受け、大野川緑陰道路を歩いてあおぞらビルまで戻りました。国道43号では和解条項をふまえて、様々な道路環境対策が行われていること、それにも関わらず、未だに多くの大型車が通行し、騒音などの公害があることを体感しました。
また、「西淀川大気汚染公害訴訟を会社サイドからみる」を題して、元神戸製鋼法務部長で訴訟を担当された山岸公夫さんからのお話もありました。山岸さんはあおぞら財団の理事でもあり、西淀川の原告団が企業と対話を重ね、信頼関係を構築したからこそお話してもらえる貴重な内容です。
〇仕事への理解やモチベーションにつながる
研修後にいただいた参加者の感想からは、「実際に現地に赴き関係者に直接会ってお話を聞くのは、今後の仕事への理解やモチベーションに大きく差がつく」、「『対話』を重ね、信頼できる関係を構築することが前に進むことへの第一歩」と現地に触れる大切さ、コミュニケーションの大切さを学んでいただけたようです。西淀川で学んだことが環境行政に生かされるのを期待しています。
〇主な研修内容
1日目
・講義「西淀川公害、あおぞら財団について」
・公害患者の語り部さんからのお話
・村松昭夫弁護士(あおぞら財団理事長)のお話「大気汚染公害訴訟が環境政策に果たした役割」
・振り返りのワークショップ
・交流会(公害患者とあおぞら財団スタッフ)
2日目
・西淀川フィールドワーク(尼崎・西淀川の工業地帯、国道43号、大野川緑陰道路)
・西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)見学
・山岸公夫さん(元神戸製鋼訴訟担当)のお話「西淀川大気汚染公害訴訟を会社サイドからみる」
・ワークショップ 2日間の学びのふりかえり