台湾/台北 訪問記(2016.10) 台湾環境NPO・弁護士に聴く―台湾公害訴訟の現場とは
10月22日、「平成28年度 大気汚染経験情報発信事業」の一環として、北京訪問後、次の目的地・台北に降り立ちました。
北京はダウンが必要な日もあったのに関わらず、それと打って変わって台北はまだまだ残暑が厳しく、日中は30度を越す日も。
そんな中、訪問団は環境NPOの交流会や、アスベスト訴訟を扱う団体が参加する「台日公害訴訟及び疫学因果関係のワークショップ」に出席しました。
<訪問者>
村松昭夫(弁護士、前全国公害弁護団連絡会議幹事長、あおぞら財団理事長)
藤原猛爾(弁護士、前日本環境法律家連盟理事長)
藤江徹(あおぞら財団事務局長)
當間美波(神戸市外国語大学三回生)
交流会には大気汚染や原発問題に取り組む、台湾健康空気行動連盟や緑色公民行動連盟が参加し、台湾側から日本側に対して公害裁判について質問をする形で交流会が進みました。
「日本での大気汚染訴訟は成功したが、台湾では起訴の際、因果関係の証拠が少ないと裁判所側に跳ね返され、裁判を進めていくのが難しい。」という台湾側の課題に対して、村松弁護士は、日本の公害裁判の場合、原告の数の多さや専門家による因果関係の調査協力が裁判を進めることが出来た大きな要因だと返答しました。
交流会を通して、大気汚染問題についてはアジア各国で協力して行く必要があるという共通認識を確認することが出来ました。
交流会に続いて行われたワークショップでは、アスベスト訴訟に取り組む団体からの報告、日台双方からの質疑応答や意見交換が行われました。
ワークショップの第一部では、日台のアスベスト訴訟に携わった弁護士から、両国のアスベスト問題について報告を受けました。
台湾ではアジア諸国の中では、アスベスト使用量が少なく、1990年にアスベストの使用が全面禁止されたのにも関わらず、現在でも国内にアスベスト建築物が残っているという現状があります。また、アスベスト労災認定が進んでいないのも、課題として残っているそうです。
第二部では、「台湾三大公害訴訟と日本の疫学原則」をテーマに、台湾側から代表的な公害訴訟について、日本側からは日本四大公害訴訟の経験の報告を聴きました。
台湾側からは三団体がそれぞれ有機溶剤汚染、ダイオキシン汚染、複合汚染の案件について、事件の背景から訴訟の過程まで詳細に言及しました。
続いて藤原弁護士は、日本における疫学的因果関係を含む因果関係の全般的な考え方を、日本四大公害訴訟の経験を付け加えながら説明しました。
ワークショップの最後は、各弁護士からのコメントで締めくくられました。
~番外編:台北街歩き~
台湾の街中にて、信号待ちをするバイク
(記・當間美波)