あおぞら財団 第8次大阪地域公害防止計画(素案)に対する意見・提言
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第8次大阪地域公害防止計画(素案)に対する意見・提言

2008年1月24日

第8次大阪地域公害防止計画(素案)に対する意見・提言
あおぞら財団(財団法人公害地域再生センター) 藤江徹

【意見】 宛先:大阪府環境農林水産部環境管理室環境保全課総務・企画グループ

第2章 公害防止対策

【交通需要の抑制】についての意見

自動車交通需要の抑制にあたり、公共交通機関の利用促進と併せ、自転車の安全に走行できる走行環境づくり、意識啓発、駐輪環境の整備等を含む「自転車利用の促進」を追加すべき。
【局地汚染対策】についての意見

汚染が著しい交差点などへの対策としては、沿道環境改善に加え、局地汚染地域を対象とした自動車交通量の上限値設定とそれに伴う交通量削減のための施策(走行規制や環境ロードプライシングの強化など)を追加すべき。

【(2)環境の監視 (ア)大気汚染】についての意見

健康に与える影響が懸念されている微小粒子状物質(PM2.5)については、既に大阪府内においても、環境省や国土交通省による測定局の設置およびデータ収集がなされている。これらにより測定された数値は、米国やWHOなどが設けている基準値をはるかに上回っている。 また、東京大気汚染訴訟における和解条項(2007.8.8)においても、「PM2.5の健康影響評価のとりまとめとモニタリングの充実」が明記されている。 大阪府においても、PM2.5の観測体制づくり、総合的な汚染影響調査の実施を明記すべきである。

【環境影響評価】についての意見

大阪府では、環境影響評価法よりも充実した内容(対象事業の拡大、事業の事後評価の実施、情報公開の充実など)の環境影響評価条例を制定、実施してきている。しかし、本計画には実施状況を記載しているものの、実施における課題や評価、今後の計画についての記述はなされていない。そこで、実施における課題や評価を反映した施策を示すべきである。 具体的には、
①次世代に手渡す良好な環境と府民の健康を最優先させるために、計画段階からの環境影響評価(戦略的アセスメント)の仕組みをつくる。
②アセス制度に多くの市民が参加できるように、支援制度をつくる。制度の普及・啓発、専門的知識の提供など、大学・NPOと共同ですすめる。
の2点を提案する。

【第13節 環境保健対策・公害紛争処置・環境犯罪対策、1 環境保健対策、(1)公害健康被害対策】についての意見

「公害健康被害の補償等に関する法律」(公健法)に基づく認定患者の高齢化が全国的に進んでいるにもかかわらず、60歳以上の被認定者の割合が、具体的に数字で表記されていない。また、高齢化に伴う認定患者の課題についても明記が見られない。
全国平均(約37%)や、東京都の旧第一種地域と比較して、西日本、特に大阪府において高齢化の割合が高い。また、「高齢認定患者の増加に伴い、これまでの集団で行う事業への参加が困難になっていることや、ひとりひとりに対する生活指導等のきめこまかな指導が求められている」との高齢化に伴う認定患者の課題に関する指摘もあることから(平成17年度高齢認定患者の療養生活実態等に関する調査研究報告書43頁より転記、一部変更)、高齢化率の割合を明記し、今後の健康被害の予防を図る諸施策を進めるにあたって、「認定患者の高齢化に伴うニーズの多様化に対応しつつ、現行事業の充実やメニューの多様化を図ることが課題となっている」ことを文章として追加すべきであると考える。
「健康相談、健康診査、機能訓練等の環境保健事業の充実」については、平成19年8月東京大気汚染公害訴訟の和解協議に際し、環境大臣等が「健康相談等のニーズを踏まえた拡充」を検討する旨を表明したことから、平成20年度より、各患者が日常生活の中でぜん息の増悪予防・健康回復を行うことを支援するために、「自立支援型公害健康被害予防事業」が新規に実施される予定である。したがって、健康相談の機会に、特に要望の高いきめ細やかな事業を実施することが患者の要望として期待されている。大阪府においても、これらの経過や課題を具体的に明記すべきである。

【第13節 環境保健対策・公害紛争処置・環境犯罪対策、1 環境保健対策、(2)健康影響調査等の実施】についての意見

大阪府で行っている各種相談対応について、相談件数、内容の概要(項目)などを具体的に明記し、府民が高い関心を寄せる健康影響事項に関する情報公開を行うべきである。また、公害を未然に防止するという観点から、相談実績や内容に基づき、専門的な対応が可能な相談窓口(連絡先、電話番号)の明記や各自治体における担当課の設置や人員の配置などを検討すべきである。
国(環境省)サーベイランス調査への参加協力については、「参加協力する」という表記に加えて、大気汚染は依然として監視を要する状態であること、大気汚染の健康影響を継続監視するために、他省庁が実施している調査に、大阪府として協力していることを明記した上で、その調査結果について、大阪府の現状(状況)が分かるよう、大阪府のホームページ等に掲載すべきである。
また、環境保健サーベイランス調査以外にも、大阪府下においては3年に1度、「大阪府教育委員会」等により「こどもの健康調査-児童の自覚症状と大気汚染等-」が実施されている(直近では平成18年度)。また、文部科学省においては、毎年1回、学校保健統計調査が実施されており、大阪府下におけるぜん息児の割合が示されている。環境省においては、平成17年度より「そらプロジェクト(自動車排出ガスと呼吸器疾患との関連についての研究調査)」が実施されている。これらの調査についても、環境汚染による健康被害を未然に防止するという観点から、環境汚染による府民の健康への影響を把握し、正確に府民に知らせるため、調査の実施状況や結果、大阪府がどのように実施協力を行っているかについて、具体的に明記すべきである。

第4章 各主体の自主的積極的取り組みに対する支援施策

【第2節 環境教育・環境学習等の推進】についての意見

大阪における持続可能な社会を実現するための環境学習の推進にあたり、大阪の公害経験の共有は重要である。現在では、大阪で公害があったことを知る人が少なくなり、公害は「他の場所の過去の出来事」という認識が多数となりつつある。そうした中、大阪でも公害があったこと、対策により環境改善が進んだことを知ることは重要である。公害は国よりも自治体が先頭となって対策をとって解決してきた。その自治体の活動の裏には住民運動の支えがあった。住民運動は「様々な環境問題への理解と認識」を深め、実践行動に結びつけた人達の活動に他ならない。
環境学習の推進にあたり、「身近な動植物や貴重な自然環境とのふれあい等の体験」に加えて、学校や社会教育の場を中心として、こうした「大阪における公害経験の共有化」を重視すべき。

【2 環境情報の提供】についての意見

環境汚染、公害問題がアジア諸国で深刻化するなか、日本が経験してきた公害問題に関する資料や情報の発信が、国内だけではなく海外での公害防止にも求められている。日本の高度経済成長期、地方自治体は公害対策の推進において大きな役割を担った。そうした地方自治体をはじめ、企業、住民の公害対策への取組みは、環境問題の歴史を学び、現在直面している課題の克服、公害の予防のために、いかしていく必要がある。
さらに、行政資料だけではなく、企業や民間団体等が所有する関係資料の所在情報を把握し、情報をネットワーク化していくことで、より適切な情報提供をおこなうことができると考えられる。
したがって、ここで述べられる「環境情報」には、過去の公害問題に関する資料や情報も含めた幅広い情報収集を意味し、さらには民間とも連携した発信の必要性が計画に明記されるべきだと考えます。

参照1:第8次大阪地域公害防止計画(素案)に対する府民意見等の募集について(平成20年1月24日(木) )

参照2:第8次大阪地域公害防止計画(素案)に対する府民意見等の募集結果について