関西学院大学総合政策学部(総合政策演習)の受入れ
2019年6月8日(土)
関西学院大学総合政策学部の総合政策演習(佐山浩先生と学生9名)の受入れを行いました。
西淀川フィールドワークの後、西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)にて、西淀川大気汚染公害についての講義を行い、公害患者さん(岡崎久女さん)からのお話をお聞きするプログラムでした。
まずは、午後1時に阪神なんば線「出来島」駅改札に集合し、スタッフの栗本の引率によるフィールドワークをスタート。
国道43号線
大型車が多く排気ガスと工場の煙による複合大気汚染の原因となったこの道路対策について解説。
千北診療所
1969年創設の公害医療センター。西淀川公害患者と家族の会の事務所も併設され、公害病患者の治療の拠点となる。
あおぞら苑(地域再生の碑)
裁判の和解金を活用して2006年にオープンしたデイサービスセンター。公害患者の高齢化に伴い、日々の生活援助を目的とする。地域の一般の方も利用している。
神崎川堤防(千北橋通り)
工場用の地下水の汲み上げによって地盤沈下がおき、住宅地が水面より低くなっていることがよくわかります。
大野川緑陰道路
元は中島大水道という人口水路だったが、淀川の改修によって大野川と結合し、排水の不備や捨てゴミが溜っていた。環境改善のために1970~1971年に埋め立てられ、緑に囲まれた歩行者・自転車専用の道路となっている。水質汚濁も酷い川だった当時の写真を見て、学生も驚いていました。
あおぞら財団(西淀川・公害と環境資料館エコミューズ)に到着。
休憩をはさんで、あおぞら財団スタッフの栗本が、西淀川大気汚染公害の歴史、公害環境行政、公害裁判と患者団体の運動、あおぞら財団設立に至る歴史的な流れなどについてのレクチャーを行いました。
公害病による影響として思いつくものとして、学生からは、「仕事に行けない、学校に行けない、運動ができない、子どもに影響する(育児)、差別(地域のイメージが悪くなる、引越し、うつる、不健康地帯という烙印)、経済的に困窮する、医療費がかかる」などの意見が出されました。
次に、公害患者さんのお話として、岡崎久女さんにお話を伺いました。岡崎さんは、23歳のときに、高知県から西淀川へ嫁いで来られて、翌年出産し、25~26歳で、ぜんそくを発病し、長年苦しんで来られました。とくに症状が酷かった最初の5年目頃は、夜寝るときの態勢も横になると気道が狭くなりしんどいため、座ったまま寝ていたことや、通院頻度(週3~4回、点滴または吸入)や、一回の点滴が保険適用でも非常に高額であることなど、色々な面で深刻さがよくわかりました。また息子(次男)さんも公害病認定されているとのことで、親としての思いや、引越しを考えた際、「おかんには故郷があるけど、僕にはここしかない」と言われて、「この地の空気をよくするしかない」との考えに至ったというお話には、とくに考えさせられました。途中から、患者団体の事務局長をされている上田敏幸さんもトークに加わり、色々なデータや署名運動のお話し、現在もぜんそく患者は増えていること、また岡崎さんから色々なお話しを引き出してくださることで、より深く本当の大変さが伝わりました。
学生からも、自分の住む町も被害があることに気づかされたり、実際に家族にぜんそくの方がいて他人事ではないという感想や、自分たちに何ができるか、今後の活動(ソーシャルワーク)につなげていきたいといったような感想もみられました。
長年大変な思いをしてこられた岡崎さんですが、あのとき自殺しなくてよかった、孫もできて幸福と語られ、お話に笑いもあって、ビラ撒きがしんどかったと言いつつも、裁判の原告として仲間と共に長年運動されてきて、色々なつながりや、周囲の支えもあり、現在もあちこち忙しく活動されているご様子が伝わり、何よりも笑顔が一番印象的でした。(田中)