日中環境問題サロン2017
第四回「中国の公害・環境問題と環境NGOの取り組み」
先日、今年度最後となる、日中環境問題サロン2017(第四回)「中国の公害・環境問題と環境NGOの取り組み」(1/19)を開催しました。
今回も中国から環境NGOの方を4名お招きし、それぞれの団体の活動や、活動を始めるに至った経緯についてお話を伺いました。
■日時:2018年1月19日(金)18:00~20:30 (受付17:30~)
■場所:グランフロント大阪 ナレッジキャピタル アクティブスタジオ
■主 催:あおぞら財団(公益財団法人公害地域再生センター)
■プログラム
① 「企業への環境保護教育」李力氏(北京市朝陽区環友科学技術研究センター)
② 「蔚藍地図~青空を求めて~」阮淸鴛氏(公衆環境研究センター・技術総監)
③ 「行動が変革を生む」洪武氏(湖南省湘潭市緑葉環境保護ボランティア協会)
④ 「大気汚染と野焼きについて」張頔氏(江蘇緑色の友・自然教育顧問)
⑤ 質疑応答
【講演者・内容】
① 「企業への環境保護教育」(李力氏)
始めに、李力氏から汚染企業への環境教育の取り組みについて紹介していただきました。
以前のサロンで報告があったように、李力氏は昨年から楚源集団(湖北省の大手染料メーカー)の副社長として、企業の環境改善に取り組んでいます。今回は、その経緯や活動についてより詳しく説明されていました。
2016年から改善に取り組み、中国国内の汚染改善に成功した企業と協力したり、企業内での調査を徹底したりと言った対策を取りました。
その結果、汚染水や廃水処理費を大幅削減し、現在ではモデルケースとして全国的にも注目を集めているそうです。
② 「蔚藍地図~青空を求めて~」(阮淸鴛氏)
続いて、阮淸鴛氏から公衆環境研究センターの活動内容について報告がありました。
公衆環境研究センターは、政府・企業向けに環境情報を発信しています。2006年から環境データプラットフォーム(环境数据平台:http://www.ipe.org.cn/)という、企業の汚染状況や処罰、対策等のデータを公開するサイトを開設しました。
現在では86万社ものデータを公開し、毎日100万件のデータを更新しているそうです。その中には、日立やパナソニックなど、日本の大企業のデータも含まれ、企業もこのデータベースを環境改善に役立てているそうです。
さらには、独自に開発した、中国国内の気象条件と合わせた大気汚染の変化を見ることが出来るスマートフォンアプリについても紹介されていました。
③ 「行動が変革を生む」(洪氏)
洪氏は、環境保護活動をに取り組み始めた経緯と、その活動について紹介してくださいました。
洪氏はもともと湖南省ある大企業の副社長を務めていましたが、汚染地域に調査に行ったことをきっかけに、退職して環境保護活動に専念するようになったそうです。
自身が代表を務める湖南省湘潭市緑葉環境保護ボランティア協会(緑葉環境保護)では、漁業や炭鉱、化学、重工業などあらゆる分野による汚染を調査する活動を行っています。
また、現在は各地で環境ボランティアの育成や、阮氏と協力して、700社の汚染排出現場の調査にも携わっているそうです。
④ 「大気汚染と野焼きについて」(張氏)
最後に張氏から、大気汚染と野焼きついて報告していただきました。
張氏はまず、北京の大気汚染について紹介した後、スモッグの原因の1つである、野焼き問題について紹介されました。
中国の東北部に位置する黒龍江省では農業が盛んで、農作物の残留物の焼却による汚染物質の排出が問題になっています。毎年黒龍江省ではトウモロコシ畑から3000万トンの残留物が焼却され、3800万トンものCO2を排出しているそうです。
問題を解決すべく、日本からのODAを活用したプロジェクトで農業従事者向けの勉強会を開いたり、残留物から肥料を作ったり等、様々な取り組みを進めているそうです。
【質疑応答】
Q:先進改善事例のある企業との協力の話の中で、吉林石化が出ていたが、同企業は2005年に深刻な汚染排出が問題視されていた。どのように改善したのか?
A:(李氏)吉林石化は古い企業で、昔から汚染がひどかった。しかし、2つの方法により改善することができた。1つは、企業内の古い機械やプロジェクト、部門を廃止し、化学製品の生産をやめて、石油メインにシフトしたこと。2つ目に、技術面の改革を行ったことである。以前使用していたボイラーが汚染の原因だったのだが、自社でボイラーの開発チームをつくり、新しく環境に対応したボイラーを作った。
このように、改革に力を入れていることから、モデルケースとして採用した。
Q:CITIのランキングになぜ近年シェアサイクル関連企業が入るようになったのか?
A:(阮氏)シェアサイクルはここ数年で急速にはやり始めた業界で、その関連企業に環境面の問題が発覚した。ofo(中国のシェアサイクル業界の最大手)の自転車が、下請けの段階で問題があることがわかった。シェアサイクルはもともとグリーンなイメージがあり、生産段階でもグリーンであるべきだという考えから、ランキングに載せるようになった。
Q:黒龍江省は寒いがどのように残留物を作っているのか?
A:(張氏)黒龍江省は冬が長く寒いが、倉庫に残留物を保管して自然分解させて肥料を作っている。まだ初歩的なプロジェクトだが、焼却するよりも自然分解させた肥料の方が栄養がある。
最後に記念撮影をしました。
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今回講演していただいた張頔氏が、1月18,19日の中国環境NGO研修とサロンについて、中国版LINE(wechat)の北京市朝陽区環友科学技術研究センターの公式アカウントで報告されました↓
http://mp.weixin.qq.com/s/IRfxir1u1_QUpmS6rfPqbg
中国語ですが、こちらも是非ご一読ください。
記・當間美波(神戸市外国語大学 中国学科4年)
■日中環境問題サロン
あおぞら財団の国際交流事業の一環として、中国の公害・環境問題に関する研究者、中国で活躍する専門家・環境NGOメンバー等を講師に迎え、中国の公害・環境問題についての報告や参加者との意見交換を行う日中環境問題サロンを2009年から開催しています。
本年度(2017年度)は、様々なテーマで4回開催しました。今後も興味を持って頂ける方々に、ご参加いただければと思います。
【第一回】「中国の環境問題を考える~日中環境交流の現場から~」(2017/06/26)終了https://aozora.or.jp/archives/28827
【第二回】「アジアの経済発展と公害・環境問題~参加・訴訟の現在から~」(2017/08/29)終了
【第三回】「中国で活動する環境NGOの現状」(2017/10/27)終了
https://aozora.or.jp/archives/29681