あおぞら財団では「西淀川公害にかかわる学習プログラム作成研究会」を開催し、
公害・環境学習教材を企画作成を行ってきました。
今年度取り組んでいるのは、
○ 環境教育ビデオ「手渡したいのは青い空〜未来からのメッセージ〜」
○ 大野川緑陰道路の教材づくり
○ フードマイレージの教材化
の3種類の教材です。
フードマイルズは英国の消費運動家Tim Langが1995年に提唱した概念で、
食料が生産地から消費者に届くまでの距離をさします。
遠くから運ばれてくると、フードマイルズの値が大きくなります。
つまり、輸送距離が長いほどCO2およびNO2の排出量が多くなる=環境負荷が大きくなるのです。
買い物という日常の行為の選択によって環境負荷が変わります。
大阪大学大学院工学研究科の松村暢彦先生のチームで、ゲームで違いを知ってもらう
学習プログラムを現在思考中です。
学校で実践をしようということで、
大阪府立三島高等学校3年生の選択科目「時事問題」(公民科、学校設定科目)の授業(松井克行先生)で実践しました。
(2006年1月16日、18日)
【1日目】1月16日(50分間)
1.1970年チームと2004年チームに分かれます。
買い物に行く交通手段と場所を選択します。
(徒歩・自転車or車、近所の店or郊外の大型店)
2.食材カードを使って夕食を作ります。
1970年チームと2004年チームは予算と食材カードが違います。
たとえば、1970年チームにはトマトはありません。
理由は旬じゃないから。
食材カードには値段と産地が書いてあります。
3.夕食の絵を模造紙に描きます。
産地シールを日本地図にはります。
【2日目】1月18日(50分間)
4.70年代がどんな時代だったかを理解するため、
ビデオ「日本の食生活の変化—魚から肉への転換を推し進めた米国の世界戦略—」
(NHKスペシャル世紀を越えて第1集「一頭の牛が食卓を変えた」1999年1月24日放送より10分)
を見る。
5.食材カードの裏面には封筒が張ってあります。
その中にフードマイレージをあらわす★印のカードが入ってます。
★印を計算して、夕食にかかったフードマイレージを計算します。
(★1つ 20g-CO2)
6.お互いのフードマイレージ(星の数)を発表
<1970年チーム>
11コ(焼肉)
14コ(お好み焼き)
22コ(さばの味噌煮、から揚げ)
<2004年チーム>
32コ(さばの味噌煮)
57コ(お好み焼き)
50コ(アジの塩焼き)
明らかに、1970年代のほうがフードマイレージ(環境負荷)が少ないです。
7.お店までの交通手段による違いをフードマイレージで換算します。
<1970年チーム>
11(焼肉) +15 (近くのスーパーに車) =26コ
14(お好み焼き) +0 (近くのスーパーに徒歩・自転車) =14コ
22(さばの味噌煮)+0 (近くのスーパーに徒歩・自転車) =22コ
<2004年チーム>
32(さばの味噌煮)+15 (近くのスーパーに車) =47コ
57(お好み焼き) +0 (近くのスーパーに徒歩・自転車) =57コ
50(アジの塩焼き)+105(郊外のショッピングセンターに車)=155コ
実は、お店までの交通手段も環境に大きく負荷をかけています。
8.ふり返り
ワークシートに感想を記入します。
環境問題というと、ゴミ問題とか緑化問題など、
自然と結びついた形で認識されますが、
実は、買い物とか交通とか、日常の行動が環境と結びついているんです。
生徒の感想にも
「自分達が何気なく食べている食材がどうやって今、目の前にあるか・・・と考えると環境問題につながっていた」
「食べ物の流通などから環境問題につながることは盲点だった」
という感想がのべられていました。
また、生活と車の関係について事前にアンケートをとっていたのですが
「環境問題で車をいざ使うな!といわれるのは正直ムリやろ、という雰囲気がにじみ出てた」
など、「車=×」とはいかないなぁという現状のモヤモヤ感を生徒たちに残したようです。
私たちは、車がない社会がいいと押し付けているわけではありません。
車と上手に付き合っていくには、どうすればいいのかな?と
考えるきっかけにしてほしいのです。
だから、モヤモヤ大歓迎なわけです。
小学校や中学校に合わせたプログラムの改良など、
これから取り組むべき課題は沢山ありますが、
実践を通じて、よりよいプログラムにしていきたいと考えています。
もし、実践のご希望や、
フードマイレージ教材化研究会(次回3月28日)への参加希望があれば
ぜひともあおぞら財団にご連絡ください。