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大阪医科薬科大学 公衆衛生学実習 2日目 (06/16)

2025年6月16日(木)、大阪医科薬科大学医学部の4年生15人と引率の先生1人が、あおぞら財団にて「公衆衛生学実習」2日目を引き続き行いました。

※1日目の様子はこちらをご覧ください。

■元神戸製鋼訴訟担当 山岸公夫氏による講演「西淀川大気汚染公害訴訟を企業サイドからみる」

講師:山岸公夫さん(元神戸製鋼訴訟担当/あおぞら財団理事)

2日目は、企業側の立場から公害訴訟を経験した山岸さんによる講演からスタートしました。

被告企業10社が初めはバラバラに対応していたところから、情報を共有し合同で対応していくに至った経緯や、長期化する裁判における企業側の心情、そして最終的に和解へと至った流れについて、当事者の視点でお話しいただきました。

また、証人尋問後に原告の公害患者と接触し、実家の家族を思い出して親近感を抱いたエピソードなどもお話しいただきました。

質疑応答では、「企業は法を守っていたのに、なぜ被害が出たのか?」「国の政策はどのように機能すべきか?」といった議論が交わされました。

山岸さんが挨拶

■フォトランゲージ 「西淀川大気汚染公害」

次に、大気汚染がひどかった当時の西淀川の写真を使ったワーク「フォトランゲージ」を実施しました。

写真から読み取れる情報をもとに、グループで意見交換を行い、写真にタイトルを付けて発表。視覚的な資料を通じて、当時の暮らしや社会の状況に想像を広げることができました。

写真の内容を読み込み想像します

■ロールプレイ「あなたのまちで公害が起きたら」

さらに理解を深めるために、当事者になりきるロールプレイ「あなたの街で公害が起きたら」を実施しました。「公害が起きた町」を想定し、市役所職員、公害患者の親、医者、企業関係者など、それぞれの立場を演じてもらいました。

「合意形成が難しい」、「弱い立場から声が出しにくい」などの意見が寄せられました。当時の公害患者は、まさにこのような窮境に面していました。今の社会にも通じる課題です。

自分の役割を演じながら公害問題の解決策を考えました

■西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)見学

あおぞら財団が所在する建物「あおぞらビル」の5階に、西淀川公害と環境資料館が設置され、西淀川公害訴訟や環境・公害に関する資料を数多く収納しています。今回は資料館館長の小田康徳先生と学生スタッフ大島さんによる案内がありました。

学生たちは興味深く資料を手に取り、熱心に話を聞いていました。

資料を紹介している小田先生、興味津々の学生たち

■ワークショップ「気候変動(地球温暖化)と公害」

現在最も重要な環境課題の一つである「気候変動」をテーマに、地域としてどのような対応を優先すべきかを考えるワークショップを行いました。

架空の町の担当者として、グループごとに対策の優先順位を考えました。
「成果が数値で表しやすい」「確実にCO₂削減につながる」「個人が始めやすい」など、選定の理由も多様で、議論が深まりました。

気候変動対策の優先順位を考えました

■最終発表 2日間の学びの振り返り

この2日間の実習で、どのような学びが出来たか、今後どう生かしていきたいかについて、グループで議論し、最後は「KP(紙芝居プレゼンテーション)法」で発表していただきます。

「多様な立場の意見を受け入れることの大切さ」、「足並みをそろえることの難しさ」、「傾聴の大切さ」、「バランスの大事さ」、「公害患者のしんどさを、後世に伝えたい」などのキーワードが出されました。

グループ全員の最終発表

2日間を通して、公害をめぐる歴史や制度、そして人々の思いをさまざまな角度から学んでいただきました。

この2日間で学んだことをふまえて、公衆衛生学の観点からの提案を含んだ報告書が作成される予定とのことです。

これから医療の道を歩む皆さんにとって、環境や社会の問題と向き合うまなざしを養う一助になれば幸いです。

(記・あおぞら財団バイト 王子常)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,視察受入 — aozorafoundation 公開日 2025年7月2日4:15 PM

関西大学大門ゼミ フィールドワークの受入れ(5/13)

2025年5月13日、関西大学社会学部・大門ゼミの3年生16名と大門信也先生が、西淀川の公害と地域再生を学ぶ研修を実施しました。

●「公害のまち」と呼ばれた西淀川の今は…
フィールドワークでは、かつて公害の影響を大きく受けた地域を90分かけて歩きました。大気汚染が人びとの命や暮らしをどう脅かしたのか、まち並みの中に残る痕跡から学ぶ時間となりました。

かつて公害道路と呼ばれた国道43号、公害の石碑があるデイサービスセンター あおぞら苑、公害病の治療の拠点であった千北診療所、ドブ川から市民の手に寄って緑の道に生まれ変わった大野川緑陰道路をめぐりました。

あおぞら苑:高齢の公害患者の生活の援助を目的として、和解金を活用して2006年にオープン

千北診療所:かつては公害医療センター、公害患者会の事務局もあった

大野川緑陰道路:市民の署名のよって緑の道に生まれ変わった

●公害の歴史と公害語り部のお話
あおぞら財団に到着後は、西淀川公害の経緯についての講義のほか、公害と環境資料館(エコミューズ)を見学。1970年代の裁判や住民のたたかいを通して、現在へと続く地域の再生の歩みを学びました。

次に、公害患者である岡崎久女さんから、当時の体験を語っていただきました。

岡崎さんは、23歳で高知県から西淀川に嫁ぎ、翌年に出産。その後すぐにぜん息を発症し、長年にわたり苦しんでこられました。次男も発作を繰り返し、精神的に追い詰められた日々を経て、「同じ苦しみを子や孫に味わわせたくない」との思いで、語り部活動を続けています。

岡崎さんは、公害病の苦しみを語り継ぎ、公害を二度と起こしてほしくないと願っています

●患者さんの思いを短い言葉で表現

最後に、KP法(紙芝居プレゼンテーション)を使って、岡崎さんのお話で印象に残った言葉をグループごとに1分ずつ発表しました。

「死にたくなるような苦しさ」「被害者運動はやめない!!」「息子に手渡したかった青い空」「今はこのような場を続けてもらって話せていることが幸せ」など、岡崎さんのお話から様々な言葉を受けとめているのが感じられる発表でした。

各グループのKP法によるまとめ

●参加者の声から

フィールドワーク終了後に学生さんからもらった感想を紹介します。

「実際に被害者の方にお話を聞けたことが印象に残りました。知らなかったことがほとんどだったので、まずは知ろうとする姿勢を大切にしたいと思います。」

「“息子をハサミで殺そうとしたけど、肩で必死に息をしているのを見てできなかった”という話がとても苦しく、でも忘れられませんでした。公害がそこまで人を追い詰めていたことを、実感しました。」

「岡崎さんが“私がいなくなっても話が伝わりますように”と語っていたのを聞いて、自分も語り継げる存在になりたいと思いました。」

「2004年生まれの私たちにとって、公害は学校の授業だけでは学びきれないテーマでした。今回のフィールドワークは貴重な学びの場でした。」

「今も発作が続いているという言葉を聞いて、公害は“過去の問題”ではなく、今も続く課題であると改めて感じました。」

「二度と同じような公害を繰り返さないために、自分にできることを探していきたいです。」

自分も公害を語り継げる存在になりたい、自分にできることを探していきたいとの感想から、公害を現場で学ぶことによって、未来への思いに繋げてもらえたと感じました。

関大の大門ゼミは環境社会学のゼミで、今後はゼミで他地域の環境問題に取り組んでいくそうです。西淀川での公害の学びが今後のゼミ活動に大きく活かされることを願っています。

(谷内)

🔗 関連リンク

【動画】西淀川フィールドワーク紹介~公害地域から持続可能な地域へ~

【動画】手渡したいのは青い空(全面解決編)

岡崎久女さんインタビュー「青空は当たり前ではないことを伝えた い」【動画】テキスト

公害学習パネル:公害~みんなで力を合わせて~

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,視察受入,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2025年6月27日3:36 PM

大阪医科薬科大学 公衆衛生学実習 1日目(6/12)

2025年6月12日(木)、大阪医科薬科大学医学部の4年生15名と引率の先生1名が、あおぞら財団にて「公衆衛生学実習」を行いました。

■フィールドワーク

午前9:00、阪神なんば線「出来島」駅集合。
そこからフィールドワーク、かつて公害を経験した足跡を巡りながら、環境再生の取り組みがされている地域のスポットも訪ねます。

出来島駅周辺 多国籍なお店も多い

出来島は周囲に工場が多く、外国から働きに来ている人が多く暮らす国際色豊かな町で、近年では多国籍なお店もたくさん増えました。

◎国道43号
「環境対策でされていることは何だろう」

国道43号の公害対策を確認!

◎あおぞら苑
あおぞら苑は、西淀川公害裁判で闘った患者さんや家族の皆様の思いが、ひとつの形になったデイサービス施設です。あおぞら苑前の石碑には「公害と闘い環境再生の夢を」と彫られています。

あおぞら苑の前の石碑

◎千北診療所
西淀川区内の患者会運動の原点ともいえる「大和田生活と健康を守る会」が中心になって、千北病院(現:診療所)ができました。かつては公害医療センター、西淀川公害患者と家族の会の事務所もありました。
偶然にも通院中の西淀川公害患者と家族の会の語り部、須恵さんと遭遇!

公害病治療の拠点だった千北診療所

◎大阪マスジド
西日本最大級のモスク(イスラム教における礼拝のための施設)。金曜礼拝には近畿各地から300人あまりのイスラム教徒が集まり、まるで海外のような景色になります。

大阪マスジドとハラールレストラン

◎大野川緑陰道路
1960年代、ドブ川だった大野川を埋め立て、市民の要望により緑あふれる遊歩道に生まれ変わりました。

西淀川区民の憩いの場 大野川緑陰道路

■うえに生協診療所 院長 金谷邦夫氏による講演「臨床の場において公衆衛生的な課題に取り組む

金谷先生は西淀川公害裁判で証人を務め、実際の患者の苦しみと命を見つめてきました。現在はPFAS汚染にも取り組まれ、公衆衛生的視点を持ち続けることの大切さを学生に伝えられました。

質疑応答では「金谷先生が西淀川区に来られた当時(1978年)の西淀川の空や水といった環境の様子はどう感じましたか?」という問いに対し「汚いとは思いませんでした。しかし患者さんの咳などの様子から見た目には分からないが、他の土地より随分汚染されているのだと感じました」とお答えいただきました。

金谷医師からのお話

■西淀川公害弁護団 弁護士、あおぞら財団理事長 村松昭夫氏による講演「弁護士からみた西淀川公害」

村松弁護士からは、西淀川公害訴訟で弁護士が果たした役割、西淀川公害の意義についてのお話がありました。弁護士は、被害実態の調査や立証、原告支援、世論形成まで多面的に尽力。法廷内外で真実と正義を訴え、被害者と共に勝利と地域再生を導いた重要な役割を果たしました。

質疑応答では「弁護士をしていた中で一番大変だったことは?」という問いに対し
「判決前の不安(期待もあるが)、それは生半可なものではありません。西淀川公害裁判の当時 原告団長だった森脇さんは判決のひと月前から下痢が止まらなかったそうです」などの当時のエピソードもお話いただきました。

村松弁護士のお話

■西淀川公害患者と家族の会 語り部 山下明氏によるお話、 同会事務局長 上田敏幸氏との懇談

患者会のお二人から、昔の西淀川と公害の様子、病気の苦しみ・生活への影響などをお話いただきました。

山下さんは1975年に30歳で公害健康被害補償制度の認定患者になりました。子どもの頃はガキ大将で健康のそのもの。中学校卒業後、「金の卵」として九州から大阪に働きに来ましたが、大気汚染により気管支ぜん息になってしまいます。仕事は建築現場で重機のオペレーター。公害病による被害は仕事や人間関係、家族にも及びました。

質疑応答では「裁判後、今でも怒りはありますか?」という学生さんからの問いに対し
「元の健康だった体に戻して欲しいことはある。
仕事も健康ならできたこともありました。今の人生も違うものになっていたかもしれません」と仰りました。

また、ある学生さんからは
「自分もぜん息を持っているので、軽はずみには言えないが自分事のように話を聞きました」との言葉もありました。

西淀川公害患者会 山下さん、上田さん

■振り返りワークショップ

1日の学びについて、「今日の学び・印象に残ったこと」を“KP法”(紙芝居プレゼンテーション法)で、各グループごとにまとめました。

グループで印象に残ったキーワードを抽出

紙芝居として、各グループで発表

『医師として公害裁判に関わること』

『町に馴染む公害対策』

『柔らかい成長』など 思い思いのキーワードと自らの気づきを共有しました。

各グループの発表内容

中でも心に残ったのは、語り部・山下さんのこの言葉です。

「若い人には、私のような苦しみは味わってほしくない。
空気を吸っても吐けない苦しみ、横になって眠れない苦しみ。
このまま環境が良くなってほしい。人を殺さない、柔らかい経済成長を…」

今回の研修が医師を目指す大阪医科薬科大学の生徒さんの心にも残り、柔らかい成長の思いが継承していくことを願います。

(2日目の研修に続きます)

(スタッフ s)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習 — aozorafoundation 公開日 2025年6月19日5:31 PM

環境省職員環境問題史現地研修2日目(5/30)

あおぞら財団での環境省職員研修2日目の報告です。(1日目の報告はこちら


【2日目 フィールドワーク、企業関係者のお話、研修のまとめ】

二日目の研修は、西淀川と尼崎の工業地帯、そして西淀川の地区の実態を、バスで移動しながら見学します。

バスツアーのスタート前に、公害資料館「エコミューズ」と公害資料書庫で過去の公害に関する資料を見ていただきました。資料を通して、再び公害歴史の重さ、アーカイブの重要性を学びました。

公害資料館を見学している様子

資料書庫を見学している様子

その後、バスに乗り国道43号線沿いへ。ここはかつて「公害道路」とも呼ばれた場所で、現在はロードプライシングの導入や大型車の通行ルート変更、制限速度の引き下げなどによって、騒音や大気汚染の軽減が図られています。現地では国土交通省近畿地方整備局の方から、これまでの取り組みを詳しく説明していただきました。

国道43号の高架下で、騒音を体感しながら、大気汚染対策の高活性炭素繊維(ACF)を確認

国交省の方がロードプライシングを紹介している様子

住宅地にあるごみ焼却場

尼崎工業地帯に張り巡らされたパイプ

バスでのフィールドワークを終えたあと、大野川緑陰道路を散策しました。
この遊歩道は、かつて工場や家庭からの排水で汚染されていた川を埋め立て、市民の「緑の道にしてほしい」という声に応えて整備されたものです。
歩きながら、地域の再生やまちづくりに込められた人々の思いと努力を肌で感じてもらいました。

大野川の歴史を紹介

その後、あおぞら財団理事、元神戸製鋼所訴訟担当の山岸公夫さんが、企業側の目線から、西淀川大気汚染公害訴訟をどう見ていたのかという話がされました。それに対して「10社の被告企業はどんな連携をとったのか」、「行政が果たすべきだった役割は?」などの質問が出されました。

被告企業の一つ神戸製鋼の元訴訟担当者の山岸さん

あっという間に研修の最後になりました。一日目の振り返りと同じように、ワークショップして、設定した課題を達成したかをチェックし、最後は「KP法」で発表していただきます。
いずれのグループも「話し合い」の重要性を強調しており、いかに公害経験を継承するか、いかに公害・環境問題の解決を「自分事」にして考えるのかについて、様々な知見の発表がありました。

ワークショップの様子

最終発表をしている様子

最後、自分が気に入るキーワードにシールで「いいね」を押して頂きました。

「いいね」を押している様子

「対話と本音」

「一家総出抱きしめ作戦」

印象的だったのは、「対話と本音」。また、「一家総出抱きしめ作戦(環境省だけでなく、他省庁も巻き込んで動こう)」といったユニークで深いキーワードが出てきました。

公害問題は、日本の環境行政の原点。今回の研修で得た学びや気づきを、ぜひ皆さん自身の仕事の中で生かしていただきたいと思います。

(記・あおぞら財団アルバイト 王子常)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,視察受入,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2025年6月13日1:10 PM

環境省職員環境問題史現地研修1日目(5/29)

あおぞら財団では、毎年、環境省職員の「環境問題史現地研修」の受け入れをしています。

今年も昨年同様、1週間前にオンラインで事前学習会を開催し西淀川公害について学んでいただいた後、5月29日〜30日に西淀川での現地研修を実施しました。

今年の参加者は引率者1名を含む計31名。研修は5〜6人のグループ単位で行い、研修で学んだ内容をもとにグループ内にディスカッションしてから、全員に発表するというかたちで進んでいきます。

【1日目 ワークショップおよび多様な関係者からのお話】

一日目(5/29)の午前11:30に、あおぞら財団が所在しているあおぞらビルの3階会議室に集合しました。オリエンテーションとして、プログラム概要説明と自己紹介などを行いました。

自己紹介では、あおぞら財団理事・高田研先生が「KP法(紙芝居プレゼンテーション法)」を紹介しました。紙にコンパクトなキーワードを書き、プレゼンテーションをするという方法です。研修最後の振り返りも「KP法」で発表してもらうため、早速、自己紹介から実践しました。

あおぞら財団事務局長・藤江が研修趣旨を紹介

「KP法」を紹介しながら、自己紹介している高田先生

その後、昔の西淀川の大気汚染に関する写真に基づいて、フォトランゲージがされました。フォトランゲージとは写真を言語化するワークで、各自が昔の大気汚染の実情を想像しながら、グループごとに写真にタイトルを付けます。

写真は何を映しているかとの議論が盛り上がった

フォトランゲージを通して、参加者の皆さんは西淀川公害に対する理解を少し深まったようです。

さらに理解を深めるために、当事者になりきるロールプレイ「あなたの街で公害が起きたら」を実施。

「公害が起きた町」を想定し、市役所職員、公害患者の親、医者、企業関係者など、それぞれの立場を演じました。

「患者さんに寄り添った対応が難しい」「多様な立場の声をもっと聞くべき」といった意見も出され、利害関係の異なる立場の合意形成がいかに難しいかを実感したようです。

多様な立場の方々の合意形成の難しさをお芝居を通して理解する

午後からは、西淀川公害を実際に経験した公害患者の須恵さんの話を聞きました。須恵さんは、辛い公害経験を次世代に伝承する「語り部」の1人として積極的に活動しています。西淀川公害患者と家族の会の事務局長・上田敏幸さんも同席して、当時の公害患者が置かれた厳しい状況を語ってくれました。

参加者からは、「当時、周囲の人は患者をどう見ていたのか」「苦しい生活の中で支えになったものは何か」「これから地方自治体にどんな期待をしているか」といった質問が寄せられ、活発な対話が行われました。

西淀川公害患者の会の須恵さん(左)と上田さん(右)

休憩時間には、あおぞら財団理事である龍谷大政策学部の清水万由子教授のゼミ生が制作した、須恵さんへのインタビュー動画が上映されました。動画の中では、須恵さんの民謡も披露されています。

次は、西淀川大気汚染訴訟弁護団の一員であり、あおぞら財団理事長・村松昭夫先生からの話でした。被告企業の選定、公害と病気の因果関係の立証、共同不法行為の証明など、訴訟における苦労をお話しいただきました。

弁護士視点から公害訴訟を語って村松先生

1日の最後に、グループに分かれて今日の学びを振り返りました。模造紙の真ん中にとテーマを書き、そこから放射状にキーワードやイメージを描きこんでいく「マインドマップ」方式を用いて、各自の「今日の学び・印象に残っていること」、「もう少し深めたいこと」を整理しました。その中で出てきた意見を「KP法」にまとめて発表していただきました。

1日目の振り返りでは、参加者からさまざまな気づきや学びの声があがりました。「行政は企業と住民の間に立つ存在であること」「基準や制度の難しさと、その重要性」「現場の声を直接聴くことの大切さ」などが印象に残った学びとして挙げられました。また、深めたいこととしては「公害を『知らない』から『知っている』に変えていくにはどうすればいいのか?」「もっと公害のことを深く知りたい」といった意欲的な意見が出されました。

ワークショップで今日の学びを振り返る

「KP法」で本日の振り返りを発表している様子

最後は、あおぞら財団役員・スタッフとお茶を囲んでの茶話会で、一日を締めくくりました。

→2日目に続きます

 

(記・あおぞら財団アルバイト 王子常)

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