アジアの一員として
2009年1月25日は西淀川でも朝、風花の舞う寒い日でしたが、関西圏の大学に通う留学生と日本人学生約20名、オブザーバーとして専門家の先生たち7名の総勢30名があおぞらビルに集い、中国と日本の公害・環境問題について熱心に語り合いました。
このセミナーは、グローバルな経済活動のもとで一層深刻化するアジアの公害環境問題を、同じアジアの一員として学生同士が考え合おうという目的で企画されたものです。
セミナーでは、まず講義「アジアの公害・環境問題—法律家・NGO同士の取り組み」(村松昭夫弁護士)と話題提供(日本の事例として西淀川大気汚染公害・中国の事例として福建省渓坪村の化学工場による環境汚染)で、日本の公害の歴史と中国の公害環境問題の現状について学びました。
「どうすれば公害のない社会をつくれるのか」
そのあと、3つのグループをつくり、公害環境問題に関して、①今関心を持っていること、②日本の現状と中国の現状(解決するための課題とは何か?)、③今後の日中交流で何ができるか、の3大テーマにそって、グループワークを行いました。
色々な意見が出ましたが、グループワークで議論の中心となったのは、日本でも中国でも、「どのようにすれば人々に公害環境問題への関心を持ってもらえるのか」、「どうすれば公害のない社会をつくれるのか」という点です。
留学生からは、日本の経験(日本が公害の歴史の中で獲得してきた高い環境対策技術や法・制度、太陽光発電の広範な普及による循環型社会形成のノウハウなど)を学び、中国に役立てたい!という積極的な思いが伝わってきました。
日本と中国はお互いに「鏡」
一方、他のアジア諸国よりも一歩先に、経済発展と深刻な公害を経験・「克服」した日本の学生は、「伝えるべき」多くの教訓や経験の蓄積がありながらも、それをどのように伝えたらよいのか、そもそも自分たちももっと学ばなければいけないことがあるのではないか…ということを改めて考えさせられた様子でした。
最後にオブザーバーの先生から、日本と中国はお互いに「鏡」として、互いの社会を見返っていくこと、そのために自分たちの国や社会について、きちんと知る努力をすることが大切であるとのコメントをいただき、学生として大きな宿題をいただきました。
3時間のセミナーでしたが、グループワークや班ごとの発表の際に、周りから鋭くつっこみを入れるオブザーバーの先生方とのやり取りも盛り上がり、多くの参加者から「もっと時間が欲しかった」「時間が足りなかった」という嬉しい感想をいただきました。
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あおぞら財団は、日本の公害経験を広く国内外に発信していくことを通じ、現在の公害・環境問題の解決に少しでも寄与したいと、昨年度から中国への情報発信事業を本格化し、日中の公害被害者救済のためのネットワークの構築を進めています。
アジアのネットワークをつくっていくためにも、今後の公害環境問題の解決の担い手である若者同士の交流は、非常に意味のあることです。今回のセミナーの成果と教訓を生かして、今後もまたこのような企画を続けていきたいと思います。
(文:入江智恵子 大阪市立大学大学院)