あおぞら財団 第Ⅱ期「大阪市環境基本計画(素案)」への意見
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第Ⅱ期「大阪市環境基本計画(素案)」への意見

団体名:(財)公害地域再生センター(あおぞら財団)
連絡先:〒555-0013 大阪市西淀川区千舟1-1-1三洋ビル4階
TEL:06-6475-8885 FAX:06-6478-5885
E-mail=webmaster@aozora.or.jp

はじめに

大阪市域は大型開発やそれに伴う工業化や都市化の結果、自然破壊や公害問題、公害健康被害などを経験してきた地域である。こうした経験と教訓から真摯に学び、環境面での「負の遺産」を次世代に負わせないようにすることを基本におくべきである。

当財団は、西淀川公害訴訟での和解金の一部を使って設立された団体である。名称にある「公害地域の再生」には、20世紀が環境破壊の世紀であった事実を踏まえ、なぜそれが起こったのか、それが起こらないようにするにはどうすればいいのかといった反省のもとに、新たな方向性を探ろうとの決意がこめられている。

下記においてはこうした基本方針にたち、「環境先進都市おおさか」実現のための意見を述べるものである。

1.本計画の位置づけについて

本計画は、「大阪市総合計画21」の環境分野の政策を担うものとして位置づけられているが、環境の視点からこうした総合計画に対してどういうアプローチをするのかが記されていない。環境に配慮したオリンピックをうたった会場予定地が、海を埋め立てた環境破壊の開発地であり、いまだ埋め立てが続いているように、壊してしまった環境を取り繕うための環境基本計画にならないことを強く望むものである。

また、環境施策の基本的な考え方として、「すべての主体の責任ある行動」が記されており、「汚染者負担の原則」や「拡大性生産者責任」が明確に位置づけられていることは評価するが、それが計画のなかで具体的にどのように反映されるのかが不明確である。各主体が責任ある行動を実践することは重要なことではあるが、責任のすり替えや必要以上に消費者に負担を押し付けるものとならないようにすべきである。そのためにも、「環境の現状と課題」において、その原因をより具体的に分析すべきである。

2.計画段階からの参加のシステムの確立

各種政策や計画に環境面から適正にコミットする視点から、戦略的環境アセスメントの検討が位置づけられていることを評価する。公園整備をはじめ、計画の作成の段階からワークショップによる交換・交流の場をもつなどもおおいに歓迎すべきことである。

こうした流れを踏まえ、現行のアセス条例においても、規定された参加手続き以外で、現状把握や予測・調査、代替案の検討などにおけるワークショップによる交換・交流の場をもつなど、情報公開法の趣旨を踏まえた各種情報を積極的に公開すると同時に、市民の各プロセスへの参加を促す仕組みを整備すべきである。また、既存の公園や施設の改善、リニューアルなどにも市民参加を貫くべきである。

また、京都市がアジェンダ作成に際して協働でこれを策定したように、各種政策や計画づくりの過程において、より具体的な形で協働の取り組みが実現する方法の導入を検討されたい。

3.大気汚染対策について

「自動車NOx法」において、平成12年度までに環境基準を達成することを目標としいていたはずであったが実現できなかったことは、単体規制だけでは限界があることを示した。こうした反省を踏まえ、それに基づく要因分析を行う必要がある。

また、大阪市域における環境容量は全体としてすでに限界である現状を踏まえ、各種機関と連携を図った上で、自動車交通総量を全体として削減する施策を講じるべきである。

4.公害・環境問題に関する資料のあり方について

快適な自然・社会環境の形成、将来的な環境保全の持続のために、公害・環境問題の歴史的な経緯を踏まえ、過去の体験や資料の保存が必要である。大阪市においては、公害が最も激甚であった時期において、行政・企業・市民のそれぞれが重要な役割を果たして対策の前進を支えてきたが、当事者の高齢化が進み一次資料の散逸も危惧されている。こうした状況下において、行政機関や市民社会に残る公害・環境問題の資料や情報を保存し、広く情報公開など活用していく必要があり、そのための施設の充実が望まれる。

5.環境教育・環境学習について

環境学習の推進については、《協働》の項に位置づけられているが、展開の場所が大阪市の施設のみである。小・中・高等学校においては、「総合的な学習」の導入に伴い、多くの学校現場において環境教育・環境学習の導入が図られている。こうした推進には、学校と地域社会、企業、専門家、NPOなどの連携が欠かせない。行政は、学校と各主体を有効的に結ぶ仕組みを整備すると同時に、こうした取り組みを促進するための施策を導入すべきである。

6.公害健康被害の救済について

公害健康被害の救済および環境保健にかかわる政策および対策については、①環境汚染による人間の健康被害を救済すること、②環境を人間にとって害のない状態にすること、③環境との関わりによって人間の健康の増進を図ること、の3つの観点から総合的に進められるべきであると考える。

引き続き、公害健康被害補償予防法における大阪市内の旧第一種公害認定指定地域自治体における健康被害について、必要な対策を講じるとともに、継続的に調査をつづけるべきである。また、新たな健康被害の発生に際しては、汚染者負担の原則を踏まえて、迅速かつ校正な保護を図ることが望まれる。

また、現在、実施されている公害保健福祉事業を充実させ、指定疾病により損なわれた認定患者の健康の回復・保持及び増進を図るため、公害病認定患者の加齢にともなう、病態の特徴、生活実態や福祉ニーズに基づく、療養生活上の問題や課題などの把握に努め、公害健康被害補償予防法の枠組みを活用し、地域のNPO等と連携して、公害病認定患者の健康回復や生きがいづくり事業など、具体的な活動に取り組むべきである。

早期の適切な医療により一層の疾病の治癒、軽快が期待される小児ぜん息等については、医療費助成の充実をはかるべきである。