あおぞら財団 財団ブログ
公害の歴史Q&A あおぞらイコバ
公害を伝えるための資料整理寄附募集
屋上広告募集
りべら広告募集
Don't go back to the 石炭

    キーワード検索

    アーカイブ

    カテゴリー

    最近の投稿

    最近のコメント

ブログカテゴリー » 環境学習

大阪公立大学「都市基盤計画特論」第3回(12/10)

12月10日、大阪公立大学大学院の「都市基盤計画特論」(担当:吉田長裕先生)の第2回目があおぞら財団で開催されました。

ダイヤモンドランキング「あなたの街の温暖化対策」

2回目の授業ではロールプレイを行い、公害・環境問題が発生した時に、様々な意見が異なるステイクホルダー同士の合計性の難しさを感じてもらいました。

今回は、「あなたの街の温暖化対策」というテーマで、ダイヤモンドランキングを行いました。このワークでは、それぞれの人の意見をランキングとして可視化し、温暖化対策についてグループ内で合意形成を行うというワークです。

参加者全員が、事業所のエネルギーシフトや公共交通等の9つの温暖化対策事業の中から、重要だと考えるものから順にダイヤモンド型のランキングに並べ、その後、グループ内で意見交換を行い、一つのランキングを作りました。

社会基盤を専門とする学生であるため、「適正規模のまちづくり」といったハード整備が上位に挙げられました。ダイヤモンドランキングはそれぞれの人の意見を可視化することができるので、意見が異なる場合でも、それぞれの考え方が理解しやすくなり、建設的な議論へと発展させていました。

ダイヤモンドランキングの結果

ダイヤモンドランキングの結果

西淀川区将来ビジョン2025(案)をふまえた意見交換

後半は、西淀川区役所政策共創課の西尾さんをお招きし、西淀川区の将来像や課題、区の施策について講義と意見交換を行いました。西尾さんからは、西淀川区将来ビジョン2025(案)をもとに、西淀川区の将来像や課題、区の取り組みが紹介されました。

西尾さんから西淀川区の取組みについて紹介

西尾さんから西淀川区の取組みについて紹介

その後、民間事業との共創事業や多文化共生に関する課題などについて質疑応答がなされました。また、西尾さんからは「若者が地域コミュニティに参加してもらうにはどうしたらよいのか」という質問が参加者に向けて投げかけられ、今後の西淀川への提案を検討していく中で考えてもらうことになりました。

西淀川区のまちづくりの提案に向けて

最後に、今までの講義内容をふまえて、西淀区のまちづくりの提案に向けて、具体的にどのようなテーマにするかについて話し合いました。

今後、検討を深めるテーマを何にするか話し合っています

受講生がそれぞれの興味・関心に基づいて2つのグループに分かれて、次のテーマに関して検討を行っていくことになりました。

・若者をターゲットにおいた地域コミュニティの強靭化
・水害対策と親水空間を考えた水辺のまちづくり

今後、各グループは、それぞれのテーマについて、1月末の中間発表に向けて、調査や検討を深めていく予定です。

今回の授業では、温暖化対策の優先順位を考えるダイヤモンドランキングや、西淀川区の将来像に関する意見交換を通じて、地域課題に対する理解を深めました。1月末の中間発表で、若者の地域参加や水辺のまちづくりについてどのような提案がなされるのかに楽しみです。

(谷内)


今回の授業で用いた教材

今回用いたダイヤモンドランキング「あなたの街の温暖化対策」は、「気候変動×防災×公害ハンドブック」に含まれている教材です。下記のページからダウンロードできます。

教材「気候変動×防災×公害ハンドブックー未来に手渡したい環境と社会を考える」

 

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,視察受入 — aozorafoundation 公開日 2024年12月12日11:37 AM

大阪公立大学「都市基盤計画特論」第2回(12/3)

12月3日、大阪公立大学大学院の「都市基盤計画特論」(担当:吉田長裕先生)の第2回目が開催されました。今回は観察力や創造力を磨くフォトランゲージ、合意形成の難しさを体験するロールプレイ、そして西淀川のまちづくりの提案に向けたアイデア出しが行われました。

フォトランゲージ:「西淀川大気汚染公害」
最初に、フォトランゲージという手法を用いたグループワークを行いました。配布された写真を観察し、写真に映る物事やその背景にある時代や意図を読み取ったうえで、グループでタイトルを考えるというワークです。

このワークは正解を求めるのではなく、観察力と創造力を磨くことを目的としています。

フォトランゲージをしている様子

写真を観察してタイトルを付けます

学生たちは、写真の細部に目を向け、物語を想像しながら、自分たちなりの解釈をもとに写真にタイトルを付けていました。こうした取り組みを通じて、それぞれの視点の違いにも気づきながら、西淀川公害に対する興味を深めました。

ロールプレイ「あなたのまちで公害が起きたら」

次に、「あなたのまちで公害が起きたら」というロールプレイ形式のワークを行いました。

この活動では、学生が「行政」「市民」「企業」「医師」といった役割を演じ、それぞれの立場から公害問題にどう対応するのかを話し合って、合意形成を図ります。ルールとして、全員が納得できるまで話し合うことや、多数決を避けること、安易な妥協をしないことが掲げられており、各立場の意見を深く理解するための時間が設けられました。

議論が進むにつれ、立場の違いからくる葛藤や、声の大きさによる影響が浮き彫りになり、合意形成がいかに難しいかを実感できる場面が多く見られました。

ロールプレイの様子。一言目の台詞だけ決まっています

振り返りでは、「企業は意見を言いやすい一方で、被害者の声が届きにくい」、「行政には調整役を期待されるが、立場の異なる人々をまとめるのは非常に難しい」、「それぞれの立場に寄り添いながらも、全体を俯瞰する視点が必要だ」といった感想が共有されました。

このような体験を通じて、現実の問題に対処する際の課題や、その解決へのアプローチを具体的に考えるきっかけが得られたようです。

西淀川のまちづくりへの提案に向けて

小休憩を挟んだ後、西淀川のまちづくりへの提案に向けたワークショップが行われました。

学生たちはまず、自分が都市基盤に関して興味のあることや、西淀川のまちへの提案テーマについて考えをまとめ、それを付箋に記入しました。似たようなアイデア同士をまとめて、グループ化していき、テーマを整理しました。

「サードプレイス」や「親水空間」、「多文化共生のまちづくり」、「公害教育」など多彩なアイデアが共有され、それぞれのテーマを具体化するためにどのような調査や検討が必要かについても活発に話し合われました。

西淀川のまちづくりへの提案づくりのアイデア出し

授業が終わった後、「グループワーク、楽しかった」と嬉しそうに感想を伝えてくれました。参加した学生は、大学生活が始まった直後にコロナ禍に直面し、これまでグループワークの経験がほとんどなかったとのことです。そのため、今日の活動が新鮮に感じられたようで、学びだけでなく、コミュニケーションを楽しむ貴重な場ともなったようです。

次回の授業では、西淀川区役所の担当者をお招きし、西淀川区の現状や地域課題について話を伺います。この学びを基にして、数回の授業を通じて具体的なまちづくり提案を作成し、1月末の中間発表を経て、3月末には西淀川区役所や患者会の方々に向けた最終発表を行う予定です。


今回の授業で用いた教材

教材はダウンロードできます。

 

(谷内)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2024年12月5日2:20 PM

大阪公立大学「都市基盤計画特論」第1回(11/26)

大阪公立大学大学院の講義「都市基盤計画特論」(吉田長裕先生)の一環で、受講生7名が西淀川をフィールドに学びます。11月26日に第1回目が行われました。

今回と次回はフィールドである西淀川の歴史や現状を体験することが主な目的です。

タンデム自転車で西淀川を探索
フィールドワークは、大野川緑陰道路をタンデム自転車で走ることからスタートしました。タンデム自転車の操作には息を合わせることが重要で、最初は苦戦する様子も見られましたが、徐々にペースがつかめると、受講生たちは楽しみながらフィールドを巡りました。沿道では、公害や水害対策、多文化共生の痕跡を探しながら学びを深めました。

タンデム自転車でフィールドワークへ出発!

タンデム自転車でフィールドワークへ出発!

公害の痕跡、公害対策

西島工業地域

西島工業地域にある中山鋼業の集じん装置

「公害道路」と呼ばれた国道43号では、車線削減やPM2.5の測定、遮音壁の光触媒塗布など、多様な対策が施されている様子を確認しました。

国道43号沿いで公害対策の説明を受けます。この日も多くの大型車が通行していました

水害への備え
大野川緑陰道路下を通る淀の大放水路や水防碑や防潮堤、スーパー堤防など、水害対策の象徴的なインフラについて説明を受け、地域の治水の歴史に触れました。新淀川が明治時代の治水工事で付け替えられた経緯も学びました。

水防碑「災害は忘れた頃にやってくる」裏にはジェーン台風の被害について書かれています

多文化共生の現場
大阪マスジド(モスク)を訪問し、外国人労働者や異文化が共存する西淀川の現状について理解を深めました。毎週金曜日になると多くのムスリム(イスラム教徒)の方々が集います。周囲にはハラールレストランをはじめ、ハラール食に関するお店があります。
西淀川公害について学ぶ
フィールドワークの後、あおぞら財団に戻り、西淀川大気汚染公害に関するミニ講義。被害の発生から裁判、和解、現在の取り組みに至るまでの過程、公害が地域に与えた影響についてお話しました。

西淀川公害とあおぞら財団の取り組みについて

また、西淀川公害患者と家族の会から須恵さんと上田さんにお話を伺いました。須恵さんからは主に当時のまちの様子や慢性気管支炎の苦しみについて、旦那さんの失明と公害病が重なり多くの苦難の中、前向きに立ち向かったことをお話してもらいました。また、事務局長の上田さんからは和解や補償および現状の対策などを中心にお聞きしました。

公害患者の須恵さん(左)と患者会事務局長の上田さん(右)

ふりかえり
最後に、受講生たちは一日の学びを振り返り、次のような気づきを共有しました。

  • 公害の痕跡と対策: 大気の24時間監視や工場の集塵装置の設置など、公害防止の取り組みを確認。
  • 水害対策: スーパー堤防や防潮堤などの防災インフラの重要性を実感。
  • 多文化共生: 異文化や宗教の共存が地域に根付いている様子を学ぶ

他に、公害被害の体験を世界に発信することが重要ではないかという意見、自転車や歩行者にやさしい道路が多いといった感想もありました。

次回の授業は12月2日です。ワークショップや議論を通じて、西淀川の課題解決へのアプローチを考えていく予定です。

(谷内)


あおぞら財団では、フィールドワークや公害患者さんの語り部などを取り入れたオーダーメイドの授業、研修を行っています。SDGs達成に向け、パートナーシップで問題解決に取り組んだ大気汚染公害の経験を、現地で学んでみませんか?

あおぞら財団の授業、研修に興味のある方はこちら↓をご覧ください。

研修・教育(「あおぞら財団の研修・教育」のページに飛びます)

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,視察受入 — aozorafoundation 公開日 2024年12月2日12:12 PM

追手門学院大学社会学部社会問題コース フィールドワーク(11/16)

11月16日(土)に、追手門学院大学社会学部社会問題コースのみなさんと西淀川でフィールドワークを行いました。

午後1時にコースの学生さん4名と引率の藤吉圭二先生が出来島駅に集合し、西淀川公害の概要と当日のスケジュールについて説明を行った上で、フィールドワークが開始されました。今回は、国道43号線・出来島小学校・千北診療所・あおぞら苑・大和田街道・大野川緑陰道路の見学を行いました。あいにくの雨でしたが、説明を聞いたり実際に公害への取り組みを見たりしながら和気あいあいとした雰囲気で進められました。

沿道環境を良くするための取り組みを探しました

こんなところにも工夫がされています

 

あおぞら苑には「公害と闘い環境再生の夢を」という石碑が残されています

大阪マスジドにも立ち寄りました 西淀川には多くの外国人の方も住んでおり、色々な国の文化に触れることもできます

緑陰道路を歩きました

あおぞら財団に到着後はワークショップのフォトランゲージを行い、西淀川公害に関する講義を受けたうえで、公害患者さんから直接お話を伺いました。

写真にタイトルをつける「フォトランゲージ」です。的確なタイトルや面白いタイトルがつけられていました

公害患者の方との質疑応答も行われました

研修を通して学んだこと

これから考えたいことについて

普段当たり前になっている青空も、これまでの苦労と取り組みがあったからこそ日常になったものです。環境改善のための取り組みを実際に見たり、公害患者さんから公害についてのお話を聞くことで、より深い理解になったのではないかと思います。

今回初めてフィールドワークに参加してみて、青空を当たり前に変えていく大変さと大切さを改めて強く感じることが出来ました。また、史資料を読んでいるだけでは感じられないことを、このフィールドワークを通じて学ぶことが出来ました。

(スタッフ大島)

 

Filed under: イベント報告・ホームページ更新,環境学習,視察受入,資料館(エコミューズ) — aozorafoundation 公開日 2024年11月20日5:35 PM

日本弁護士連合会 公害環境委員会 現地研修の受入れ(10/12)

10月12日(土)、日本弁護士連合会公害環境委員会の主催で「西淀川大気汚染公害被害地域現地研修」を受け入れました。法科大学院生や若手弁護士が参加し、「西淀川の過去の公害の痕跡と公害対策をめぐる」をテーマにフィールドワークを行いました。参加者5人、引率3人の計8人でした

午前中は、大阪弁護士会館にて村松昭夫弁護士(あおぞら財団理事長)の「公害・環境訴訟を闘って」という講義が行われました。

講義で、西淀川公害訴訟について理解を深めた後、実際に西淀川へ移動し、阪神出来島駅からあおぞら財団までの間、公害にまつわる各所をまわり、街の様子を肌で感じていただきました。

<フィールドワーク>

●国道43号沿道

土曜日ながらも大型車が多い国道43号。交通量の多さや騒音、騒音壁やPM2.5の測定、阪神高速湾岸線への誘導策(環境ロードプライシング)といた環境対策を確認しました。

国道43号の出来島小学校前

●淀中学校

1966年に一般環境大気測定局が設置され、二酸化窒素や一酸化窒素などの大気汚染物質が常時測定されていましたが、2000年の校舎建て替えに伴い撤去されました。その後も再設置されていません。

参考|記録で見る大気汚染と裁判「淀中学校の取組み」

4年前まで一般環境大気測定局があった淀中学校

●千北診療所(公害患者さんの組織化の原点)

かつて西淀川公害患者会の事務局があった千北診療所

●あおぞら苑

デイサービスセンター。公害患者の高齢化に伴う日々の生活の援助を目的として、西淀川公害裁判の和解金を活用して、2006年にオープンしました。施設前には大気汚染公害を伝える石碑が立てられています。

デイサービスセンターあおぞら苑

「公害と闘い環境再生の夢を」

●大阪マスジド

高度経済成長期には全国から「金の卵」と呼ばれた若年労働者が集まり、多くの人が公害病になりました。現在は海外から多くの人が働きに来ていて、地域コミュニティとの共生、災害時の対応など様々な課題もあります。

西日本最大級のモスク「大阪マスジド」

●大野川緑陰道路

1960年代にはドブ川であった大野川を埋め立てて自動車道になる計画がありましたが、住民の反対運動により緑の道に生まれ変わりました。

かつてドブ川、今は緑生い茂る歩行車自転車専用道路

<あおぞら財団の紹介、公害語り部>

フィールドワーク後、あおぞら財団に戻り、西淀川公害の歴史や財団についての説明を谷内より行いました。

続いて、公害患者の岡崎久女さんが体験談を語ってくださいました。

岡崎さんは、ご自身だけでなく、息子さんも公害患者でした。今では医学が進歩して薬で公害病とうまく病状と付き合うことができていますが、当時は、あまりにも苦しかった病状のせいで、息子と無理心中をしようとしたことや、出産を諦めたことなど辛い体験を語ってくれました。

西淀川裁判に原告のひとりとして参加したことについて、こんな境遇にさせられたことに対して企業や道路管理者にとにかく謝って欲しかったという岡崎さんの強い想いを話していただきました。

西淀川公害およびあおぞら財団の紹介:谷内

公害患者のお話:岡崎久女さん、上田敏幸さん(西淀川公害患者と家族の会)

真剣に話を聞く参加者たち

西淀川・公害と環境資料館 エコミューズも見学しました。

エコミューズには、公害裁判資料や公害反対運動等に関する資料が6万点以上あります。

裁判資料を見る参加者たち

法律家の仕事は条文や判例など文字でのやり取りが多いと思います。公害の被害を受けた頃から終わることなく、ずっと続いている日々の想いを患者さんの口から伝えていただいたことは、すごく貴重な体験になったのではないでしょうか?

また、参加者の中には、これから法律家を目指す法科大学院生の方もおられました。このフィールドワークでの経験を活かして、当事者に寄り添う法律家になっていただけることを祈っています。

<参加者のみなさんの感想>

・岡崎さんの「とにかく謝って欲しかった。」という発言を聞いて、原告当事者の一貫した思いを受け止めることは大事にしたいと思った。

・公害被害者の方も高齢になられたり、亡くなったりと、次の世代に伝承していくことが急務だと思った。

・現場を見る事、当事者の話を聴くことが弁護活動の出発点と、再認識した。

・和解的解決の重要性を学んだ。PM2.5の測定を和解条項に盛り込み、それがその後の環境基準の制定につながるなど、西淀川訴訟はその後の環境政策に大きな影響を与えたことを改めて学びました。

(アルバイト 岸本景子、スタッフ 谷内久美子)

前のページ »