中国/石家荘 訪問記(2016.3)その1 環境弁護士 馬倍戦事務所を訪ねる
「平成27年度 大気汚染経験情報発信事業」の一環として、2016年3月14日から17日あで、中国の環境NGOとの交流を目的に、石家庄(河北省)と北京を訪問しました。
これまでに、あおぞら財団と交流がある方を改めて訪ね、その後の話を伺いました。
<訪問者>
櫻井次郎(神戸市外国語大学准教授)
知足章宏(京都大学学際融合教育研究推進センター アジア研究教育ユニット 研究員)
藤江徹(あおぞら財団事務局長)
3月14日、大阪から上海経由で石家荘空港に降り立ちました。
最初に訪れたのは、2013年にあおぞら財団の研修プログラムに参加いただいた、馬倍戦弁護士の事務所。
壁には「中日環境学術交流会」の文字が浮かび、馬弁護士と6名のスタッフが迎えてくれました。
馬弁護士事務所は2008年5月に開業、15人の担当弁護士を抱えています。環境保護を専門とした法律事務所としては、中国国内でも最大規模で、企業・政府への法律研修、地方政府環境保護部門の法律顧問、損害賠償訴訟、汚染被害者の支援、公益訴訟、交通事故、労働争議などの業務を主に行っています。
馬弁護士事務所の取組みを伺った後、日本側からは、最近の日本の環境関連訴訟(アスベスト訴訟、原発訴訟)、西淀川公害訴訟とあおぞら財団の取組み(まちづくりと自転車)を紹介・意見交換しました。
馬弁護士によると、中国では、近年の新環境保護法施行(2014年 4月24日公布)、大気汚染防止法改正(2015年8月29日公布)以降、環境保護機関の業務及び同機関への責任追究が増えていて、馬弁護士事務所では、法律の視点から行政担当者向けの指南書を出版しています。また、企業、環境保護機関の担当者に対する法律研修も頻繁に行っておられます。
法律の整備に続いて、今後は、法の執行面を進めていく必要があるとのことでした。大きな流れとしては改善が進んでおり、最近の大気汚染防止法改正(2016年1月1日施行)では、公衆参加を推進し、関係者が協働で環境管理を行う、各地方政府の連携を推進するといった条文内容が盛り込まれたそうです。例えば、これまでは汚染排出の違法行為に対し、過料50万元(約1,000万円)が上限でしたが、法改正により、違反1日ごとに過料が掛かるようになり、これにより、違法な操業を行うことに対する企業のコスト負担が高まっているとのことでした。
この意見交換を通じて、中国では近年の環境関連法規の整備に伴い、環境保護業務に携わる弁護士の業務活動の範囲が広がっていることがわかりました。訴訟支援だけでなく、関係者(行政・企業)への法的支援や相談、研修も頻繁に行われるなど、中国で環境保護業務に携わる法律事務所の活動実態の一端を理解することができました。
また、日中間については、国レベルでは、何かとややこしいことが言われているけど、民間同士は協力し合って、環境を良くしていこうと再会を約束しました。
馬弁護士事務所の微信(We Chat)には、その日のうちに交流会の様子を掲載いただきました(こちらをクリック)
2013年に馬倍戦氏が来日し、参加した意見交換・研修の様子(意見交換の様子、研修の様子)
石家荘市の風景
(記:藤江徹)