第53回IATSSフォーラム2日目(6/19)
研修の2日目は、9時に南森町のホテルをバスで出発しました。
大阪府のこの施設は環境情報の提供、環境学習の機会や場の提供等を通じて府民、事業者、環境NPO、行政など各主体の自主的な環境保全・環境活動をサポートする拠点施設として運営されています。
郊外における行政の役割を学習するために訪問しました。
まず、「大阪府域の大気汚染」に現状について担当者からの説明を受け、健康への影響が大きい二酸化窒素・浮遊粒子状物質(SPM)・二酸化硫黄の常時観測の説明を聞きました。その後、屋上の大気汚染測定機の場所へ移動し、観測機器の説明がありました。
次に、アスベストの環境調査グループの部署に行き、アスベストの使用状況と被害の説明を受けました。「アスベストとは以前は安価な保温・断熱材として建材に使われていました。その繊維が極めて細いため呼吸で吸い込むと、肺の機能障害が発生するため現在は使用が禁止されています」と説明を受けました。
続いて、ダイオキシン観測室前で説明を受けました。ダイオキシンはいっぺんに多量に摂取すると、サリンの2倍の毒性があると言われている種類もあります。肝臓や腎臓へガンを発生させるとも言われている物質でもあり、観測室は十分に管理されエアー・ロック室で観測されています。
その後、全体での質疑の時間では
Q:どこか他の場所との測定数値の交流はありますか。
A:全国の自治体との情報共有し、府の行政との提携があります。
Q:ここ30年間で大阪府の大気汚染対策の効果はどうですか。
A:明らかに大気の汚染度は減少しています。
Q「基準数値」の設定は「府」ですか「国」ですか。
A:国が基準値を設定していますが、府はそれに上乗せした基準値を持っています。
Q:事業所への指導はどのようなものですか。
A:必要な場合は事業所への立入り調査を行っており、指導の中で改善させています。
などの質疑・応答がありました。
この環境情報プラザでの研修では、大気汚染の歴史的変遷やアスベスト飛散についての説明を聞き、それを監視する測定の現場を見学することができ、担当者の話を直接聞くことができました。アスベスト検体の顕微鏡提示や、ダイオキシン観測の説明もあり、参加者の注目を集めました。ただ、説明がやや専門的な部分もあり、難しく感じた方もおられたかもしれません。かつては、高校生の授業で見学会がもたれたことがあったとの説明もありました。
大阪城へ移動し昼食、その後
此花区にある新日鐡住金株式会社製鋼所の見学をしました
住友金属は「西淀川大気汚染裁判」の被告企業の一つですが、現在は大気汚染を始め、環境対策をしっかりとって操業しています。
新日本製鉄と住友金属は2012年10月に統合されていますが、大阪市此花区島屋5丁目のこの工場では 鉄道車両品、
初めに安全環境室と総務室の担当者から、企業活動全体の紹介がありました。
工場の概要と製造している鉄道部車両品の車輪や台車などの説明をうけました。
9000㌧プレス機や世界的に珍しい鍛造技術などが注目されています。
英語の事業説明ビデオがあり、大変わかりやすかったです。
説明後、見学用ヘルメット、上着、手袋を借りて工場内の見学です。
新幹線を初めとした鉄道車輪・台車の製造工程の一部を見学しました。曲線通過時の車両・レールの摩耗や騒音を防止するため、レールの曲線に従うように車輪の位置を調整する機構を備えた操舵台車の実物模型も見学しました。
その後、全体での質疑の時間では
Q:マンションや観光施設に隣接しているが、住民からの苦情はありませんか。
A:フォークリフトの構内移動時の警戒音は使用を止めて高輝度ライトに切り替えています。
A:この周囲一帯は工業地区であったが、周辺土地の用途変更により、この工場は住宅や観光施設が隣接した現在の配置になっています。
この工場見学では、独自で開発した世界唯一の車輪用回転鍛造プレス機など、日本の高度な技術の一部に直接触れることができ、緻密な作業の様子に参加者の注目が集まっていました。さらに、この工場で努力されている環境への配慮も説明され、きれいな水と空気を守るために、排水処理設備、排ガス処理設備など最新の諸設備が環境の保全に効果を発揮しているとの説明がありました。
工場内は全てカメラ撮影は禁止でしたが、見学の最後に全員で記念写真を撮りました。
西淀川高校に移動しました
大阪府立西淀川高校は地元の方々の強い期待と要請を受けて112番目の府立学校として西淀川区出来島に開校され、今年で創立38年目を迎えています。「知・徳・体」のバランスのとれた生徒の育成を目標にし、環境の問題や地域へ開かれた学校になるよう努力を続けている特徴ある学校です。西淀川ESDの一環として「菜の花プロジェクト」の推進校でもあります。
この学校での「環境の授業」や文化祭での展示を始め、あおぞら財団との協力関係にあります。
きれいに改修された食堂で、担当の先生とECOクラブの生徒が活動の紹介を行いました。
菜の花プロジェクトの「紙芝居」で環境問題と廃油回収活動の説明の後、生徒への質疑がありました。
Q:廃油の回収はいつでも大丈夫ですか。
A:西淀川区内にある回収ステーションを通じて行っています。あおぞら財団も回収ステーションの1つです。
Q:回収した油はどう活用していますか。
A:尼崎の工場で石鹸を作るリサイクルをしています。
A:阪急バスでは一部ですが、エネルギーとして活用されています
Q:このクラブに入るきっかけは何でしたか。
A:クラブの友達に誘われて入りました。活動をはじめて楽しくなりました。
Q:将来どんな仕事につきたいですか。
A:地域の公務員として環境の仕事をしてみたいです。
A:私は介護の仕事について、人の役にたちたいです。
A:私は接客の仕事をすると思います。
A:私は保育士になって働きたいです。
Q:このクラブで学んだことを教えてください。
A:地域の方とのコミュニケーションの大切さを学びました。
A:畑の仕事をして、農業への関心が大きくなりました。
A:朝の掃除をしてきたので、身近な場所での日常の「緑」に気をつけるようになりました。
Q:集めた廃油でバスの走行が紹介されましたが、大阪ではどのくらい走っていますか。
A:大阪ではまだ少ないです。京都市では市バスで完全に使われています。
Q:クラブの活動で嫌いなことは何ですか。
A:掃除のときは虫が出てくるので嫌です。
A:モップ作業は埃が舞い上がってつらいです。
Q:環境や公害の歴史を授業で経験してどのような感想を持っていますか。
A:西淀川は大洪水や空気の汚れの経験があるので、西淀川以外の地域でも授業でこのような問題をとりあげれば、生徒の学習への興味が高まると思います。
A:公害だけでなく、地域の歴史を知ることは大事なことなので、他の学校でも授業でやるべきだと思います。
研修参加者から「高校生が地域社会のこのような活動に参加することが、とても重要だと思いました。私たちの国でも、皆さんの事例を広げて行きたいです。これからも、活動を続けてください。」との挨拶がありました。
担当の先生からは
「子ども達は、活動の内容を外国の皆さんに聞いてもらうことができて、とても良かったと思います。全体としてとても貴重な体験ができました。ありがとうございました。」とお礼の言葉がありました。
西淀川高校では、ECOクラブ生徒の活動紹介や生徒たちの活躍する様子が紹介されました。ここの高校生が、様々な困難を抱えながらもしっかり環境の問題に向き合い、学びを通じて自分の進路の問題へも引き付けて考えていることが、とても重要なことであったことを再確認しました。西淀川地域へ拓かれた学校になるよう努力している生徒と教師集団の姿は、研修参加者の母国での教育の示唆になると思いました。
西淀川公害訴訟の地域再生の一つとして活動している「ディサービスセンター・あおぞら苑」に移動して施設の説明を受けました。
施設長の 辰巳致さんから説明を受けた後、研修生から日本での福祉や医療の現状についての質問が多数出ました。
公害の問題は、福祉と背中合わせであることが理解できたようでした。
今日もスケジュールいっぱいの日程でしたが、真剣な研修生の活動が印象的でした。
(天野)