環境省職員環境問題史現地研修(5/30-31)
あおぞら財団では、毎年、環境省職員の「環境問題史現地研修」の受け入れをしています。
昨年度と同じく、一週間前にオンラインによる事前説明会うを行った後、、5/30から5/31に西淀川に来ていただきました。
今年の参加者は33名(引率2名)と過去最多です。
一日目の最初は、オリエンテーションとして、プログラム概要説明と自己紹介などを行いました。その後、昔の西淀川の大気汚染に関する写真に基づいて、フォトランゲージがされました。フォトランゲージとは写真を言語化するワークで、各自が昔の大気汚染の実情を想像しながらタイトルを付けます。
その後、グループごとにロールプレイを行いました。公害が起きた町を設定し、その町の市役所職員、住んでいる一般住民(公害患者の親)、医者、企業、従業員といった役割を演じてもらいました。実際にその立場で考えてみたら、どの役割でも難しさがあること、特に公害患者が少数になりがちになり意見が言いにくくなり、公害患者に寄り添う難しさを感じてもらいました。
アイスブレイクや背景知識の学習が終わりましたら、公害患者の語り部の岡崎久女さんと西淀川公害患者と家族の会の事務局長、上田敏幸さんの話を聞きました。実際に公害被害を経験した患者さんの生の声を聴いて、より確実に公害がもたらした不幸を実感できたのではないでしょうか。
その後、あおぞら財団理事長であり、西淀川大気汚染訴訟弁護団の一員であった村松昭夫弁護士の話を聞きました。公害訴訟に工場や阪神高速道路公団など被告の選定、疾病と公害の因果関係の証明、共同不法行為の証明など色々苦労したことを伺いました。
いくつかの講義を経た後、あおぞら財団理事である高田研先生が「紙芝居プレゼンテーション法(KP法)」を紹介しました。各自が紙に「今日の学び・印象に残ったこと」と「もう少し深めたいこと・考えたいこと」などキーワードを書いてもらって、グループ内に共有して、プレゼンテーションをしてもらいました。最後に、全体の共有を行い、一日目の研修は終了しました。
研修終了後には、あおぞら財団スタッフや患者会が各グループに入って、交流会が開催されました。
二日目は、講義形式ではなく、「公害のデパート」とよばれていた西淀川で実際に歩いて、貸し切りバスで回って、この辺りの実態を知ってもらいます。大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、 悪臭が典型7公害と言われていますが、西淀川にはこの7つの公害により汚染されていました。
その後、あおぞら財団理事、元神戸製鋼所訴訟担当の山岸公夫さんが、企業側の目線から、西淀川大気汚染公害訴訟をどう見ていたのかという話がされました。本件訴訟をふりかえって、企業側としては不法行為をしていないにも関わらず、公害患者という被害者がいる中で、うまい落としどころが見つかれば…という思いがあったそうです。山岸さんは 時代の屈折点における軋みと捉えていて、トラブル処理の基本となる法律の整備が時代の変化に対応していってほしいと語っていました。
最後に、この二日間の学びをグループで共有し、プレゼンテーションを目指してワークショップを行いました。
その後、「KP法」でプレゼンテーションをしてもらいます。6つのグループがそれぞれの着目点がありますが、全員が「コミュニケーション」の大事さについて言及しました。
公害の和解は、ステークホルダーのコミュニケーションが欠かせません。現在または将来の環境問題に、より広範囲のコミュニケーションこそが解決の糸口ではないかと考えられます。
【参加者の感想(抜粋)】
- 今回、岡崎さんが私たちに向き合い、他人に決して知られたくない辛い決断を含めて勇気を振り絞って言葉にしてくださったことで、公害により耐え難い苦しみを味わった方が目の前の一人の人間であること、普通の生活をただ当たり前に送りたかった普通の人であったこと、そしてその苦しみが現在でも続いているということを痛感しました。
- ロールプレイを通じて、公害が複雑になるのは様々な立場・思いがありそのどれも完全悪ではないこと、また、安易な折衷策は裏目に出る可能性が高いということをよく理解できた。
- 行政の立場では、法律などの規則を制定し、その範囲内でできることを模索することになるが、当然、地域や個人ごとに事情は異なるため、その中で落としどころを見つける難しさがあると感じた。だからといって、静観するのは間違っており、こと国の行政官として何ができるのかについては真剣に考えなければならないと思った。
(記:あおぞら財団アルバイト王子常)