中国青空新聞vol.4を発行しました。
今回は昨年12月6日に開催しました、日中環境問題サロン2016(第四回)「中国の公害・環境問題と環境NGOの取り組み」をまとめました。
興味のある方、ご一読いただけると幸いです。
次号もご期待ください。
感想や執筆希望者もお待ちしております。
↓PDF版
↓あおぞら財団の国際交流のページ
https://aozora.or.jp/katsudou/tsunagaru
中国青空新聞vol.4を発行しました。
今回は昨年12月6日に開催しました、日中環境問題サロン2016(第四回)「中国の公害・環境問題と環境NGOの取り組み」をまとめました。
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2017年度第一回目の日中環境問題サロンは、中国環境問題の現状やあおぞら財団と中国の環境NGOの活動をより多くの学生に知ってもらいたいと言う思いから、初めて神戸市外国語大学にて開催しました。
今回のサロンでは、学生向けに、環境問題の概要やこれまでの日中環境NGO交流、交流を続けていく意義について報告が有りました。
■日 時:2017年6月26日(月)16:05~17:40
■場 所:神戸市外国語大学 図書館 ラーニングコモンズ
■主 催:あおぞら財団(公益財団法人公害地域再生センター)、神戸市外国語大学 櫻井ゼミ
■講演者:
櫻井次郎(公立大学法人神戸市外国語大学中国学科准教授)
藤江徹(あおぞら財団)
■参加者数:大学生・大学院生14名、学外1名
■プログラム:
①「これまでの日中環境NGO交流」(藤江徹)
②「日中の環境問題と民間交流」(櫻井次郎)
③質疑応答・意見交換
【講演者・内容】
①「これまでの日中環境NGO交流」(藤江徹)
初めに藤江氏からは、あおぞら財団の成り立ちや、これまであおぞら財団が行ってきた交流事業、中国環境NGOの活動等について報告が有りました。
初めに大気汚染の写真を見せ撮影地を学生に問いかけると、声を揃えて「北京」と答えていましたが、西淀川の様子を写したものだと知ると、学生たちは驚きを隠せないようすでした。
学生が特に関心を寄せていたのが、これまであおぞら財団が行ってきた国際交流事業についてでした。そもそも中国に活動している環境NGOがいる事、そして、日本の団体が中国の環境問題解決のために協力している事を初めて知った人が多く、メモを取りながら聞く学生の姿が目立ちました。
最後に公害地域の再生方法と今後の日中交流の展望を報告し、「日中関係は度々難しい局面を迎えているが、政府間だけでなく、民間レベルでの協力を今後も続けていきたい」という言葉で講演が締めくくられました。
②「日中の環境問題と民間交流」(櫻井次郎)
まず初めに、中国の環境問題の現状について、大気汚染と水質・土壌汚染の2種類の問題について説明が有りました。
大気汚染については、2011年に北京の米国大使館が報告した大気汚染のレベルと政府が発表した者との数値が明らかに異なった事から、大気汚染問題改善に向けた取り組みが進んだと、大気汚染改善のきっかけを説明されました。
水質・土壌汚染については、広東省や湖北省の実例を交えながら、政府レベルの取り組みにも言及しました。
次に、社会的背景から見る日中の相違点、中国の環境NGOを取り巻く問題点や新しい取り組みについて紹介しました。
中国では裁判は社会の安定を目的としているため、例え環境汚染で被害者が出ても救済が難しい事、また制約のある状況下でも、最近ではNGOが汚染企業のモニタリングという新たな活動を行う団体があることを説明されました。
最後に櫻井氏は、
「環境問題から多角的に中国の問題について考える事ができる。また、中国のNGOとの交流を通して、日本や留学だけでは見えてこない中国の実情が見えてくる。皆さんにも是非そういう体験をして欲しい。」と学生に対してメッセージを送られていました。
③意見交換
意見交換では公立鳥取大学准教授 相川氏、神戸市外国語大学の櫻井ゼミの学生からコメントを頂きました。
相川氏:中国のNGOは最近になってやっと出てきたわけでなく、四半世紀前から活動しているNGOもおり、日中交流も行われてきた。
学生:ゼミ合宿でインタビューした環境問題に関わる中国人学生と、留学で出会った中国の方とでは大気汚染等、環境問題に対する意識の差を感じた。市民の環境意識をより高めるのが重要だと思った。
④アンケート
また、サロン後のアンケートでは以下のような感想をいただきました。一部抜粋して紹介します。
1.本日のサロンの感想をお聞かせ下さい
1) どのお話もとても面白かったのですが、その中でも印象に残っているのはNGOの役割についてです。環境問題についてのサロンなのに、そこかいっ!って思われるかもしれませんが、環境問題を解決するためには、行政、企業、住民が連携して取り組む必要があって、諸機関をつなげるのがNGOの重要な役割の1つなんだな、と実感しました。私自身NGOで働いたことも、ボランティア経験が豊富でないので、えらそうなことはいえないのですが、いかにたくさんの人を巻き込んで、環境問題に対するawarenessを高められるのはNGOしかないのかなと思いました。
2) まず日本でも昔、あそこまで大気汚染がひどかったということを認識していませんでした。中国の環境問題を学習する前に自国の問題について勉強するべきということが印象的でした。
3) 環境NGOについて、環境問題について中国が動き始めたのはかなり最近のことだと思っていましたが、行政レベルやNGO自体の動きは20年以上前からあったという事を知って驚いた。
2.聞きたかったけれど聞けなかったことはありますか?
わかりやすい「公害」が発生すれば、訴えることもできますが、その可能性や明らかな環境破壊が行われようとしている段階で、何かしようとする活動についてはどうでしょうか?
「問題」の認識や回復も重要ですが、予防はもっと重要になってくるのではないでしょうか?
保存資料などをかつようして、そういう方向の議論も深められたらと思います。
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今回、初めて神戸市外国語大学で日中環境問題サロンを開催しましたが、環境問題や日中交流に関心を持っている学生が多くいる事を実感できました。
今後も学生や専門家に限らず、日中環境問題サロンの開催を通して多くの人が交流し、議論できる場を提供できたらと思います。
記・當間美波(神戸市外国語大学 中国学科4年)
■日中環境問題サロン
あおぞら財団の国際交流事業の一環として、中国の公害・環境問題に関する研究者、中国で活躍する専門家・環境NGOメンバー等を講師に迎え、中国の公害・環境問題についての報告や参加者との意見交換を行う日中環境問題サロンを2009年から開催しています。
本年度(2017年度)は、様々なテーマで4回程度の開催を予定しており、興味を持って頂ける方々に、ご参加いただければと思います。
•よびかけ人:櫻井次郎(公立大学法人神戸市外国語大学中国学科准教授)、知足章宏(フェリス女学院大学国際交流学部准教授)
次回は、8月末頃の開催を予定しています。
先日西淀川フィールドワークマップを新しく刷新したのは、こちらのブログでご紹介しました。
ブログでも書かれていますが、10年以上使用してきたウォーキングマップから、フィールドワーク用のマップになりました。それにともない、新しく西淀川・公害と環境資料館エコミューズのホームページも一部変更となりました。
変更があったのは、研修受入のページです。
フィールドワークで大切にしている三つのことや、詳しくなったフィールドワークのコース説明、また新しく販売を始めた地図を利用したフィールドワークのガイド代などが新しくなりました。
フィールドワークのコースについては例えになっていますので、ご希望があれば、それに添えるようにコースを組みます。お気軽にご相談ください。
研修希望や講師依頼を少しでも考えている場合は、メールやファックス、お電話でお問い合わせください。
新しくなったエコミューズの研修受入のページは→こちらから。
(松ヶ平)
今回は記録として参加いたしましたボランティアの吉岡が報告いたします。
神戸市の灘高等学校3年生、教員も含めて約50名のかたがたのフィールドワークを行いました。
多くの参加者のため、阪神 出来島駅から2グループに分かれて、西淀川をめぐりました。
事前学習も行って今日に臨んだ生徒のみなさんには、音やにおいといった五感をつうじて受けとめてほしいとあおぞら財団職員よりお伝えしました。
43号線。マイクを通さなくては説明の声も聴こえない騒音。そばには小学校。生活や教育の場のすぐそばで、止むことのない車の音や大気汚染があります。
西淀川の人びと、公害患者のみなさんは、裁判に勝訴しましたが、賠償金が環境改善への対策、つまり継続的な測定に用いられることを望みました。
出来島小学校には大気汚染の測定局があります。これは常時測定局ですが、出来島小学校の周辺に出来島測定局と大和田西測定局見あります。それは行政が進んで設置したものではなく、西淀川公害裁判の和解に伴って設置された測定局です。
測定は、自治体や行政との信頼関係でもあるとあおぞら財団の職員が説明しました。そこで示された数値という現実から、向き合うべき課題を知り、考え、取り組んでいくことができるのです。
西淀川の環境は、患者のみなさんのたたかいにより、緑多い地域に変わっていきました。加えてアクセスのよさなどもあり、新しくここに住む人びとも増えてきています。従来の住環境の中に工場がある状況から、におい等の面で軋轢が生じることもあるようです。
子や孫の世代に青い空を渡したいと、長きに渡ってたたかってこられた世代のみなさんの生活を援助しているデイサービスセンター あおぞら苑。その設立には、夜中に起こることの多い喘息の発作により、孤独な死を迎えられるかたがおられたことも背景にあるとのことです。公害患者だけでなく地域のかたがたにも開かれている あおぞら苑 は、多くのかたが利用されています。公害患者のみなさんは旅行に行きづらいこともあり、新館は旅館風のつくりになっているそうです。ここにも人が人らしく生きることをたいせつにする思いが感じられました。
ちょっと早い真夏の暑さの中、限らえた時間ではありましたが、灘高の生徒さんたちは、自分で歩き、見えるもの、聞こえる音などから感じとってくださったことでしょう。
あおぞら財団に着いてからは、公害患者の池永末子さん、前田春彦さんのお話をうかがいました。
運動の原動力は、次の世代、若い世代が苦しまないようにという思いだとおっしゃる池永さん。やはり喘息で苦しんでおられた娘さんをすべてにおいて優先され、ご自分は公害病の認定を受けられなかったそうです。いっぽうで娘さんは、親を心配させないように、学校から治療を受けに行っていたとのことで、たがいを思うことが長いたたかいを支えたのだろうと感じました。保育園で働いておられた池永さん。とうぜん子どもたちと遊びますが、サッカーなどはさすがにこたえたため、ボールを遠くに蹴って、その間にひと息入れていたと、つらかった体験を語られる中でも、生徒さんたちをなごませてくださいました。
前田さんは「軍事基地のことも含めて、市民が望んでいないことに大金が投じられている。苦しむ側に立って判断してほしい」と話されました。
池永さんも前田さんも、今も患者として省庁や企業に出向き、声を上げつづけておられます。しかし、生返事しか返ってこない。将来、その「聴く側」になるかも知れない生徒さんたちには「声を聴く人になってほしい」と思いを語られました。
つづいて、灘高のみなさんから、患者さんへの質問です。
Q. 経済的に余裕にある人は西淀川を離れていったと聞きましたが、そのような人たちへの思いはありますか。
A. 自分も子どもと故郷に帰ったほうがよいのではと考えたことがある。でも、子どもたちにとってはこの西淀川が故郷だと考え直しました。
Q. お子さんのこと、またご自分の苦しさから仕事をやめようと思いませんでしたか。
A. (保育園の仕事は)子どもが好きなのでやめようとは思いませんでした。また、子どもの様子を見ていたら、経験上、喘息の発作が出そうな子はわかるので、ほかの職員と連携することができました。また、医療費のこともあったので、仕事はたいせつでした。
Q. 子どもたちにご自分の体験を伝えるとき、自分たちが暮らしている街に子どもが悪いイメージをもってしまうのではないかとジレンマを感じたことはありませんか。
A. たしかにたくさんの問題があったけれど、自分たちがたたかって、それを改善していった、よくしていったということを伝えたいと思っています。
Q. 街を支えてきた工場とのかかわりについてはどう考えておられますか。
A. 同じ地域に生きる者として共存していく。新しい住民との軋轢があるのもたしかだが、ものづくりの街として、ものづくりが見えるアートイベントなど、共に生きる道をつくっていきます。
Q. 今ここで伝えたいことはなんですか。
A. (ここにいるみなさんが、将来、行政や企業の側になる可能性もおおいにありますので)もっと空気をきれいにしていきたい。医療費など、もっと患者の側に立ってほしいということです。
灘高校の生徒さんたちの質問に、現代的な視点も踏まえたするどさを感じました。炎天下の中、時間に追われてのフィールドワークでしたが、灘高生のみなさんは、五感で受けとめたことを患者さんのお話と重ねて、しっかりと考えてくれているのだなと感じました。
神戸と大阪ではちょっと距離はありますが、これを機会にタンデム自転車乗りにでも来てくださって、もっと西淀川とここに生きる人びとと出会い、自分の感性をだいじに学んでいってほしいと願います。人の声を聴ける人になりますように……。
(吉岡)