第53回IATSSフォーラム1日目(6/18)
6月18日~21日の3日間、IATSSフォーラムのプログラムの一環でASEANの9カ国18人の研究生の受け入れをしました。
このIATSSフォーラムは公益財団法人国際交通安全学会がASEANの優秀な若いリーダーが約2カ月にわたって日本で行う研修です。3日間西淀川にも訪れ、あおぞら財団で研修をしました。
まず、西淀川公害が一体どのようなものか、地域再生とはどのようなものか、またあおぞら財団についての話がありました。昔の西淀川の写真をスライドで流すと、研修生の方たちは驚いた表情を見せていました。日本にも空が見えないような時があったと想像が付かないのかもしれません。
Q:あおぞら財団の取り組みでもあるとは、CO2排出量削減のために行っているのか?燃料を減らすために行っているのか?
A:エコドライブはCO2排出量削減も、燃料削減も両方の意味を持っている。急発進・急ブレーキを控えることで、一台のトラックからのCO2削減も燃料削減も行える。また、CO2全体を削減するために古い車の規制なども行える。
Q:あおぞら財団が地域社会とともに地域を作ってきたが、どのぐらい成果が出ているのか?また成果をはかる指標はあるのか?
A:どれぐらい成果が出たか、それをはかるような指標はない。ただ、近年西淀川は人口が増加している。人口が増えているということは、西淀川が住みやすい地域だということではないか。西淀川に住んでいる人たち全員で地域を作ってきたということになるのではないだろうか。
西淀川公害裁判の弁護士であった村松昭夫弁護士から裁判の話を聞きました。
村松弁護士からはなぜ大気汚染の裁判が難しいのか、また西淀川公害の裁判の難しさについてなどの話をしてもらいました。実際に西淀川からは離れた工場や企業から排出されたNOxなどが中心となっていたため、因果関係の証明がとても難しかったそうです。実際に研修生の国でも公害が起こっているので、とても真剣な様子で話を聞き入っていました。
Q:フィリピンでも現在大気汚染が問題になっており、予防措置はとっている。今後自国でもなくしていきたいが、日本の国や自治体では大気汚染防止に対しての法律はあるのか?
A:現在日本には国にも自治体にも大気汚染などの公害防止のための法律は多くある。汚染物質の総量をはっきりと明確化することによって、どのような対策をするか決めることが出来る。その対策を利用して、全体の汚染物質の総量を減らすことが出来る。また公害健康被害補償法のように、公害認定された患者への補償費や治療費を加害者側である企業が負担をする。そうした制度と作ることで企業側も負担を減らそうと対策を練るために、汚染物質を減らすことが出来る。そういった制度や法律を作ることは、汚染物質を減らすのに有効な手段となっている。
Q:勝てないと思われていた西淀川の裁判が勝てた一番の要因は一体何か?
A:裁判に勝てた要因は立場によって異なってくるため、一つだけではない。一つあげるとすると、裁判官をどのように説得をさせるかという点が挙げられると思う。裁判官を説得させるにも
1)裁判官の人間的な思いや気持ちといった心の部分を揺らす必要がある。
2)公害患者の受けた被害の理不尽さを訴えることで、裁判官の持つ正義の心をしっかりと持たせることが重要である。
3)国や大企業を相手取る裁判では、裁判官が被告を相手に勇気のある決断を出せるような世論の流れを社会全体に持たせる必要がある。
以上の点で裁判官を説得させることが大切だったのではないか。
公害患者さんからは永野千代子さん、山下晴美さんを迎えて当時の話や経験についての話をしてもらいました。永野さんはご自身や家族の被害の、山下さんは旦那さんの被害の辛さや苦しさについて話をしてもらいました。研修生の方は話を聴き逃さないように聞き入っていました。
Q:西淀川公害の裁判を行うために、どのように患者を集めたのか。患者会を作るのにNPOのような団体が入って患者を集めたのか。また、公害患者が裁判を行うと決めて進んだいきさつにはどのようなものがあったのか。
A:患者会を作るのにはNPOのような団体は入っておらず、患者会自体がNPOのような働きを持っている。西淀川の病院の医師も働きかけてもらい、患者を集めた。裁判を行ってきたいきさつには、何が理由で空気が汚れ、なぜ私たちが病気になったのかを知りたかったから裁判を起こした。
Q:裁判に原告側が勝訴した理由には何があったのか。
A:それは自分たちの子どもや孫、ひ孫の世代には青い空を手渡したいという強い思い、勝たなければいけないという強い思いがあったのだと思う。
午後からは歌島橋交差点にて国土交通省のの方に来てもらい、道路対策について話を伺いました。裁判後に行われた騒音対策や交通流対策などの説明をしてもらいました。
Q:騒音対策などの道路対策技術は、日本の他の件でも利用をされているのか?
A:遮音壁などの騒音対策はほぼ同じものが日本全国でも活用されている。だが、光触媒による大気浄化などの技術は大気汚染がひどい地域でのみ使われている。今後は西淀川で使われているような対策を他の地域でも採用する可能性はある。
Q:地元住民と行政側が話し合っていると言っていたが、行政側から声をかけたのか。それとも住民側から声をかけたのか。
A:西淀川地域では行政側で汚染状況や現状についてのデータをそろえてから、住民側に声をかけるという形をとっている。だが、住民側から話し合いの場を設けられても拒否することはない。
その後、9人ずつの班に分かれました。A班はタンデム自転車を利用して大野川緑陰道路を通って矢倉海岸までいく間、B班はグループワークを行いました。A班があおぞら財団まで戻ってくると、次はB班がタンデム自転車に乗り、A班がグループワークを行いました。
どちらの班もタンデム自転車にのって淀川までのサイクリングをとても楽しんでいたようです。
グループワークについても、感想や自分の国の公害・環境問題について真剣に意見の共有を行っていました。最後に全員での共有を行いました。真剣に話し合った内容の共有をし、1日目の研修は終了しました。
天気も蒸し暑く、慌ただしい日程の中でしたが研修生の方々は真剣な様子で話に耳を傾けていました。
1日目の最後にはあおぞら財団が定期的に行っている「あおぞら野菜市」で出店しているさんと、ハラール料理を取り扱っている大阪ハラールレストランさんから料理を用意してもらい、あおぞら財団の職員と懇親会を行いました。食事を囲ってわきあいあいと話も出来ました。
こうして交流をすることも出来るのも、いい体験になりました。
フォーラム2日目のブログはこちらから。
(松ヶ平)