日中公害・環境問題に関する研修プログラム【2日目】
「平成23年度 大気汚染経験情報発信事業」の一つとして,
10月下旬に,中国の環境NGOとの交流・汚染地域の視察を目的に北京訪問を行ったのですが,
今回は中国NGOの方々,公害被害者の方,総勢8名に来日していただき,
日中交流・環境問題に関する研究プログラムに参加して頂きました!!
【2日目 12月2日】
≪午前≫
中国の皆様と一緒に,
「大阪府環境農林水産総合研究所環境科学センター(http://www.epcc.pref.osaka.jp/reaf/)」
を訪問見学致しました.
はじめにセンターの概要をご説明頂きました.
研究所は,
(1)環境科学センター
(2)水産技術センター
(3)水生生物センター
(4)食とみどり技術センター
の4部門で構成されており,
本部である(1)の環境科学センターには,昭和43年に大気汚染常時監視システムが設置されて以来,40年以上の観測歴があるそうです!(すごいです!!)
昭和40年代前半には,工場地帯の排出ガスによるスモッグがひどく,
大阪城をはっきりとみることができませんでしたが,
行政による対応などにより,硫黄成分を取除く規制がなされ,
昭和60年代には随分明瞭にみることができるようになったとのことです.
またセンターの機能としては,
(1)環境情報の発信
(2)環境教育・学習の推進
(3)環境の監視・分析・調査研究
(4)環境に関する研究開発支援・技術開発
(5)国際協力
の5つがあると教えていただきました.
次に,センターでの具体的な取り組みについてご説明を頂きました.
大気汚染の測定は
(1)住宅地に近い一般環境や②道路の近く、
で行われていて,大阪市内では105局も観測地点があるそうです.
観測データはセンターに集められ,各指標が環境達成基準に適合しているかどうか常に監視し,もし基準を越えていた場合には,住民に注意を呼び掛けるそうです.
さらにこちらのデータを使って,シミュレーションをおこない,対策を練られたりされるそうです.
そして,センター内の様々な分析機器の見学や研究事例をご紹介頂きました.
NOx,SOx,光化学オキシダント,SPMなどの自動測定がおこなわれています.
各機器について分析項目や原理について皆さんと学びました.
○アスベストの分析
アスベストが使用されている建物を解体する際に大気中のダイオキシンをサンプリングし分析を行うことで,大規模な拡散がないかチェックを行っているそうです.
顕微鏡で過去に分析を行ったアスベストを見せていただきました.
○ダイオキシンに関する研究事例のご紹介
ダイオキシンの挙動が大気や風,気温によって変化するそうです.
難しいです….
○重金属測定分析
ICPという機器で,プラズマ光線を利用して測定を行うそうです.
機器内は5000℃にもなるとのこと!
○見学を終えて…
意見交換では中国の皆様から,中国の大気事情や,環境基準項目の違い,また分析の課題などをご紹介いただき,今回の訪問見学は大変勉強になったとのコメントを頂きました.
≪午後≫
中国の皆さんと「あおぞら財団」へ向かい,西淀川大気汚染裁判に深く関わられた方々をお呼びして,講義をしていただきました.
○あおぞら財団の概要説明
西淀川における公害と裁判の概要説明より,あおぞら財団の設立の経緯と目標について説明しました.また財団の概要,具体的な取り組みや過去の日中交流について紹介しました.
○弁護士,村松昭夫先生による講義「西淀川大気汚染裁判と日本の公害問題」
村松先生は,西淀川の裁判に取り組まれた弁護士で,現在はアスベスト問題などに取り組まれておられます.
福島原発事故の被害は,日本が経験した最大最悪の環境被害であり,公害被害であるという議題は,大変興味深く拝聴致しました.
福島原発事故を受けて,日本各地に原発があることについて,現実的な危険性を意識すべきで,エネルギー転換も考慮すべきであると提言されました.
原発問題や西淀川の裁判について中国の皆様と活発な議論がなされました.
○公害患者さん,永野千代子さんによる経験談
大気汚染がひどい西淀川に引っ越しをされ,幼い息子さんが喘息を発病されたそうです.しかし、しばらくは,公害という言葉や,また大気の汚染のせいで健康を損なうこともご存じなかったそうです.
公害反対運動に参加され,勝訴を願って130万もの署名をお集めになられたそうです.
活動をなさるうちにご自身も喘息になられて,今も咽喉に症状が残るそうです.
永野さんの想いは,あおぞら財団の活動に委ねていきたいと締めくくられました.
○永野さんと公害反対運動時のタスキと
中国の皆様から永野さんに,公害反対運動を頑張って頂いたことへの感謝と,中国でも頑張ります.との抱負を伝えられました.
永野さんのご健康をお祈りいたします!
○森脇君雄氏による,公害反対運動の経験談
公害患者会の40周年の冊子を元に,森脇氏の45年間の公害反対運動についてご説明頂きました.
はじめには多くの国民に周知するために,ビラ配布活動を行ったこと,
裁判では,遠隔地である尼崎企業の利害関係を説明することが困難であったこと,1995年に企業と和解されたこと,
和解金40億円の一部を使って疲弊した西淀川の街づくりをすることを和解の条件として上げたことで,企業も同意することができたこと,
あおぞら財団が国の認可する財団として立ち上がったこと,高齢化する患者さんのための福祉施設(あおぞら苑)を設立なさったこと,といったことなど,丁寧にご説明して頂きました.
最後に,中国のNGOの役割として,公害に晒されている中国の方々を組織し,その方たちが行動を起こすようぜひ働きかけて頂きたい
とのエールを頂戴しました.
朝から盛り沢山な行程で,皆様大変お疲れでいらっしゃったにもかかわらず,最後まで熱心に討論されるみなさんから,大変な刺激を受けました.
このように貴重な機会をコーディネートして頂きましたあおぞら財団の皆様に心から感謝いたします.
あおぞら財団・国際交流スタッフ 徳島大学大学院 山口奈津美