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中国/北京 訪問記(2016.10) その3 環境法担当機関に聴く―環境公益訴訟制度と大気汚染防止法の成果と課題

3日目は、中国の国会議事堂にあたる人民大会堂にて、立法や法改正を担当する全人代常務委員会法制工作委員会行政法室との意見交換に臨みました。意見交換の中では主に、環境公益訴訟制度が導入された背景やこれまでの成果について、また近年政府が力を入れる大気汚染防止政策について話し合われました。

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人民大会堂の会議室にて

環境公益訴訟制度とは?
中国は改革開放政策後の高度経済成長によって環境破壊が深刻化したのを背景に、経済発展と環境保護をバランス良く促進し、また環境破壊の被害者である公衆・国民を救済するために2014年の環境保護法の改正を受け、環境公益訴訟制度が導入されました。環境公益訴訟の制度化にあっては、訴訟の原告資格をめぐって議論があり、現在ではNPO/NGOの中でも設立されてから5年以上の実績がある等、継続的な環境保護活動が可能である団体に提訴の資格が与えられています。
原告になる資格は民間団体以外にも、一部の地域では検察官にも資格が認められていることが、中国の環境公益訴訟制度の大きな特徴とも言えます。
環境保護法の環境公益訴訟後の状況をみると、検察官の参加は効果があると見ているそうです。

今後は課題として、損害賠償金の管理や被害者への割当等の問題を話し合って行くそうです。

制度執行後2015年1月以降では、民間団体の提訴が90件、検察官の提訴が42件(民事.行政事件を含む)と、今後も起訴件数は増えると見ています。

大気汚染防止策について
また同委員会は、近年力を入れている大気汚染防止策について肯定的な見方を示していました。中国においてスモッグ・大気汚染が深刻化した原因として、第二次世界大戦中から、石炭を主要エネルギーとして利用している点、近年の自動車の普及した点があげられます。政府は大気汚染防止のために2015年に大気汚染防止法を改正しました。長期的な効果を考慮し、同法律は工場、自動車、建築等の汚染源対策を盛り込み、政府と企業の責任を明確しました。その他、ここ2~3年の大気汚染の改善や、交通違反の罰則の強化、新エネルギーの導入等の取り組みを鑑みると、中国は大気汚染防止策の達成には、そこまで時間を要さないと考えているそうです。

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人民大会堂のロビーにて

続いて、午後は環境訴訟を取り扱う北京環助弁護士事務所にてヒアリングを行いました。

同事務所は、6年前に開業し、環境公益訴訟や民事訴訟を専門とする弁護士が所属しています。
ヒアリングでは、公益訴訟の現状や同事務所の取り組みを中心に話をお聞きしました。

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ヒアリングのようす

公益訴訟の状況
中国の環境公益訴訟の種類は民事と行政にわけることができ、2015年以降の環境公益訴訟の案件数は合計すると100件にも上り、その8割を民事訴訟が占めるそうです。
環境公益訴訟の特徴として、①訴訟で取り扱われる案件の範囲が拡大した点、②環境汚染だけではなく、幅広い「環境問題」が対象になる点が上げられました。

特徴①:範囲の拡大
かつては環境に実際に損害を及ぼしているケースのみ受理されていたが、環境公益訴訟制度が出来てから、環境に対するリスクがある案件でも提訴することができるようになったそうです。同事務所では、以前四川省のダム建設による生態系破壊の案件を取り扱い、生態系が破壊されていない段階でも提訴することが出来ました。

特徴②:領域の拡大
環境公益訴訟は生態環境や文化財の破壊も含んでおり、実際に同事務所では文化財取り壊しを撤回する訴訟にて勝訴したこともあります。

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これまでの取り組みについて語る馬勇氏

北京環助弁護士事務所の取り組み
同事務所は民事訴訟と公益訴訟の両方を扱っており、2015年以降民事訴訟は年間50~60件、公益訴訟は年間20件と、やはり全体として公益訴訟の割合が少ないものの、近年取扱件数が増えているそうです。公益訴訟を提訴する際は、原告である環境NPO/NGOから委託を受け、同事務所から弁護士を派遣しています。大気や水汚染をはじめ、生態系保護、文化財保護など様々な問題を扱っています。数多くの案件を扱っていますが、いずれも審議中のものが多く、判決の執行が滞っていることを課題として挙げていました。

中国/北京 訪問記(2016.10) その1 女子大生は見た!北京の大気汚染の現状と取り組み

中国/北京 訪問記(2016.10) その2 環境NGOと環境弁護士に聴く―環境公益訴訟の現場から

(記・當間美波)

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