京都精華大学 環境教育実習「公害地域の今を伝える-大阪・西淀川大気汚染の地を訪ねて-」(9/4)
1 実習初日
9月4日、5日、京都精華大学の学生6人が、あおぞら財団で環境教育実習を行いました。京都精華大学の井上有一先生とあおぞら財団は、これまでも新潟、富山、西淀川で、公害地域の今を伝えるスタディツアーを行ってきました。昨年からは、京都精華大学のカリキュラムの一環として、西淀川で環境教育実習を行っており、今年はその2回目です。
9月4日は、午前中に西淀川公害訴訟の担当裁判官であった井垣敏生先生の話を伺い、午後は、被告企業であった住友金属工業株式会社の流れを汲む新日鉄住金株式会社を訪れました。
2 井垣元裁判官の話
井垣先生は、第2次~4次西淀川公害訴訟を担当した裁判長で、現在は、弁護士の仕事だけでなく、立命館大学法務研究科で後進の指導にも当たっています。担当裁判官の話を聞けるとあって、学生だけでなく、訴訟の原告の方々、弁護団に加わっていた村松昭夫弁護士やあおぞら財団のスタッフなど、多くの方が井垣さんの話に聞き入っていました。
西淀川公害訴訟は、西淀川地域に住む公害被害者らが、国、阪神高速道路公団、企業10社に対し損害賠償と汚染物質の排出の差止めを求めた裁判です。20年に及ぶ裁判の末、被告企業とは第2次~4次西淀川公害訴訟の1審判決前に和解が成立、国、阪神高速道路公団とは同判決後に和解が成立し、終結しました。井垣先生は、第2次~4次西淀川公害訴訟の1審判決で原告の損害賠償請求を一部認容し、道路公害で国の責任を初めて認めました。
西淀川大気汚染訴訟は、井垣先生にとっても思い入れの深い裁判だったようです。裁判を担当するかどうか聞かれたときに、4年間は転勤がないようにしてほしいことや、補充の裁判官をつけてほしい旨を申し入れたこと、裁判の記録は256冊にも及び、並べると15メートルもの長さになったこと、判決をほぼ書き終わった頃に原告らと被告企業との間で和解が成立したため、判決期日を3か月先に延ばして判決を書き直したことなど、裁判の際の苦労や思い出話の数々を披露しました。判決の本文が1494ページにも及んだ理由について、井垣先生は、控訴されたときに、判断が覆されないよう、国民の支持を得られるような判決とするためであったと述べていました。自分の判決でこの裁判を解決させるのだという井垣先生の強い決意を、私は感じました。
質疑応答の時間では、学生から裁判に関する多くの質問がありました。また、村松弁護士が和解を進めていた当時の裏話を披露したり、原告団に加わっていた公害被害者が井垣先生の話にコメントしたりするなど、多くの方から発言がありました。その中でも、公害被害者の一人が、井垣先生に対し「あの時は、ありがとうございました。」と述べた場面が心に残りました。
3 新日鉄住金の訪問
午後は、西淀川大気汚染訴訟の被告企業だった住友金属工業(現新日鉄住金)の製鋼所を訪れました。新日鉄住金では、総務部総務室長の服部善彦さんから、製鋼所の概要の説明受けた後、製鋼所の中を見学しました。同製鋼所は、日本最大級の16,000tプレスを有し、その大きさに圧倒されました。また、こちらで製作される鉄道用車輪・車軸は、国内シェア100%を誇ります。普段乗っている電車の車輪ができていく様子に、思わず見入ってしまいました。
工場見学が終わった後は、質疑応答が行われました。学生の皆さんからは、大気汚染対策、水質汚濁対策等の環境対策について質問がありました。それぞれの質問には、服部さんをはじめ総務部の皆様から、硫黄酸化物については、燃料を変えることで発生を抑えていること、窒素酸化物については脱硝装置、ばいじんについては集塵機で対応していることの説明や、水質汚濁対策等について水質汚濁防止法、瀬戸内法に基づき対策を講じていること等の説明がありました。質疑応答の中で、西淀川公害に話題が及んだ際、「水でも大気でも、同じことを繰り返してはならない。」と力強く述べられていたのが印象に残りました。
井垣先生、新日鉄住金の皆様、お忙しい中ありがとうございました。
京都精華大学
http://www.kyoto-seika.ac.jp/
新日鐵住金株式会社
http://www.nssmc.com/
2013年度インターン生 司法修習生 西谷祐亮