あおぞら財団 財団ブログ
公害の歴史Q&A あおぞらイコバ
公害を伝えるための資料整理寄附募集
屋上広告募集
りべら広告募集
Don't go back to the 石炭

    キーワード検索

    アーカイブ

    カテゴリー

    最近の投稿

    最近のコメント

ブログカテゴリー » 西淀川公害授業

大阪市北ブロック新任教員研修を実施しました(8/17)

8月17日(水)に咲くやこの花中学校・高等学校で2015年度に採用された教員の方、76名に研修を行ってきました。今回は福島区・此花区・西淀川区の新任教員研修の方が対象で、西淀川公害の説明と語り部さんのお話に加え、ワークショップを実施しました。

さすがに70人を超える参加者だと研修室はいっぱいいっぱいでした。
オリエンテーションの後、あおぞら財団の栗本の進行のもとでアイスブレーキングを行いました。参加者の方には最初に配布されていたA4用紙にマーカーで、
・名前
・夏といえば
・1学期を振り返ってちょっと困っていること
・人生で一番印象に残っている学び
を一言、記入してもらい、近くの人と自己紹介をしてもらいました。初めて会う人や、顔見知りの人もいて、みなさんとても積極的にいろいろな話をしている様子がうかがえました。

P1190172

参加者の前でアイスブレーキングの説明。


P1190187

穏やかな様子でみなさん自己紹介を行っています。

アイスブレーキングのあとに、「帰国した子どもの教育センター校」である西九条小学校の渡邉勇さんの講演が行われました。渡邉さんからは日本語教室の紹介と学習支援についての話がされました。昨年度、大阪市の小中学校に編入学した児童生徒のうち、221人が日本語指導が必要だった現状から、実際に日本語教室ではどのような授業が行われているのか。また、どのような教材を利用するといいのかなどの話が中心となりました。
実際に帰国や来日した児童生徒を受け持っている先生もおられ、熱心に話を聞いていました。いろいろな教材も教室後方に展示され、休憩時間などに目を通している方も多く見かけました。

P1190191

「帰国した子どもの教育センター校」の渡邉勇さん。


P1190189

渡邉さんの講演を真剣に聞いています。

続いて、栗本から「環境と人権」というテーマで研修が行われました。西淀川大気汚染公害と西淀川という地域についての説明を簡単に行った後、ビデオ「西淀川公害裁判を闘う」を見てもらいました。

P1190208

あおぞら財団の栗本による、公害地域の説明やビデオの補足。

その後、「西淀川公害患者と家族の会」の前田春彦さんと事務局長の上田敏幸さんから、当時の被害の話やご自身の体験についてお話をしてもらいました。前田さんは幼少期から続くぜん息の話や、当時の思いやしんどさを話してくれました。仕事がしたくても出来ない辛さや、仕事中に中指の半分を失い障害者になったことなど話をしていると、会場にいる参加者は真剣な様子で前田さんの話に耳を傾けていました。また、ぜん息や肺気腫の友人がいても公害患者として認められていない事実が辛いと胸の内を語ってくれました。上田さんからは、あおぞら財団の設立の話や、現在の患者さんの話などをしてくれました。また、その上で未認定患者に対しても救済の仕組みが欲しい、国や自治体にどうにかして働きかけたいと思っているとお話されました。

質疑応答では、御幣島に住んでいる方から「まだ西淀川ではPM2.5について環境規準が守られていないという話だった。どのように公害問題を解決すればいいのか」という質問が出ました。
この質問に対し上田さんは、「とても回答をするのが難しい質問。私たちは人の暮らしと環境をスローガンにしてきた。世の中にうねりを作っていくには、患者が中心であるのではなく、多くの人たちが『何が出来るだろうか』と考えることが近道なのではないかと思う。今日の出会いをきっかけに、何が出来るか考えていくことが大切なのではないだろうか。世間が公害について関心を持ってくれることが大切ではないだろうか」と回答されました。

最後に前田さんが、今でもぜん息で苦しんでいる患者さんがいて、小さい子でもぜん息の子がいる事実を話してくれました。その上で、未認定患者への補償制度がない今、せめて医療費だけは無料にするなどの医療制度を作って欲しいと話してくれました。

P1190225

自身の体験について話をしてくれた、前田春彦さん(写真左)


P1190220

現在の患者さんの話について話をしてくれた上田敏幸さん(写真右)

その後、6人ぐらいのグループを作ってワークショップを行いました。
模造紙の真ん中に、
・公害病にかかったら
・もし大気汚染を放置したら
という、どちらかのテーマから連想図を書き出せるだけ書き出し、その影響を想像して分析していくというグループワークです。参加者のみなさんは模造紙いっぱいに次々と連想したことを書き出していきました。話し合いながら書き出すグループや、もくもくと書き出すグループなどもありました。ですが、どのグループもいろいろな想像や、繋がりを発見していく姿がうかがえます。
「公害病にかかったら」というテーマで考えたグループでは、「学校に通いにくい」→「友達ができない」→「相談ができない」という風に、子どもの状況を想像しているところもありました。また、「引っ越ししたくなる」→「それが解決?ふるさとを捨てる?」→「納得できない」という風に、患者の気持ちに共感する連想図もありました。
「もし大気汚染を放置したら」というテーマでは「元に戻すのにコストがかかる」「医療費が増える」といった経済面に注目した意見や、「人口が減る」→「まちが廃れる」というように、自然環境への被害だけでなく社会へも影響が出ることへの想像力を働かせた意見も出ていました。
2グループから全体に発表してもらいましたが、その中には西淀川で教員をしている方もいました!

P1190232

もくもくとたくさんの連想図を書き出しているグループです。


P1190235

こちらのグループは、班のメンバーでいろいろと話をしながら書き足していました。


P1190248

実際に書いた連想図を示しながら、意見の共有。

最後に、研修全体のまとめとして、日本語がわからない子どもや深刻な病気になった子どもなどを想定し、「困難に直面する子どもに関わる心構え」を各自がA4用紙に書くというふりかえりの時間をとり、今回の新任教員研修が終わりました。
いろんな子どもが増えている中、新しく先生になった参加者のみなさんはとても意欲的に参加をしていました。学校で授業をすることだけでも大変だと思いますが、最後に書いた困難に直面する子どもに関わる心構えを思い出しながら、頑張ってくれたら嬉しいなと思いました。
また、私も公害だけではなく、多くの問題や困難と向き合っている人たちとどう関わっていくか、その時の心構えをしっかり考えていきたいと思いました。

(松ヶ平)

毎日新聞に掲載されました「公害、語り部から教材 あおぞら財団、住民運動を追体験」

2016年8月21日付 毎日新聞朝刊大阪版に「大阪・西淀川の大気汚染公害、語り部から教材 あおぞら財団、住民運動を追体験 /大阪」と題して、
現在作成中の教材について記事が掲載されました。
教材に関心がある方は、ご一報くださいね。

http://mainichi.jp/articles/20160821/ddl/k27/040/226000c

大阪市西淀川区で起きた大気汚染公害を次世代に受け継ごうと、公害訴訟の和解金で設立された公益財団法人「公害地域再生センター」(あおぞら財団)が、高校や大学の授業で使える教材づくりに取り組んでいる。いまも被害患者たちが教育現場で語り部活動を続けているが、高齢化が進み、限界もある。教材を普及させることで、より多くの人たちに公害の経験を届けたいと考えている。【大久保昂】

 「企業に謝ってほしくて裁判をすることにしたんです」

 「裁判をすることで西淀川の評判が下がるんじゃないですか?」

 京都市北区の佛教大紫野キャンパスで7月にあった「日本現代史特講」の授業。学生約30人が、西淀川で公害が深刻化したころの住民になったつもりで発言していた。配られた教材に従い、国などを相手に裁判を起こし、和解に至るまでの住民運動を追体験した。

 教材のストーリーは、あおぞら財団研究員の林美帆さんと栗本知子さんが中心になって、語り部から聞いた話を踏まえ考案した。林さんは佛教大の非常勤講師も務めており、追体験型の教材を初めて授業で使った。

 住民運動の先頭に立つ知識人。ぜんそくで子どもを亡くし、裁判を起こした住民。排煙の削減を求められた工場経営者。学生たちに割り当てられた役には、それぞれ実在のモデルがいる。住民間で利害の対立がありながら、最後は「良い地域をつくりたい」という思いでまとまった西淀川公害の住民運動は、大気汚染公害を巡る運動の成功例とされる。3年生の佐伯拓夢さん(20)は「相手の立場に立って考えたり、人間が持っている根本的な良心を信頼したりすることが大切だと思った」と感想を述べた。

 財団は小中学校へ出前授業に赴いたり、現地を案内するツアーを企画したりして公害の経験を伝えてきたが、多くの部分を被害患者の語り部活動に頼ってきた。今後は教材を用いた環境学習も普及させることで、公害の経験を広く受け継いでいきたい考えだ。

 教材は改良を加えて来年中に完成させ、高校や大学での活用を呼びかけるつもりだという。林さんは「西淀川の住民運動は、立場の違う人たちが共に行動できることを示した。一つの見方に導くのではなく、多角的に考えられるような教材にしたい」と話している。

ロールプレイ「もしあなたのまちで公害が起きたら?」をJICA関西で実施

去る8/9、JICA関西を会場に開催された「第13回多文化共生のための国際理解教育開発セミナー」で分科会を担当しました。

13933566_1356193351076335_537722675_n

西淀川でつくられた地域再生プランを紹介

 

国際理解教育・開発教育に興味のある教職員・学校関係者の方を対象としたセミナーで、昨年度より地球環境基金の助成を受けて取り組んでいる、大気汚染公害を題材とした学習プログラムの整備事業で開発したロールプレイ教材を使いました。

簡単な自己紹介の活動をした後、さっそくロールプレイです。
設定は下記のようなものです。
–[ロールプレイの設定]–
203x年、あなたの住むまちで、原因不明の大気汚染物質らしきものによる健康被害(呼吸器の疾患)が発生しています。
住民の間では「X工場(煙突・換気口あり)のせいではないか?」という噂が流れています。工場では、様々な製造・研究を行っています。
今日は市役所による環境調査の結果報告会です。調査では原因が明らかにならなかったという説明が終わったところです。その後、集まった地域の人たちがそれぞれの立場から要望を発言する時間が設けられました。
—-

グループで、5つの役割をくじ引きで決めてもらい、カードに書いてある情報を読んで役になりきります。
設定されている役割は下記の5つです。
1.市役所の環境担当係長
2.住民A(子どもが病気に)
3.X工場の経営者
4.医者
5.住民C(X工場で働く)

話し合いの目的は、「同じまちに住む者として、現状に対して何をすべきか、合意形成を図る」。

司会進行役の役所の担当係長さんが口火を切り、ロールプレイを開始すると、住民Aは「ただちに工場の操業を止めてほしい」と訴えます。さて、果たして・・・。

これ以上はネタバレになってしまいますので詳細を控えますが、各グループの参加者のみなさんはそれぞれ役になりきって、喧々諤々、15分経っても時間は足りないほど白熱した議論になっていました。

IMG_7115

ロールプレイの後、実際に西淀川で大気汚染が激甚だった頃、何が起きたか、また住民たちはその状況の中でどんな行動をしたのか、簡単に解説しました。

異変に気付いた教員が手作りの環境調査をして子どもたち自身にまちの状況を知らせたこと、
工場や行政に直接働きかけて対策を求めたこと、
それでもすぐに解決しない困難な状況の中で司法に訴えたこと、
患者自身が熱心に勉強し、状況を理解しなんとか解決しようと行動したこと、
全国の患者とつながり、また広く被害を知らせて共感を呼び、
最終的に勝利判決を受けた後に、地域再生の願いを掲げて和解に至ったこと・・・、などです。

今回の参加者のみなさんは特に公害について関心を持って参加してくださった方が多かったのですが、終了後のアンケートでは、小学校高学年から使える教材だとご好評をいただきました。

この教材は解説資料を加えて編集し、近いうちにお披露目する予定です。乞うご期待!

(参加者の感想)
・ワークショップではあったが「もし自分にそういうことが起きたら」ということを考えさせられ、また、西淀川の市民力を知ることができて、結局は当事者同士のまとまりであったり、次の世代を含めたヴィジョンが大切だと思った。
・「203x年」となっているので、本当に将来、自分の身におこるかもしれないと思える内容で、授業で、大変よかったです。
・いろいろな立場で考える大切さを実感できてよかった。
・関西の公害は子どもたちにとっても身近で親しみやすいと思った。ありがとうございました!
・公害についてもっと勉強したい!知らなければと思える分科会でした。

(栗本)

 

「西淀川公害から学ぶってなにを?」を開催しました。2日目(3/28)

1日目の様子はこちら
2日目は山岸公夫さん(元神戸製鉄所 法務部長 あおぞら財団理事)からのお話がありました。

当時の様子を語られる山岸さん。

当時の様子を語られる山岸さん。

山岸さんは企業の法務組織の変遷(成長)と法務組織の役割などの説明からお話を始め、大気汚染への寄与企業が足並みを揃えることの難しさや、攻める側の大変さと守る側の心外さ、それぞれの立場があったことを説明してくださいました。
山岸さんは西淀川裁判の和解成功の鍵は被害者を組織化したこと、単なる賠償金獲得でなく地域再生のために「青空を取り戻し次代に渡す」というスローガンを掲げたことだったと説明されました。またあおぞら財団の使命は「和解の精神を風化させないこと」だとも仰っていました。

みなさん真剣に聞いています。

みなさん真剣に聞いています。

【山岸さんに対する質問】
Q:訴訟担当者で身内に公害患者のいた人はいたのか?そういう人は意図的に外されたのか?
A:訴訟担当者を選ぶ立場ではなかったがそういった話は聞いたことがなかった。

この後、福島大学の皆さんからの報告、質疑応答が行われました。皆さんには、震災で経験したことと、2日間の研修で感じたことを話していただきました。この時西淀川公害患者と家族の会の森脇君雄さんも来られました。

P1170396

森脇さんに来ていただきました。

同じ福島県といっても福島は広く、学生の皆さんは住んでいた場所もそれぞれ違うため、避難された地域の方、被災者を受け入れた地域の方の立場で、様々な視点から震災の経験等を語ってくださいました。

【震災体験について】
・震災当初の情報の錯綜について。
・食糧不足に悩まされた。買い出しにも時間がかかる状態だった。
・放射能の影響を考慮し、体育の授業は室内で行われ、プールの授業もなかった。
・除染率100%の広報が回ってきたが、この100%とは除染申請をした家のみ除染が終わったということだった。
・他の地区の学生を受け入れ、同じ学校で授業を受けるようになった。部活を通して、他地区の学生とかけがえのない仲間になれた。避難者と避難者を受け入れた側の地域間対立がしばしば取り上げられるが、仲良くやっていけた人もたくさんいる。
・今現在はライフラインの復活により生活は戻ったが、放射能の影響が怖い、これからも影響が残るのではないかとの不安を感じる。

【2日間の研修をふまえて】
・福島では裁判を起こすという考えの人は少ないように思える。避難している人も多いのでバラバラになってしまっている。しかし組織として活動する必要がある。
・岡崎さんと自分のふるさとへの思いの違いを感じた。個人的には復興は進んでいると考えていたし、自分達の生活を立て直すことに精一杯だった。岡崎さんは怒りのモチベーションを保ってこられたのがすごいと思うし考えさせられた。しかし組織化して問題を解決しようとする運動が少ない。一方怒っても何もならないから前向きになることが大切、という意見も。
・西淀川の公害問題は関心を持ち続けることで対策がとられた。福島も関心を持ち続けることで何らかの対策がとれるのではないか。
P1170405
P1170416
P1170424
P1170433

皆さんがそれぞれの体験や学んだことを語る真摯な姿に心をうたれました。

最後に「福島第一原発事故の教訓を伝える施設の整備に関する取り組みの事例」について後藤忍先生が話をされました。福島第一原発事故に関連し、公立・民間含めその教訓を伝える施設が作られているそうですが、国・市が盛り込めていない部分の教訓というものをいかにして伝えていくかということをこれからの課題として説明されました。

教訓を伝えることの課題について説明される先生。

教訓を伝えることの課題について説明される先生。

【福島大学の方への質疑応答】
Q:浜通り・中通り・会津で団結して一緒に組織を作ることはできないのか。
A:3つの国は別々でまとまれない。汚染度や状況、賠償額に違いがあり団結は困難。

Q:総合対策としてこれからどのようなまちづくりをするのか?そのビジョンは?
A:今のところはそれを描くのは困難。見えない対立もある。

P1170458

アドバイスされる森脇さん。

この時、森脇さんは西淀川を例に挙げながら、確実な補償法整備の重要性と問題の認識、勉強、行動を起こすこと、人と仲良くなることが大事であるとアドバイスをされました。

2日目の最後にはワークショップを行いました。最初は質疑応答です。

【ワークショップでの質疑応答】
Q:現在の淀川と西淀川の関わりはどのくらいあるのか?
A:公害による淀川のイメージが良くない。堤防も高く日常で水辺に関わる場面は少ない。
漁協もそのことでイメージ転換を図りたいとのことだった。
Q:あおぞら財団ができた時の周囲の反応は?
A:地域の中では公害のことは言わないでほしいという意見もあった。しかし今は、財団があってくれてよかったとの意見をもらうことも増えてきた。色々な立場の人々を繋いできた結果と思う。

Q:①震災の直接の体験者でない我々にどうしてほしいか、どうなってほしいか?②また、震災から5年で人々の記憶の変化は?
A:①福島に実際に来て欲しい。そして今の生活を知ってほしい。福島では毎日原発関連のニュースが流れるが、他ではそうではない。情報量が被災地とその他の地域では違う。
②震災の記憶については、忘れることはない。しかし話をする機会というのは少なくなっている。例えば放射能の影響の可能性を考慮し、プールで授業ができない等、子供達の行事の制限があった。小学校当時に被災した人たちの中には泳げない子もいる。しかしなぜ泳げないか、という事は忘れられていくだろう。

【ワークショップ発表】ポストイットに2日間を通しての疑問や議論したいテーマを書き、質疑応答後、3つのテーマでグループ分けを行い、議論を行いました。

P1170534

熱心に議論されています。

 

P1170573

1つ目のグループのテーマの写真

〈グループ発表〉
・西淀川と福島のちがいの根本にあるものは、再生と復興の違いだと感じた。復興が具体的に何を目指したらよいかわからない。
・西淀川は高度経済成長期の日本の発展のため、福島は原発=クリーンのイメージ、町おこしになると考えられており、結果的に公害や被害につながることになった。
・リスクマネジメントが大事。疑問を持ったら徹底的に追求すること。西淀川はこれを行ったため良くなったと感じる。福島では関心を持つこと、疑うことが現在十分でないと感じる。
・上記の問題を解決していくための具体的方法として、体験型学習が大事だと感じた。

1つ目のグループの発表の様子。

1つ目のグループの発表の様子。

2つ目のグループのテーマの写真

2つ目のグループのテーマの写真

〈グループ発表〉
・公立の資料館でも展示すべき情報が展示されていないなどの課題がある。
・福島では、放射能に関して理科の授業で取り入れられているが、授業以外でも伝える方法を考えなければならない。
・教訓をどう生かしていくか。加害者、被害者の認識の違い。これにより語られることも違ってくる。また被害者の中には忘れたい人もいる。教訓を語り継いでいくために被害者の組織化が必要。その方法を考えることが課題だと思う。

2つ目のグループの発表の様子。

2つ目のグループの発表の様子。

3つ目のグループのテーマの写真

3つ目のグループのテーマの写真

〈グループ発表〉
当事者の中でも生活面や精神面で様々な事情を抱え、問題に向き合えない人達がいる。心の「シャッターを閉めるように」。“自分には何もできない”と思う気持ちもあるのではないだろうか。こういった人達には森脇さんのような人の話を聞いてもらうことで自分にも何か出来ることが分かり、変わるきっかけになるのではないか。

3つ目のグループの発表の様子。

3つ目のグループの発表の様子。

【参加者からの感想】
最後にアンケートの『あなたにとって「公害から学ぶ」とは、どういうことでしょう?』という項目に関して皆さんの考えをいくつかピックアップします。

・目の前にいる人が抱える問題や、目の前にある問題にどう向きあうかを考える時に文脈や時代の違いを踏まえつつ、自分がどう考え、行動したらよいか何ができるかを考えること。学習のための学習ではなくて、リアルな自分の生き方を考えるということ。
・自分ができることを考え、『実行すること』だと思います。公害が起きた地域の当事者なら何も考えていないことはないと思います。しかし、そのために何かをしようとしている人は少ないと思います。「知る・考える・実行する」の3点があってこそ「公害から学ぶ」の価値があると考えます。
・二度と被害者を出さないための真摯な自省(自分事としての反省)。
・「公害から学ぶ」ならば、公害のあった地域の今までのこと、その地域で暮らした(ている)人のくらしや生き方から学ぶことのように思います。
公害から何を学ぶのか、ならば技術や対策ということから運動論、法律、病状、教育、人権、等々、生き方の問題含め、何の為に学び、どう生かしたいのかでちがいように思います。その時々で、教材としての公害はちがう顔をもつのだと思いますが、語り部の方やここにある地域の現実の持つ力学習者の生き方を問われるものだと思います。

私は3月からスタッフになったため、初めて研修のお手伝いをしました。その後、2日間の取り組みが終了となりました。語り部の方のお話や被告企業側であった方のお話を直接聞く貴重な機会をいただきました。環境問題に対する知識はまだまだ浅い自分ですが、経験されてきた方のお話や、前向きな姿勢に多くのことを学ぶことができました。特に印象的だったのは西淀川裁判における患者会の団結のすごさと粘り強さです。多くの企業を相手に皆で学習し、協力しあい、裁判が終わった後も地域や次世代のためにより良い環境づくりをしていこうという未来を見据えた姿に感動しました。
また福島大学から来られた学生の方々が、ご自身の震災の経験を語って下さり、TVなどで知る情報とは違う生の声に、震災や公害の問題は終着点を見つけることが非常に難しく、未来へと繋がっていく問題であることを実感しました。再発を防止するため、過去から何を学び、教訓を未来へ語り継いでいくにはどうしたらよいのかと改めて考えるきっかけを与えていただきました。
これから自分に何ができるかを勉強しながら考えていきたいと思います。(村山)

一日目の様子はこちら

「西淀川公害を伝えるってなにを?」を開催しました。1日目(3/27)

3月27日~28日に、「西淀川公害から学ぶってなにを?」をあおぞら財団で開催しました。福島大学、龍谷大学、よつ葉ホームデリバリー大阪などの方達が参加されました。2日間全体で21名の方が参加されました。(地球環境基金事業)
二日目の様子はこちら

今回2日間のテーマは「今を生きる者として、公害から何を学ぶか」ということでした。
1日目の初めは、あおぞら財団の林さんからクイズ形式を交えての西淀川公害や、その他の公害、あおぞら財団についての説明が行われました。

公害に関するクイズ。

公害に関するクイズ。

全問正解はなかなか難しい様子。

1960年代の西淀川の空のスライドが映された時、皆さんは現在の空の様子との違いに驚きを感じていたようです。
あおぞら財団の役割はステークホルダーをつなぐことであるということ、地元の理解が大事であるという説明もされました。

全問正解はなかなか難しい様子。

全問正解はなかなか難しい様子。

次に公害患者さんの岡崎久女さんにお話をしていただきました。

たすきをかけてお話される岡崎さん。

たすきをかけてお話される岡崎さん。

岡崎さんにとってこのたすきは制服であると仰っていました。語り部をする時だけではなく様々な交渉の場でもかけて行かれるそうです。岡崎さんは西淀川に嫁いで来られ、公害病の患者認定を受けられた方です。
とつぜん始まった喘息の辛い症状や、病気から起こった様々な辛い体験を乗り越え、前向きに生きるようになったと言い、「好きでなった病気じゃない」「なぜ」という思いや、息子にとっては西淀川がふるさとであるという思いを受け原告になったとお話ししてくださいました。運動を通じて全国の人達にも会いにいった経験などをお話されました。いろんな人に支えられている、いろんなところで語り部をしているが皆熱心に聞いてくれている、自分が支えられていると語っておられました。

P1170173

岡崎さんのお話に聞き入っている皆さん。

 

【質疑応答】
Q:水俣でも患者認定の有無や対面など地域対立(分断)が起こったが西淀川の場合はどうだったか?
A:初めは公害であるという事自体がわからなかったし、今も人によっては公害患者であることを隠している人もいる。喘息の発作が昼間にわかりにくいため、近所の人々には病気の苦しみがわからない。夜に救急車を呼ぶことも憚られ、タクシーで通院するなどの周囲への配慮を行っていた。
※この質問に関しては林さんが「大気汚染では患者会という組織を作り、自分達の意見を積極的に主張して制度をつくった点が水俣とは違った状態であった」と補足説明をされていました。

Q:「たすきが制服」と仰ったが、この制服とは学校の制服のイメージなのか?
A:ジャケットのような感覚。これをつけると話しやすくなる。

Q:(福島の状況と比較しながら)公害認定がなされない段階で、加害側の企業が、自社の責任ではない、気のせいであるなど、公害が大した問題ではないと思わせる言説を流すようなことはなかったのか?(福島では実際にあった)
A:患者間で勉強会を重ねており、患者会の団結力でも乗り越えてきたためその問題に関する悩みは少なかった。
この他多くの質問が皆さんから出されました。

福島大学から来られている方がいたので、岡崎さんは原発の件にも触れ、原発事故の怒りを忘れてはならないこと、声をあげ、協力することの重要性を強調されました。

昼からは西淀川のフィールドワークを行いました。
バスで西淀川や尼崎の工業地帯の見学を行いました。この日は日曜だったため、交通量がいつもより少なかったです。
43号線からフィールドワークが始まります。
まず、43号線沿道ではどのような対策がとられているか林さんから説明がありました。

道路の対策についての説明をしている林さん。

道路の対策についての説明をしている林さん。

P1170190

光触媒について。

P1170200

「空気を監視する装置はどこにある?」

 

空気を監視する装置の内の1つ。

空気を監視する装置の内の1つ。

P1170207

中央分離帯部に設置されたピュア・プランター

 

こういった対策も大事だが、そもそもの交通量を減らしていくことはできないかという根本的な課題についても林さんは触れられました。

再度バスに乗り、尼崎や西淀川の工業地帯を見学します。川の水面と地上の高さに注目して地盤沈下の様子を観察しました。
車内から、湾岸線が見えます。大気汚染を減らすため阪神高速5号湾岸線側への迂回を促す取り組みがなされていると説明がありました。

淀川につきました。説明を聞き、淀川浸水想定区域図を見て、西淀川が直面しうる水害の切実さを感じました。現在の淀川ではウナギ・シジミがとれます。

淀川堤防沿いにて林さんによる説明。

淀川堤防沿いにて林さんによる説明。

川の土手で遊ぶ皆さん。とても楽しそうです。

川の土手で遊ぶ皆さん。とても楽しそうです。

クラゲもいました。

クラゲもいました。

再び43号線、淀川通りを通ります。ここからは徒歩であおぞら苑に向かいます。日曜日だったため、施設内の見学は行いませんでしたが、デイサービスセンターあおぞら苑の説明を受けました。
あおぞら苑は西淀川裁判の和解金の一部を拠出してつくられたデイサービスセンターです。高齢になった公害患者の方の日々の生活を援助するために、また地域の人々が誰でも利用でき、「西淀川に住み続けて良かった。」と思えるようにとのことで設立されました。

あおぞら苑にて。

あおぞら苑にて。

桜が咲き始めていました。

桜が咲き始めていました。

千北診療所にも立ち寄り、説明を受けました。

千北診療所にも立ち寄り、説明を受けました。

千北診療所は、かつては西淀川医師会と公害検査センターがあり、患者会の事務局もあった場所です。今も公害患者の治療にあたっています。

淀川通りを通って大野川緑陰道路へ向かいます。

かつて緑陰道路が川だった頃の写真を掲げて説明する林さん。

かつて緑陰道路が川だった頃の写真を掲げて説明する林さん。

フィールドワークを終え、あおぞら財団に戻ると4班に分かれてきょうのふりかえり(ワークショップ)を行いました。

ワークショップの説明。

ワークショップの説明。

1日目のまとめ。栗本さんがまとめてくださいました。

1日目のまとめ。栗本さんがまとめてくださいました。

ワークショップ中

ワークショップ中

悩みながら皆さんで意見を交わし合っています。

悩みながら皆さんで意見を交わし合っています。

【ワークショップの中で出た意見】
・西淀川が公害の町だと聞いていたため、実際に来てみて想像以上に綺麗だったことに驚いた。
・町歩きからいろんなことを学べた。
・福島と西淀川の問題に対して同じような対策は効果的かどうか。
・公害の経験があるのに経済成長ばかり重視…公害について深く考える人はどれほどいるのか。
・文理融合、トータルに考えることが大事。
・ステークホルダーの重要さを認識した。
・岡崎さんの、福島の人達は「もっと怒らな」ければならないという発言に考えさせられた。
・モスクが見学できたことが印象的だった。西淀川ではいろんな国籍の人々が生活していることもわかった。

【この時の質疑応答】
Q:工場労働者の中にも患者となった人はいた?
A:いる。被害者として原告になった人もいた。

Q:緑陰道路について人の集まる場所になったということは良いことだが、川ということ、その良さを隠してしまったのでは?
A:大野川は43号線建設により川をせき止めたことが原因で悪水がたまることになった。そこで埋め立てられたのであるが、公害患者がえがいた再生マップには緑陰道路に水を流したいという計画があったが患者さんたちの願いは叶わなかった。

Q:西淀川の汚染が下がったのは、阪神の震災により、大阪-神戸の物流が減ったことも原因か?工場の対策が進んだからか?
A:経済の落ち込みによる環境改善は確かにある。しかし公害裁判の成果としてつくられた自動車NOx・PM法のおかげで車の規制が行われ、現在はNO2の現在基準の上限基準値を下回った。
この日の最後に懇親会が行われました。

会話も弾み、皆さんとても打ち解けていました。

会話も弾み、皆さんとても打ち解けていました。

2日目に続きます。(村山)

« 次のページ前のページ »