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ブログカテゴリー » 西淀川公害授業

【8/7東京開催】「住民が動いたまち 西淀川の経験から考える市民力」教材体験会

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住民が動いたまち 大阪・西淀川の経験から考える市民力

アクティブラーニング教材体験会

大阪7/2(日)・東京8/7(月)

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(写真は愛媛大学環境デザイン学科での授業の様子

あおぞら財団では、実際に西淀川に住んでいた人たちをモデルにシミュレーション教材「住民が動いたまち-西淀川の経験から考える市民力」を開発しました。(対象:高校生~、所要時間:約90分)
「設定カード」を読み解きながら、想像力を働かせ、公害という社会課題に直面した人びとがどのように行動したかを追体験します。

立場の違う人たちと共に社会課題の解決に向けてどのように行動することができるか?、市民としてどんな力を身につけておくべきか?など、多様なテーマに発展させることができる教材です。
公害・環境問題としてのみならず、市民性教育やまちづくりについて学ぶことができます。ぜひ体験してみてください!

■大阪開催
日 時:7月2日(日)10:00~12:00(教材体験)
13:00~15:00(教材をどう使うか、ゲストや委員と共に検討します)
*教材体験のみの参加も可能です
場 所:あおぞらビル グリーンルーム(555−0013 大阪市西淀川区千舟1−1−1あおぞらビル JR東西線「御幣島」駅 11番出口すぐ)
ゲスト:川中大輔さん(シティズンシップ共育企画)
教材開発委員:北野真由美さん(えんぱわめんと堺)、栗本敦子さん(Facilitator’s LABO〈えふらぼ〉)、下村哲史さん(元大阪市教員)
■東京開催
日 時:8月7日(月)13:00~15:00(教材体験)
15:30~17:00(教材をどう使うか、ゲストや委員と共に検討します)
*教材体験のみの参加も可能です
場 所:早稲田大学戸山キャンパス33号館第10会議室
ゲスト:小寺昭彦さん(サイエンスカクテル)、近藤牧子さん(開発教育協会評議員)
教材開発委員:西あいさん(開発教育協会)

参加・資料代:500円
定 員:20人(先着順)
お申込み方法:E-MAIL(webmaster@aozora.or.jp)またはFAXで、以下の必要事項をご連絡ください。
①お名前、②お電話番号、③メールアドレス、④申し込み動機(教材のどこに関心をもったかなど)、⑤教材モニター(下記参照)を希望するかどうか。

申込・お問合せ先:公益財団公害地域公害地域再生センター(あおぞら財団)
担当:栗本、林
〒555-0013 大阪市西淀川区千舟1-1-1あおぞらビル4階
TEL:06-6475-8885 FAX:06-6478-5885
E-MAIL :webmaster@aozora.or.jp
URL http://aozora.or.jp/
(地球環境基金助成事業)

— 教材モニター 募集中! —
あおぞら財団の開発した教材をモニターとして使っていただける方を募集しています。
◆ 募集期間 2017年5月~2018年2月
◆ ご自身がファシリテーターとして教材を使う意欲のある方を募集します。
◆ 教材を使っていただく場にスタッフがオブザーバー(記録者)として伺います。
◆ 授業の様子を録音・撮影しますので、ご了解ください。
◆ 教材を使う事前事後に、アンケートにご回答ください。
◆ 記録やアンケートでいただいたご意見を、あおぞら財団で教材に反映させる場合があります。

こんな教材があります!
〇西淀川公害フォトランゲージ(対象:小学校~)
西淀川公害に関する写真をみながら話し合う教材です。

フォトランゲージ1

〇ワークシート「照代の物語」を使って~「公害病になったら?」連想図(対象:小学校高学年~)
公害患者の物語を読んで、どんなことが起きたか想像し、連想図を書きながら公害被害の社会構造を考えます。 *実施例はコチラ

連想図_阪大

〇ロールプレイ「203X年、あなたの町で公害がおきたら」(対象:小学校高学年~)
町に住む様々な立場の役になりきって話し合う、簡単なお芝居をする教材です。
近未来、あなたの住む町でナゾの病気が流行ります。ひょっとしてあの工場のせいでは…?
*実施例はコチラ

西淀川高校にて話し合いの様子
〇シミュレーション教材「住民が動いたまち-西淀川の経験から考える市民力」(対象:高校生~)
大気汚染公害がひどかった頃の西淀川に実際に住んでいた人たちをモデルに開発した教材です。5人の住民とその家族の経験を追体験します。
*教材についての報道はコチラ
〇簡易カードバージョン「住民が動いたまち-西淀川の経験から学ぶ」(対象:小学校高学年~)
シミュレーション教材の簡易バージョンです。  など・・・

環境省職員 現地研修受入 1日目(2/9)

あおぞら財団ではここ数年、毎年、環境省職員環境問題史現地研修の受け入れを行っています。今回の研修は2月9日~10日にかけて行われ、環境省職員の方が10名・環境再生保全機構の方が2名、計12名が参加されました。公害患者の池永末子さんのお話、弁護団の村松昭夫先生のお話、「西淀川公害患者と家族の会」事務局長・上田敏幸さんのお話、西淀川のフィールドワークなど2日間に分けて研修が行われました。

2日目の記事はこちら 

 

まずはお互いの自己紹介からスタートです。

 

お名前、今回の研修に期待すること、業務内容、自分の考える環境省職員の役割を紙に書きます。

お名前、今回の研修に期待すること、業務内容、自分の考える環境省職員の役割を紙に書きます。

 

 

今回の研修に期待することとして、現場に行って、公害患者さんの声を聞いてみたいという意見が多く出されました。

 

まず、あおぞら財団の林さんから「西淀川公害、地域再生について」というテーマで講義がありました。講義は「戦前の公害といえば?」という問いかけを交え、日本の公害の歴史を振り返ることからはじまりました。全国の公害と公害訴訟の話から、西淀川の歴史と公害や公害患者さんの証言、あおぞら財団の理念について説明がありました。

西淀川公害裁判では環境を再生し、孫や子へ良い環境を手渡すこと目標に掲げました。西淀川公害訴訟の和解金の一部を基金にあおぞら財団が設立されます。林さんはあおぞら財団の役割はステークホルダーをつなぐことであると説明しました。

講義をしている林さん。

講義をしている林さん。

 

林さんの講義の次には、公害患者の語り部さん・池永末子さんからのお話がありました。

昔の西淀川・公害の様子、病気の苦しみ、公害反対運動、及び今の健康状態や暮らしについてお話をしていただきました。

 お話をされる池永さん。タスキをかけておられます。右は上田敏幸さん。


お話をされる池永さん。タスキをかけておられます。右は上田敏幸さん。

池永さんが西淀川に来たのは二十歳すぎの時で、洗濯物や物干し竿やばい煙で汚れ、掃除を欠かすことがなかったそうです。

池永さんは、ご自身がぜん息になる前に娘さんも公害患者さんで、小学校中学校の時は、学校を休んで病院に行かなければならないことも多かったそうです。その後ご自身もぜん息になったことで、子供さんがしんどい思いをしていたことを改めて実感したとおっしゃっていました。

池永さんご自身は未認定患者さんであるため、医療費が実費負担となり経済的な負担が大きかったことから、発作が出ても病院に行くのを我慢して悪化してしまうこともあったそうです。

患者さんにとって、医療費があるかどうかというのは大きなハードルになっており、未認定患者さんに対する救済制度が欲しいというのが公害患者の会の要求にも上がるところである、ということでした。

保育所で先生として働いていらっしゃった池永さんは、仕事に行く前は薬を飲む、仕事中に体調が悪くなった時は吸入器を使ったりしていたそうです。

吸入器を見せてくださいました。画面端の紫の器具です。

吸入器を見せてくださいました。画面端の紫の器具です。

 

皆さん熱心にお話を聞いています。

皆さん熱心にお話を聞いています。

 

 

【質疑応答】

Q:保育所で働いていらっしゃったとのことだが、預かっていたお子さんにもぜん息の子どもがいたのか?

A:自分がぜん息の患者であったため、ぜん息の症状がわかる。そういう子供たちの対応もしていた。

林さん補足:池永さんは小学校に語り部に行っているが、教え子がいる。池永さんがぜん息であったことを教え子達は知らない為、驚かれることがある。

 

Q:クラスにお子さんと同じ様に公害患者さんだった人はいたと思うが、親同士のつながり

はあったのか?

A:その当時自分が公害患者であるということを言いたがらない、隠す人が多かったためそれほどなかったと思う。

上田さん補足:公害患者に対する差別もあった。そのため、結婚や就職など子供の将来に影響を及ぼすのではないかと考え、自分の子供が公害認定患者であることを隠すこともあった。認定そのものを受けなかった人もたくさんいる。しかし、現場の教員、保健師、養護教諭が集団で話し合いをしてサポートしたというのも西淀川の地域の特徴でもある。子供たちのぜん息が一番多かった時期は、西淀川の地域だけ養護教諭が複数で配置をされたり、空気清浄機をつけたり等の措置がとられた。これらの願いを行政に伝え実現することができたのは患者会、あるいは地域の人たちや教員のバックアップがあったからである。

 

その後、あおぞら財団の現理事長である弁護士の村松昭夫先生のお話がありました。会場を5階のエコミューズに移して行いました。

 

村松先生は、日本の大気汚染公害訴訟の経過と内容・環境政策・公害裁判になぜ患者さんたちが取り組んだのかということを患者の方と共に裁判に取り組んだ弁護士の立場から、お話してくださいました。

 

村松先生

村松先生

日本の大気汚染公害裁判は四日市の公害訴訟から始まり、この裁判の判決を契機に公害健康被害補償法が制定されました。この制度は汚染者負担の原則[PPP]に立ったものであり、世界的にも類を見ない環境政策でした。当時日本の至る所で大気汚染が深刻な問題となっており、公害患者の皆さんは患者会を結成等様々な運動を行っていましたが、四日市判決が励ましになり、各地の裁判に影響を与えました。

西淀川の大気汚染は都市型複合汚染であり、被害の責任追及や因果関係の証明が困難であったため、疫学調査や共同不法行為論を利用して裁判を行ったそうです。西淀川の大気汚染裁判の和解金の一部は、公害により破壊された地域再生のためにあおぞら財団の設立に充てられました。環境再生の問題に最初に注目し、行動したのが西淀川であり、後の大気汚染裁判に影響を与えたと述べられていました。西淀川の公害裁判は弁護士主導型ではなく、患者主導型であったそうです。そして、村松先生は、患者さんや弁護士がなぜ長期にわたる裁判を戦い抜くことができたのかということを振り返って、お金のためだけでなく、被害を救済しなければならないという人間的な心情や、患者さん達が自分の受けた被害を次の世代が受けないようにという思いを持ち続けていたからではないかとおっしゃっていました。

 

【質疑応答】

Q:二十数年間という長期間の裁判を戦うことができたモチベーションとその維持の方法は?

A;弁護士側のモチベーションとしては、弁護士は自分の能力を社会正義に生かしたいという気持ちがあった。また、こういった裁判を皆で協力し、解決していくということは弁護士としても非常に重要であり、その根底にあるのは被害者の方を見て、彼らの思いに報いたいという人間的な心情だったと思う。集団で裁判に取り組んだことでモチベーションを保ち続けることができたと思う。

 

Q:裁判中に世論を味方につけるためにどのような取り組みを行ったか。

A:裁判が長期化すると、被害や問題そのものが忘れられてしまう可能性がある。そうならないために、マスコミに訴えたり、署名活動を何度も行ってきた。

 

次に「西淀川公害患者と家族の会」事務局長・上田敏幸さんのお話がありました。

始めに上田さんから、公害患者さんの前田春彦さんの報告の紹介がありました。

お話をされる上田さん。

お話をされる上田さん。

 

上田さんは、当たり前のことが奪われる、回復の見込みがないためその当たり前が不可逆的に奪われることが公害病の特徴であるとおっしゃっていました。上田さんは30年近く患者さん達とともに活動してきて一番大事なのは「対話」であると感じていると述べられていました。『手渡したいのは青い空』という本を作ったのが西淀川の公害被害者と関わった最初だったそうです。これは被害をまとめ、患者の方は何をよりどころに戦っているかということをまとめた本です。本を作った後の役割は、百万署名推進委員長として、裁判を起こした人たちが共有している被害を受けとめて、共感する人を署名という形で増やす運動を行ったということです。136万もの署名を集めたそうです。一方で企業と折り合いをつけるために対話の窓口を作る仕事を行ってきました。対話というのは相手も対話をする意思がないと成立しないため、企業内に対話の意思を持つ人が見つかったことで、和解への道を作ることができたともおっしゃっていました。その時に関わった企業の人の中には今でも交流がある人がいるそうです。

 

【質疑応答】

Q:数十年にわたる裁判を可能にした患者さんのモチベーションはどのように維持されていたか?

A:「当たり前」が奪われることが一番辛いことであり、自分にはたとえ間に合わなくても、子や孫につらい思いをさせたくないという強い思いがあった。そういった他者への思いやりがあり、それを患者間で共有してきたため、続けることができたのではないか。

 

 

最後に振り返りのワークショップを行いました。一日が終わり、気づいたことを話し合って、2日目のフィールドワークに向けて問題意識の近い人達でグループごとに分かれました。

 

今日学んだことを振り返り、共有します。

今日学んだことを振り返り、共有します。

 

二日目は西淀川のフィールドワークが中心の研修となります。

 

 

今回の研修に参加させていただき、自分自身も大変勉強になりました。

公害の被害が人の体だけでなく人間関係や地域コミュニティにも長期間影響を与え続ける根深い問題なのだとあたらめて実感しました。同時に次世代に良い環境を残そうと未来を見据え、戦い、あるいは対話を続けてこられた方達のおかげで今があるのだと感じました。

今回の研修では「共有」が一つのキーワードだったように思います。被害の体験の共有、理念の共有などを通して協力し合い、課題を解決していく。このことは今現在にもある環境問題等を解決する手がかりになるのではないかと考えました。(村山)

大阪市北ブロック新任教員研修を実施しました(8/17)

8月17日(水)に咲くやこの花中学校・高等学校で2015年度に採用された教員の方、76名に研修を行ってきました。今回は福島区・此花区・西淀川区の新任教員研修の方が対象で、西淀川公害の説明と語り部さんのお話に加え、ワークショップを実施しました。

さすがに70人を超える参加者だと研修室はいっぱいいっぱいでした。
オリエンテーションの後、あおぞら財団の栗本の進行のもとでアイスブレーキングを行いました。参加者の方には最初に配布されていたA4用紙にマーカーで、
・名前
・夏といえば
・1学期を振り返ってちょっと困っていること
・人生で一番印象に残っている学び
を一言、記入してもらい、近くの人と自己紹介をしてもらいました。初めて会う人や、顔見知りの人もいて、みなさんとても積極的にいろいろな話をしている様子がうかがえました。

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参加者の前でアイスブレーキングの説明。


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穏やかな様子でみなさん自己紹介を行っています。

アイスブレーキングのあとに、「帰国した子どもの教育センター校」である西九条小学校の渡邉勇さんの講演が行われました。渡邉さんからは日本語教室の紹介と学習支援についての話がされました。昨年度、大阪市の小中学校に編入学した児童生徒のうち、221人が日本語指導が必要だった現状から、実際に日本語教室ではどのような授業が行われているのか。また、どのような教材を利用するといいのかなどの話が中心となりました。
実際に帰国や来日した児童生徒を受け持っている先生もおられ、熱心に話を聞いていました。いろいろな教材も教室後方に展示され、休憩時間などに目を通している方も多く見かけました。

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「帰国した子どもの教育センター校」の渡邉勇さん。


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渡邉さんの講演を真剣に聞いています。

続いて、栗本から「環境と人権」というテーマで研修が行われました。西淀川大気汚染公害と西淀川という地域についての説明を簡単に行った後、ビデオ「西淀川公害裁判を闘う」を見てもらいました。

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あおぞら財団の栗本による、公害地域の説明やビデオの補足。

その後、「西淀川公害患者と家族の会」の前田春彦さんと事務局長の上田敏幸さんから、当時の被害の話やご自身の体験についてお話をしてもらいました。前田さんは幼少期から続くぜん息の話や、当時の思いやしんどさを話してくれました。仕事がしたくても出来ない辛さや、仕事中に中指の半分を失い障害者になったことなど話をしていると、会場にいる参加者は真剣な様子で前田さんの話に耳を傾けていました。また、ぜん息や肺気腫の友人がいても公害患者として認められていない事実が辛いと胸の内を語ってくれました。上田さんからは、あおぞら財団の設立の話や、現在の患者さんの話などをしてくれました。また、その上で未認定患者に対しても救済の仕組みが欲しい、国や自治体にどうにかして働きかけたいと思っているとお話されました。

質疑応答では、御幣島に住んでいる方から「まだ西淀川ではPM2.5について環境規準が守られていないという話だった。どのように公害問題を解決すればいいのか」という質問が出ました。
この質問に対し上田さんは、「とても回答をするのが難しい質問。私たちは人の暮らしと環境をスローガンにしてきた。世の中にうねりを作っていくには、患者が中心であるのではなく、多くの人たちが『何が出来るだろうか』と考えることが近道なのではないかと思う。今日の出会いをきっかけに、何が出来るか考えていくことが大切なのではないだろうか。世間が公害について関心を持ってくれることが大切ではないだろうか」と回答されました。

最後に前田さんが、今でもぜん息で苦しんでいる患者さんがいて、小さい子でもぜん息の子がいる事実を話してくれました。その上で、未認定患者への補償制度がない今、せめて医療費だけは無料にするなどの医療制度を作って欲しいと話してくれました。

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自身の体験について話をしてくれた、前田春彦さん(写真左)


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現在の患者さんの話について話をしてくれた上田敏幸さん(写真右)

その後、6人ぐらいのグループを作ってワークショップを行いました。
模造紙の真ん中に、
・公害病にかかったら
・もし大気汚染を放置したら
という、どちらかのテーマから連想図を書き出せるだけ書き出し、その影響を想像して分析していくというグループワークです。参加者のみなさんは模造紙いっぱいに次々と連想したことを書き出していきました。話し合いながら書き出すグループや、もくもくと書き出すグループなどもありました。ですが、どのグループもいろいろな想像や、繋がりを発見していく姿がうかがえます。
「公害病にかかったら」というテーマで考えたグループでは、「学校に通いにくい」→「友達ができない」→「相談ができない」という風に、子どもの状況を想像しているところもありました。また、「引っ越ししたくなる」→「それが解決?ふるさとを捨てる?」→「納得できない」という風に、患者の気持ちに共感する連想図もありました。
「もし大気汚染を放置したら」というテーマでは「元に戻すのにコストがかかる」「医療費が増える」といった経済面に注目した意見や、「人口が減る」→「まちが廃れる」というように、自然環境への被害だけでなく社会へも影響が出ることへの想像力を働かせた意見も出ていました。
2グループから全体に発表してもらいましたが、その中には西淀川で教員をしている方もいました!

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もくもくとたくさんの連想図を書き出しているグループです。


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こちらのグループは、班のメンバーでいろいろと話をしながら書き足していました。


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実際に書いた連想図を示しながら、意見の共有。

最後に、研修全体のまとめとして、日本語がわからない子どもや深刻な病気になった子どもなどを想定し、「困難に直面する子どもに関わる心構え」を各自がA4用紙に書くというふりかえりの時間をとり、今回の新任教員研修が終わりました。
いろんな子どもが増えている中、新しく先生になった参加者のみなさんはとても意欲的に参加をしていました。学校で授業をすることだけでも大変だと思いますが、最後に書いた困難に直面する子どもに関わる心構えを思い出しながら、頑張ってくれたら嬉しいなと思いました。
また、私も公害だけではなく、多くの問題や困難と向き合っている人たちとどう関わっていくか、その時の心構えをしっかり考えていきたいと思いました。

(松ヶ平)

毎日新聞に掲載されました「公害、語り部から教材 あおぞら財団、住民運動を追体験」

2016年8月21日付 毎日新聞朝刊大阪版に「大阪・西淀川の大気汚染公害、語り部から教材 あおぞら財団、住民運動を追体験 /大阪」と題して、
現在作成中の教材について記事が掲載されました。
教材に関心がある方は、ご一報くださいね。

http://mainichi.jp/articles/20160821/ddl/k27/040/226000c

大阪市西淀川区で起きた大気汚染公害を次世代に受け継ごうと、公害訴訟の和解金で設立された公益財団法人「公害地域再生センター」(あおぞら財団)が、高校や大学の授業で使える教材づくりに取り組んでいる。いまも被害患者たちが教育現場で語り部活動を続けているが、高齢化が進み、限界もある。教材を普及させることで、より多くの人たちに公害の経験を届けたいと考えている。【大久保昂】

 「企業に謝ってほしくて裁判をすることにしたんです」

 「裁判をすることで西淀川の評判が下がるんじゃないですか?」

 京都市北区の佛教大紫野キャンパスで7月にあった「日本現代史特講」の授業。学生約30人が、西淀川で公害が深刻化したころの住民になったつもりで発言していた。配られた教材に従い、国などを相手に裁判を起こし、和解に至るまでの住民運動を追体験した。

 教材のストーリーは、あおぞら財団研究員の林美帆さんと栗本知子さんが中心になって、語り部から聞いた話を踏まえ考案した。林さんは佛教大の非常勤講師も務めており、追体験型の教材を初めて授業で使った。

 住民運動の先頭に立つ知識人。ぜんそくで子どもを亡くし、裁判を起こした住民。排煙の削減を求められた工場経営者。学生たちに割り当てられた役には、それぞれ実在のモデルがいる。住民間で利害の対立がありながら、最後は「良い地域をつくりたい」という思いでまとまった西淀川公害の住民運動は、大気汚染公害を巡る運動の成功例とされる。3年生の佐伯拓夢さん(20)は「相手の立場に立って考えたり、人間が持っている根本的な良心を信頼したりすることが大切だと思った」と感想を述べた。

 財団は小中学校へ出前授業に赴いたり、現地を案内するツアーを企画したりして公害の経験を伝えてきたが、多くの部分を被害患者の語り部活動に頼ってきた。今後は教材を用いた環境学習も普及させることで、公害の経験を広く受け継いでいきたい考えだ。

 教材は改良を加えて来年中に完成させ、高校や大学での活用を呼びかけるつもりだという。林さんは「西淀川の住民運動は、立場の違う人たちが共に行動できることを示した。一つの見方に導くのではなく、多角的に考えられるような教材にしたい」と話している。

ロールプレイ「もしあなたのまちで公害が起きたら?」をJICA関西で実施

去る8/9、JICA関西を会場に開催された「第13回多文化共生のための国際理解教育開発セミナー」で分科会を担当しました。

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西淀川でつくられた地域再生プランを紹介

 

国際理解教育・開発教育に興味のある教職員・学校関係者の方を対象としたセミナーで、昨年度より地球環境基金の助成を受けて取り組んでいる、大気汚染公害を題材とした学習プログラムの整備事業で開発したロールプレイ教材を使いました。

簡単な自己紹介の活動をした後、さっそくロールプレイです。
設定は下記のようなものです。
–[ロールプレイの設定]–
203x年、あなたの住むまちで、原因不明の大気汚染物質らしきものによる健康被害(呼吸器の疾患)が発生しています。
住民の間では「X工場(煙突・換気口あり)のせいではないか?」という噂が流れています。工場では、様々な製造・研究を行っています。
今日は市役所による環境調査の結果報告会です。調査では原因が明らかにならなかったという説明が終わったところです。その後、集まった地域の人たちがそれぞれの立場から要望を発言する時間が設けられました。
—-

グループで、5つの役割をくじ引きで決めてもらい、カードに書いてある情報を読んで役になりきります。
設定されている役割は下記の5つです。
1.市役所の環境担当係長
2.住民A(子どもが病気に)
3.X工場の経営者
4.医者
5.住民C(X工場で働く)

話し合いの目的は、「同じまちに住む者として、現状に対して何をすべきか、合意形成を図る」。

司会進行役の役所の担当係長さんが口火を切り、ロールプレイを開始すると、住民Aは「ただちに工場の操業を止めてほしい」と訴えます。さて、果たして・・・。

これ以上はネタバレになってしまいますので詳細を控えますが、各グループの参加者のみなさんはそれぞれ役になりきって、喧々諤々、15分経っても時間は足りないほど白熱した議論になっていました。

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ロールプレイの後、実際に西淀川で大気汚染が激甚だった頃、何が起きたか、また住民たちはその状況の中でどんな行動をしたのか、簡単に解説しました。

異変に気付いた教員が手作りの環境調査をして子どもたち自身にまちの状況を知らせたこと、
工場や行政に直接働きかけて対策を求めたこと、
それでもすぐに解決しない困難な状況の中で司法に訴えたこと、
患者自身が熱心に勉強し、状況を理解しなんとか解決しようと行動したこと、
全国の患者とつながり、また広く被害を知らせて共感を呼び、
最終的に勝利判決を受けた後に、地域再生の願いを掲げて和解に至ったこと・・・、などです。

今回の参加者のみなさんは特に公害について関心を持って参加してくださった方が多かったのですが、終了後のアンケートでは、小学校高学年から使える教材だとご好評をいただきました。

この教材は解説資料を加えて編集し、近いうちにお披露目する予定です。乞うご期待!

(参加者の感想)
・ワークショップではあったが「もし自分にそういうことが起きたら」ということを考えさせられ、また、西淀川の市民力を知ることができて、結局は当事者同士のまとまりであったり、次の世代を含めたヴィジョンが大切だと思った。
・「203x年」となっているので、本当に将来、自分の身におこるかもしれないと思える内容で、授業で、大変よかったです。
・いろいろな立場で考える大切さを実感できてよかった。
・関西の公害は子どもたちにとっても身近で親しみやすいと思った。ありがとうございました!
・公害についてもっと勉強したい!知らなければと思える分科会でした。

(栗本)

 

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