第4期環境フロンティア講座スタート!(7/1)
3期に渡り開講してきました環境フロンティア講座、第4期「東日本大震災~原発事故とこれからのエネルギー問題」がスタートしました。
第1回は速水二郎氏(電力労働運動近畿センター)を迎え、「福島原発事故:原子力政策はどう変わるのか?」をテーマにお話いただきました。(参加者25名)
お話は東日本大震災による津波が、原発の施設の被害について―
一民間企業の施設の被害が社会を揺るがすということは初めてであり、この問題と向き合うことがどれだけ重要かということ―から始まりました。
◆原発事故
・福島原発の放射能汚染は風に乗って、ほぼ北半球全域に広がっており、しかもまだ福島原発自身の被害は収束していない。
・福島原発の被害の大きさや高濃度放射能汚染水の量について、身近なもので例えて、スケールを感じやすく説明してもらいました。
◆放射線の恐さ
・放射線はα線、β線、γ線、中性子線の4種類があり、最も恐いのはα線で、α線は放射性物質から1センチくらいしか飛ばないが、いったん口から吸い込むと二度と体の外へは出て行かないもので、内部被爆の原因になる。
・100万キロワット原発を1年間運転してできる放射性物質の量は1ペタ(1000兆)ベクレルである。福島原発が収束しない場合、その被害は地球全体に拡がる恐れがあるので、現在決死の冷却作業が進められているのである。
・放射能汚染については「ALALAの原則」があり、それは被曝線量、被爆者数、被爆確率のいずれも、経済的、社会的要因を考慮し『合理的に達成しうる限り低く保つこと』というものである。しかし政府は基準を引き上げてこれに対処しているというのが現状である。
◆原子力発電の拡がった背景や実際
・日本には「原子力立国政策」というものがあり、CO2を出さないクリーンなエネルギーを拡げるということで拡がっていった。
・しかし実際にウラン鉱石から原発に使われる燃料にするまでには、多くの作業工程、移送を経なければならず、日本ではCO2を出していないといっても、それが実現する過程で世界でCO2が排出されているということを見逃してはならない。
・原子力発電で使われた核燃料は最終的に安全に処理する方法は今のところなく、現在は青森県六ヶ所村に集中的に集められている。この施設には近づくだけで即死するくらいの放射線があり、しかも六ヶ所村の施設周辺には防波堤などがないので、今回の震災があと100キロ北で起こっていたら、さらに甚大な被害が出ていたのではないか。
・世界のどこにも使い終わった核燃料を処理できる場所などなく、再処理というのも核拡散の危険性を増やすことになる。
・その他原発政策に投じられる費用について
◆原発は地球温暖化の救世主ではない
・日本は先進国として、地球温暖化対策に取り組む姿勢を新興国、途上国に見せなければならない。しかしそれを原子力に頼らずに地球に優しい方向へ切り替えられないか。
・日本の自然エネルギーの潜在量をすべて実現できれば、原子力発電に頼らなくてもいい。「自然エネルギーの地産地消」を進めれば実現可能。
◆原発事故と憲法
・被災者の立場に立って憲法13条「個人の尊厳、幸福追求権」を掲げ、憲法25条のもとに震災前の暮らしに全員が復帰、復活できる施策の実現に向けて国、企業、政党、行政は全力をあげるべきである。
という内容のお話をしていただきました。
《参加者からの質問》
・福島や柏崎の原発がCO2排出量に影響を与えるのはどういうことか。
・今原発が止まっても大きな問題はないのか、今どんな状況なのか。
・自然エネルギーへの転換は現状として難しいので、火力発電所に切り替えればいいのではないか。
その上で科学技術の発達などを待ってみてはどうか。
などなど出されました。
《参加者からの感想》(一部)
・学者・研究者の方とはまた違った立場から、電気産業の現場で培った観点でわかりやすい講義だった。
・もんじゅ・(核燃料の)再処理に投じている費用を再生可能エネルギーに向ければ転換は容易になるのではないかと思いました。
・聞けば聞くほど疑問が生まれてきました。TV、新聞、もっと正しく誠実に伝えてほしいです。
◆第2回のご案内
第2回は7月15日(金)19:00〜21:00に開講します。「原発事故からみた技術利用の安全問題」をテーマに西川榮一氏(神戸商船大学名誉教授)を迎え、これまでの歴史や海外との比較を通じて、「原子力」という巨大技術に対する安全政策の理念や仕組み、今後の展望について伺います。(会場:ドーンセンター)
第2回からの受講も可能ですので、是非ご参加ください。
第4期の案内・お申し込みはこちら→ https://aozora.or.jp/archives/4274
記:相澤