北海学園大学研修受け入れ
2010年10月21日、エコミューズへの札幌市の北海学園大学の視察を受け入れました。今回資料館に来訪したのは、経済学部の浅妻裕ゼミナールの三回生12名と引率の浅妻准教授で、関西の交通政策調査の一環として、あおぞら財団が行う西淀川における交通まちづくりの調査を目的としています。
今回の研修では、なぜ西淀川区という場所でまちづくりを担うあおぞら財団という組織が誕生したのかを中心にレクチャーしました。西淀川公害訴訟と財団設立へ至る経緯を説明し、財団周辺の道路環境フィールドワークを行いました。道路視察では、歌島橋交差点の横断歩道が撤去されて横断するために地下道を通らなければならない問題を見学しました。学生からは、「こんなに空気が汚いとは思わなかった。ここは臭い」という感想が出されました。
公害の語り部として、森脇名誉理事長と岡崎さんにご登壇いただきました。岡崎さんからは、ご自身およびご家族の公害のつらかった体験をお話いただきました。「好きで病気になったわけではない」という自身の原点(とくに、自分だけではなく子供も喘息となり、心中すら頭によぎったこと)、つらいことも沢山あったが運動を通じて多くの人に手を差し伸べられたこと、とくに多くの人と友達になれたことは非常にうれしかったということをお話しいただきました。森脇名誉理事からは、どうやって公害訴訟に勝利したかについてお話しいただきました。森脇名誉理事は、とくに多くの人の動員に成功したこと、患者側が西淀川地域再生まちづくりのプラン示したことこそが勝利の要因であったことを強調されました。
質疑応答
Q1:西淀川では患者さんの方からまちづくりの提案がなされたが、行政サイドは道路とまちづくりの整合すらうまくいかないように、なかなか動かないと聞いた。具体的にどんな点が大変なのか。
A:道路から見たまちづくりとは、交通量を減らし、緑を増やすと言うことである。昔、西淀川は大阪でもっとも空気が汚かったが、今は空気も改善し、若い世代を中心とした人口流入も増加している。提言したプランは「夢」のようなものもので、なかなか大変であるが、「道路とは何なのか?」ということを問うていきたい。
Q2:もし自分が同じように喘息になったとしても、西淀川の患者さんのように前向きに戦えず、引きこもりになってしまうかもしれない。企業と訴訟で戦うきっかけとなったのは、「怒り」なのか、「子孫には同じ目に遭わせたくない」という思いだったのか。
A:第一は「怒り」の気持ちである。自分で好きからなった病気ではない、ああいう思いは二度としたくないというのが運動を行うきっかけである。運動をしていく中で、子孫にはこういう思いをさせたくないという考えが芽生えてきた。
Q3:「子供と心中することも考えた」というお話を伺い、本当につらい思いをされたのだと思います。まわりの人にも同じような苦しい思いをしたひとはいるのでしょうか。
A:周りにも多いと思う。患者の中には、自分のつらい体験を話す人もいるし、話さない人もいる。また、なかには自殺に追い込まれた人もいる。
学生からは、「患者さんから、他ならぬ自分のこととして直接お話いただいたので、非常に勉強になった」という感想をいただきました。また、語り部の方も「北海道から来た若い人に元気を分けてもらったのでうれしかった」と仰っていました。(南 聡一郎、あおぞら財団特別研究員)