大阪府泉南地域に集中していた石綿工場の元従業員ら55人が、国にアスベスト(石綿)による健康被害の損害賠償を求めた「泉南アスベスト訴訟」第2陣訴訟の判決が28日、大阪地裁であり、原告側が勝訴しました。
この裁判は、アスベストの被害を、国は当時、把握をしていたのに、対策を怠っていたのは責任があるとして、アスベストの被害で肺がんや中皮腫、石綿肺などの病気になった人たちが裁判を起こしたものです。
第一陣の判決は、地裁では勝訴したものの、昨年8月での高裁の判決は、「産業発展のためには国民の生命健康が犠牲になってもやむをえない」というもので、国の責任は認められませんでした。
判決後に行われた集会では、今回の勝訴判決の意義として、
●労働者よりもの健康よりも経済発展を優先すべきだという理由で労働者の健康をないがしろにするのはゆるさいないと明言した。第一陣の高裁とは逆となる、深刻な石綿被害を認識していた国の責任を認めたことが最大の意義。
●地裁判決が、高裁判決(第一陣)、しかも同じ管内で出した判決とは違う判決を言い渡すのは、裁判官も勇気がいる。歴史的な快挙。第一陣の高裁判決の特異性がこれで明らかになった。
●今後各地で予定されているアスベスト裁判を励ますもの。
といった報告がありました。
また、課題として
●事業主にも責任があるとして、国の責任が1/3しか認められなかった。泉南地域の事業主は、どれも中小零細企業。倒産してしまった企業もある。泉南の地域性を考慮しておらず、被害者救済という点では、マイナスの判決。
といった説明がありました。
弁護団副団長であおぞら財団理事長の村松弁護士も登壇。原告の人たちと一緒にこの後、すぐに東京へ行くそうです。
村松弁護士からは、「不当判決が出ても、正義を掲げてたたかう重要性を実感した。多くの人の署名、応援に励まされた。」
第一陣の裁判では地裁判決のあと、国が控訴し、高裁へ裁判がすすみましたが、「政治や行政が国の責任が認められた2回の地裁の判決をどううけとめるか、政治の根本である国民の命と健康をどう守るかということを、この後の東京行動で国に問いたい」と、話がありました。
今回の第二陣でも原告となった33人の患者さんのうち15人は既になくなっています。早期の解決が期待されています。
急に小雨がふるなど天候も一時崩れましたが、集会には300人もの人たちが集まりました。
また、今回の裁判の公正判決の要請署名に対し24万3000筆集まり、そのうち大阪は6万筆、それ以外は全国からということです。全国的な関心の高さが窺われます。
皆の思いをうけとめ、被害者救済のために国に動いて欲しいと願っています。
大阪泉南地域のアスベスト国家賠償訴訟を勝たせる会HP
■各紙の報道
<2陣訴訟の焦点等>
神戸新聞(3/27):大阪泉南石綿訴訟第2陣あす判決 国の責任をどう判断
<勝訴判決を知らせる記事>
読売新聞(3/28):泉南石綿第2陣訴訟、勝訴 国の責任認定…大阪地裁賠償命令
朝日新聞(3/28):石綿被害、国の責任認める 大阪地裁、泉南2陣訴訟
毎日新聞(3/28):泉南石綿訴訟第2陣:50人への賠償、国に命令 大阪地裁
日経(3/28):泉南アスベスト訴訟で国に賠償命令 大阪地裁、不作為認める
<判決の意義、原告の声、解説など>
読売新聞(3/29):救済の光 再び…泉南石綿第2陣訴訟
毎日新聞(3/29):大阪・泉南訴訟 第2陣も国の責任認定 「解決は私の代で」控訴断念願う遺族
(小平)