あおぞら財団 名古屋南部道路連絡会の概要

名古屋南部道路連絡会の概要

名古屋南部道路連絡会の発足

  • 名古屋南部地域道路沿道環境改善に関する連絡会(名古屋南部道路連絡会)は、名古屋南部大気汚染公害訴訟の和解条項に基づいて開催されています。名古屋南部大気汚染公害裁判についてはこちら(環境再生保全機構「記録で見る大気汚染と裁判」)
  • 名古屋の道路連絡会では、西淀川、川崎、尼崎とは異なり、道路管理者とともに環境省もメンバーに加わったことから、環境省が大気環境の調査や健康影響調査を行うことも和解内容に含まれました。

環境省による大気環境の調査

  • 環境省が道路連絡会のメンバーに加わったねらいは、全国的な施策と同時に地域における環境改善のための環境省の責任を定期的に検証することでした。
  • 大気環境の調査では、国土交通省と環境省が合計12カ所の測定局を設置し、健康影響調査では、PM2.5との関係を検討する健康影響調査を13年から3歳児とその両親を対象にして実施し、これら対象者を5年間追跡調査しました。
  • 測定局においては、未だNO2およびSPMの濃度が環境基準を上回るところが存在しており、対策面では充分な成果を上げられていません。

道路連絡会における道路政策の実現

国道23号の車線削減の要求

  • 和解後に国道23号沿道環境施設帯の整備や伊勢湾岸自動車道への迂回等の大気汚染削減のための施策が行われました。
  • しかし、南部地区全体の交通量は大幅に増加しており、原告団は交通量削減効果をもたらすと考えられる23号線の車線削減を求めました。
  • 和解条項に盛り込まれた「国道23号の車線削減」について、当初、国土交通省は部分的な車線削減の社会実験すら拒否していました。
  • 2013年9月から12月にかけて国道23号の遮音壁工事の際に、下り線で800m、上り線で約350mの車線削減を行うことになり、これに伴って社会実験として交通量および大気汚染の測定を行いました。
  • この結果、国道23号の交通量が17%削減されるという効果が現れたものの、周辺道路の迂回交通量の大幅な増大とこれによる大気汚染の拡散をもたらすことが明らかになり、国土交通省の見解としては、車線削減の実施については現実的に厳しいとの結論に至りました。

要町の防音壁の設置工事

  • 要町の二酸化窒素(NO2)の環境基準上限値未達成を達成すべく、2012年度から2013年度にかけてNO2吸着機能を持つ防音壁の設置工事(要町交差点〜丹後通交差点)が実施されました。
  • 国との和解条項である「沿道環境整備事業」は、沿道20mに遮音壁や緑地帯を整備し、居住地のNO2等の大気汚染物質を削減し、騒音・振動を削減しようというものです。
  • 土地・家屋等の買収を伴うため、徐々にすすんでいます。

要町横断施設帯の改善

  • 沿道環境整備と並行して、国道23号において要町横断施設帯改善検討会が沿道住民の要求として検討がすすめられました。
  • 人間優先社会の立場から「横断歩道」設置を第一義的に要求し、それが無理な場合には歩道橋にエレベータを設置するよう求めたが、そのいずれもが拒否され、2012年に階段の横に勾配8%、長さ100mのスロープが設置されました(*バリアフリー法に基づく道路移動等円滑化基準では、歩道橋にはエレベータを設けること、屋外のスロープの勾配は5%以下とすることが望ましいとされています)。

 

国道23号における環境レーンの導入

  • 国交省から国道23号における車線削減はこんなんであるとの見解が示された後、2014年の道路連絡会において、原告団は車線削減の代替策として兵庫県尼崎方式を取り入れた環境レーン(大型車中央寄り車線走行ルール)の導入を提案しました。
  • 国土交通省はこれを受け入れ、2015年1月に「国道23号通行ルール(名古屋南部地域)」を導入しています。
  • 国土交通省中部地方整備局 名古屋国道事務所「国道23号通行ルール(名古屋南部地域)

 意見交換の終結

  • 2015年3月には、原告団からの申し入れにより名古屋南部大気汚染公害訴訟・和解条項履行にかかる意見交換を終結しました
  • 終結にいたった理由は、一次提訴から26年たち元原告約290人の約7割が高齢化や重症化により死亡したこと、伊勢湾岸自動車道への大型車の迂回、環境レーン等の実施により大気汚染は改善傾向にあると判断されることにあります。
  • 合意文書には、国は引き続き和解条項に基づく国道23号名古屋南部地域の沿道環境改善に努め、国道23号通行ルールの定着に向けての施策を継続すること、環境施設帯は地元住民の意見を聞きながら整備を進めるとともに除草・清掃等の適切な管理を実施することが含まれています。
  • 国土交通省中部地方整備局道路部:「『名古屋南部大気汚染公害訴訟・和解 条項履行に係る意見交換終結合意書』の締結について 、道路行政セミナー、2015年度6月号