日中環境問題サロン「中国の環境問題と法規制等の動向」開催しました(3/11)
日中環境問題サロン2014
「中国の環境問題と法規制等の動向」
日時=2014年3月11日(火)18:30~21:00
場所=あおぞら財団3階会議室
報告=弁護士 白出博之氏
質疑応答・意見交換
参加者=17名
2011年から 国際協力機構(JICA)による中国民訴法等の法整備支援長期派遣専門家として北京に2年半赴任していた弁護士・白出博之氏に法律家の立場から見た中国の環境問題についてお話いただきました。
<報告要旨>
・北京での大気汚染は深刻で、大気の状況が悪い時には日本人学校では体育館内での体育の授業も中止。健康被害対策のため、北京駐在員には妻子を帰国させ、やむを得ず単身赴任の方も多数存在
・大気汚染の原因として、汚染物質の排出量の多いローテク企業が多数存在。PM2.5の2割は自動車による排気ガス
・JICAでは日中の地方自治体間の取組みを支援(例:京都市と西安市)
・ODA(政府開発援助)として、法整備支援事業を実施
・派遣前半は、民事訴訟法の整備が、後半は環境保護法(1989年施行)、消費者権益保護法(1994年施行)の改正に関する支援がメイン事業だった
・環境保護法改正案(2013年7月・第二次審議稿)について紹介
<おもな質疑応答>
Q.中国の大気汚染はPM2.5のことばかり取り上げられるが、あれだけ黒くなっているのだから、それ以外の要因もあると思う。その他の汚染物質含めてデータの公開はどうなっているのか。
A.PM2.5はアメリカ大使館が問題視したことから注目されるようになった。いろいろな問題が解決しないのは、情報公開が適切にされていない、ということがある。
Q.日本からの支援が中国国内では知られておらず、逆に反日デモがおこったりなど、何かギャップを感じる。
A.反日デモがおこったら、我々と一緒に仕事をしている中国人や、日本にいる中国人も心を痛めている。今は、ネットなどで情報を得ている人が多く、国営テレビが流す情報だけを信じている人は少ないと思う。日本側のマスメディアも中国での報道をそのまま伝えるのではなく、分析をすることが必要。
Q.かつては重慶が大気汚染がひどいと思っていたが、沿岸部の方がひどいのか?
A.重慶は重慶で、よくなっておらず、それ以上に沿岸部など悪くなっている地域が多いということだと思う。
Q.中国と日本では法律のとらえ方が違うのでは?
A.中国では、法科というが、これは、刑法。なので、法というと、統治の手段というイメージがある。法は市民の権利を守るためにある、という発想ではない。
<おもな意見>
・レジュメで配布されている環境保護法改正だが、いろんなところで、改善がされている。環境情報の公開と公衆の参加についても進んでいる。NGO側では「出たきた情報を環境NGOが監視していこう」という流れになっている。法的には追い風になっているので、こうした気運にあおぞら財団がかかわっていく意味は大きいと思う。
・中国で環境が悪化し続けるのは、被害者を隠ぺいしているからだと思う。裁判の「装置」が機能していない。変えるのは難しが、情報公開をすすめ、市民の目で監視すること、被害者の価値観から問い直すことが大事だと思う。
最後に、白出弁護士は次のように述べました。「中国では、今回の環境保護法の改正を受けて、大気、水、土壌などの個別法の見直しも必要になってくる。そのとき、あおぞら財団のような団体が受け皿となって、日本の経験を伝えたり、研修を受け入れられたらいいと思う」
<参加者のおもな感想>
・中国の環境問題に関しては、テレビやネットなどを通じて、一定の情報は得ていたつもりであったが、実際に現地で立方実務に携わってこられた白出先生のお話は新鮮なものであった。
・中国の法規制等、現状が知れました。
・中国の環境問題について、中央政府、地方政府、民間、という3つの点から考えるべきではないかと気づきました。
以上
記録(鎗山・あおぞら財団スタッフ)