あおぞら財団 西淀川道路環境再生プランの提言Part6 西淀川発! これからの交通まちづくり~低速交通のすすめ~(素案)
Home » あおぞら財団の活動 » 公害のないまちづくり » 西淀川道路連絡会/道路検討会 » 西淀川道路環境再生プラン(提言) » 西淀川道路環境再生プランの提言Part6 西淀川発! これからの交通まちづくり~低速交通のすすめ~(素案)

西淀川道路環境再生プランの提言Part6 西淀川発! これからの交通まちづくり~低速交通のすすめ~(素案)

2007年3月
編 者:西淀川道路環境対策検討会
発行所:(財)公害地域再生センター(あおぞら財団)

目次

第Ⅰ部  クルマ依存社会の心配ごと

  1. 大気汚染の現状と課題
  2. 大気汚染公害裁判の経過と「道路連絡会」の課題
  3. 公害被害者の救済と課題
  4. 気候変動と自動車交通 【コラム 環境税について】
  5. 道路・交通政策を振り返る

第Ⅱ部  これからの交通まちづくりへ

  • 1 低速交通を活かした交通まちづくり~道路交通問題と地域交通戦略の必要性~
  • 2 脱クルマ依存社会のための地域交通政策
  • 2-1 これからの道路政策を進めるにあたって
  • 2-2 自動車交通量を低減させる政策
  • 2-3 自動車独り占め空間の見直し
  • 2-4 自転車重視の交通まちづくりの提案
  • 2-5 福祉の交通まちづくりの提案~地域福祉交通からのアプローチ~
  • 2-6 思いやりの交通まちづくりの提案~エコドライブからのアプローチ~
  • 2-7 高架道路撤去による都市アメニティの回復
  • 2-8 コンパクトなまちづくり~マイカーによる郊外での買物を減らそう~
  • 2-9 未来の西淀川 ~都市計画マスタープランをつくろう~
  • 2-10 交通まちづくりへの参加 【コラム 大野川緑陰道路】
  • 3  クルマの使い方を学校、企業、地域で学ぶ~これからの交通環境教育~
  • 4  クルマと道路に関するお金の問題~道路と交通の財源制度~
  • 5  クルマと道路に関する法制度のあり方~移動の自由から交通の自由へ~

参考

  • 国・公団との和解にあたっての裁判所の和解勧告と和解条項
  • 西淀川地区道路沿道環境に関する連絡会設置要綱
  • 西淀川道路環境再生プランPart1~5(概要)

執筆者

兒山 真也 (兵庫県立大学経済学部助教授)
塩崎 賢明(神戸大学大学院自然科学研究科教授)
西村 弘 (大阪市立大学大学院経営学研究科教授)
新田 保次 (大阪大学大学院工学研究科教授)
馬場 明男 (㈱ビーズ地域プラニング研究所)
松村 暢彦 (大阪大学大学院工学研究科助教授)
村松 昭夫 (弁護士)
藤江 徹 (あおぞら財団 研究員)
矢羽田 薫 (あおぞら財団 研究員)

提言の問題意識と主旨

1.問題意識

西淀川公害訴訟は、大阪臨海部に立地する大工場群からの排煙と国道43号などの幹線道路からの自動車排ガスによる都市型複合汚染の法的責任を初めて問うた、全国でも最大規模の公害訴訟であった。
訴訟は、20年に及ぶ公害患者らの粘り強い闘いのなかで、1995年3月に企業らとの間で、1998年7月には国・旧阪神高速道路公団との間で、それぞれ和解が成立した。そして、1997年9月には、公害患者らの「手渡したいのは青い空」の願いを受けて、公害地域の再生を目指した「あおぞら財団」が設立された。今年は、財団設立から10年目を迎える。
また、全国各地(川崎、倉敷、尼崎、名古屋南部)の各大気汚染訴訟も、西淀川公害訴訟の和解後に、次々に和解解決がはかられた。
西淀川をはじめ川崎、尼崎、名古屋では、和解解決を受けて、原告団・弁護団と国・旧道路公団との間で、幹線道路沿道の公害環境対策を協議する「道路連絡会」が各地に設置され、現在も、自動車排ガス公害の根絶に向けた協議が続けられている。
ところで、自動車という乗り物は、私たちに便利で快適な暮らしを提供する魅力的な交通手段であり、現在の我々の暮らしは、その多くを自動車利用を前提として築き上げられている。
しかし、あまりにも自動車への依存を高めてしまった現代社会は、自動車排ガス公害による健康被害、自動車利用を前提とした大型郊外店の増加による中心市街地の商店街の衰退やまちのスプロール化、交通事故による人身損害、騒音・振動などによる生活被害、都市のヒートアイランド現象、CO2の排出増加による地球温暖化問題とエネルギー問題など様々な深刻な問題を抱え込んでしまった。
今後、確実に本格的な少子高齢化・人口減少社会を迎えるにあたり、私たちは、自動車がもたらす上記の諸問題を解決し、持続可能な社会づくり、都市づくりを実現するために、いま一度、自動車中心の都市交通やまちづくりのあり方や、私たち自身のクルマとのつき合い方等を見直す必要に迫られている。
その重要な視点の一つが、現代社会が執拗に追い求めてきた高速交通ではなく、その対極にある徒歩や自転車、公共交通など私たちの身近な低速の交通手段を出発点にした地域発の交通まちづくりではないだろうか。そのことは、人々がふれあい、新たな文化が生み出される地域づくりにも繋がる。新たな交通まちづくりのキーワードは、「低速交通」と「地域発」であり、それが西淀川発の道路提言Part6の問題意識である。

2.提言の趣旨

本提言は、以下の3点をねらいとしている。
① 西淀川公害訴訟の和解と財団設立から10年を迎え、西淀川地域からの問いかけを出発点として、自動車交通に関する現状と課題を確認する。
② 大気汚染公害等のクルマ依存社会がもたらした弊害を克服し、持続可能なまちづくりを行うために、「低速交通」と「地域発」の視点を軸に、道路・交通政策(計画、参加、教育、財源、法律)の方向と展望を示す。
③ 今後、各地域で、交通まちづくりに取り組む際の討議資料として活用されるようわかりやすく整理する。