11月11日(日)、環境保全戦略講座『エネルギー問題と環境アセスメント』の2日目の講義を新大阪丸ビル新館にて行いました。(参加者19人)
前回1日目(10/27)は講師による講義と関電堺港発電所見学を行い、アセスメントの基礎と現在の課題を学びました。
(詳しくはコチラをご覧ください。)
午前:講義「持続可能なエネルギー政策の選択へ~世界のアセスと日本の課題~」
まず、千葉商科大学教授の原科幸彦さんによる講義「持続可能なエネルギー政策の選択へ~世界のアセスと日本の課題~」が行われました。
(原科幸彦さん 千葉商科大学教授/東京工業大学名誉教授/環境アセスメント学会理事/国際環境評価学会前会長/工学博士)
下の写真はアメリカ、中国、日本のアセス実施件数を円の大きさで表しています。
どれが日本かわかりますか?
正解は…。
一番右の見えないくらい小さな円でした。
日本はアメリカや中国に比べ、極端にアセスの実施件数が少ないことがはっきりとわかります。
日本のアセスの対象が大型事業に限定されている為です。
愛知万博の反省と成果より、環境アセスメントを計画プロセスの中に位置づけることの大切さを学びました。
国際影響評価学会の会長をされていた原科先生だからこその、世界から見た日本のアセス課題のお話に、みな納得の表情でした。
お昼休憩:近郊とれた里山お弁当と参加者プレゼンタイム
1回目に引き続き、希望者にはイコバ野菜市でお馴染みのカフェスロー大阪さんのお弁当を注文しました。大阪周辺でとれた無農薬有機栽培の野菜や米をつかったお弁当です。
メニューは
*無農薬野菜と雑穀の混ぜご飯
*手作り厚揚げの旬彩あんかけ
*明浜のひじきの炊いたん
*さつま芋のスイートマスタードサラダ
*自家製ピクルス
でした!
今日もとっても美味しかったです。ありがとうございました。
また、昼休憩では参加者交流のための活動プレゼンタイムがありました。
・中島水道サロンの藤元百代さんから、中島水道まち歩き~淀川区編~の案内、
・技術士環境研究会の山本泰三さんからは、関西圏の1000万キロワットの電力計画について
・あおぞら財団相澤からは、被災地エコツーリズム体験ツアー、グローカルで考えよう生物多様性企画書づくりワークショップについて
・滋賀県立大学の松崎さんが、環境アセスメントをとりあげた卒業論文の紹介
の4人から活動紹介がありました。
午後:エネルギー政策選択におけるSEA(戦略的環境アセスメント)実施計画書づくりワークショップ
午後は、NPO地域づくり工房・代表理事、環境アセスメント学会・理事の傘木宏夫さんによるワークショップです
まずは「住民からの環境アセスメント」について話題提供がありました。
(傘木宏夫さん NPO地域づくり工房・代表理事/環境アセスメント学会理事)
傘木さんは、以前あおぞら財団の研究主任も務められていました。市民の立場でアセスメントに関わっており、市民がアセスメントをどう活用してきたのかについて具体例を交えながらお話されました。
また、NPOの住民運動に対するファシリテーターとしてのあり方も学びました。住民がアセスに対して関わっていくためにはまずは情報を知ることが鍵になってきます。
情報開示のポイントとして
① アクセス(情報を知る環境づくり)
② レファレンス(どこに情報があるのかを明確にする)
③ ファシリテート(理解を容易にする工夫)
④ パートナーシップ(信頼関係)
の4つがあげられるそうです。
さぁ、いよいよ参加者同士によるグループワークの時間です。
3つのグループに分かれてワークショプ「エネルギー政策選択におけるSEAの実施提案書をつくろう」を行います。
まずはアイスブレークとして、出身地別(①大阪②近畿③その他)にわかれて自己紹介を行いました。
次に職業別(①大学生・教授②企業③行政④その他)に分かれて自己紹介をしました。
それぞれが行っている活動などを共有し、名刺交換をするなどみなさん話が弾んでいました。
最後に職業を縦の列、アセスに対する意見書を出したことがあるのか、ないのか、今回初めてアセスを知った順で横の列に並び、3つにグループ分けをしました。こうすることで、バランスよく参加者がグループに分けることができます。
班ごとに傘木先生の話題提供に対する感想・質問・意見をポストイットに書き出し、シェアしました。
企業の方、行政の方、大学生と職種も年代も越えて意見を交換となりましたが、皆、他の人の意見に熱心に耳を傾けていました。その上で班ごとに感想・質問・意見をそれぞれ1つに絞りました。
*感想(一部)
・「意見無しでは放任だが、単なる反対は無策である」という言葉が興味深かった
・住民運動がアセスの重点であることがわかった
*意見(一部)
・アセスの良い事例が出ていても貧困化等の社会的背景により全体的に悪くなっているのでは?
・アセスのような科学的プロセスと合意形成の社会的意思決定は別に考えたが良いのではないか。
それに対して傘木さんが追加説明・応答をしました。
第1回目の講座では、『エネルギー種別の環境影響を考える』ワークシートを参加に宿題として出し、提出を依頼しました。その提出されたシートの結果について、グループごとに読み感想や意見を共有しました。
どのグループも活発な意見が具体的に出されていました。
傘木先生からは、エネルギーは手段であり、目的にしてはいけないということ、何がしたいのかを考えて、そこからエネルギー手段を考えること、どのような需要があり、どのような社会を目指すのかが大切であると話していました。
そして、いよいよ今回の講座のまとめである『SEA(戦略的環境アセスメント)の実施企画書をつくるワークを行いました。
まず、提案対象(国・都道府県・市町村・NGO)と参加者(国民・住民・市民)を選び、評価方法、アセスの流れ(評価方法の提示の仕方や住民意見をどうくみ取るか)を話し合いました。
ポストイットに書いた意見を出しながら話し合いをします。
それぞれの経験や考えを出し合い、多くの考えや意見が活発に出され、賑やかな雰囲気でした。
1人が出した意見に対して疑問に感じた箇所を他のグループの人が答えたり、また別の角度からの意見が出たりして、どんどんと考えが深まっていく様でした。
私はこれが、ワークショップの良さだと感じました。
限られた時間の中でしたが、考えをまとめ発表者をそれぞれ1人決めました。
そして、いよいよ各グループの発表です。
1グループ目は、関西圏の電力を賄う1000万キロワットの発電所計画についての提案でした。
2グループ目は、政令指定都市の堺市のエネルギー政策について、現状の課題やどう政策をつくっていくのかの過程について発表しました。
3グループ目は、市町村の学区単位で行うエネルギー政策作りの提案です。子どもにも評価できるようなエネルギーの需要と供給の「見える化」をするということです。
アセス講座を通して、市民と事業者が対等に参加していくことと、位置的時間的制約がある中でアセスを効果的に進めていいくことの重要性を私も学びました。
参加してくださったみなさん、講師の原科さん、傘木さんありがとうございました。
記:田窪千奈未(桃山学院大学3回生)